岡山大学 大学院保健学研究科 芳我研究室 岡山大学 大学院保健学研究科 芳我研究室 岡山大学 大学院保健学研究科 芳我研究室

抄読会報告 しょうどくかい

令和2年12月11日実施

Title:Randomized controlled trial and economic evaluation of nurse-led group support for young mothers during pregnancy and the first year postpartum versus usual care Jacqueline Barnes (妊娠中および産後1年までの通常ケアと看護師主導のグループ支援の無作為化比較試験と経済評価)

Author: Jacqueline Barnes ,at el
Source:Trials 18:508,2017

1.Abstract
  1. ■背景
    児童虐待は公衆衛生上の重大な問題である。グループファミリーナースパートナーシップ(gFNP)は、パイロット研究で成果を得た若い妊娠中の母親のための新しい介入方法である。米国やオランダで効果が検証されているが、英国での検証が課題である。
  2. ■デザイン
    パラレルRCT
  3. ■目的
    ハイリスク妊婦への虐待予防活動としてのgFNPの有効性と費用効果を評価すること
  4. ■方法
    多様な場面において,母親の年齢グループごとにリモートによる無作為化をした比較試験(平行して試験を実施するパラレルRCT)を実施し,前向きに費用効果を評価した。なお対照群は通常のケアを受けた。対象者は、20歳未満の1回以上出経験のある妊婦と,20〜24歳であるが出産経験がなくまた学歴が低い妊婦であった。ベースラインのアンケート調査と乳児が2ヶ月、6ヶ月、12ヶ月時にフォローアップの母親へのインタビュー調査、12ヶ月でビデオ録画による調査を行った。メインアウトカムは、子育ての態度(成人思春期の子育て指数、AAPI-2)と母親の感受性(CARE指数)であった。費用効果は、英国のNHS(国の提供サービス)と個人的な支援サービスの利用について検討し、質調整寿命年(QALY)により費用効果を評価した。主な分析として、平均因果効果分析 (CACE)によるITT分析を行った。
  5. ■結果
    調査期間は2013年8月~2014年9月で492人の参加者のうち319人が対象者に選定され、166人が参加に同意した。そのうち99人を介入群(gFNP)、67人を対照群(通常ケア)とした。 AAPI-2 (両方で7.5/10、SE 0.1)は、ベースライン、フォローアップ時に母の年齢調整をしても、群間に差はなかった。0.06 (95% CI - 0 .15 ~0. 28, p = 0 .59). CARE指数 (介入 4 .0 (SE 0 .3); 対照 4 . 7 (SE 0 .4); フォローアップ時に母の年齢調整をしても、群間に差はなかった. - 0 .68 (95% CI 1.62 ~0 .16, p = 0 .25) QALYによる評価では、gFNPの平均増分費用効果は、得られたQALYあたり-247,485ポンドと推定され、介入にかかる費用が大きいほど効果は低いことを示していた。
  6. ■結論
    今回の研究では、英国でのgFNPは児童虐待のリスクを軽減する効果が見られなかった。対象者の選定に時間がかかったことで、グループサイズが少なくなり、その結果、十分な介入が行えなかった。
2. Discussion points
  1. 1)研究の意義について
    グループセッションの特徴や期待される効果が通常のFNPと比べてどう違うのか、gFNPのねらいをもう少し明確にすることで、gFNPを臨床応用する意義がより伝わるだろう。
  2. 2)アウトカムの測定方法
    主要なアウトカム評価として、AAPI-2とCAREを用いているが、なぜその指標を用いるのか、また用いる尺度の信頼性や妥当性が不明。方法のところでもう少し丁寧な説明が欲しい。また、gFNP提供者や地域ごとのセッション内容の質に違いはなかったのか疑問が残る。ITT分析とはいえ、対象者の脱落があまりに多く、効果が十分に評価されなかった可能性が高い。サンプルサイズの限界としているが、なぜこれほど脱落したのか,リクルート方法や脱落した経緯を考察すべきだろう。

令和2年11月10日実施

主題:Frailty predicts short-term incidence of future falls among British communitydwelling older people: a prospective cohort study nested within a randomized controlled trial
フレイルは英国の地域在住高齢者における今後の転倒の短期的な発生を予測する: ランダム化比較試験内に構造化された前向きコホート研究

著者:Gotaro Kojima, et al.
出典:BMC Geriatrics (2015) 15:155
担当者:Shiromizu, S.

1.Abstract
  1. 1)目的
    地域在住高齢者のフレイルが今後の転倒を予測できるか明らかにすること。
  2. 2)デザイン
    前向きコホート研究
  3. 3)対象者
    2008年から2013年に実施された運動介入試験(RCT)の2次分析であり、本研究の対象者は、65歳以上で英国の地域在住高齢者248人であった。
  4. 4)解析方法
    24週間後の転倒の発生を観察した。フレイルは、ベースライン時での40項目の支障の有無から構成された「フレイル指数(FI)」を用いて判定した。24週間以内の転倒の有無をアウトカムとし,フレイルの状態に応じた今後の転倒リスクを算出するため,ロジスティック回帰モデルを使用して分析した。
  5. 5)結果
    248人の参加者のうち、46人がフレイルと分類され、57人が追跡期間中に1回以上転倒した。FIが0.01増加するか、FI> = 0.25として定義されるフレイルの状態に合致した状態は、年齢、性別、および前年の2回の転倒歴を調整した多変量ロジスティック回帰モデルにより,半年以内の転倒のリスクの増加と有意に関連した(オッズ比(OR)= 1.05、95%信頼区間(95%CI)= 1.02–1.07、p <0.001; OR = 3.04、95%CI=1.53–6.02、p=0.001)。 受信者動作特性(ROC)曲線分析は、0.62(95%CI = 0.53–0.71、p <0.01)でFIがかなりの精度で半年以内の転倒を予測したことを示した。
  6. 6)結論
    フレイルは、運動介入試験に協力した地域在住の高齢者の間で、今後の転倒を予測する重要かつ独立した因子であった。医療従事者は、健康的に年を重ねている高齢者であっても、今後の転倒の危険因子としてフレイルを認識することが重要である。
2. Discussion points
  1. 1)研究の意義(なぜ,フレイルに着目したのか)の明確化
    フレイルの評価と今後の転倒との関連についての先行研究が、これまで追跡してきた期間は、1年以上で最大8年であったと記述されており,本研究では短期間(24週間)追跡したことが新規性とあるが,なぜ24週間以内としたのか,本文の背景からは、読み取ることができない。おそらく,フレイルは加齢と相関があるため,長期間の追跡となると加齢による他の影響(疾患の発症や認知機能の低下等)を無視できなくなることを考慮してのことだと推察されるが,24週間とした理由とともに短期的な影響を検討する必要性について明記することで,より本研究の意義が伝わるのではないか。
  2. 2)オッズ比の大きさと影響の大きさ
    FIの0.01の増加が転倒リスクをオッズ比(OR)1.05として表示しているが、オッズ比1.05がどの程度意味をもつのかが不明である。FIの0.01の増加がどの程度のフレイルを表しているのかについても,記載がないため,読者としてはそのまま判断できない。効果量を表して,評価する必要があるのではないか。

令和2年10月13日実施

主題:Factors associated with the use of health services by elderly men in Brazil: a cross-sectional study
(ブラジルの高齢男性の健康サービス利用に関連する要因:横断研究)

著者:AlanaMaiaraBritoBibiano ,VanessadeLimaSilva, and RafaeldaSilveiraMoreira
出典:Bibiano et al. BMC Public Health (2019) 19:859 Open Access Journal
担当者:Kazuma Omoto

1.Abstract
背景

これまでの研究は、年配の男性は女性よりも医療サービスを利用する頻度が低いことを示してきた。しかし、このテーマに関する科学的研究はほとんどないため、この対象者の医療サービス利用に関するさまざまな要因の影響を調査する必要がある。

デザイン

横断研究

目的

ブラジルの高齢男性が医療サービスを利用することに関連する要因を分析すること。

対象者

ブラジルのNational Health Survey(2013)の二次データベースを使用した集団ベースの調査であり、当対象は60歳以上の男性10,536人であった。

方法

従属変数は、医療サービスの使用に関連する質問項目で構成され、潜在クラス分析によってグループ化およびカテゴリ化された。独立変数は,素因・能力・ヘルスニーズといった要因であり,これらは理論的モデルによって構築された。効果の測定はRao-Scott検定と多項ロジスティック回帰の単回帰と多変量回帰モデルによって行った。なお,有意水準は5%とした。

結果

医療サービスは研究の前年でみると,不定期に診療予約という行動に特徴づけられた。北部、北東部、中西部の高齢男性たちは、読み書きできず、民間の健康保険に加入しておらず、何らかの病気と診断されており、機能障害をもち、健康に意識を持っていない人たちであり、過去2週間に中程度から高度に多様な医療サービスの利用や、入院に消極的であることが確認された。前年、彼らはごく不定期にしか医師に相談していなかった。

結論

社会問題への無関心さが医療サービスの利用に影響を及ぼし、ブラジルの高齢男性の医療は病気と治療およびリハビリに集中していることが指摘された。この結果から、部門内および部門間の方針と行動によって(政策によって)、高齢男性集団に対して医療サービス、特にプライマリケアサービスとの早期の接触を促進するべきだろう。

2.Discussion Points
  1. 1)研究の背景・必要性
    日本でも同様の問題が報告されており、研究背景としては興味深い。しかし、著者らは20代から50代までの若い男性の健康に関する調査が多いと指摘しているが,日本の状況とは異なっており,その理由が知りたいところである。おそらく,ブラジルの平均寿命が75歳くらいということを考えると若年者の健康増進や労働衛生という意味あいが強い可能性が推測される。ブラジルの状況を知らない読者にもわかるようになぜ若い人の健康に関する調査が多いのか今までの健康政策の流れや,今回高齢者の健康に目を向ける意義について説明をすることで、読者がより深く理解できるのではないか。
    さらに、ブラジル国内の政策決定を促すための研究であるなら、地域性に関して説明が必須だろう。医療体制などの要因は地域性に左右されることもある。その点に関して、国際誌に投稿する際には海外の人が読むことも考えて、詳しい記載が必要だろう。同様に、ブラジルにおける民間の健康保険についても説明が求められる。この論文では健康保険への満足度と他の因子との関連も結果として見ているため、制度の説明が欲しい。
  2. 2)データ収集
    ブラジルの国民健康調査で得られたデータを利用しての研究ということは分かったが、その調査がどのような手法でデータを収集したのか説明されていない。国の研究であるため、その時点で信頼性の担保がなされているとの判断だろうが、データ収集に関してはもう少し説明が必要なのではないか。
    健康に関連の深い収入などの「経済状況」に関してデータが収集されておらず、交絡因子として考慮できないことを考察で検討しておいた方がよいだろう。地域が経済状況そのものを表しているのであれば,それも説明した方がよい。
  3. 3)データ分析
    本文中にp<0.25で単純な統計分析を行ったと述べられているが、見慣れない有意確率であるため何の分析を行っているか不明だった。正式には「モデルの安定性分析」と呼ばれる分析方法のようであったが、統計分析方法は正式名称を記載すべきではないだろうか。
    また、「複合的なサンプリングデザイン」であるため「重み」と「層」を考慮して分析を行ったと述べているが、その詳細が不明である。サンプリングの項にこのように記述するのではなく,統計解析の部分で記述が必要なのではないだろうか。
  4. 4)ブラジル国内の医療と今後の展望
    本研究の結果は、ブラジル国内では男性高齢者が重症化してから受診している現状を明らかにし,プライマリケア(1次医療)の重要性を述べている。しかし、日本をはじめ先進国の保健施策を見ると生活習慣病が主たる死因となっているため健康増進・疾病予防を中心とした1次予防が重要である。ブラジル等新興国である国々が,先進国と同じ過程をたどるとなるとかなりの時間を要するかもしれないため、新たな施策を考えることが本結果からできると健康政策に一石を投じるものになるかもしれない。

令和2年09月08日実施

主題:Co-occurrence of adverse childhood experiences and its association with family characteristics. A latent class analysis with Dutch population data
(逆境的小児期体験(ACE)と家族の特徴 オランダの人口データを用いた潜在クラス分析)

著者:Carlijn Bussemakers⁎, Gerbert Kraaykamp, Jochem Tolsma
出典:Child Abuse & Neglect 98:1-10,2019
担当者:Akemi Yokomizo

1.Abstract
背景

逆境的小児期体験(ACE)は、比較的共通した知見が得られているが、そのような体験をもたらす因子に関する知見は限定的である。

デザイン

後ろ向きコホート研究

目的

オランダ人の逆境的小児期体験を調査し、ACEと家族特性との関連を検討する。

対象者

オランダ政府の住民基本台帳(2018)から選定された 3,128人

方法

潜在クラス分析(LCA;Latent class analysis)により、従属変数をACE、独立変数を虐待、世帯の機能不全、家族のライフイベント、経済状況および慢性的な健康問題として関連性を検討し、さらにACEの程度による違いを検討する。

結果

「低ACE群」、「中程度のACE群:家庭の機能障害」、「中程度のACE群:虐待」、「高ACE群」の4つのクラスタに分類された。回帰分析の結果、初産時の母親の年齢と兄弟の数が逆境的小児期体験と関連していたが、社会経済状況との関連は見られなかった。

結論

4つのACE群は、ACEの重症度だけでなく、子どもが経験した過酷さの内容も反映している。ACEのスクリーニングと予防には、その内容と重大度が共存していることを理解する必要がある。

2.Discussion Points
  1. 1)研究の背景・必要性
    ACE研究が米国やブラジルを中心に行われているにもかかわらず、オランダを選定した理由がわかりにくい。リミテーションにも言及されてはいるが、福祉国家であるオランダの研究成果をすべての国に当てはめることは難しい。にもかかわらずオランダを研究対象とした理由や社会的背景についてもう少し丁寧に説明をすることで、研究の意義も伝わり、読み手の興味や関心がより惹きつけられるのではないか。
  2. 2)研究の対象者
    遡及的な研究デザインであるため、思い出しのバイアスを取り除き、系統的なエラーを制御するため対象者をランダムに選定しているため年齢の幅が18歳から72歳と大きくなったのだと推測されるが、これだけ幅が大きいと回答内容に偏りがでる(高齢者の方が経験を美化し、若年者の方が生々しく、もしくは親に対し否定的に回答する)可能性があるのではないだろうか。年齢によりどのように回答が異なっていたのか・いなかったのか気になる。
    また、第7版FSDPから4,162人を無作為抽出したとあるが、どのような根拠で選定したので分かりにくいため、丁寧な記述が必要だろう。
    さらに、10代の青年期の対象者に虐待の経験を聞いたことは精神的負担につながったのではないかと推察される。どのような配慮をしてデータ収集したのか、倫理的配慮についての記述がないのは、このジャーナルの特徴なのか。問題にはならなかったのだろうか。
  3. 3)アウトカムの測定方法
    経済状況は交絡として検討すべき要因であるものの、把握の方法が難しい。今回の聞き取り項目は回答のしやすさ、分かりやすさの点で今後の参考にしたい。一方で、ACEの程度については、順序尺度でしかないものを「程度」として信頼してよいのか、既存の測定尺度はなかったのか、ACEの概念の定義、程度について曖昧な印象を受ける。
  4. 4)カテゴリカルなデータが多い調査に対するLCAの適用
    リスク因子の数によりクラスタ分類し、LCAによる適合度を算出することで、その組み合わせの影響を測定している。カテゴリカルなデータが多い社会調査的な研究においてLCAを用いることの有用性を印象づけている。今後、看護学領域における活用が期待される。

令和2年07月14日実施

主題:The effect of teamwork training on team performance and clinical outcome in elective orthopaedic surgery: a controlled interrupted time series study
選択された整形外科手術におけるチームパフォーマンスと臨床転帰に対するチームワークトレーニングの効果:中断時系列分析

著者:Lauren Morganほか
出典:BMJ Open: first published as 10.1136/bmjopen-2014-006216 on 20 April 2015
担当:陶山祥平

1.Abstract
目的

手術室チームのパフォーマンスと臨床転帰の改善に対する航空業界での訓練のチームワークトレーニングの有効性を評価すること。

研究方法
  1. 1)研究の場
    英国地区の総合病院の3つの手術室において、1つは対照群として、他の2つは介入群とする。
  2. 2)参加者
    3か月の観察期間中、介入期間の前後に、2人の訓練を受けたオブザーバーによって72件の手術(37件の介入、35件の対照)が全て観察された。
  3. 3)介入方法
    すべてのスタッフを対象に1日間のチームワークトレーニングコースを設け、その後、6週間にわたりの週に一度、現職者の指導で学習を組み込む。
  4. 4)介入前および介入後の結果測定
    OXFORD NOTECHS IIを使用してチームの非技術的スキルを測定し(チーム全体と外科、麻酔、看護のサブチームを評価し、グリッチ(誤り)数を使用して技術的スキルを評価した。)WHOチェックリストが遵守されているかを評価した。タイムアウト(T/O)とサインアウト(S/O)が試行されたかどうか、およびT/Oが完全に遵守されたかどうかを評価した。病院の管理データを用いて、合併症、再入院、入院期間を記録した。介入群と対照群を二元配置分散分析(ANOVA)と回帰分析を使用して介入前後で比較した。
結果

NOTECHS II平均得点は、介入群で71.6から75.4に大幅に増加したが、対照群では変化がなかった(p = 0.047)。サブグループとして解析した結果、、看護師の得点は大幅に増加した(p = 0.006)。しかし、麻酔科と外科の得点は増加しなかった。
WHO T/O手順の試行率は、介入群と対照群の両方で大幅に増加した。しかし、T/Oへの完全な遵守は介入群(p = 0.003)でのみ改善された。平均グリッチレートは、対照群では変化しなかったが、介入群では大幅に増加した(7.2-10.2 / h、p = 0.002)。

結論

チームワークトレーニングは手術室チームのリーダーシップ、チームワークといったノンテクニカルスキルの向上と関連していたが、手術中のグリッチ()の増加とも関連していた。

2. Discussion point
  1. 1)研究の背景・必要性
    読者が専門職であることを想定しているとはいえ、ノンテクニカルスキルの定義の記載やそれに着目する意義について言及があるとわかりやすい。たとえば、手術中の人的エラーがノンテクニカルスキルによって生じているという先行研究を引用するなど。また、研究仮説・研究目的の具体的内容についても明記すべきだろう。
  2. 2)研究対象者の選択基準
    欠損値などはなかったのか。選択された手術の内訳が不明であり、なぜ整形外科、血管外科、消化器外科の手術を評価したのか具体的理由がわからず、これらの手術を同一のものとして評価しても良いのか疑問が残る。手術チームの構成メンバーや経験年数などがどうだったのかわからない。
    評価者であるオブザーバーを病院スタッフとは別に設定し、さらにどのようにしてオブザーバーとなるべく訓練したのかについて具体的に記載されておりわかりやすい。
  3. 3)アウトカムデータと主要結果
    複数の指標での評価をしている点が本研究の優れている点だろう。
    介入の効果の出方が人によって違うと考えられるため、群間でカテゴリカルな値をプロットするのにあたり、図1,3でもちいた箱ひげ図は見た目にわかりやすい。
  4. 4)主要結果とサマリー
    このような介入研究は、研修を受けて実施するため盲検化が難しく、また、オブザーバーの存在により「見られている」効果が生じてしまい、著者自身も指摘している通りホーソン効果(プラセボの一種。治療を受けるものが信頼する治療者に期待されていると感じることで、行動の変化をきたすなどして結果的に病気が良くなる現象)があって当然だろう。その影響をどのように軽減したのか、その工夫内容を検討したのかどうか記述する必要があったのではないか。結果が介入群、対照群ともに良くなった項目はホーソン効果が大きかったのではないかと考える。例えば、ビデオもしくは録画による観察など。
    たとえランダムに割り付けたとしても、手術適応となる症例件数は限られており、その効果は限定てきだったと推察される。臨床転帰をアウトカムにするなら患者の年齢や疾患、病状などの、介入群と対照群の構成メンバー・属性などの明記が必要あったのではないか。

令和2年06月09日実施

主題:Effects of different amounts of exercise on preventing depressive symptoms in community-dwelling older adults: a prospective cohort study in Taiwan
地域の高齢者における抑うつ症状の予防に対する異なる運動量による効果:台湾での前向きコホート研究

著者:Yu-Chen Chang, Mei-Chun Lu,I-Han Hu, Wan-Chi Ida Wu,Susan C Hu
出典:BMJ Open: first published as 10.1136/bmjopen-2016-014256
担当:Shiromizu, S.

1.Abstract
  1. 1)目的
    地域の高齢者における抑うつ症状を予防するための4つの異なる運動量の効果を比較すること。
  2. 2)デザイン
    前向きコホート研究
  3. 3)対象者
    65歳以上の合計2673人の高齢者。
  4. 4)解析方法
    うつ病の症状は、疫学研究センターうつ病スケール(CESD)を使用して測定。(1)週3回、15分/時間(2)週3回、30分/時間(3)週6回、時間15分(4)週6回、時間30分の4つの異なるタイプ/量の運動が検討された。様々な量の運動が抑うつ症状に及ぼす影響を、一般化線形混合モデルを使用して分析した。
  5. 5)結果
    検討中の高齢者の5分の1以上が抑うつ症状を示した(CESD≥10)。高齢者の約38.6%は、タイプ1の最低基準を満たし、タイプ4の最高基準を満たした数は少ない(28.0%)。タイプ4の運動のみが、当初、抑うつ症状の低下に関連していた(OR = 0.8、95 %CI 0.66〜0.95)。ただし、時間と運動パターンの変化の相互作用を検討した結果、たとえ非常に少量(週3回、15分/時間)であっても、抑うつ症状に有意な予防効果があった(OR = 0.56〜0.67)。
  6. 6)結論
    週に3回の中程度の強度で、少なくとも15分に1回の一貫した運動は、抑うつ症状のリスクの低下と有意に関連している。本結果の示す、運動量が少なくても抑うつ症状を改善させることは、コミュニティの中で、あるいは全国レベルに活動を広げることを容易にするだろう。
2. Discussion points
  1. 1)研究の背景・研究の必要性
    台湾(アジア)とアメリカ(欧米諸国)での高齢者におけるうつ症状発生リスクの多寡については触れられているが、なぜ台湾に焦点を当てたのか、台湾の高齢者のうつの社会背景を記述しておくと研究の意義を高めることができたったのではないか。
  2. 2)研究の対象者
    ベースライン時でのうつ症状の有無・程度が交絡する可能性について、1996年の調査において以前のうつ症状を共変量として扱っていた。うつ症状をもつ人を除外するのではなく、このように統計的に扱うことで、制御できるが、その程度については検討されていない。
  3. 3)アウトカムの測定方法
    4つの異なるタイプ/量の運動は、高齢者に適したものか、対象問わない運動の目安であるのか、指標としているものが明確に記述されていない。また、運動強度はアウトカムに影響するため、厳密に測定する必要があるのではないか。つまり発汗や息切れのレベルをどのように測定したのか、、なぜ心拍数を用いなかったのか、疑問が残る。
  4. 4)アウトカムデータ
    1996年~2007年の11年間の調査の中で、3~4年に1回観察することで、運動の変化パターンの影響を測ることができる。運動量よりも、継続して運動を行うことが、うつ予防に効果があることをオッズ比による総体危険を用いており、わかりやすい。

令和2年04月10日実施

主題:Childhood body mass index trajectories: modeling, characterizing, pairwise correlations and socio-demographic predictors of trajectory characteristics
小児期のBMIの軌跡:軌跡の性質に関するモデリング、特徴の明確化、ペアワイズ相関分析、社会人口学的予測因子

著者:Wen X., et al.
出典:BMC Medical Research Methodology、12(38), 2012
担当者:Haga C

1.Abstract
  1. 1)目的
    BMIの軌跡に関する先行研究は取り扱う年齢が限定されていたこと、軌跡に関する情報の利用が不十分だったことによって限界をもっていた。小児のBMIの軌跡をモデリングすることと、ある年齢の間でのBMIの変化を見積もることが本研究の目的である。これは、後の体格に関連したアウトカムの予測因子を改善するのに役立つかもしれない。
  2. 2)デザイン
    時系列データを使った観察研究
  3. 3)対象者
    1980年から2008年までに(AAP:米国小児科医師会が実施している)81,550回の‘Pediatric well-child visits’の対象となった、乳児から18歳までの3,289人の小児。
  4. 4)解析方法
    Fractional 多項式関数を用いた混合効果モデルを使って個人のBMIの軌跡に適合させた。個々に当てはめた後、BMIが乳児期にピークになる時期とアディポシティリバウンドの時期に該当する年齢を見積もった。その後、生後1週間と、乳児期のピークとアディポシティリバウンド(AR)、そして18歳の間の速さと曲線の面積を求めた。
  5. 5)結果
    男児において、幼児期のBMIピークとARは平均7.2か月(SD;0.9)と49.2か月(11.9)であり、女児においては、7.4か月(1.1)と46.8か月(11.0)であった。乳児期のBMIピークの年齢とARの年齢の間には弱い負の相関があった(r=-0.09)。乳児期ピークのBMIとARのBMIには正の相関があった(r=0.76)。黒人は白人より早期にARを迎え、ARから18歳までのBMI上昇速度が速かった。出生体重のzスコアが大きいほど、ARが早くなり、乳児期ピークとARのBMIが高値になった。
    BMIの軌跡は、他の社会人口学的因子や出生時のzスコアで調整すると出生年や保険の種類で違いは認められなかった。
  6. 6)結論
    小児期のBMIの軌跡特性は小児の体格変化を記述する際に有用であり、便利でもある。この新しいBMIの軌跡の特徴と成人期のアウトカムとの関連を検討する研究が必要である。
2. Discussion
  1. 1)研究の背景・研究の必要性
    小児期が生活習慣病予防に重要な時期であることは周知のこととなりつつあるが、エビデンスが少ないという問題点があるため、individual-based approachという、個々の子供に対し特定の軌跡を与え、有用なBMIの特性を見積もることを数量的(客観的)に行った貴重な研究。
  2. 2)バイアスの検討が「方法」に書かれている理由が不明
    分析対象者がデータベースにある数よりもずっと少ないために、バイアスを検討していることは重要な点だと思われる。しかし、その記述は結果でも良かったのではないか?方法でそれを比較検討したのはなぜかが不明。
  3. 3)訪問回数を総数で記述した理由が不明
    また、表1では、1979年10月1日から1994年1月1日生まれで比較しているが、その理由が不明。1987年からメディケイド対象の人を含めたのであれば、1994年から2008年の出生者で比較した方がよかったのではないか。また、訪問総数で比較しており、これをどのように評価してよいのか分からない。対象者数がそもそもかなり違うから比較しているのであれば、1人あたりの訪問回数として比較した方がよかったのではないか。
  4. 4)測定バイアスの補正方法が明確
    2歳以下の子どもの仰臥位での身長測定は誤差が大きいのが悩ましいが、それを補正する方法をもっていることが本研究の強みか。
  5. 5)説明変数・共変量の取り扱い方やカテゴリー化
    何の変数をどのように扱ったのかが詳細に記述されており、分かりやすい。
  6. 6)統計手法
    方法に解析結果が記載されている。既存データを用いることの特徴かもしれないが、結果が無いと次のステップの判断ができないからだと思われる。このような書き方が一般的とみなされるのかどうか。
    固定セット(fixed set)がどこから得られているのかが不明。恐らく、統計ソフトのパッケージに含められているのかと推察するが、これが何を意味するのか、基礎知識が無いと読み取れない?
    サンプルサイズを大きくするために男女混合とした点について、図1におけるVelocity3において違いが生じる、つまり思春期の性差を無視してしまうのではないか。
    おそらく保険加入者によるバイアスが生じていて、富裕層に偏っていると考えるべきか。
  7. 7)主要結果の示し方
    あてはまりの良いものから、あまりよくない子までを表示することで、どの程度モデルがフィットしそうか、視覚的に分かりやすく表示できている。
    一方で、性別層化分析の必要性の有無について、差が大きくなかったことを示す必要があるのではないだろうか。先述した通り、思春期に性差が無いのか、大きな疑問。

令和2年02月12日実施

主題:Effect of Combined Cardiovascular Risk Factors on Individual and Population Medical Expenditures ~A 10-Year Cohort Study of National Health Insurance in a Japanese Population~
(循環器疾患リスクの組み合わせが個人及び集団の医療費に及ぼす影響
~日本人集団における10年間の国民健康保険コホート研究~)

著者:Tomonori Okamura, et al.
出典:Circulation Journal Vol.71, June 2007
担当者:Okumoto M

1. Abstract
  1. 1)目的
    肥満はメタボリックシンドロームのリスクになるだけでなく、循環器疾患のリスクを増大させるその他の因子についても明らかにされている。循環器疾患のリスク因子の組み合わせと医療費の関係がBMIによって異なるかどうかを明らかにすること。
  2. 2)研究デザインと方法
    滋賀県における40から69歳の4,478人の日本の国民健康保険加入者を対象とし、1990年から2001年までの10年間のコホート研究を実施した。
  3. 3)結果
    循環器疾患リスク因子(高血圧、糖尿病、高コレステロール血症)の組み合わせは、過体重群(BMI≥25.0)および正常体重群(BMI <25.0)の参加者における個人医療費と正の段階的な関係を示した。1か月あたりの個々の医療費は、2つまたは3つのリスク因子を持つ過体重群の方が、リスク因子がない正常体重群よりも1.7倍高かった(26,782円対15,377円)。相乗平均の差は、他の交絡因子の調整後も同様に有意であった。しかし、正常体重群の参加者数が多かったために、総医療費内のリスクが組み合わさることによる過剰医療費は、正常体重群において過体重群よりも高かった。
  4. 4)結論
    循環器疾患リスク因子が組み合わさることと過体重は、日本人の集団における医療費の有用な予測因子となり得る。
2. Discussion points
  1. 1)リスク単体でなくリスクが組み合わさることが医療費に及ぼす影響を調査したという新規性や、重要性の高い医療費に着目した意義をより読者に伝えるため、緒言において先行研究をもっと紹介してもよかったのではないだろうか。例えば、循環器疾患のリスクファクタ―とされる因子ごとに明らかにされている医療費への影響など。循環器疾患による医療費の高騰が与える社会的ダメージなどについても、触れておくことでこの研究の社会的意義が明確になったのではないだろうか。
  2. 2)研究の場が滋賀県の7つの地方の町や村であることは、心疾患の発症や医療へのアクセスなどが心疾患発症率の高い都市部とは異なり、選択バイアスを生じている可能性があり、研究の限界に明記しておく必要があるだろう。また、対象者の年齢が40~69歳となっているが、国民健康保険の対象年齢と異なる理由や対象選定基準の説明も必要ではないか。
  3. 3)交絡を制御したことが記載されているにも関わらず、交絡と判断した項目が示されていない。リスク因子の組み合わせと医療費間の交絡について、明瞭な記述が必要だろう。
  4. 4)リスク因子の数によって階級分けをしているが、そのリスク因子は例えば糖尿病の場合と高血圧の場合では医療費が異なるように、組み合わせにより医療費への影響が異なるのではないだろうか。恐らく、その違いによる影響を制御したのではないかと推察するが、その方法を記述する必要があるだろう。
  5. 5)研究の限界として、日本の医療保険制度が他国と異なるために一般化できないとされている。しかし皆保険制度だからこそ、地方都市部というバイアスはあっても、被保険者の経済的な影響の差は少なかったと推察される。今後、得られた知見を他の地域や人種に対し検証することが求められるだろう。
  6. 6)研究の限界として、情報(誤分類)バイアスをあげているが、これは健診データが古く、項目がずれているためである。健診項目を設定する際、今後解明すべきエビデンスは何かをよく吟味し、検討する必要性を示唆している。

令和2年01月09日実施

主題:Identifying and Intervening in Child Maltreatment and Implementing Related National Guidelines by Public Health Nurses in Finland and Japan
フィンランドと日本の保健師による児童虐待の発見と介入、および関連する国内ガイドラインの実装

著者:Kayoko Suzuki, Eija Paavilainen et al.
出典:Hindawi Nersing Research and Practice 2017,1-7
担当者:Yokomizo A

1. Abstract
  1. 1)目的
    フィンランドと日本における保健師の児童虐待の発見、介入、ガイドラインの活用状況を調査し比較すること。
  2. 2)研究デザインと方法
    横断研究
    母子保健分野で活動する保健師(フィンランド193人、日本440人)を対象に、児童虐待における保健師の知識と技術を①児童虐待の発見、②介入、③ガイドラインの活用の3つのカテゴリーで構成される質問紙を用いて評価した。
  3. 3)結果
    フィンランドの保健師に比べて日本の保健師は高い割合が児童虐待を発見したが、フィンランドの保健師は日本の保健師よりも虐待に介入していた。両国で、ガイドラインを活用した保健師は、虐待対応をしなかった人よりもうまく対応できた。
  4. 4)結論
    児童虐待に関する効果的なトレーニングとガイドラインの活用が、児童虐待を発見し、介入するための保健師の知識と技術を高めるために重要であることを示唆した。
2. Discussion points
  1. 1)研究仮説の記載がないため本来この研究で言いたかったことが見えにくい。なぜフィンランドの保健師と比較するのか分かりにくい。先行研究の文献レビューをもっと緒言に記述するとよいのではないか。また、母集団に関する情報が欲しい。例えば、両国における母子保健システムや保健師による虐待支援の現状、ガイドラインの目指すところに違いはあるのかなど、両国の文化的背景を丁寧に記述・説明することで読者が本研究の意義をよりよく理解できる。、また主要なトピックである児童虐待の両国における現状について紹介するなら、出版の3年前のデータではなく、最新のものを引用すべきだろう。
  2. 2)アンケート回収率の低さからも、対象者の選択バイアスに関しての検討が必要ではなかったか。また、調査に使った尺度がフィンランドで6段階、日本では4段階と、若干変更されているが、その理由が納得のいくものにはなっていない。アンケートのパイロットスタディはフィンランドだけでなく日本でも実施するべきではなかったか。
  3. 3)文化的な背景の違いからも、両国のガイドラインが同様のものとは限らないが、それを判断するための情報が記述されていない。ガイドラインをどのように役立てたいのか、活用方法を探ることを目的にするのであれば、今回の調査項目が妥当であったか疑問が残る。

令和元年12月16日実施

主題:Prevalence of frailty in Japan: A systematic review and meta-analysis
(日本におけるフレイルの有病率:システマティックレビューとメタアナリシス)

著者:Gotaro Kojima , *, Steve Iliffe , Yu Taniguchi , Hiroyuki Shimada , Hiromi Rakugi ,Kate Walters
出典:Journal of Epidemiology 27 (2017) 347e353

1. Abstract
  1. 1)目的
    日本における地域在住高齢者の身体的フレイルの有病率を把握するために利用可能な文献をシステマティックに検索し、それぞれ報告されている有病率を統合するメタアナリシスを実施すること。
  2. 2)研究デザインと方法
    地域在住の日本人高齢者(65歳以上)におけるフレイル有病率を調査している研究1529件を11の文献データベース等から収集し、そのうち5件(被験者総数11940名)を対象にメタアナリシスを行った。
  3. 3)結果
    フレイル有病率は7.4%(95%CI、6.1~9.0%)で、プレフレイルと健常の割合は、それぞれ48.1%(95%CI、41.6%-54.8%)および44.4%(95%CI、37.2%-51.7%)であった。女性および特定年齢集団の結果については、研究間で有意な異質性が認められた。出版バイアスは確認されなかった。年齢別フレイル有病率は、65~69歳1.9%、70~74歳3.8%、75~79歳10.0%、80~84歳20.4%、85歳以上35.1%であり、男女別では女性8.1%、男性7.6%であった。
  4. 4)結論
    この研究で、日本の地域在住の高齢者の全体的なフレイルの有病率が7.4%であることを示した。年齢層別分析は、日本の高齢者において70年代後半より前はフレイルではないが、その後の年齢層は他の国の高齢者よりも虚弱であることを示唆した。これらの調査結果は、日本のフレイル研究に関与するすべての関係者において基本となる重要な情報を提供する。
2. Discussion points
  1. (1) 緒言においてフレイルは健康長寿に向け介入すべきターゲットであると述べられているが、フレイルの人だけに着目するのはハイリスクアプローチ的ではないだろうか。メタボリックシンドロームに着目するように、フレイルに着目した介入では、対象者は高齢者のみとなってしまうが、フレイルが作られるのは恐らく高齢前期からであり、やはりポピュレーションアプローチの手法こそ考えるべきかもしれない。しかし、フレイルの有病率を見積もることができたのは本研究の最大の強みだろう。
  2. (2) 対象とした研究のフィールドは、日本の本州をまんべんなく網羅しているが北海道や沖縄などの気候や文化が異なる地域が含まれていなかった。これでは日本全体のフレイルを把握したとは言い難い。ただし、その地域をテーマにした研究がなかったことが予想されるため、今後はこのような地域でのフレイル研究が必要であると考えられる。
  3. (3) 対象とする研究を選択する際に、1058件もの研究がタイトルと抄録の審査だけで除外されている。研究を絞り込みすぎていないか判断するためにも除外条件をより明確に論述しておくべきだろう。
  4. (4) システマティックレビューを行ったのは筆頭著者のみのように読める。当該レビューを行うためのPRISMA声明には再現性の担保が必要と指摘されている。複数人数でのレビューが必要だったのではないだろうか。
  5. (5) 年齢と性別によって層化したメタアナリシスを行った際に、各研究の著者から追加のデータを取得したと述べられているが、そのデータが何なのか明記されていない。システマティックレビューした文献内に記載のない追加のデータを取得したのであれば、どんな目的があり、どのように利用したのかを論述しておくべきだろう。

令和元年11月12日実施

Remote Recall of Childhood Height, Weight, and Body Build by Elderly Subjects
成人を対象とした小児期の身長・体重・身体体格の記憶

著者:Aviva Must, Walter C. Willett, and William H. Dietz
出典:American Journal of Epidemiology Vol. 138, No. 1.56-64.1993
担当:Haga C

背景

これまでにも、かなり以前の身長・体重・身体体格の記憶については、1,988人を追跡したBoston-based Third Harvard Growth Studyの一部として検討されてきた。その結果、約50%は自身の体格を75%タイル以上とみなし、残る50%は25から50%タイルの間にあると回答したことが分かった。

方法

本研究は71から76歳の181人に高校の時の身長と体重をたずね、5, 10, 15, 20のときの体格に最も近い画像を選んでもらった。その面接結果を、小児期と青年期に測定したものと比較した。

結果

高校生のころの体重について、青年期に痩せていた男性は過大評価し(思い出しによる平均値と計測値の差は2.5kgで、95%信頼区間[CI]は0.78-4.3)、青年期に肥満であった女性は過小評価していた(思い出しによる平均値と計測値の差は-2.3kg;95%CI:-4.8 to 0.21)。思い出しの値と実測BMI値間のピアソンの粗相関係数は、男子の5歳児の係数0.36であったことを除き、すべての性・年代で0.53から0.75であった。現在のBMIで調整したものは、青年期の係数において、若干減少させただけであった。青年期の肥満分類は思い出しによる体重と体格から得られた指標に基づいていたが、それらは37~57%の感度と98から100%の特異度であった。

結論

これらの結果は、身長・体重・体格についての長期的な記憶が現在の体重の有用な情報になりうることを示している。

Discussion Points
  1. (1) 体格についてのリコールバイアスを調べた研究。感度は低めだが、これだけの特異度が認められることは大きなインパクト。ただし、限界としても記述されていることだが、小児期に調査研究に参加したことで、記憶が正しくあった可能性や肥満型の体系の人に偏ったサンプルでもあり、過度に記憶を重用することは危険でもあるだろう。
  2. (2) 日本のみが、毎年、ほぼ全児童・生徒に体格調査していることは、大きなアドバンテージ。来年からPHR制度も始まる。小児期から成人期までの客観的なデータが扱えることを活かした研究が、これから大量に実施されることが期待される。

令和元年10月08日実施

主題:Predictors of participation in preventive health examinations in Austria
(オーストリアにおける予防健康診査参加の予測因子)

著者:Sophie Brunner-Ziegler, Anita Rieder, Katharina Viktoria Stein, Renate Koppensteiner, Kathryn Hoffmann & Thomas Ernst Dorner
出典:BMC Public Health, volume 13, Article number: 1138 (2013)
担当者:Maho Okumoto

1. Abstract
  1. 1)目的
    予防的健康診査(以下、健診)受診の推奨間隔を遵守することに関する予測因子を探ることである。↘
  2. 2)デザイン:
    クロスセクショナル研究
  3. 3)セッティング:
    オーストリア全土
  4. 4)データソース:
    オーストリアの健康インタビュー調査データベース(AT-HIS)2006–07
  5. 5)対象者:
    データベースには合計25,130人の候補者のうちの15,474人の15歳以上被験者の最終サンプルを分析に含み、回答率は63.1%であった。本研究では、その既存データから20歳以上の被験者のみを抽出しみ、最終サンプルは6,982人の男性と7,487人の女性で構成した。
  6. 6)データ収集・解析方法
    過去3年間の健診への参加を、従属変数として使用し、社会人口統計学的および健康関連の特性を独立変数として、多変量ロジスティック回帰分析を行った。
  7. 7)結果
    過去3年間に男性の41.6%と女性の41.8%が予防健康診査に参加したことを示した。40歳以上の被験者に対する多変量解析の結果は、高学歴、高収入、、オーストラリアで出生することが健診受診の可能性を有意に高めた。さらに、慢性疾患は受診率を高めていた(男性ではOR:1.21、CI: 1.07-1.36、女性ではOR:1.19、CI: 1.06〜1.33)。
  8. 8)結論
    一般的なオーストリア人の健康診査の受診率は比較的高いが、サブグループにおいては受診率に差があった。健診は、社会経済的地位が低く、移民の背景があり、健康である若い年齢の人々の間で増加しなければならない。
2. Discussion points
  1. (1) 背景について
    背景の部分にオーストリアにおける当該健診の詳細、つまり受診推奨間隔が実際にどのくらいの期間なのか、健診の内容(2日に分けているのが分かるが、2日目が結果を説明する保健指導の日だとするなら、どのくらい後に実施しているのか、など)の説明が足りない。国際誌に掲載する論文であればなおさら、背景は他国の人がみてもわかるように書くことが望ましいだろう。また、背景において受診推奨間隔が何年ごとかの説明がないため、3年の受診を従属変数とした根拠も不明である。
  2. (2) データ収集方法・解析方法について
    データは既存データベースから基準(年齢)を満たすものを抽出しているが、欠損値の扱いについて不明。450もの質問項目があったと推察されるが、面接調査とはいえこれだけの対象者に全てを聞き取りできているのか、また実際そのようなことができるのか疑問が残る(対面依頼のアンケート調査ではないのか?)。
    また、解析方法について、主とする仮説が不明であり、健診受診の関連因子としてすべての因子を同列に扱っている。多変量解析に全ての因子を一度に投入していることは、最高到達教育歴や収入のように、説明変数同士が強く相関している可能性が高く、多重共線性の問題を生じているのではないか。
  3. (3) 研究仮説・結果・考察について
    研究仮説につながる記載がなく、多数の説明変数を投入しているがために、最終的に何が結果としていえたのかわかりにくい。また、考察においては、関連があったと考えられる変数すべてにおいて、変数ごとに考察をしていることで、因子間の構造が見えにくい。母集団となるオーストリアの社会的状況に合わせ、移民対策としての教育制度の充実が訴えたい、などという道筋を考えた上で、因子構造を仮説として立てて、それを検証する方法がよかったのではないだろうか。

令和元年9月12日実施

主題:Association between participation in the Families First Home Visiting programme and First Nations families’ public health outcomes in Manitoba, Canada : a retrospective cohort study using linked administrative data
(FFHVへの参加とカナダのマニトバ州における先住民族家族の公衆衛生上の効果との関連:リンクされた管理データを使用した後ろ向きコホート研究)

著者:Jennifer E Enns, et al.
出典:BMJ Open 030386 on 28 June 2019,1-9
担当者:Yokomizo A

1. Abstract
  1. 1)目的
    マニトバ州の家族に家庭訪問事業を提供するFFHVプログラムが、多様な子育ての課題に直面している先住民族の家族に対し公衆衛生の効果があるかどうかを検討する。
  2. 2)研究デザインと方法
    人口ベースの管理データを使用した後ろ向きコホート研究
    2003年~2009年にマニトバ州で生まれた先住民族の子どものいる家族(N=4010)と同様のリスクをもつ未登録家族について、FFHVの効果を比較した。FFHVを利用した未就学児のいる先住民族家族とそれ以外の家庭において、地域社会の資源との結びつきを検討することで、マニトバ州の公衆衛生上の効果を評価する。
  3. 3)結果
    FFHVの効果として、FFHV利用者は1歳児と2歳児の小児ワクチン接種率が高いこと、地域の支援プログラムへの参加率が高いことが明らかとなったが、5歳児の発達には、違いがみられなかった。
  4. 4)結論
    FFHVは、先住民族の小児予防接種率と子育て支援グループ等への参加率の増加に関連していることが分かった。またFFHVの対象であるが、利用しなかった家族も、プログラムへの参加を推奨できれば恩恵を受ける可能性があることが示唆された。
2. Discussion points
  1. 1)マニトバ州の先住民族の状況や背景について、もう少し丁寧に説明があれば、なぜFFHVの効果を先住民族に当てはめて考える必要性があるのかが、もっと分かりやすくなるのではないか。FFHVプログラムの説明も少なく、何が効果の有無に関連したのかが判断できない。効果をもたらしたプログラム内容の特徴について具体的な記載があると本結果を臨床に活用しやすくなるのではないか。
  2. 2)研究デザインが適切であったか疑問が残る。既存のデータを傾向スコアで分析することでこれだけのことが比較できるということが本研究の強みであることは分かるが、筆者も指摘するように当プログラムを受けない集団に対しては、別のアプローチが必要になるだろう。現場へのより効果的な活用を考えるのであれば実際にFFHVを介入研究として実施するとか、比較対象を一般住民と先住民族としたり、コミュニティサポートを利用した/しない群で比較したりするなど、工夫ができたのではないか。
  3. 3)評価指標を3つ(小児ワクチン接種率、地域支援とのつながり、5歳児の発達状況)あげているが、妥当であるかどうか。この3つにした理由について明記すべきではないか。

令和元年7月11日実施

主題:Family income inequalities and trajectories through childhood and self-harm and violence in young adults: a population-based, nested case-control study
小児期の世帯収入の不平等とその推移、および若年成人期の自傷行為と暴力:ポピュレーションを基盤としたコホート内症例対照研究

著者:Pearl Mok, et al.
出典:Lancet Public Health, 2018; 3: e498-507
担当者:Haga C

1. Abstract
  1. (1)目的
    小児期の貧困は、後の、自己や他者への暴力のリスクを上げることに繋がるが、両親の社会経済状況の変化がどのようにリスクを修飾するのかについては不明である。そのため、小児期の両親の収入の推移と若年成人期の自傷行為および傷害事件のリスクについて調査した。
  2. (2)デザイン
    ネスティッド症例対照研究(デンマークの出生コホートで症例対照研究を行った)
  3. (3)データソース
    デンマークの国民登録データ
  4. (4)対象者
    1982年1月1日から2000年12月31日までに、デンマークにて出生した市民データの中から、15から33歳までの間に、最初の自傷行為により病院で治療を受けたもしくは他人に外傷を負わせ有罪判決を初めて受けた経験を有する者をケースとし、年齢と性でマッチさせ、1ケースあたり25人をランダムにコントロールとして選んだ。
  5. (5)変数の測定
    ・両親の収入状況は子どもの出生時、5歳、10歳、15歳で評価した。
    ・共変量として、両親の年齢、きょうだい(子ども)の数、両親のメンタルヘルス、両親の学歴を考慮した。
  6. (6)解析方法
    条件付きロジスティック回帰分析により罹患率比(IRRs)を推定した。年齢、性別、暦年を固定の調整因子として、上記共変量を付加的に調整因子として考慮した。
  7. (7)結果
    病院で治療を受けた治療歴をもつ子ども2万1267人を検出し、彼らに53万1675人のコントロールとマッチさせた。また、傷害罪で有罪判決となった子ども2万3724人を検出し、それに59万3100人をコントロールとして対応させた。その結果、両親の収入と2つのアウトカムのリスクの間に、反比例の関連が認められた。貧しい環境で済む時間が長くなればなるほど、自傷他害のリスクは高くなり、裕福な状況で過ごす時間が長くなれば、反対の現象が認められた。また、その関連は自傷行為よりも他害行為に対して強かった。最も裕福な家庭で生まれ、それを維持できた子どもに比べ、その他全ての収入推移のパターンで、2つのアウトカムのリスク上昇が認められた。最小五分位の経済状況を維持した子どもは自傷行為においても(IRR: 7.2)他害行為においても(IRR: 13.0)最もリスクが高かった。これらのリスク状況は、共変量により調整後、減弱したが、基本的には残っていた。出生時の経済状況がどうであれ、経済推移が上昇傾向にある子どもは下降傾向にある子どもと比べてリスクを減少と関連した。
  8. (8)結論
    両親の収入は、測定できない家族性の社会統計的な多くの指標の代わりとなる。不平等の原因と取り組み、経済状況を上昇させることに関連する心理社会的、社会文化的な挑戦が自傷他害となる行為のリスクを潜在的に改善するだろう。
2. Discussion points
  1. (1) アウトカムについて
    非行や暴力のリスクを健康課題としてとらえたところがユニーク。子どもの貧困対策の必要性を訴えるパワーもあり、客観的に判定ができる指標である。ただ、暴力とされた内容に窃盗から殺人まで含まれてしまうため、その程度を同様に捉えてよいものか疑問が残る。
  2. (2)データ収集について
    33歳まで追跡した理由が「研究デザインによる」とあるのみで不明。2000年で研究を終わらせる必要があったのか?30代を超えてもなおyoung adultとしてよい範疇なのか疑問。犯罪を起こす頻度が年齢により差があったと推測され、それを統計的に調整する変数としているが、あえて多くするために年齢幅を広くしたと誤解を与えないよう、明記してもよかったのではないか。
    また、年齢について、「出生した日付(Date of birth)」としているが、これを参照してどのようにマッチングしたのか不明。同じ日付だとするならを果たしてそれほど同じ出生日の人間がいるのか?共変量として親の健康状態を入れたのは、収入に影響を与えるためにも重要だが、精神障害のみに着目したのはいかがなものか。身体障害についても考慮する必要は無かったか。
    コントロール群をケースより多くとる意義については理解できるが、なぜケース1人に対し25人集めた根拠が不明。
    とはいえ、アウトカム同様、母集団をデータとしている強みがある。曝露因子である経済状況も全国の収入分布をもとに評価することで、より一般的な評価ができたと思われる。またデータベースが個人の経済収支をより細かに表すことのできるものから構成されており、リーズナブル。日本においては同レベルのデータを各市町村レベルで収集できるか?さらに、学歴が既存のデータベースから得られるのは、日本には無いすごいシステム。

令和元年6月13日実施

主題:Is the Families First Home Visiting Program Effective in Reducing Child Maltreatment and Improving Child Development?
乳児期(生後1歳未満)の訪問プログラム(FFHV)は児童虐待の減少と子どもの発達改善に効果があるか?

著者:Mariette J. Chartier, Marni D Brownell, Michael Lsaac, et al.
出典:Child Maltreatment 2017,vol.22(2) 121-131
担当者:Yokomizo A

1. Abstract
  1. (1)目的
    本研究の目的は、乳児期(生後1歳未満)の訪問プログラム(FFHV)における児童虐待の減少と子どもの発達改善の効果を検討することである。
  2. (2)研究デザインと方法
    観察研究(後ろ向きコホート研究)。カナダのマニトバ州保健政策センターのマニトバ人口調査リポジトリに掲載されている2003-2009年に生まれた子どものうち、虐待リスクのある家庭にいる子ども16,153人を対象とした。保健師による2段階の訪問調査(虐待リスク項目による調査と親のリスク要因に関する調査)により選別し、最終的に4,562人のプログラム群と5,184人の非プログラム群をサンプルとした。1歳、2歳、3歳の時点での虐待による保護措置率、及び3歳時点での虐待に関連した入院率を比較した。また5歳児の発達調査では、1,491人のプログラム群と1,688人のプログラム群において、EDIや就学時の教育データベースにより発達の改善を検討した。
  3. (3)結果
    FFHVの効果として、児童虐待による保護措置の減少や虐待に関連した障害による入院の減少と、入学時の子どもの発達が改善されたことが明らかになった。幼稚園(5歳)児の発達には違いがみられなかった。
  4. (4)結論
    FFHVは児童虐待による保護措置の減少や虐待に関連した障害による入院が減少に効果があるため、児童虐待を減少させるためにもリスクのある家庭に提供されるべきである。また入学時の子どもの発達を強化させるためのプログラム強化が今後必要である。
2. Discussion points
  1. (1) Introductionが長いわりに、本来説明をしっかりすべきであるFFHVのプログラム内容の記載が不十分である。Introductionへの記載内容を精査し、方法や結果の表に紙面を提供したほうがよかったのではないか。
  2. (2)FFHVの対象選定条件が不明確であり、どのような根拠で基準を設定したのか分かりにくい。例えば保健師による2段階調査で使用されるKempe Family Stress Checklistでは25点をカットオフとしているが、妥当なのかどうか等、研究中にさまざまな調査尺度を用いているがどれも全体的に説明が少ない。
  3. (3)親のもつリスク要因から、背景を知ることはできるが、親子の基本属性について記載がないため、そもそもどのような集団なのか分かりにくい。既存データを活用した限界があるのかもしれないが、平均年齢や経済状況など基本的な情報として明記すべきではないだろうか。

令和元年5月9日実施

主題:Effect of parental type 2 diabetes on offspring with type 1 diabetes.
(2型糖尿病の両親がその子孫の1型糖尿病に与える影響)

著者:LENA M. THORN., CAROL FORSBLOM ., KUSTAA HIETALA., et al.
出典:International Journal of Epidemiology/Health Services Research — Open Access Journal
担当者:Omoto K

1. Abstract
  1. (1)目的
    本研究の目的は、両親の2型糖尿病の病歴、代謝の状態、メタボリックシンドロームおよび糖尿病合併症の存在と、1型糖尿病の間にある関係性について検討するものである。
  2. (2)研究デザインと方法
    本研究は横断研究であり、フィンランド糖尿病性腎症(Finn Diane)試験から1860人の1型糖尿病の患者を対象としたものである。(2型糖尿病の病歴がない両親を持つ620名の患者と1240名の年齢調整した患者)親の病歴に関する情報は、規格化されたアンケートによって、1型糖尿病の子供から入手した。
  3. (3)結果
    1型糖尿病か、2型糖尿病陽性の病歴を持つ両親を持つ患者は、メタボリックシンドロームの有病率が高く、(44 vs. 38%; P _ 0.013)インスリン抵抗性に関連する代謝状況(高BMI、大きい腹囲、トリグリセライド、A1C、体重1kgあたりのインスリン投与量)が高く、そして後から1型糖尿病が発症するという傾向があることが分かった。(17.2_9.2 vs. 16.1_8.9 years; P_0.008) これは公的に入手可能な糖尿病管理と合併症の試験データセットから確認された。また対照的に、血圧と、糖尿病合併症、HLA遺伝子配列とは関係性が観察されなかった。2型糖尿病の家族歴は1型糖尿病の発症の年齢(オッズ比 1.02 [95%CI 1.01–1.03])と、BMI(1.07 [1.02–1.12])、トリグリセライド(1.18 [1.03–1.35])、体重1kgあたりのインスリン投与量(1.63 [1.04 –2.54])と独立して関係していた。
  4. (4)結論
    2型糖尿病の家族歴は、1型糖尿病の発症が遅くなること、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性と関連した代謝状態との関係性が認められた。
2. Discussion points
  1. (1) 集団を選定する際には適格基準と除外基準を明確にすべきだが、この研究では対象集団から、除外した際の条件が明確になっていない。全てのデータを利用していないことは、結果から分かるが、それが欠損値だからなのか、何らかの条件の下、除外したのかを判断することができず、疑問が残る。
  2. (2)研究で対象者の情報源として利用しているFinn Dianeデータベースに関して、簡単な説明だけで詳細な情報が記載されていない。フィンランド全体を対象にしたものなのか、一部の地域に限定したデータベースなのか不明である。またそれを推測しようにも、研究背景にフィンランドにおける1型糖尿病の有病率や患者数などが記載されておらず、難しい。どのようなデータベースなのかを明記すべきではないだろうか。
  3. (3)この研究はcross-sectional study design(横断研究)であるため、フォローアップ期間は存在しないが、リクルート期間の記載はあるべきだろう。どのくらいの期間をかけて対象者を集めたのか記載することで、時代効果(period effect)など、より詳細に研究の状況が検討できる。

平成31年1月10日実施

Higher experience of caries and lower income trajectory influence the quality of restorations: A multilevel analysis in a birth cohort

著者: Kaue Collares, Niek J. Opdam, Karen G. Peres, Macro A. Peres, Bernardo L. Horta, Flavio F. Demarco, Marcos B. Correa
出典:Journal of Dentistry 68 (2018) 79-84

1. Abstract
  1. 1.1 Purpose of the study
    Direct restorations of posterior teeth are widely used for supporting dental structure and it is also recognized that restoration failures are common among the patients. Researchers aimed to identify the association between failure of restorations and individual and clinical factors experienced through the life.
  2. 1.2 Design
    Birth cohort study.
  3. 1.3 Setting
    Pelotas city, Brazil.
  4. 1.4 Target population
    31 years old people who were originally involved in birth cohort study.
  5. 1.5 Data collection and analysis method
    Cohort was started in 1982 and participants were followed up at the age of 15, 24, and 30 years old. There were 888 people whom were examined for quality of restorations. Those people were collected from the Oral Health Study (2006 & 2013). For analyzing the association of quality of restorations and other factors, Poisson multilevel regression models were utilized. Variables were organized in two levels: tooth level (level 1) and individual level (level 2).
  6. 1.6 Result
    People with lower family income had a two times higher prevalence of unsatisfactory restorations than individuals with a higher income. Untreated caries and presence of periodontal disease were also associated with unsatisfactory restorations. Three or more tooth surfaces involved in restoration procedures showed five times higher rate of failure than one surface involved.
  7. 1.7 Conclusion
    Understanding the role of patient-related factors is important for more personalized oral health care.
2. Discussion points
  1. 2.1 Researchers clearly stated the problem statement and purpose of the study in introduction section. However, there was no hypothesis for prior prediction of association between dental restorations and other socioeconomic factors. In addition, a short description regarding the assessment method of dental experience was not completely described and it was difficult to comprehend for non-expert readers.
  2. 2.2 Background information regarding the prevalence of dental caries, oral health problems, and usage of dental restorations of Brazilian people were inadequate. Using public or private dental services is costly and it was not clear whether people were supported by insurance system or not.
  3. 2.3 Despite the researchers used birth cohort data, they did not identify the age of developing dental caries, and starting point of using dental restorations or dental services. Moreover, it was not clear the reason why participants were followed up at the age of 15, 24, and 30 years old.
  4. 2.4 Data collecting methods for finalized participants were not comprehensively described. However, assessing Kappa scale for inter-examiner reliability was a good practice and researchers repeated 15% of interviews for assuring the quality of the study.
  5. 2.5 It would be more informative if data presentation regarding the trajectories of models for presence of caries throughout the life span provided the patterns of data changes.
  6. 2.6 Researchers completely described the influence of tooth-level and individual-level variables on quality of restorations with tables. However, it was difficult to draw a conclusion for the main outcome of the study.
  7. 2.7 Researchers discussed the output of current study with the results of previous research and it could add new knowledge to pay attention to the influence of individual- and tooth-level variables on quality of restorations. Furthermore, it is clear that the role of dentists is important for quality dental services.

平成30年11月9日実施

Effectiveness of a childhood obesity prevention programme delivered through schools, targeting 6 and 7 year olds: cluster randomised controlled trial (WAVES study) 6-7歳の子どもを対象とした小児肥満予防プログラムの効果:クラスターランダム化比較試験

著者:Peymane Adab, et al.
出典:BMJ
担当者:Haga C

1. Abstract
  1. (1) 目的
    小児肥満予防のための学校と家庭を基盤とした健康生活プログラム(WAVES介入)の効果を評価すること
  2. (2) デザイン
    クラスターランダム化比較試験
  3. (3) セッティング
    英国West Midlandsの小学校
  4. (4) 対象者
     研究センターから 35マイル(約56.4km)以内にある全ての小学校から無作為に抽出された200校で、少数民族についてはオーバーサンプリングを実施した。これらの学校は無作為に参加を依頼された。適格と判断された144校の中から今回の標的となったのは54校であった。5から6歳の1年生1467人をケース(対照群を28校778人)としてベースライン時を測定した後、ブロック均衡化アルゴリズムを用いてランダム化した。追跡中53校が残り、最初の追跡期間(15か月後)は1287人(87.7%)、次の追跡期間(30か月後)は1169人(79.7%)の生徒が追跡された。
  5. (5) 介入方法
     12か月の介入により、健康的な食事と身体活動を促進した。その介入は、毎日30分間課内で身体活動を行う機会を付与したり、6週間にわたりAston Villa football clubと共同したプログラムによる双方向の技術練習を行ったり、6か月ごとに郵送して家庭での身体活動の機会を意識づけたり、健康な料理の調理法について家族単位のワークショップを学期ごとに開催したりすることであった。
  6. (6) 結果の測定
     プライマリアウトカムは、プロトコールで決定し、割付を盲検化した上で、BMIのzスコアの15か月と30か月の違いとした。セカンダリアウトカムは他の身体的データ、栄養、身体活動、心理学的データ、その後39か月後のBMIzスコアの変化とした。
  7. (7) 結果
    1. (1) プライマリアウトカムについて
      • 対象者の推移
        ベースライン    >54校1392人(対照群732人)
        15か月後(第1期) >53校1249人(対照群675人)
        30か月後(第二期)>53校1145人(対照群621人)
      • BMIzスコア平均値
         15か月時点:ベースライン値を調整したモデルにおいて対照群と比べて平均値は―0.075
        (-0.183から0.033 p=0.18)。
        30か月後:平均値は―0.027(−0.137 to 0.083, P=0.63).
        どちらにおいても、その他の身体状況、食事、身体活動、心理学的指標について有意な差は
        認められなかった(有害事象についても同様)。
  8. (8) 結論
     プライマリアウトカムの分析は本介入が子どものBMIzスコアや肥満予防に有意な差をもたらす効果を与えないことを示した。多様な部局や環境面を考慮せずに学校だけで介入しても、小児肥満の流行に影響を与えるのは難しいのかもしれない。
2. Discussion points
  1. (1) 3回目の調査の際、脱落が非常に多い。当初から3回の測定をすることを伝えていたのか疑問。980人のうち、これだけの脱落は見込まれていなかったはずであり、それが結果に影響したのではないか。その理由と記載が本論文にも必要。
  2. (2) プログラムは学校と家庭向けの内容を包括しており、詳細に設定されているようにも見えるが、一方で担当教員が自由にできる裁量も残しており、介入の量・質が均一だったとはいいがたい。それを主観的なプロセス評価したのでは、不足するのではないか。
  3. (3) なぜ、プライマリとセカンダリを変更したのか、その詳細が本論文に記述されておらず、別論文参照となっている。一言、説明をいれておくべきではないのか?

平成30年10月14日実施

Income inequality and health: multilevel analysis of Chilean communities
(収入格差と健康:チリにおけるマルチレベル分析)

Authors: S V Subramanian, I Delgado, L Jadue, J Vega, I Kawachi
Journal: Evidence Based Public Health Policy and Practice (2003) 57: 844–848
担当者:Su Su Maw

1. Abstract
  1. (1) Purpose of the study
    Many studies emphasized on income inequality and health outcome of people who are more egalitarian than the US. This study aimed to examine the income inequality and self rated poor health in Chilean people.
  2. (2) Design
    Cross-sectional multilevel analysis
  3. (3) Setting
    285 communities nested within 13 regions of Chile
  4. (4) Target population
    18 years and older 98 344 people nested within 61 978 households
  5. (5) Data collection and analysis method
    Data were collected from 2000 National Socioeconomic Characterization Survey (CASEN) of Chile. Outcome variable (health status) was dichotomized as 'good' and 'poor'. Predictor variables were leveled as 'individual level exposure (ILE)' , 'household level exposure (HLE)', 'community level exposure (CLE).' ILE included age, sex, ethnicity, marital status, education, employment status, and type of health insurance. HLE included income and residential setting (rural/urban). CLE included Gini coefficient and median income.
  6. (6) Result
    In comparison with very high income people, the observation of poor health was highest in very poor people (OR: 2.94) followed by poor (OR: 2.77), low income (OR: 2.06), middle income (OR: 1.73), and high income (1.38). Community income equality was significant (OR: 1.22).
  7. (7) Conclusion
    Communities with unequal income were more associated with reporting of poor health.
2. Discussion points
  1. (1) Researchers clearly stated their aim and specific hypotheses of study. They provided sufficient background to develop current study and described some controversies of previous studies. However, there was insufficiency in presenting demographic and socioeconomic information about Chile.
  2. (2) Analyzing existing data was an efficient practice for developing cost-effective research. Large numbers of data can be collected through national survey. As a result, participant number of this study was too big and researchers did not explain why they took such large number and how they chose specific communities and regions.
  3. (3) Using categorical outcomes for health status questionnaire allowed the participants to reply conveniently. Gini coefficients was also appropriate for analyzing income and economic status.
  4. (4) Researchers used MLwiN software program for their analysis. It is a specially designed analytical tool for multilevel modeling.
  5. (5) Main outcomes of study were completely described and illustrated by tables and figures. However, describing participants' characteristics was not informative and it is difficult to know the sociodemographic status of Chilean people who participated in this study.
  6. (6) Researchers aimed to analyze the cross level interaction effect between household income groups and community income inequality. Because of insignificant data, they did not provide results of analysis. Showing complete outputs of all analysis would provide an opportunity for consideration of possible reasons for other researchers of same interests.
  7. (7) Household income and community income did not equally contributed to poor health status. Researchers claimed that it was similar to output of previous study. Reasons and logical process of such finding was not sufficiently discussed. Despite this, an argument to pay more attention to community variables for reducing public health problems was impressive even though community determinants produced less odd ratios than individual determinants.
  8. (8) Researchers completely declared limitations of study. Cross-sectional nature of study could not draw causal inferences. Moreover, they did not assess region variation and it could affect on result of the study. Using self rated questionnaire could produce different individual perception of health status. All limitations were considerable factors for future studies.
  9. (9) Researchers suggested to test income inequality hypothesis in other Latin American and Asian countries. It was a good advice for future studies.

平成30年9月13日実施

Income inequality and health: multilevel analysis of Chilean communities
(収入格差と健康:チリにおけるマルチレベル分析)

Authors: S V Subramanian, I Delgado, L Jadue, J Vega, I Kawachi
Journal: Evidence Based Public Health Policy and Practice (2003) 57: 844-848
担当者:Su Su Maw

1. Abstract
  1. (1) Purpose of the study
    Many studies emphasized on income inequality and health outcome of people who are more egalitarian than the US. This study aimed to examine the income inequality and self rated poor health in Chilean people.
  2. (2) Design
    Cross-sectional multilevel analysis
  3. (3) Setting
    285 communities nested within 13 regions of Chile
  4. (4) Target population
    18 years and older 98 344 people nested within 61 978 households
  5. (5) Data collection and analysis method
    Data were collected from 2000 National Socioeconomic Characterization Survey (CASEN) of Chile. Outcome variable (health status) was dichotomized as 'good' and 'poor'. Predictor variables were leveled as 'individual level exposure (ILE)' , 'household level exposure (HLE)', 'community level exposure (CLE).' ILE included age, sex, ethnicity, marital status, education, employment status, and type of health insurance. HLE included income and residential setting (rural/urban). CLE included Gini coefficient and median income.
  6. (6) Result
    In comparison with very high income people, the observation of poor health was highest in very poor people (OR: 2.94) followed by poor (OR: 2.77), low income (OR: 2.06), middle income (OR: 1.73), and high income (1.38). Community income equality was significant (OR: 1.22).
  7. (7) Conclusion
    Communities with unequal income were more associated with reporting of poor health.
2. Discussion points
  1. (1) Researchers clearly stated their aim and specific hypotheses of study. They provided sufficient background to develop current study and described some controversies of previous studies. However, there was insufficiency in presenting demographic and socioeconomic information about Chile.
  2. (2) Analyzing existing data was an efficient practice for developing cost-effective research. Large numbers of data can be collected through national survey. As a result, participant number of this study was too big and researchers did not explain why they took such large number and how they chose specific communities and regions.
  3. (3) Using categorical outcomes for health status questionnaire allowed the participants to reply conveniently. Gini coefficients was also appropriate for analyzing income and economic status.
  4. (4) Researchers used MLwiN software program for their analysis. It is a specially designed analytical tool for multilevel modeling.
  5. (5) Main outcomes of study were completely described and illustrated by tables and figures. However, describing participants' characteristics was not informative and it is difficult to know the sociodemographic status of Chilean people who participated in this study.
  6. (6) Researchers aimed to analyze the cross level interaction effect between household income groups and community income inequality. Because of insignificant data, they did not provide results of analysis. Showing complete outputs of all analysis would provide an opportunity for consideration of possible reasons for other researchers of same interests.
  7. (7) Household income and community income did not equally contributed to poor health status. Researchers claimed that it was similar to output of previous study. Reasons and logical process of such finding was not sufficiently discussed. Despite this, an argument to pay more attention to community variables for reducing public health problems was impressive even though community determinants produced less odd ratios than individual determinants.
  8. (8) Researchers completely declared limitations of study. Cross-sectional nature of study could not draw causal inferences. Moreover, they did not assess region variation and it could affect on result of the study. Using self rated questionnaire could produce different individual perception of health status. All limitations were considerable factors for future studies.
  9. (9) Researchers suggested to test income inequality hypothesis in other Latin American and Asian countries. It was a good advice for future studies.

平成30年1月12日実施

Social interaction and cognitive decline: Results of a 7-year community intervention(社会的相互作用と認知機能低下:7年間の地域介入の結果)

著者:Hiroyuki Hikichi, Katsunori Kondo, Tokunori Takeda, Ichiro Kawachi
出典:Alzheimer’s& Dementia: Translational Research & Clinical Interventions3(2017)23-32
担当者:山村 容加

研究目的

社会のつながりが認知機能低下のリスクをより低くするということを証明した介入研究はほとんどない。私たちは、認知機能障害の発生に対して社会参加を促進するコミュニティ介入プログラムの予防効果を前向きに検討した。

デザイン

コホート研究

セッティング

愛知県 武豊町

対象者

2006年6月時点で65歳以上の(武豊町に)地域在住の2793人の回答者

データ収集・解析方法

武豊町では2010年5月から2013年までに地域をベースとした10の「サロン」が発足した。回答者の2013年までの「サロン」へ参加した頻度、2010年から2013年までの健康状態と行動の追跡調査、2007年5月から2014年までの認知機能障害発症の追跡調査を行い、周辺構造モデルを利用し、コミュニティ介入プログラムの効果を評価した。

結果

周辺構造モデルで調節したサロンへの参加の頻度は認知機能低下に保護的に関連があるとされた。(オッズ比=0.73、95%CI=0.54−0.99)また、75歳以上では認知症機能低下のリスクを増加させ(オッズ比=3.25、95%CI=1.85−5.69)、歩行時間30分以上40分以下は認知機能低下リスクを減少させた。(オッズ比=0.69、95%CI=0.55−0.87)

結論

本研究では、サロンへの参加頻度が認知機能低下に関連があることが示された。そして、社会参加、軽い運動、手作業などの認知活動を奨励するコミュニティサロンへの参加が認知低下予防となるかもしれないことを示している。将来的な研究では、認知機能を維持する効果的な活動を調査する必要があるだろう。

ディスカッション内容
  • 研究対象者の回答率は2次調査で78.0%、3次調査で90.1%と継続して高く、サンプルバイアスを軽減できたのではないか。
  • サロンへの「参加者」を1年間に4回以上参加した者と定義しているが、この根拠が不明である。「参加者」がサロンへ参加した時期や頻度に差があると、認知機能への影響にも差が生じるのではないか(例えば、サロンに通い始めた当初は頻回に通っていたが、調査後半では通っていなかったとなると、サロンの効果とは考えにくいのではないか)。また、1年に4回、つまり3ヶ月に1回のサロン参加よりも、それ以上の頻度で行っているもの(例えば通院頻度でも1ヶ月に1度程度と推測できる)が影響を与えている可能性も否定できず、この定義でサロンに参加したとして良いのか疑問に残る。
  • 低所得者の高齢者がサロンに参加する傾向と示されているが、係数の値が0.04と小さく、低所得の高齢者がサロン参加しやすいと言い切れるか疑問である。
  • 筆者も指摘しているが、基本チェックリストのような簡易検査によって認知機能を評価していることは、本研究の大きな限界であり、効果を評価するためには専門医による判定が欠かせないのではないか。
  • 健康な高齢者がサロンに参加する傾向がある、という選択的バイアスをマルコフ連鎖モンテカルロ法によって調整したことは本研究の強みである。
  • 本研究は、年齢とともにサロンで受けるケアが変化していくことを見越し、時変交絡として周辺構造モデルで調整した。これにより、サロン参加が認知機能維持に役立っている可能性を示唆した貴重な研究である。

平成29年12月4日実施

Allergic profiles of mothers and fathers in the Japan Environment and Children’s Study (JECS): a nationwide birth cohort Study(全国規模の出生時コホートである、子どもの健康と環境に関する全国調査(JECS:エコチル調査)における母親および父親のアレルギーの性質)

著者:Yamamoto-Hanada Kiwako, et al.
出典:World Allergy Organization Journal
担当者:Y

研究の意義

JECSは両親からの(先天的な)要因と後天的な環境要因の暴露が子どもの健康にどのように影響を与えるかを評価するものである。

研究目的

JECSのコホートにおいて、両親が持つアレルギーの性質を評価する。

デザイン

前向きコホート研究

セッティング

日本の15地域(全国を網羅するもの)

対象者

2011年1月から2014年3月に母子健康手帳を配布された妊婦およびそのパートナー。(Abstractには記載なし)

データ収集・解析方法

JECS(子どもの健康と環境に関する全国調査)のデータを用いた。アレルギーに関する情報収集は、妊娠初期の両親あるいはどちらかの親の自記式質問紙を使用した。両親あるいはどちらかの親から採血し、血清IgE値を測定した。

結果

99,013人の母親のアレルギーの割合は、喘息が10.9%、アレルギー性鼻炎(花粉症)が36.0%、アトピー性皮膚炎が15.7%、食物アレルギーが4.8%であった。49,991人の父親のアレルギーの割合は、喘息が10.8%、アレルギー性鼻炎(花粉症)が30.3%、アトピー性皮膚炎が11.2%、食物アレルギーが3.3%であった。73.9%の母親は、何らかのアレルゲンに対する特異的IgEを持っており、最も割合が高かったのは、スギ(花粉)であった。

結論

この研究は日本の一般集団における妊娠期の両親のアレルギー性疾患とアレルゲンの過敏性についてまとめた最初の疫学的な報告である。

ディスカッション内容
  • 日本全国を網羅することを目的に、15の地域で実施されたが、15カ所の選択は適切であったか。それぞれの地域を代表する場所が選択されたのか疑問が残る。(都道府県単位のところもあれば、甲信あるいは南九州+沖縄といった地域もある。また京都、大阪、兵庫など狭い範囲で複数の県が選択されている地域もある。)
  • 対象者の人種については触れられていないが、問題ないか。日本に在住する日本人以外も対象になっているのかどうか。含まれている場合には遺伝的な背景も生活背景もことなる対象が含まれることになる。
  • 脱落あるいは欠損値についての記述がない。本文を読むと、結果に含まれていない対象者がいることは明かだが、その理由がわからない。
  • 現在の日本人のアレルギー性疾患の生涯有病率についてまとまっており、有益な情報が含まれている論文である。

平成29年10月30日実施

Allergic diseases in children with attention deficit hyperactivity disorder : a systematic review and meta-analysis(注意欠陥多動性障害を持つ子どものアレルギー疾患:システマティックレビューおよびメタアナリシス)

著者:Celine Miyazaki, et al.
出典:BMC Psychiatry
担当者:Y

研究の意義

ADHDの子どもにアレルギー疾患の兆候が見られるという報告は度々なされているが、ADHDとアレルギー疾患の関係を指示する根拠は一貫しておらず、系統的なレビューもまだ行われていない。

研究目的

ADHDの子どもとアレルギー疾患の関係について調査した研究を集め、アセスメントすることである。

デザイン

システマティックレビューおよびメタアナリシス

セッティング

(MEDLINE、EMBASE、Cochrane library、CINAHLのデータベース上の文献)

対象

18歳以下のADHDの子ども

データ収集・解析方法

データベースから包含基準を満たす研究を選択する。2人の著者がそれぞれに選択した研究の質についてアセスメントツールを使用して調べる。

結果

5件(3件はケースコントロール、2件は横断研究)の研究をシステマティックレビューに含めた。5件から得られた主要な情報は、バイアスのリスクが低いあるいははっきりしないものであった。喘息についてはADHDの子どもがコントロール群より関連のある割合が高かったが、食物アレルギーについては関連を指摘できなった。全体の効果量を見積もる際には、潜在的な統計学的異質性が顕著であったにもかかわらず、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎を経験する割合についてはADHDの子どもがわずかに高かった。

結論

ADHDを持つ子どもは喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎を併存しやすいことが明らかになった。ADHDを持つ子どものアレルギー性疾患の管理法を含む介入は有益であろう。

ディスカッション内容
  • システマティックレビュー(メタアナリシス)を実施する際には、厳密な手順を経ることが必要である。対象から外した文献についてもリストを作成し、なぜ対象とならなかったのかを明記しておく。(提出を求められる可能性がある。)
  • サンプルバイアスがかかっている可能性があるのではないか。各研究の対象者はADHDの子どもが多い場所からリクルートされている可能性があり、本研究の結果をそのまま、子ども全体におけるADHDの子どもの割合と考えるのは危険である。
  • システマティックレビューおよびメタアナリシスの過程について丁寧に記述されており、システマティックレビューおよびメタアナリシスをどのように進めていけばよいかを知りたい際に参考にできる論文である。

平成29年10月2日実施

Impact of Systemic Steroids on Posttonsillectomy Bleeding Analysis of 61430 Patients Using a National Inpatient Database in Japan(日本における入院患者データベースを用いた扁桃切除術後の出血に対するステロイド投与の影響の大きさの分析)

著者:Suzuki S., Yasunaga H., Matsui H., et al.
出典:JAMA Otolaryngol Head & Neck Surgery
担当者:Y

研究の意義

扁桃切除術後の出血は珍しいが、出血を生じると生命を脅かす可能性がある。ステロイド投与と術後出血との関係には未だ議論の余地がある。

研究目的

ステロイドの経静脈的投与が、再手術を要する扁桃切除術の術後出血に与える影響の大きさについて調べる。

デザイン

後ろ向きコホート研究

セッティング

日本の718カ所の病院

対象者

2007年から2013年の間に扁桃切除術を受けた61,430人

データ収集・解析方法

DPC(診断群分類包括評価)のデータを用いた。全身麻酔下での止血術を主要な結果として測定した。患者を15歳より上(31,934人)と15歳以下(29,496人)で分類し、それぞれについてステロイド使用の有無で分類した。多変量ロジスティクス回帰分析を用いて、患者特性について調整し、ステロイドの使用と扁桃切除術後の出血について分析した。

結果

子どもにおいては、ステロイドを使用した群が使用しなかった群に比べて有意に再手術をした割合が高かったが、大人においては有意差はなかった。再手術は術後7日目に最も多く実施されていた。患者特性を調整した結果、子どもでステロイドを使用した場合、再手術の割合が高くなることが明らかになった。

結論

子どもに扁桃切除術の当日にステロイドを経静脈的に投与することは、再手術を要する重篤な出血をもたらす独立したリスク因子である。

ディスカッション内容
  • 対象者を2群に分けているが、分類方法は妥当であるのか。0歳児と15歳が同じ群に分類されることになり、様々な要因が異なると予想されるが分析が適切に行えるのか疑問である。
  • ステロイドの投与と術後出血(再手術)の関係について調査した研究であるにもかかわらず、そのメカニズムについて記述が一切ない。どのようなことが考えられるのか、可能性を示すべきではないか。
  • DPCには悉皆性はなく、外来のデータも含まれない。また他の病院に入院した場合のフォローもできないため、長期の研究では使用することが困難である。DPCの特徴を理解して、研究に用いることが必要である。
  • コンパクトに必要な情報がまとまっており、内容が理解しやすい論文である。

平成29年10月23日実施

Identifying developmental trajectories of body mass index in childhood using latent class growth (mixture) modelling: associations with dietary, sedentary and physical activity behaviors: a longitudinal study
(潜在的成長(混合)モデルによるBMIトラジェクトリの同定:食事、座りっぱなしの生活、身体活動との関連に着目した縦断研究)

著者:Maaike Koning, Trynke Hoekstra, Elske de Jong, et al.
出典:BMC Public Health (2016) 16:1128l
担当者:芳我

目的

 これまで、食事や運動/座りっぱなしの生活と肥満の関連について調べてきた多くの疫学研究は1時点のBMIに着目して検討してきた。しかし、最近の統計的な技術の進歩が小児期のBMIの推移における潜在的な相違性を研究することを可能にする。私たちの目的は、潜在的成長混合モデル(LCGMM)の技術を用いて、小児期のBMIトラジェクトリ(推移)を同定することと、これらの分類パターンと食事、座りっぱなしの生活、身体活動との関係を検討することである。

デザイン

コホート研究

セッティング

オランダ ズヴォレ市

対象者

4から12歳にある613人の子ども

データ収集・解析方法

 体格推移の縦断データは、対象者のBMIの標準偏差値(SDS)から得た。2006、2009、2012年に子どもの健康に関連する行動についての情報を保護者から得て、身長と体重は測定した。(体格推移)と行動の関連はロジスティック回帰分析にて検討した。

結果

 2つのBMI SDS推移を検出した。それらは減少するパターン(416人68%)と増加するパターン(197人32%)であった。増加するものは、一方と比較して社会経済状況(SES)が低く、非白人であった。母親の過体重はベースライン時と6年後ともに、SDSが増加するものと関連していた。
また、増加するものは、次のような生活習慣と関連していた。砂糖入りの飲み物(1日3杯超)、団体スポーツへの参加(週1時間未満)、TV試聴(1日2時間超)であり、エンドポイントでの団体スポーツへの参加が唯一、有意な結果であった。

結論

 本結果は、若年期に健康的な生活習慣を送ることの大切さを示しており、母親のBMIが過体重となるリスク因子でることも示した。BMIの推移における異質性や行動に関連した修正可能な健康との関連は、特に、非白人や母親が過体重の子どもにとって小児期早期のハイリスク行動に焦点を当てた予防に役に立つだろう。

ディスカッション内容
  • 本研究の対象者について、6年追跡したら7歳の子どもは13歳になる。この著者は2009年と2012年で計測できたこどもが最も高率だと述べていたが、2012年時点で13歳になる7歳の子どもの多くが脱落したのではないのか?なぜ、6歳までにしなかったのか?
  • 男女の体格推移をまとめて見ているが、他国を見る限り男女で差があるし、思春期の成長についても、男女で出現時期に差があることは自明の理とされているだろう。サンプル数が少ないにしても、まとめて分析してよいと判断した根拠がよく分からない。
  • 著者は、縦断データを分析することにこだわっていたはずだが、体格以外の変数について、経時的な変化を検討せず、よってその影響も考慮されていない。3時点でデータ収集したとしながら、ベースラインとエンドポイントの2時点を使用しており、縦断データであることの意義が十分に伝わってこないのは残念。
  • 研究対象者が4072人から分析対象となった613人へと15%となってしまったのがもったいない。しかも、回答に欠損があったケースは非白人であること、SES得点が低く経済状況の芳しくない世帯であることが分かっており、これがサンプルバイアスを生じている可能性が大きい。そこの検討は十分とはいいがたい。

平成29年10月10日実施

Intake of vitamin and mineral supplements and longitudinal association with HbA1c levels in the general non-diabetic population—results from the MONICA/ KORA S3/F3 study

Authors: Schwab S., Zierer A., Heier M., et al.
Source: PLOS ONE
Name:SU SU MAW

Aim

The aim of the study is to investigate the longitudinal association between the use of 11 vitamins and minerals (vitamins E, vitamin C, vitamin D, vitamin B1, folic acid, carotenoids, calcium, magnesium, zinc, iron, and selenium) and change in HbA1c levels over 10 years in non-diabetic individuals taken from the general population.

Design

Cohort design.

Setting

Augsburg city, Germany.

Target population

Target population were participants of two surveys named 'Monitoring of Trends and Determinants in Cardiovascular Diseases' (MONICA) Augsburg S3 survey (1994/95) and 'Cooperative Health Research in the Region of Augsburg' (KORA) F3 (2004/05). Baseline data were collected from MONICA and follow up data were drawn from KORA surveys.

Data collection/ Data analysis

Personal interview was done to check the vitamin and mineral intake from supplements and medications. Moreover, participants were requested to show the product packages of preparations that had been ingested during the last 7 days prior to the examination. Generalized estimating equation models were used to observe the intra-individual correlation.

Result

Among the various kinds of supplements, carotenoids only showed the significantly relationship with HbA1c level after 10 years. There was an inverse association of carotenoids and HbA1c level among never smokers.

Conclusion

Further studies were recommended for assuring the association between carotenoid intake and change in HbA1c level.

Discussion points
  • Researchers collected the data from two population-based surveys in one of the cities of Germany. However, they did not give the reason why they chose that city. The specific characteristics of city dwellers may affect on the generalizability of this research.
  • There was a large difference of participants between baseline and follow-up period. Researchers did not acknowledge completely why that difference happened.
  • Checking the packages of nutrient supplements is a good point of this study to confirm the actual intake of nutrients. However, researchers did not assess the duration of taking those supplements. And why the participants had been taking those medicines was not clear.
  • • Researchers regarded the status of diabetes history of participants' parents as 'yes' category although they could not get the right information. It would make the number of participants who have diabetes history increased.
  • • Even though the number of participants were higher for outcome measures (4447 for baseline assessment and 2774 for follow-up assessment), participants who took nutrient supplements were remarkably lower. That condition made the result insignificant.

平成29年9月25日実施

A 10-Year Follow-Up Study of Social Ties and Functional Health among the Old: The AGES Project
(高齢者の社会的な繋がりと機能的健康に関する10年間の追跡研究;AGESプロジェクト)

著者:Murata C., Saito T., Tsuji T., et al.
出典:International Journal of Environmental Research and Public Health — Open Access Journal
担当者:芳我

目的

アジアの国においては、家族の繋がりは重要だと考えられているが、そのような繋がりがない高齢者に何が起きているのかは不明である。それを調査するために、筆者らは愛知老年学的評価研究(AGES)の縦断データを利用した。

デザイン

コホート研究

セッティング

愛知県

対象者

愛知県内の10市町村に住む生活機能が自立している高齢者14,088人を2003年から2013年まで追跡した。

データ収集・解析方法

社会的繋がりは家族、親戚、友人、近隣住民との助け合い(交流状況)について尋ねて評価した。コックス比例ハザード比を用い、年齢、健康状況、居住形態などで調整して、社会的繋がりと機能障害の始まった時期を検討した。

結果

男性において、同居家族との繋がり(ハザード比0.81)、友達や近隣住民とのつながり(0.85)がそれぞれ独立に生活機能の低下を防いでいた。女性においては、友人や近隣住民との繋がりが男性の場合と比べて強く健康に影響を与えていた(ハザード比0.89)。

結論

友人や近隣住民との社会的繋がりが、家族のサポートとは無関係に、生活機能を低下させるリスクを軽減させるという事実は、特に家族の繋がりが欠けた高齢者に対し社会的繋がりを促進する重要性を裏付ける。

ディスカッション内容
  • 本研究では、「Social Ties」と健康の関連を検討することが主たる目的だが、これまでの先行研究が健康との関連を明らかにしてきた「Social Networks」や「Social Support」との違いが今ひとつ分からない。用語の定義を明確にすべきではないか。
  • アウトカム、健康障害が発生したかどうかを判定する指標が要介護認定であることは、厳密に評価されているという利点の一方で、申請しなければ判定されないという欠点も有している。どのくらいの人が申請すべき状態を申請していないかが不明のため、その影響を評価することは難しいが、何らかのバイアスを生じている可能性がないか。
  • 筆者らも指摘しているが、説明変数であるSocial Tiesの測定方法がラフな印象がいなめない。また、共変量とした健康状態の質問についても、治療や受診の有無で検討しているが、「Functiional Health」と表現した状態がこれで評価されるのかが不明。これも用語の定義が必要なのかもしれないが、高齢者の健康状態を見るのであれば、先行研究で検討されている主観的健康観でもよかったのではないか。
  • 別居家族・親戚との関係を見るのに、住居の距離は重要な因子ではないか。それを検討できていないのは残念。
  • 論文の書き方が端的で必要な情報がすっきりとまとめられて書かれている。参考にしたい論文である。

平成28年7月22日実施

Effect of folic acid supplementation on homocysteine concentration and association with training in handball players
ホモシステイン濃度に対する葉酸サプリメントの効果とハンドボール選手のトレーニングとの関連
前向き(コホート)研究

著者:Jorge Molina-López1, José M Molina2, Luís J Chirosa2†, Daniela I Florea1†,
Laura Sáez1† and Elena Planells1
出典:Molina-López et al. Journal of the International Society of Sports Nutrition 2013, 10:10
担当者:岩崎

背景

激しい身体活動は、ホモシステインと直接的に関連するビタミンの一つである葉酸の状態を変える可能性がある。この栄養素の変化は、心血管疾患の危険因子である。ハンドボール選手は、貧弱な食事習慣のため、栄養素欠乏の危険がある集団である。

目的

本研究の目的は、ハイレベルなハンドボールチームの主要栄養素と葉酸の栄養状態を評価し、葉酸サプリメント補充での栄養介入と教育の効果を明らかにすることである。

デザイン

ハイレベルハンドボール選手の14名全員が、トレーニング時間の記録とトレーニング強度((RHR)の三つのレベルに応じた<60%、60%-80%、> 80%)、および4ヶ月の研修期間中の主観的運動強度(RPE)をモニターした。栄養学的、研究的、身体活動的変数をベースライン(0週)、200μgの葉酸(1日あたりの推奨摂取量50%)を栄養補給した2ヶ月後(8週)、補充なしの2か月後(16週)で記録した。
介入前後のトレーニング負荷を比較し、ホモシステインの血漿濃度の変化を分析した。

結果

二変量解析は、8週でのホモシステイン濃度(R = -0.84)と葉酸の間に有意な負の相関(P < 0.01)を示した。
高いトレーニング負荷の蓄積に続く高ホモシステイン血症の結果、ホモシステイン濃度の有意な変化(P < 0.05)を示した。
16週で、ハイレベルの選手における有酸素運動は、ホモシステイン濃度とRHR <60%のトレーニング時間の間に有意な負の相関(P < 0.01)が見られたことから、ホモシステイン濃度の急激な変化を避け、心血管疾患の危険性を低減させるかもしれないことを示した。

結論

葉酸の状態を記録することや直接ホモシステイン代謝に影響を与える要因についての統合された観察や教育が、ハンドボールのスポーツの実践のために必要とされている。
葉酸サプリメントは、競技中の運動に関連する心血管事故につながる変化から選手を保護することができる。

キーワード

栄養状態、スポーツ、葉酸、サプリメント、ホモシステイン

ディスカッション内容
  • 今まで同じような研究がすでにされているが、ハンドボールというスポーツに限定して同じ研究を行った理由がわかりにくい。
  • ハンドボールにおいての研究がないということだけで選んでいるが本当に必要かどうか。
  • サンプルが14名だったために、運動負荷、食事摂取量を厳密に管理できたというのは、評価できるが、メインの結果に期待する有意差が得られておらず、これは過小評価(βエラー)に繋がっている可能性が高い。
  • 図1の3つ目のグラフについて、有意差がでていないのに、葉酸補給の方が高かったものが、運動強度によって低くなったと言ってよいのか。
  • 図2の2つ目のグラフについては、曲線的な関連が視覚的に捉えられるために、直線で相関を表したことの妥当性が疑われる。
  • RHRは、resting heart rateの略であれば、安静時の心拍数のことである。
  • スポーツ選手の総エネルギー・主要栄養素・微量栄養素の摂取不足や栄養バランス不良がこれまで示されているのであれば、ハンドボールの摂取の現状を明らかにするよりも、栄養改善を目的とした研究の方が適切だったのではないか。

平成28年7月8日実施

Dietary pattern trajectories during 15 years of follow-up and HbA1c,
Insulin resistance, and Diabetes prevalence among Chinese adults

Authors: Caroline Batis, Michelle A. Mendez, Daniela Sotres-Alvarez,
Penny Gordon-Larsen, and Barry Popkin
Source: Journal of Epidemiology and Community Health
Name:SU SU MAW

Background

Prevalence of Diabetes among Chinese adults has increased during this years. Diet is important for prevention efforts and dietary patterns is probably useful for estimated effects of single nutrients or foods. Previous studies indicated health outcomes by diet from only one point in time. There is no illustration to capture longitudinal changes in dietary patterns. Therefore, this study aimed to represent long-term exposure to a dietary pattern.

Method

This study is an ongoing longitudinal survey that is performing in nine provinces of China. The data of current study was collected for the year of 1991 to 2009. Blood samples were collected for the first time in 2009. Age group of subjects were restricted between 18 to 65 years old. The finalised sample size was 4,096. Among them, 40% completed all six waves of dietary data and 17% completed only three waves. Latent class trajectory analysis (LCTA) was used to groups subjects with similar dietary pattern score trajectories.

Result

Researchers identified five classes of subjects with similar dietary pattern score trajectories from 1991 to 2006. Those five dietary patterns were directly associated with HbA1c, independently of the increased energy intake and increased BMI. While the other classes were more stable, class 1 and 2 changed over time. Those two classes showed an increase in unhealthy foods, for example, wheat noodles, wheat buns and breads, and deep-fried wheat products. Moreover, consumption of health foods such as fresh legumes, poultry and game, and fish and seafood was declined in this classes. Class 3, 4 and 5 had stable scores over time.

Conclusion

Consumption of both healthy and unhealthy foods were similar and as a result the balance between the positive and the negative weights were remained stable over time. Class 5 had the healthiest score and class 1 had the unhealthiest score. People in healthiest class had higher education, income, and urbanicity index and lower physical activity and BMI.

Discussion during the journal club reading
  • As the dietary pattern of people depends largely on their working situation, researchers should collect the data regarding occupational status. Additionally, seasonal difference could make the people's dietary intake difference.
  • Researchers excluded the participants who had been diagnosed with Diabetes and presence of pregnancy status. However, other disease conditions might make changes in eating habits.
  • The collection of diet patterns for only three days is not enough to show the significant correlation between HbA1c level and consumption of foods. Previous empirical evidence should support the reason why they collect diet pattern for only three days. Moreover, exploration of result by combining recent data and longitudinal cohort data could not provide significant evidence.
  • Recognition of life style covariates was a good point of this study and researchers showed the descriptive characteristics of data completely. However, illustration of dietary pattern score and Mean HbA1c in figure was complicated. Researchers categorized dietary pattern in positive and negative scores and their association with healthy and unhealthy foods made the reader confusion.
  • Researchers described there was a strong regional difference among the various dietary patterns, but they did not provide any clues regarding regional characteristics.

平成28年6月23日実施

Nutritional Assessment in Critically Ill Patients
重症患者の栄養アセスメント
前向き(コホート)研究

著者:Najmeh Hejazi1, PhD; Zohreh Mazloom1, PhD; Farid Zand2,
MD; Abbas Rezaianzadeh3, MD, MPH, PhD; Afshin Amini4,5, MD
出典:IJMS Vol 41, No 3, May 2016
担当者:岩崎

背景

栄養不良は、重症患者の生存の重要な因子である。本研究の目的は、集中治療塩津への入退院時に患者の栄養状態を詳細に評価することである。

方法

最終的に、イランのシラーズにある8つの集中治療室に入退院した125人の患者を入院時から追跡した。患者の栄養状態は、主観的包括的アセスメント(SGA)身体計測、生化学的指標、および、身体組成指標を使用して評価した。食事の処方と摂取量もまた評価した。

結果

栄養不良の有病率がSGAで見ると退院時が(58.62%)で、入院時の(28.8%)と比べて有意に増加した(P<0.001)。
患者の体重、上腕中心部の周囲径、上腕筋肉の周囲、上腕三頭筋皮下脂肪厚、およびふくらはぎ周囲は、全て同様に入院時と退院時で有意に減少した(P<0.001)。また、除脂肪体重と体細胞組織も有意に減少した(P<0.001)。
生化学的な指標は、マグネシウム以外には顕著な変化を示さなかったが、マグネシウムは、有意に減少した(P=0.013)。
有意な負の相関関係は、退院日の栄養不良と身体計測の間で観察された。
有意な正の相関は経腸栄養なしの日数との間で観察された。
ICU入室から経腸栄養の開始の日数が遅れること、ICU滞在の長さ、エネルギーとタンパク質摂取量は基準食よりも有意に少ない(26.26パーセントと26.48%それぞれ)ことなどが栄養不良に関連していた。

結論

退院日の栄養不良は、主観的包括的アセスメントによるICUでの患者に増加した。身体計測は、生化学検査とともに私たちの重症患者の栄養成果のより良い予測因子であった。
キーワード●栄養失調●重症●集中ケアユニット、●身体計測●栄養アセスメント

ディスカッション内容
  • 集中治療室に入っている重症患者の栄養アセスメントについて研究しているものは今までにない。日本においても明らかにされていない部分であると考えられるため、貴重な研究である。
  • SGAは、評価項目の一つは体重であるが、体重の測定方法がはっきりしておらず、推測した体重では、不確かではないかと思われる。
  • 対象から外しているHIV、B型肝炎については、その理由が明確にされていない。
  • 対象者の男女を一緒にして、分析しているが、男女比が2:1と大きく差がある。男女では代謝等が大きく違うため、男女比によって、結果に差がでるかもしれない。交絡因子として制御されているのかが明記されていないのは問題。
  • 代謝更新の考えられる疾患を除外するとした場合は、トラウマなども含まれるのではないかと考えられる。
  • SAGは、世界的な基準であるとされているが、その評価基準が書かれていない。
  • 検定は行われているが、その検定方法が各結果のところで書かれていない。図表含め、どのデータがどのような検定方法を用いて算出されたのかを明記すべき。
  • 統計検定については、何と何を検定したのか、詳細がわからない書き方になっている。
  • 集中治療室を退室する時に栄養のバランスが崩れている場合が有意に多くなっているが、今後はどこでどのように治療していくのかが、明らかにされていない。
  • SGAは世界基準であるが、評価基準をはっきりとせずにSGAを使っていくことが、どこまで有効であるのかわりにくい。

平成28年6月3日実施

Sleep duration and the risk of mortality from stroke in Japan: The Takayama cohort study

Authors:Toshiaki Kawachi, Keiko Wada, Kozue Nakamura, Michiko Tsui, Takashi Tamura,
Kie Konishi, and Chisato Nagata
Source:Journal of Epidemiology, 2016;26(3):123-130
Name:SU SU MAW

Background

The incidence of stroke is high in Japan and it causes many to become bedridden.Because it generates a high burden and societal cost, effective primary preventive strategies are needed. Although the studies related to the association between sleep duration and cardiovascular disease have been already existed, association of sleep duration and total stroke and subtypes of stroke is rare. Therefore, this study aimed to investigate the association between sleep duration and total stroke and subtypes of stroke.

Method

This study was population based cohort study conducted in Takayama City, Gifu, Japan. In 1992, 14,427 men and 17,125 women completed a self-administered baseline questionnaire that included questions on demographic characteristics, smoking and drinking habits, diet, exercise, and medical and reproductive histories. The outcome of follow-up period was assessed in 2008. All deaths and their causes were identified from death certificates and coded according to the International Classification of Diseases. The participation rate was 85.3%.

Result

Sleep duration of ≥ 9 hr was significantly associated with an increased risk of mortality from total stroke and ischemic stroke whereas short sleep duration (≤ 6 h of sleep) was associated with a decreased risk of mortality from total stroke. The trend was significant in both genders. Sensitivity analysis reported that the risk increases in mortality from total stroke and ischemic stroke for ≥ 9 hr of sleep were somewhat attenuated when study subjects were restricted to those with better health.

Conclusion

This population-based prospective cohort study observed the association of long sleep duration (≥ 9 hr per day) and the increased risk of mortality from total stroke and ischemic stroke in both genders. The result suggested that longer sleep durations are associated with increased mortality from total stroke and ischemic stroke. Additionally, researchers predicted that short sleep duration was associated with decreased risk of mortality from hemorrhagic stroke in men.

Discussion during the journal club reading
  • Statistical description for large number of subjects and high participation rate became the strengths of this study. However, data collection regarding the specific characteristics of sleep quality are limited.
  • Quality of sleep depends on the type of work and researchers should collect the data regarding the working status of participants. Sleep duration should have specified adequately by measuring objectively.
  • The age group of participants was wide (35 yr to 97 yr) and it could be a confounding factor for the results.
  • To determine the risk of stroke, this study would be more reliable by measuring blood pressure as an indicator.
  • Researchers used Cox regression analysis model and multivariate model for data handling. These approach were suitable for this type of study. However, assessing the primary data source was limited because of the unavailable online resources. Clear statement of how many participants were eligible for this study, the number who did participate, and the numbers of refusal and reasons for refusal are not accessible.
  • Using the multipurpose data from one cohort study makes the study result less directed to specific objective.

平成28年5月20日実施

Relationships Among Injury and Disordered Eating, Menstrual Dysfunction, and Low Bone Mineral Density in High School Athletes: A Prospective Study
高校のスポーツ選手における不規則な食事・月経機能障害・低骨密度と負傷の関係性:前向き(コホート)研究

著者:Mitchell J. Rauh, PhD, MPH, PT, FACSM; Jeanne F. Nichols, PhD, FACSM;
Michelle T. Barrack, PhD
出典:Journal of Athletic Training 2010;45(3):243–252
担当者:岩崎

背景

大学生と大人のスポーツクラブの集団について、これまでの著者は、2007年アメリカスポーツ医学声明で定義されたように、女性アスリートの不規則な食事・月経機能障害・低骨密度における負傷の危険性の増加と関係性について報告していた。

目的

高校でスポーツをしている女子における、不規則な食事、月経機能障害および低骨密度と筋骨格負傷の間の関係を調べること。

デザイン

前向きコホート研究

研究フィールド

サンプルは、2003~2004年度の間に南カリフォルニアで、8つの学校対抗で競っている女性アスリート163人である。各参加者はそれぞれのスポーツのシーズンを通して、筋骨格負傷の発生が続いていた。

主なアウトカム指標

日常的な負傷報告を収集したデータ、不規則な食態度や行動を評価した摂食障害の検査のアンケート、骨密度の二重エネルギーX線吸収法による測定、除脂肪組織量、身体測定値、月経歴のアンケート、人口統計学的特性

結果

61人(37.4%)の選手が90回の筋骨格負傷を被った。
私たちの骨密度Zスコア(≦-1SD)のモデルでは、経年間の希発月経/無月経の歴史と低骨密度は、対抗スポーツシーズン中の筋骨格負傷の発生と関連があった。
私たちの骨密度Zスコア(≦-2SDs)のモデルでは、不規則な食事、経年間の希発月経/無月経の歴史、低骨密度は、筋骨格負傷の発生と関連があった。

結論

これらの所見は、不規則な食事、希発月経/無月経、低骨密度が、対象の女子高選手における筋骨格負傷と関連していたことを示している。
不規則な食事や月経機能不全を特定し、運動選手における骨量を増加するように設計されたプログラムは、筋骨格負傷を軽減することができる。

ディスカッション内容
  • サンプルの選び方の妥当性については、南カリフォルニアの高校6校を選んでいるが、この高校がアメリカを代表しているといえるのか、また南カリフォルニアの全域から選んでいるのかなどが不明である。
  • 年齢の設定については、初潮を経ていない場合もあったり、骨の成長期であったりするため、13~18歳では個人差が大きいのではないかと考えられる。2~3年ごとの年齢で分類して、分析を行った方が良いのではないか。
  • サンプルの人数については、ランダムに170人に絞り込んでいるが、最初に測定していた589人すべてを対象として、年齢で分類しても良かったのではないか。
  • 今までの研究では、負傷の部位ごとには分類されていなかったが、この研究では負傷の部位ごとに着目している点が意義深いと考えられる。
  • 交絡要因として設定しているのは、年代順、初潮を迎えた年齢、除脂肪組織量、スポーツの種類などであり、多くの交絡要因が考慮されている。
  • 交絡要因についは、共分散分析を使用して調整している。
  • 交絡要因の設定数が多く、調整方法を明らかにしているところは、とても望ましいが、メインのアウトカムを複数にとっており、因果関係の向きが不明瞭。負傷をメインアウトカムとし、その他の因子を説明変数として一貫して扱った方が分かりやすいのではないか。

平成28年5月6日実施

次の文献をクリティークしました。

自閉症をもつ学童期前の子どもへの共同注視に焦点をあてたランダム化臨床試験(RCT)

著者:Anette Kaale, Lars Smith, and Eili Sponheim
出典:Journal of Child Psychology and Psychiatry, 2012, 53:1, 97-105

ディスカッション内容
  • RCTで実施した貴重な研究。しかし、「ブロックシステム」と呼ばれる方法(介入・対照を4通りのパターン)で割り付けしているが、61人しかいない対象者をこの方法で割り付けた結果、介入34、対照27となり、その差が7人と、このサンプルサイズでは比較的大きな差を生んでいるように思われる。この影響がサンプルバイアスを生じている可能性を検討する必要はないか。
  • サンプルサイズの見積もりを「priori power analysis」という方法で先行研究での結果を基に.算出しているが、他の疫学的な方法で検討するとさらなるサンプルサイズが必要と見積もることもできる。事後テストによる、本研究結果の妥当性の検証も必要か?
  • 本研究は、「Norwegian community mental health clinics」という専門機関で実施されている。介入者は全て、療育の専門家であると推測できるが、介入方法が全く同様であるとは言い切れず、介入者個々の性質が影響しないとは限らない。また、ここでなされている介入は個別介入であり、このような方法をどこでも実施できるとは限らない。このプログラムを一般化することは難しいのではないか。
  • 本研究は、男女混合で、分析しているが、ASDの罹患率・有病率に性差があるように、 ここで介入効果としている共同注視の能力に性差がないとは言い切れないのではないか? 交絡要因として、コントロールする必要があると思われる。
  • 介入効果を判定するのに、誰が何名で判定したのかが明記されていない。研究に関係しない、第三者として結果を判定する必要があるだろう。
  • 本研究結果は、JAのみ、改善が認められたため、JAについてのみ検討されているが、 なぜJE(Joint Engagement)で改善が認められなかったのかをディスカッションで述べる必要があるのではないか。

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