国立大学法人 岡山大学

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Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.74 発行

2020年01月15日

 本学は1月14日、岡山大学の強みのひとつである医療系分野の研究開発の成果について、革新的な技術に橋渡すことのできる基礎研究や臨床現場、医療イノベーションなどに結びつく成果などを英語で世界に情報発信するWebレター「Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)」のVol.74を発行しました。
 2012年より岡山大学では、研究成果や知的財産、技術移転活動などを英語で情報発信するWebマガジン「Okayama University e-Bulletin」を年3~4回発行。世界の大学・研究機関の研究者やマスコミ関係者などにニュースやトピックスを交えて配信し、岡山大学の海外への情報発信の強化と国際的知名度の向上などを推進しています。
 OU-MRUは、e-Bulletinの姉妹誌として、岡山大学の強みある医療系分野とその融合分野などの更なる増強と本学研究者が同分野で発表したイノベーティブな研究成果を世界にタイムリーに発信するために発行しています。
 本号では、大学院医歯薬学総合研究科(医学系)脳神経内科学分野の阿部康二教授と山下徹講師らの脳梗塞後に神経細胞を新たに生み出すことに成功した研究成果について紹介しています。
 脳梗塞は、脳血管の閉塞により脳血流が途絶して神経細胞が死滅する疾患です。発症直後に閉塞した血管を再開通させる治療法は、近年目覚ましく発達してきました。しかしながら一旦脳梗塞が起こり、神経細胞が死滅してしまうと、根本的治療法がないのが現状です。このことが現在寝たきり患者の大きな原因にもなっていることから、脳梗塞慢性期患者の機能回復を目的とした神経再生医療の開発が強く求められています。
 阿部教授と山下講師らの研究グループは、iPS細胞で注目されたリプログラミング技術を応用し、まず神経細胞に強く発現している転写因子であるAscl1, Sox2, NeuroD1を培養したグリア細胞に発現させると神経系細胞に誘導できることを発見しました。そこで脳梗塞マウス脳内のグリア細胞にレトロウイルスを用いてAscl1, Sox2, NeuroD1を発現させる実験を行いました。その結果レトロウイルス注入後24日目には神経前駆細胞が誘導され、52日目には成熟した神経細胞が誘導されていることが明らかになりました。
 この研究成果により、脳梗塞で一旦失われてしまった神経細胞も、周囲に豊富に残っているグリア細胞から誘導し補充できる可能性が示されました。今後、誘導効率を更に向上させると共に安全性を確立し、脳梗塞患者の運動麻痺改善に寄与する治療法開発を進めていきます。
 岡山大学は、2013年8月に文部科学省がわが国のさらなる大学研究力向上や国際的な研究競争力強化等のために全国の大学・研究機関から選定した、「研究大学強化促進事業」の選定大学(国内19大学)です。世界で研究の量、質ともに存在感を示す「リサーチ・ユニバーシティ(研究大学):岡山大学」の構築のため、強みある分野の国際的な情報発信を力強く推進しています。今後も強みある医療系や異分野融合から生み出される成果を産学官民共創のオープンイノベーションの加速や社会、医療現場が求める革新的技術、健康維持増進により早く届けられるように研究開発を推進していきます。
 なおOU-MRUは、文部科学省「研究大学強化促進事業」の一環として実施されています。

Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.74:Rising from the ashes - dead brain cells can be regenerated after traumatic injury


<Back Issues:Vol.66~Vol.73>
Vol.66:Is too much protein a bad thing? (異分野融合先端研究コア 守屋央朗准教授)
Vol.67:Technology to rapidly detect cancer markers for cancer diagnosis (大学院ヘルスシステム統合科学研究科 紀和利彦准教授)
Vol.68:Improving the diagnosis of pancreatic cancer (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)岡田裕之教授、松本和幸助教)
Vol.69:Early Gastric Cancer Endoscopic Diagnosis System Using Artificial Intelligence (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)河原祥朗教授)
Vol.70:Prosthetics for Retinal Stimulation (大学院ヘルスシステム統合科学研究科 松尾俊彦准教授&大学院自然科学研究科(工学系)内田哲也准教授)
Vol.71:The nervous system can contribute to breast cancer progression (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)神谷厚範教授)
Vol.72:Synthetic compound provides fast screening for potential drugs (大学院医歯薬学総合研究科(薬学系)加来田博貴准教授)
Vol.73:Primary intraocular lymphoma does not always spread to the central nervous system (大学院ヘルスシステム統合科学研究科 松尾俊彦教授)


<参考>
「Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)」バックナンバー
岡山大学国際Webマガジン「Okayama University e-Bulletin」


【本件問い合わせ先】
総務部 広報課
TEL:086-251-7293
E-mail:www-adm@adm.okayama-u.ac.jp

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