国立大学法人 岡山大学

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Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.34 発行

2017年02月21日

 本学は2月17日、本学の強みである医療系分野の研究成果について、革新的な基礎研究や臨床現場、医療産業等に結びつく成果を英語で情報発信するWebレター「Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)」のVol.34を発行しました。
 2012年より本学では、研究成果や知的財産活動などを英語で情報発信するWebマガジン「Okayama University e-Bulletin」を年4回発行。国際科学雑誌「Science」を扱うAAAS(米国科学振興協会)のメーリングリストを利用し、世界の研究者等にニュースやトピックスを交えて配信し、本学の海外への情報発信を強化と国際的知名度の向上を推進しています。
 OU-MRUは、e-Bulletinの姉妹誌として、強みある医療系分野の更なる増強と本学研究者が同分野で発表したイノベーティブな研究成果を世界にタイムリーに発信するために発行。
 本号では、大学院自然科学研究科(工学系)ナノバイオシステム分子設計学研究室の妹尾昌治教授と笠井智成講師らの、世界で初めて成功したマウスiPS細胞由来がん幹細胞から新しい“膵臓がんモデル”の作製について紹介しています。
 妹尾教授と笠井講師らの研究グループは、ヒトの膵臓がんに由来する細胞株を培養する液体の上清を用いて、マウスのiPS 細胞を培養。iPS細胞ががん幹細胞へ誘導、変化することを確認しました。また、このがん幹細胞をヌードマウスの皮下に移植すると、膵臓腺管がん(pancreatic ductal adenocarcinoma:PDAC)の形態、つまり膵臓がんになることを突き止めました。これら、一連の研究成果は、従来の遺伝子の変異や挿入欠失などの操作を行わずに臓器に特異的ながん(腫瘍)を人為的に作り出したものであり、世界で初めての成功です。
 今回の研究成果は、がん幹細胞を正常な組織に移植して形成した腫瘍が、腺房-導管異形成(acinar to ductal metaplasia:ADM)や膵上皮内腫瘍性病変(Pancreatic intraepithelial neoplasia, PanIN)、膵臓腺管がん(pancreatic ductal adenocarcinoma:PDAC)といった、膵臓がんに特徴的な形態を示しています。ところが、形成されたがん細胞には特徴的な遺伝子の変異は見られず、特に有名ながん遺伝子である「Kras」にも変異が無かったことから、世界的に新しいがんの初期発生モデルといえます。 
 がんは私たちの生命を脅かす存在であり、特に膵臓がんは早期発見が非常に困難であり、予後も不良ながんです。本研究成果は、これまでのがん研究や治療研究をさらに進化させるものであり、新しい研究モデルとして大いに貢献することが期待されます。
 本学は、平成25年8月に文部科学省がわが国のさらなる大学研究力向上や国際的な研究競争力強化等のために全国の大学・研究機関から選定した、「研究大学強化促進事業」の選定大学(国内19大学)です。世界で研究の量、質ともに存在感を示す「リサーチ・ユニバーシティ(研究大学):岡山大学」の構築のため、強みある分野の国際的な情報発信を力強く推進していきます。また、強みある医療系分野から生み出される成果を社会や医療現場が求める革新的技術として、より早く届けられるように研究開発を推進していきます。
 なおOU-MRUは、文部科学省「研究大学強化促進事業」の一環として実施されています。

Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.34:Novel mouse model for studying pancreatic cancer


<Back Issues:Vol.27~Vol.33>
Vol.27:Keeping cells in shape to fight sepsis (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)西堀正洋教授)
Vol.28:Viral-based therapy for bone cancer (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)藤原俊義教授)
Vol.29:Photoreactive compound allows protein synthesis control with light (大学院自然科学研究科(工学系)大槻高史教授)
Vol.30:Cancer stem cells’ role in tumor growth revealed  (大学院自然科学研究科(工学系)妹尾昌治教授)
Vol.31:Prevention of RNA virus replication (大学院自然科学研究科(工学系)世良貴史教授)
Vol.32:Enzyme target for slowing bladder cancer invasion (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)竹田哲也助教)
Vol.33:Attacking tumors from the inside (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)藤原俊義教授)


<参考>
Okayama University e-Bulletin


【本件問い合わせ先】
広報・情報戦略室
TEL:086-251-7293
E-mail:www-adm@
     ※ @ の後に adm.okayama-u.ac.jp を付加してください

(17.02.21)

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