岡山大学 大学院保健学研究科 芳我研究室 岡山大学 大学院保健学研究科 芳我研究室 岡山大学 大学院保健学研究科 芳我研究室

研究活動紹介

日本公衆衛生看護学会にて発表してきました

日本公衆衛生看護学会にて、2020年1月11日 午後2時より
 「小児期の適切な体格維持に関連する要因の検討」と題した研究成果を発表してきました。これは、山梨県の特定市に2001年度から2005年度に出生した全ての小児のデータから得られた体格推移に関連する親の養育に関わる因子を検討した研究です。
 生活習慣病は小児期から取り組む必要があり、その取組には親や保護者の協力が欠かせません。中学1年時点ではあるのですが、当時、保護者が子どもの体格について、「やせ・普通・肥満」のどれに当てはまるかを質問紙にて調査したものと子どもの1歳半から14歳までの体格推移パターンとの関連を検討しました。
 優秀演題賞をいただくことができ、詳細については、論文として発表する予定です。また、完成しましたら、ご報告いたします。

日本公衆衛生看護学会発表1

ポスターの前で、大学時代の同級生鈴木先生と。

日本公衆衛生看護学会発表2

閉会式にて、学術集会長野村先生に表彰をしていただきました。

日本公衆衛生看護学会発表3

その他、受賞された皆様です。

学術集会広報のフェイスブックにも掲載していただきました。
https://www.facebook.com/jaofphn/photos/a.100532377991300/173473887363815/?type=3

学会発表行ってきました(2019年10月23日~25日)

 上記日程で開催された第78回日本公衆衛生学会総会に参加してきました。会場は高知市文化プラザかるぽーと他(高知県高知市)でした。
 今回は23日に「中年期にある特定健康診査未受診者の特徴 第一報:心身の健康状況に着目して」「中年期にある特定健康診査未受診者の特徴 第二報:就業・経済状況に着目して」と赤磐市の管理栄養士内田さんと一緒に二演題続けて報告させていただきました。

学会発表(2019年10月23日~25日)1

(写真:発表ポスターの前で)

 本研究は、特定健診受診率向上のため、未受診者の特徴を把握し今後の対策を検討しようとするものです。特に、これまでアンケート法などでは把握できなかったと思しき対象者にアプローチしました。また、学歴や職業なども聞き取っているところが強みです。
 特定健診を題材にしたテーマの研究者がたくさんいらっしゃったため、こちらの演題群は若干、他より多かったので、9番目、10番目の発表となった私たちの頃には疲労気味かと思われましたが、聴衆の皆さんからは、積極的なご意見・ご質問をいただきました。3年間未受診者の方たちに、家庭訪問したことを何より「チャレンジング」と評価いただき、ご質問の多くも、対象者の反応や背景に当たることでした。編集委員の先生からは調査報告として当該学会誌への掲載を推薦していただきました。興味をもっていただけたことは、研究者として何より励みになります。何とか時間を作って投稿しようと思います!

 また、何より学会の楽しみは、他大学にいる研究者の仲間に会えて、刺激をもらうことです。今回は、昨年秋から加わらせていただいている日本当年学的評価研究機構(JAGES)の皆さんの懇親会に参加させていただきました。

学会発表(2019年10月23日~25日)2

中央が代表を務めていらっしゃる近藤克則先生、その右斜め上に博論恩師の近藤尚己先生がいらっしゃいます。
 JAGESは、健康長寿、地域共生社会を目指し、多くの研究成果を産出されている皆さんですが、岡山市においてもSocial Impact Bondという企業の力を活かした健康づくり事業を評価する活動を開始しています。微力ながら、私も研究者の一人として参加させていただいています。今後、こちらでも報告していきたいと思います。

 山梨大学時代の恩師山縣然太郎先生をはじめとする、皆さんにも会えました!

学会発表(2019年10月23日~25日)3

 たくさんのエネルギーとモチベーションをいただきました。また、日々の業務に戻って邁進していきたいと思います。

最近の研究論文のご紹介:小児保健関連研究No.1 母親のネット依存と虐待の認識について

 研究論文「Association between mothers’ problematic Internet use and maternal recognition of child abuse」が国際学術雑誌「Child Abuse & Neglect」において出版されました。島根大学の榊原先生の共同研究者として協力させていただきました。
 この研究は、松江市における乳幼児健診において、待ち時間等にメディア、特にスマホ等の使用が気になる保護者の存在に気付いた保健師の皆様が実態を知りたいと問診票にネット依存尺度を取り入れたことから始まりました。同市では、我が子に対し虐待と思われる行為を行っているかどうかを尋ねています。これに着目し、ネット依存と虐待の認識に関連があるかどうかを検討しました。
 対象としたデータは、2016年度に松江市において4か月、1歳6か月、3歳児健診を受けた親の自記式問診票から取得しました。その結果、回答者は母親が圧倒的に多かったため、本研究においては母親を対象としました。ネット依存の判定は、問診票に採用したYoung氏の「Diagnostic Questionnaire for Internet Addiction(インターネット依存の診断質問票)」から得点化し、5点以上としました。また、虐待の認識については、「自分が我が子を虐待していると時々思うか」を訪ね、「当てはまる」を選択した場合に「虐待の認識有り」としました。虐待の認識の有無を従属変数、ネット依存の有無を独立変数とし、親の年齢・子どもの数・保育所利用の有無・社会的サポートの有無・産後鬱の有無・父母の喫煙歴を調整変数としてロジスティック回帰分析を行いました。
 結果は、単回帰分析において4か月児でオッズ比(OR)9.31(95%信頼区間[CI]:1.13-76.84)、1歳6か月児でOR; 10.27(95%CI; 2.85-36.95)、3歳児でOR; 7.27(95%CI; 1.58-33.39)と全て有意にリスクを上昇させる可能性が示されました。その傾向は、調整変数において調整後も残りました。ただし、信頼区間の幅は広く、誤差を考慮すべき結果であることは否めません。
 結論として、母親がネット依存状態にあることと子を虐待しているかもしれないと認識することに関連があることが示唆されました。しかし、その虐待の有無は、母親の主観的判断であり、その妥当性に疑問が残ります。また、横断研究のため因果の方向性、つまりネットに依存するあまり、ネグレクト状態が生じていることを自覚しているのか、虐待をしてしまう状況から逃れたくてネットに依存する状態が生じているのかについては不明です。今後、さらなる研究が求められます。
 当該論文はOpen Accessで(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0145213419302637?via%3Dihub)からご覧いただけます。

国保委託調査事業:対象者へのお知らせ

市町村国民健康保険が実施する特定健診受診率の向上を目指した方策の検討;
中年期への家庭訪問による潜在的未受診理由の明確化

1.研究の対象
 調査対象者は岡山県内の市町村国民健康保険加入者で40歳以上60歳未満の方のうち、2015年4月~2018年3月の間に一度も市町村国民健康保険が実施する特定健診を受けていない方です。本研究ではこの対象者から得られたデータを分析対象とします。

2.研究目的・方法
 本研究は40歳以上60歳未満の特定健診を受けていない方の特性や特定健診を受けていない理由を明らかにすることを目的とします。
市町村国民健康保険者が実施する家庭訪問調査および電話訪問調査により得られたデータを利用させていただき、特定健診を受けていない理由とそれに関連する要因を検討します。
 研究期間:岡山大学研究倫理審査専門委員会承認後~西暦2022年3月31日

3.研究に用いる情報の種類
A.基本属性
 ①年齢
 ②性別
 ③家族構成
B.最終学歴
C.経済基盤
 ①職業
 ②就業状況
 ③主観的経済状況
D.健康状況
 ①主観的健康観
 ②通院状況
 ③健診受診経験および予定
 ④未受診理由
 ⑤今後の検診に対する希望
E.社会的孤立状況
 ①地域との繋がり
 ②交友関係 

4.外部への試料・情報の提供
 利用させていただくデータは、市町村国民健康保険者より匿名化された状態で電子ファイルにより提供され、すべて数量的に集計、解析が行われます。また、データは匿名化された状態で提供されるため、調査対象者の名前や個人情報が特定・公開されることはありません。
データは研究責任者が施設の規定に従って適切に管理を行い、外部への提供は行いません。

5.研究組織
【研究責任者】
 岡山大学大学院保健学研究科看護学分野 准教授 芳我ちより
【研究分担者】
 岡山大学大学院保健学研究科看護学分野 助教  細井舞子

6.お問い合わせ先
本研究に関するご質問等がございましたら下記の連絡先までお問い合わせください。ご希望があれば研究計画書および関連資料(調査票や集計結果)を閲覧することができますのでお申し出ください。
  〒700-8558 岡山市北区鹿田町二丁目5-1
  岡山大学大学院保健学研究科看護学分野 芳我ちより
  電話およびファックス:086-235-6853

最近の研究論文のご紹介:生活習慣病予防 No.1

 研究論文「Effect of a 2-hour interval between dinner and bedtime on glycated haemoglobin levels in middle-aged and elderly Japanese people: a longitudinal analysis of 3-year health check-up data」が雑誌「BMJ Nutrition, Prevention & Health」において出版されました。
 この研究は、特定健診・保健指導において質問・保健指導項目の一つとなっている夕食後2時間以内の就寝が週3回以上あることが、その後のHbA1cの上昇に影響を与えるかどうかを検討したものです。
 対象者は、2012年に岡山県A市において特定健康診査を受診した40から74歳までの国保被保険者(糖尿病と診断された者を除く)1,573人で、そのうち女性は994人(63.2%)でした。これらの対象者を2014年まで2年間追跡し、追跡率は65.6%でした。全てのデータは国保データベースシステム(KDB)より匿名化したものを入手し、HbA1cの値を従属変数、食後2時間以内の就寝が週3回以上あることを独立変数、どちらかに関連があるとこれまで指摘されてきた、もしくは交絡変数として考えられる年齢、性別、血圧、および脂質・コレステロール・肝機能等の血液データ、喫煙、飲酒、1年に3kg以上の急激な体重増加の有無、朝食欠食等の生活習慣データを共変量として、マルチレベル分析を行いました。
 ベースライン時の状況を男女間で比較したところ、ほとんどの項目において、男性より女性の方が健康的であることを示し、HbA1cの値は経年的に上昇傾向でしたが、顕著な上昇がみられた人は翌年、減少傾向にあることで、平均値は2年目と3年目で大きな差は認められませんでした。
 結論として、夕食後2時間以内の就寝が週3回以上あることは、2年後のHbA1cの値に有意な影響を与えないことを示唆しました。これは、今までの常識を疑う必要性があることを示しており、今後、さらなる研究が求められます。
 当該論文は、Open Accessで(https://nutrition.bmj.com/content/bmjnph/early/2019/01/08/bmjnph-2018-000011.full.pdf)からご覧いただけます。

学会発表行ってきました(平成30年10月24日~26日)

 上記日程で開催された第77回日本公衆衛生学会総会に参加してきました。会場は、ビッグパレットふくしま(福島県郡山市)でした。
 今回は24日に「小中学生の睡眠状況および睡眠負債と体格の関連-第二報.中学生に着目して-」という研究でポスタープレゼンテーションを行い、26日「小中学生の睡眠状況および睡眠負債と体格の関連-第一報. 小学生に着目して―」という研究を口演にて発表し、貴重なご意見等を頂戴しました。

学会発表(平成30年10月24日~26日)1

(写真:博士前期課程院生押目さん)

 第一報と第二報を連題でポスター発表する予定だったのですが、残念ながら、学会事務局の判断で今回のような形式となりました。写真は第一報を報告予定だった院生押目さんです。

学会発表(平成30年10月24日~26日)2

(写真:共同研究者島根大学榊原講師)

 また、島根大学で教鞭を執られている榊原先生は母親のネット使用が乳幼児にどのような影響を与えるかについて研究を進めていらっしゃいます。乳幼児健診データを集積し、コホートデータとして分析するという点で、一緒に勉強しようと平成28年末より共同研究を開始しました。

学会発表(平成30年10月24日~26日)3

 26日に発表した小学生の睡眠負債について、子どもの睡眠であっても、日によって異なるパターンをとるのではないかというご質問を受けました。アクチグラフという測定器を使用するなどして、データを厳密に収集することが望まれますが、コミュニティベースの研究では、なかなかそこまで実施することは難しいのが現状です。

 今後の課題として検討すべき課題をもらいました。

学会発表(平成30年10月24日~26日)4

 また、今回は、座長としての役割もいただきました。広い会場であったこともあり、なかなか意見交換を活発化するのは難しかったですが、多様な研究者の研究課題に触れ、よい経験になりました。
 たくさんの方との交流を通して、多くの刺激をいただきました。また明日から日々の業務に研究にまい進していきます。

最近の研究のご紹介:発達障害 No.4

 研究論文「Effectiveness of cognitive, developmental, and behavioural interventions for Autism Spectrum Disorder in preschool-aged children: A systematic review and meta-analysis」が雑誌「helyon (elsevier)」において出版されました。
 この研究は、幼児期にある自閉症をもつ子どもに対し、どのような支援(介入intervention)に効果が認められるのかをシステマティックレビューとメタアナリシスによって明らかにしたものです。
 対象とした文献は、2001年から15年間に出版された論文で、Web of Science, PsycINFO, CINAHL, Medline, and ERICをデータベースとし、“Autism Spectrum Disorder(自閉症スペクトラム),” “Childhood(小児期),” “Preschool Children(就学前の子ども),” and “Treatment and Education(療育).”をキーワードとして検索しました。検索結果の一致率は、3人の研究者間でKappa係数を算出したところ0.34でした。また、ランダム化比較試験のデータからメタアナリシスを実施しました。
 検出された論文は5,174件で、そのうち746人の子どもを対象とした14文献が該当文献でした。その支援方法は、コミュニケーション、認知行動、親子の関わり、話し言葉、模倣行動、共同注意、信頼関係の構築に着目し、その効果を測定していました。結果、最も効果的・効率的と考えられるのは音楽療法であり、その標準化平均値差(SMD)は0.40から0.62の間にありました。介入の効果は、関わる専門職の技量、期間、介入頻度によって異なることが明らかとなりました。
 結論として、幼児期の介入としては音楽療法が効果的であると考えられます。ただ、研究はまだエビデンスを提供できる段階とはいえず、今後も継続される必要があり、多様な側面から一歩ずつ進めるアプローチが重要であることが分かりました。
 当該論文は、https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2405844018303025からご覧いただけます。

最近の研究のご紹介:発達障害 No.3

 研究「Supporting Children with Developmental Disorders: Difficulties and Future Strategies as Perceived by Japanese Public Health Nurses」を発表しました。
 この研究は、発達障害児の早期発見・療育に関わる市町村保健師がどのような困難を感じているかを明らかにし、今後どのような研修や体制づくりをすればよいかを考察したものです。
 対象は、岡山県内全27市町村保健師の中で研修会参加を希望し、なおかつ調査に同意の得られた方々とし、2016年12月から翌年1月に調査を実施しました。調査内容は現在支援している子どもの属性、発達状況、家族構成、親の精神ストレス状況等とし、研修会にて使用した事例検討フォームにより収集しました。
 その結果、多くの子どもが1歳半健診で支援対象として把握され、その対象児は男児が主であり、調査時における平均年齢は3.2(1.2)でした。出生および発育状況について、特に目立った特徴は認められませんでした。保健師の多くが挙げた課題は「養育者が児の発達上の問題に気づくための支援方法の検討」というものでした。
 保健師の支援技術向上に必要な方策は3つ考察できました。1つは発達障害のアセスメント手法です。自閉症を中心とした発達障害を識別するためには、専門のツールが必要である。M-CHATのようなツールをうまく活用し、家族を中心に保健師が子どもの発達に向き合い、気づく場として活用していく必要があります。次に療育機関への移行時の困難に対し、子どもの成長における臨界期知り、発達を促す遊び・生活を理解し実施するスキルです。養育者なりの子育てを見守ることが子どもにとって不利益と見なされる時には、虐待として対応する必要があるが、そのためには各期の発達状況を適切に判定する力、どのような遊びや刺激が必要なのかという療育に関する知識や技術を習得する機会を確保する必要があります。最後に養育者との関係構築技術である。妊娠を契機とした頻回な家庭訪問を制度化するなどして、保健師と母親が出産前関係を結びやすくする工夫が必要です。また、望まない妊娠を避け、親になる準備を促すことも必要かもしれません。その場合は、思春期教育として学校保健と連携する必要があります。
 以上の報告は、http://crimsonpublishers.com/cojnh/pdf/COJNH.000536.pdfでご覧にいただけます。

学会発表行ってきました(平成29年8月19日~22日)

 上記日程で開催された第21回国際疫学会総会 The 21st International Epidemiological Association (IEA), World Congress of Epidemiology (WCE2017)へ行ってきました。会場は、大宮ソニックシティでした。
 今回は22日に「Establishing patterns of the body mass index trajectory in Japanese children」というタイトルでポスタープレゼンテーションを行い、貴重なご意見等を頂戴しました。

(左:共同研究者の山梨大学大学院総合研究部医学域 横道洋司准教授)
(左:共同研究者の山梨大学大学院総合研究部医学域 横道洋司准教授)

 また、本学会にはミヤンマーからの国費留学生で、現在大学院博士後期課程で学んでいるSU SU MAWさんを帯同しました。彼女は20日にOral 2群のMaterial and Child health 1 で「Intervention strategies for preschool children with autism spectrum disorder : a systematic review and meta-analysis of published articles between years 2001 and 2015」というテーマで発表を行い、意見交換では更なる刺激を受け、良い経験を積むことができたようです。

学会発表

 今年、久しぶりに参加した国際疫学会でしたが、コミュニティベースの大規模なデータでどのようにエビデンスレベルの高い結果を産出するのかを学ぶ機会となりました。また、既に実施されている欧州での多様なデータの統合的な活用は、今後、アジアでの多種多様なサーベイランスの統合の可能性を示唆していました。

 最後に、本学会では山梨大学時代の恩師の方々(左:山梨大学大学院総合研究部医学域 山縣然太朗教授、右:愛知医科大学医学部 鈴木孝太教授)にもお目にかかることができ大変充実した有意義な時間を過ごし帰岡しました。

学会発表

学会発表行って来ました

 The 3rd International Conference on Public Health in Asia (28 April - 29 April 2017)にて、2017年4月29日 午後2時より「Maternal, Infant & Child Health」演題群で「Confirming Patterns of the Body Size Trajectory in Japanese Children」と題した研究成果を発表してきました。

 これは、山梨県の2市町村で得られた体格推移の類似性・異質性を検討することで、山梨県の子どもの体格推移を代表するものになるかどうかを検討した研究です。

 体格推移のパターンの推測値をどのように比較すればよいか、その方法は確定されておらず限界も多いのですが、おそらく、日本の子どもの体格は幼児期から引き継がれる可能性が高く、肥満・やせ予防は幼児期から(もしくは胎生期から)が望ましいという仮説を支持するものでした。

 今回の国際学会は、アジアにおける研究に焦点を当てていましたが、アメリカ人やイギリス人も参加しており、欧米人だけでなく、アジア人の健康課題に目を向ける研究者の多さを感じました。

 発達障害(特に自閉症スペクトラム障害)と水質汚染による重金属の摂取の関連を検討したものや(これはオマーンの医学研究者によるものでした)、環境汚染による健康被害を抑制するための方策を検討したもの(これはフィリピンの看護学研究者によるもの)、無料である西洋医学を拒否し、高額な伝統的な医療に依存する人々の価値観を調査したもの(これは日本の看護学研究者によるもの)など、多種多様な観点から公衆衛生学的な知見を産出しようとする興味深い研究成果を拝聴することができました。

マレーシアの大学で教えているミャンマー人も参加されていました。
マレーシアの大学で教えているミャンマー人も参加されていました。

愛媛大学で医療系学生に英語を教えている先生です。
愛媛大学で医療系学生に英語を教えている先生です。

岡山大学と大学間協定を結んでいるタイのマハサラカム大学の先生方です。
岡山大学と大学間協定を結んでいるタイのマハサラカム大学の先生方です。

学会主催者から参加証をいただきました。
学会主催者から参加証をいただきました。

最近の研究のご紹介:小児肥満 No.1

 研究「Factors Associated with Changes in Body Mass Trajectories during Infancy: A Longitudinal Analysis in Japan」を発表しました。
 母親の生活習慣および育児行動が子どもに与える影響について、これまで幾つかの示唆が得られていますが、身体発育の経過とそれらの関係についてはほとんどわかっていません。そこで本研究は、幼児の肥満指数(BMI)の軌跡と関連する要因を特定することを目的としました。
 岡山県井原市の協力もと、2006年から2009年の間に同市で出生した900人の児とその母親を対象に、乳幼児健康診査のデータを分析しました。マルチレベル分析を用いた結果、母親の行動(喫煙、フォローアップミルクの使用、保育園通園)は児のBMIの軌跡に関連を示しませんでした。一方で、非低出生体重児と比較したところ、低出生体重児は2歳以前においてBMIが低く、その後急速に高くなる傾向が示されました。このことは、低出生体重児のキャッチアップが速いと、肥満のリスクとなるというこれまでの知見を支持する可能性を示しています。今後、低出生体重の子供たちのBMIの急速な増加の結果を評価するために、より長い追跡調査期間が必要であり、学童期の健診データと繋げられるようなシステムを構築したいと考えています。
 研究の詳細については、オープンAccessでごらんいただけます。

最近の研究のご紹介:発達障害 No.2

 研究「The Prevalence of Obesity among Japanese Children with Intellectual Disabilities」を発表しました。
 この研究は、小児肥満予防の対象は学童期の健常児であることが多く、肥満の有病率が高いと言われているDown症児等知的障害児の健康状態を明らかにしたものが少ないことに着目して実施したものです。このような背景の下、知的障害をもつ子どもたちの体格とその推移を明らかにして、肥満の有病率および発生時期を明らかにし、今後の取り組み課題を検討しました。
 平成24年4月時点で、知的障害を対象とする特別支援学校1校に所属している231名(小学部53名、中学部62名、高等部116名)を研究対象とし、養護教諭によりすべて匿名化された定期健康診断結果を基に、入学時から現在までの身長と体重の記録をデータにしました。
 その結果、知的障害をもつ子どもの肥満の有病率が、特に小学1年生で高くなる可能性を示しました。また、Down症の子どもが、肥満予防の対象として注意が必要であることを示しました。対象集団の数が小さいため、これらの傾向を一般化することは難しいですが、就学前の生活習慣により、入学時に肥満が顕在化している場合には、就学前から助言していく必要があります。そのためには、幼児期の子どもの体格や生活状況を把握している保健師との連携が必要です。他の学校・地域とも比較・対照していくことが今後の課題です。
 研究の詳細については、オープンAccessでご覧いただけます。

最近の研究のご紹介:発達障害 No.1

 研究「岡山県市町村保健センターにおける発達障害児対策の実態」を実施しました。
 この研究は、岡山県内の市町村保健センターでの発達障害児支援対策について、その実態を明らかにすることを目的としています。2014年8月から9月にかけて、岡山県内全27市町村の保健センターの母子保健を担当する保健師を対象に、自記式質問紙調査を実施しました。
 その結果、有効回答率は66.7%であり、発達が気になる子どもへの支援を「発達障害児者支援対策事業」として位置づけていると回答した市町村は58.8%でした。これについては、事業化の有無に市町村の大きさの規模は関連が認められず、母子保健に関わる保健師の判断によると推測されました。また、最も多い支援内容は「遊びの場の提供」であり、専門的療育を実施していたのは25.0%でした。
 発達障害児を支援する上での課題は、子どもの発達特性や早期支援の必要性について養育者の理解を得ることであり、また保健師は、早期療育のために養育者支援・療育技術を習得する必要があります。そして、発達障害をもつ子どもの発達特性は、一生涯続く可能性が高いため、乳幼児期に限定しない継続した支援体制づくりをしていく必要があります。
 研究の詳細については、保健師ジャーナルにてH28年中に発表予定です。

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