秋光研究室の超伝導発見の歴史
     
           
   

 本研究室では新しい機能性材料の創生という研究目標の下、既成概念にとらわれず常に新しい超伝導物質の開発を行ってきました。以下は、当研究室で発見された主な超伝導体です。

1987
Bi2Sr2CuO6-δ  8K
1988
Nd2-x-yCexSryCuO4 28K
1989
(Eu,Ce)-(Ba,Ln)-Cu-O Ln=La,Eu 25K
1992
(Y,Ca)Sr2Cu3(CO3)xOy 63K
1992
(Bi,Pb)-Sr-Cu-(CO3)-O 41K, 54K
1993
Ca(Ca,Sr)2Cu2(CO3)1-x(BO3)x 33K, 55K, 105K, 115K
1993
Tl (Ba,Sr)4Cu2(CO3)O7-δ 73K
1993
Hg(Ba,Sr)4Cu2(CO3)O6-δ 67K
1994
(Ca,Na)2CaCu2O4Cl2 49K
1996
Ba2-xCan-1CunO2F2 (n=1,2,3) 38K, 106K, 108K
1996
Sr14-xCaxCu24O41 12K
1999
RuSr2YCu2O8 40K
2001
MgB2 39K
2003
Y2C3 (高温高圧相) 18K

ここでは、特に代表的な3つの系についてはより詳しく紹介します。

 

MgB2の超伝導

 MgB2は、これまでの金属間化合物超伝導体のTc2倍近く上回り、基本的にはBCS機構でありながら、いわゆる「BCSの壁」を越えた物質なのでは?という期待感も相まって、発見直後からその超伝導発現機構に関して多くの研究者の興味を集めました。また、この物質は@軽量且つ原料コストが安い、A結晶粒間の弱結合が存在しないため銅酸化物超伝導体よりも加工プロセスが簡便、B銅酸化物超伝導体よりも曲げ特性に優れるというメリットを持ち合わせており、超伝導材料としての応用的側面からも非常に関心が集まっています。

梯子格子の超伝導

 1次元物質である梯子格子は2次元と1次元がクロスオーバーしている系として大変注目をあつめています。特に、超伝導という観点からはDagottoらが2本のスピン1/2反強磁性ハイゼンベルグ鎖を横に結合させてできるハイゼンベルグ梯子模型において、スピンがシングレット状態を組み、スピン励起にギャップ構造があらわれるという計算結果を示した事により、近年多くの実験および理論研究がなされています。

炭酸基を含む超伝導物質群

 1988年にSr2CuO2(CO3)という炭酸基を含む銅酸化物の存在が報告され、後にその結晶構造が通常の銅酸化物超伝導体と同様にCuOから成るCuO2面を持ち、Sr2CO3と交互に積層した構造を持つことが解りました。その後、炭酸基を含む超伝導体としてTc〜30K(Ba0.55Sr0.45)2Cu1.1O2.2+δ(CO3)0.9が発見されて以来、当研究室においても炭酸基を含む銅酸化物超伝導体の開発が精力的に行われてきました。