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One Chance One Encounter/ 一期一会 ~NY州立大学留学報告~

法学部4年 楊もん

はじめに

こんにちは!私は岡山大学短期留学プログラムEPOKを通じて、NY州立大学ストーニーブルック校に来ています。留学の最大の目的は、私のアイデンティティの探究です。中国生まれ・日本育ちの私にとって、様々な人種が混在するアメリカ、特にNYは、ずっと憧れでした。ここで様々な人たちと異文化コミュニケーションすること、政治学を勉強することを通して、もっと視野を広げたい、自分の将来に生かしたいと思い、2009年の夏から渡米しました。念願のアメリカ留学も、もう終盤を迎えています。それでは私のNY留学を、振り返ってみたいと思います。

ストーニーブルック大学/ The State University of New York, Stony Brook

私の留学したストーニーブルックは、NY州の東にあるロングアイランドという半島の真ん中にある、国際性豊かな大学です。「NY」と聞くと、「大都会じゃ~ん、いいなぁ!」と思うかもしれませんが、私の住んでいるストーニーブルックは、郊外で、車がないと本当にどこにも行けません。スーパーに行くのにも、面倒くさいバスで行かなければなりません。アメリカは車社会だなぁとつくづく感じました。ストーニーブルックには遊ぶところはあまりないけれど、勉強するには適当な場所だと思います。キャンパスは広く、緑が美しく、春には桜も咲きます。夏はとても暑く、冬はとても寒いです。冬には大雪警報で学校が4日ほど休みになりました。岡山育ちの私にとって、構内で雪合戦したり、巨大雪だるまを作ったりするのは初めての体験でした。ほとんどの生徒がキャンパス内の寮に住んでいて、キャンパス内に通っている無料バスでメインキャンパスまで毎日通学します。ロングアイランド自体は、白人の富裕層が多く住んでおり、ワインと美しいビーチとアヒルが有名です。Stony Brookには、NYCの影響もあり、白人だけでなく、Black American, Hispanic, Chinese American, Korean American等、アメリカに移民してきた生徒が多くいます。また、インド人、アジア人等の留学生も大勢います。

New York City

Stony Brookからマンハッタン(NY市内)に行くには電車で往復4時間かかります。なのでマンハッタンに行くときは、朝から気合を入れて遊びに行きます。

ブロードウェイのミュージカル、メトロポリタン美術館(巨大すぎて驚きます!)など、様々なショーや博物館があります。自由の女神、国際連合、世界の交差点Times Squareでは 、毎日世界中からの観光客が行き来しています。ロックフェラーセンター、エンパイア・ステイト・ビルディングからの夜景は最高にきれいです。美味しいレストランも多くあります。ロシア料理、ベトナム料理、タイ料理、中華、日本食、フレンチ、イタリアン、韓国料理、アメリカン、世界中の美味しい料理がなんでも食べられて本当に幸せです。

セントラルパークで散歩すると、いろんなパフォーマンスを見ることが出来て面白いです。クリスマスシーズンには街全体に美しいデコレーションが施されます。クリスマスシーズンに、友達とロックフェラーセンターの前にある巨大ツリー(映画『ホームアローン2』に出てきます)を見に行った時、隣に居たアメリカ人カップルの男の人が急に跪いて「パカッ」と婚約指輪の箱を…!そうです、プロポーズです!女の人は涙目で、男の人にハグ!見ているだけでこちらまで幸せな気分になりました。中国の旧正月(2月中旬)は、うるさくて汚くて、でも賑やかで情熱的なチャイナタウンの一大イベントです。とてつもなく賑やかなパレードを見に行きました。

なんだか旅行ガイドみたいになってしまいましたが、総じてマンハッタンは年中見どころ満載の、面白い場所です。

大学の講義

アメリカの大学の授業形式は日本のものと異なります。週2~3回同じ授業があり、1つの授業で3単位もらえます。授業中に生徒たちは教授に質問したりコメントしたりと、活発に発言します。キャンパス内のインターネットへのアクセスが良く、授業中に自分のラップトップでノートを取ったり、インターネットで情報収集したりする生徒も少なくありません。(たまに勉強しているかのように見えてオンラインゲームをしている生徒もいましたが。)

私は秋学期に、日本語のTA・ビジネス・女性学・American Studies・英語(プレゼンテーションスキル)を履修しました。TA(teaching assistant)とは、毎回の授業で小テストを作ったり、生徒の宿題をチェックしたり、Office Hourで生徒の質問を受け付けたりと、教授のサポートをするものです。私はアメリカ人に日本語を教えることで、日本では感じることのなかった日本語の繊細さ・美しさを感じました。また、日本語のクラスは毎学期大変人気で、多くの生徒に好かれます。Office Hourに会いに来てくれる生徒と、日本文化について、日米の違いについて話すうちに、生徒ととても仲良くなれました。彼らの日本語・日本文化を学ぶ熱心な姿勢を見て「日本の文化はこんなにも外国人に人気なんだな」と、なんだか誇らしくなりました。女性学の先生はAfrican Americanで、英語のアクセントが本当に強く、何をいっているか聞きとるのが必死でした。社会学の一つである女性学では、ジェンダー・階級・人種の三つの要素が深く結びついていることを学び、大変興味深かったです。社会学で男女の役割の違いを学んだときに「おもちゃ屋さんに行って、男の子と女の子のおもちゃの特徴を考察せよ。」というユニークなレポート課題もありました。

春学期は、英語に慣れてきたこともあり、本来興味のあった比較政治、世界政治、国際連合など、政治学のクラスや、社会学、を履修しました。また、中国語上級でライティングやリーディングを学びつつ、中国語初級のTAもしました。中国生まれだけれど今まで中国で教育を受けたことがなく、日本人ばかりに囲まれて生きてきた私ですが、春学期を通して、中国人や中国系アメリカ人と多く交流する中で、自分自身を、より中国人であると自覚することができました。岡大法学部では2年次から国際法ゼミに所属し、国際人権法に興味のあった私ですが、春学期に、国連の人とテレビ会議のできる政治学のクラス(Global Issues in the United Nations)を履修することができました(初めは、留学生だからという理由で授業登録できなかったのですが、直に教授のオフィスに行って、泣きついてお願いしたら入れてもらえました。)。このクラスで、ICC(国際刑事裁判所)、国際人権法、NGOの役割、国連平和維持軍、難民、国連改革、国際環境法など、毎週トピックごとの国連のスペシャリストの意見を聴けます。授業前には、膨大なリーディング課題をし、授業中には国連の人に質問できる時間があります。この授業のおかげで、自分の専門分野を英語で学び、しかも現場の人の意見を直接聞くことができ、とても刺激になりました。

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1.ゴスペル

もともと歌うことが好きな私は、(岡大ではうたう会みみんこに所属していました)、新入生歓迎のクラブ紹介の時に、ゴスペル部の歌に感動して、ある日ゴスペル部に足を運んでみました。そこでは約80人ものメンバーがいて、そのうちの90%が黒人で、全員がものすごく熱心なクリスチャンで(正確には、Southern Baptistという、キリスト教の中でも過激な信仰をもつ人たちでした)、練習前にTestimonyという宣誓証言をし、神様を褒め称え、練習後にはメンバー全員が手をつなぎ輪になって、お祈りをします。お祈りと言っても、静かなものではなく、とても感情的でだんだん個々人の声が大きくなって最後には泣き叫ぶ人もいました。最初は圧倒されまくりで、「ちょっと怖いな」とさえ感じました。でも、好奇心旺盛な私は、なんでそんなに情熱的なのか、どうしてそんなに気持ちを込めて歌えるのか、もっと彼らのことを知りたいと思い、秋学期の間、ずっと練習に参加しつづけました。彼らの歌声は純粋に美しく力強く、聞くたびに鳥肌が立ちました。一緒に歌う中で、何人もの黒人と仲良くなれました。彼らの宗教観、人生観は、私が今までに遭遇したことのない強烈なものだったので、とても新鮮で面白かったです。無宗教の私には、なかなか理解しがたい面も多くあったけれど、ここでアメリカ社会の大きな要素、キリスト教について多く学べた気がします。

2.和太鼓

「え?アメリカで和太鼓?」と思うかもしれませんが、Taikoはアメリカでもなかなか有名です。ワインが有名なカリフォルニアで、ワインの樽を利用して日系アメリカ人が普及させたそうです。岡大うたう会みみんこで民謡を踊っていた私は、実は太鼓の音が大好きです。太鼓は、2本のバチで自由に感情を表現できるところが魅力的です。いい運動にもなります。しかもこの和太鼓サークル、人種が本当に多様で、メンバーの皆が本当にオープンマインドで素敵な人たちでした。日本文化はアメリカでも大変愛されているなぁと嬉しくなりました。秋学期は基礎の練習、春学期は多くのパフォーマンス(Japan Night, China Night,桜祭り、その他多くの文化的イベントに招待されました)、1年を通してとても楽しい思い出がたくさんできました。

3.寮での生活

岡大では自宅生だった私にとっては、ここで初めて一人暮らしをすることが出来ました。私の住んでいた寮は、1つのスイートに6人がシングル部屋に住んで、1つのリビング、キッチンと2つのバスルームをシェアする形でした。私のスイートメートは、4人の白人と韓国からきた交換留学生でした。生徒のほとんどが構内の寮に住んでいるので、いつでも友達と一緒に勉強したり、料理を作ったり、テレビを見たり、外のバレーコートでバレーをしたり、毎日楽しく過ごせます。寮では毎週末どこかのスイートでパーティが行われていて、とても賑やかです。スイートメートに恵まれて、アメリカ、韓国の文化を身近に感じることが出来ました。誕生日会、サンクスギビング、クリスマス等、イベントの度にみんなで料理を一緒に作ったり、ゲームをしたりと楽しい時間を過ごせました。

アメリカ国内旅行

冬休みを利用して、カリフォルニア州サンホゼ(岡山と姉妹都市です)にいるヒスパニック系アメリカ人の友達Irinaの家に遊びに行きました。彼女は1年前にEPOKを利用して岡大に留学していて、その時に仲良くなった友達です。Apple やfacebookなど、シリコンバレーで有名なサンホゼを案内してもらったり、サンフランシスコやサンディエゴ、ヨセミテ国立公園にも連れて行ってもらったりしました。人種、地形、方言など、西海岸と東海岸の違いを肌で感じることが出来て、本当に楽しかったです。

Irinaに紹介されて仲良くなったアラブ系アメリカ人の友達Samyは、サンホゼの警察官なのですが、ある日彼の深夜パトロールに同行させてもらいました。この夜、殺人とかいった怖い事件はなかったけれど、スピード違反のparty girlや、登録違反の車を運転していたおじさん、無免許で運転していたグアテマラのおじさん、麻薬所持していた青年など、Samyは色んな人たちを捕まえました。 5:00AMにはアルツハイマーで街をうろうろさ迷って迷子になったおばあさんの家探しを手伝いました。こんな経験ができるなんて思ってもみなかったです。

その他

4月にメリーランド州アナポリスのNavy Academy(アメリカ海軍学校)で行われた学生会議に参加しました。約一週間、National Security beyond the horizonというテーマで、国家の安全保障や地球温暖化について、他の週から来たアメリカ人の学生や、海軍学校の学生、世界中から来た留学生たちとディスカッションをしたり、海軍のパレードを見たり、海軍のボスのスピーチを聞いたり、他の学生と交流したりしました。わたしが参加したRoundtableのトピックはthe end of suburbia というものでした。Stony Brookもそうですが、アメリカの郊外の問題はなかなか深刻だということを学びました。限られた資源の中で、いかに持続可能な開発をするかについて議論しました。海軍ボスのスピーチでは、アメリカと中国の関係、中東問題、温暖化についてなど、アメリカの海軍の人の意見が聞くことが出来て面白かったです。

最後に

留学を通して最も感じたことは、違いを受け入れることの大切さです。文化の違い、言語の違い、政治観念、宗教観。世界を見渡せば、様々な違いが、様々なレベルであります。「違い」を受け入れることは、なかなか容易ではありません。ある教授に「無関心は最大の罪になりうる。『他人』を知ろうとすることで、『他人』が『他人』でなくなる。人にもっと優しくなれる。そんな世の中だったら、もっとみんなが幸せになれるのにね。」と言われました。広い視野を持ち、他の文化を尊重することができる国際人になるということが、これからの未来を生きていく私たちにとっていかに大切かを学びました。
また、変化を恐れず、新しいことにチャレンジすること、自分のやりたいことをとことんやることがいかに大事かということも学びました。

留学生活を支えてくださった、家族や先生方、友達に本当に感謝しています。また、留学先でも本当に友達や教授に恵まれました。友達と泣き笑い、感動を共有したり、時には議論をしたりして、深い友情を築くことが出来ました。本当に多くの人に刺激されました。一期一会、これからも人との出会いを大切にしていこうと思いました。

世界のことをもっと知りたいと思うならば、たくさんの書物を読んだり、ネットの情報を入手したりするよりも、実際に日本を出て、その場所でその空気を吸い、多くの人と触れ合うことが、何よりも効果的手新鮮な勉強になると思います。後輩のみなさんに、強くお勧めします。きっとあなただけにしかできない、素敵な留学ができると思います。