本学は、11月26日に開催された「2025年11月定例記者発表(学長発表)」において、株式会社廣榮堂(本社:岡山市中区、代表取締役社長:武田浩一)との総合的な連携取り組みを発表しました。本連携は、同社の看板商品である「きびだんご」の原材料調達における課題を、本学の多岐にわたる研究シーズを用いて解決するとともに、科学的アプローチによる品質の継承と環境価値(カーボンフットプリント:CFP)の創出を目指すものです。記者発表には那須保友学長と武田社長が登壇し、地域に根差した産学連携による社会変革への決意を表明しました。
安政3年(1856年)創業の廣榮堂は、長年地域の伝統銘菓「きびだんご」を製造してきましたが、近年、原材料である特別栽培もち米の生産農家の高齢化により、岡山市高松地区での継続的な調達が困難になるという課題に直面していました。この地域課題に対し、本学学術研究院環境生命自然科学学域(農)の大仲克俊准教授が専門的見地から介入し、岡山市藤田地区の若手農業経営者らとのマッチングを実現。新たな産地での共同作付け体制を構築し、原材料の安定的かつ永続的な確保に道筋をつけました。
また、生産地の変更に伴う品質変化への懸念を解消し、伝統の味を科学的に解明・継承するため、3者(岡山大学・廣榮堂・秋田県立大学)による共同研究を開始しました。本学学術研究院先鋭研究領域(資源植物科学研究所)の山本敏央教授(植物育種学)と秋田県立大学の藤田直子教授(植物生理学)らが連携し、もち米の育成条件やデンプン構造が食感や風味に与える影響を解析。経験と勘に頼ってきた「伝統の味」をデータに基づいて継承し、さらなる美味しさの進化を目指す「ドリームチーム」による取り組みとなります。
さらに、新たな顧客価値の創造に向けた取り組みとして、MS&ADインターリスク総研株式会社との共同研究により、「むかしきびだんご」のカーボンフットプリントを算定しました。本学経済学部の天王寺谷達将研究室が協力し、環境配慮への取り組みが消費者の購買行動に与える影響を検証する実証実験も行われました。
記者発表の中で、廣榮堂の武田社長は「地域に支えられた企業として、産学連携で、農業者の高齢化に伴う農地の社会課題に取り組む」と、老舗企業としての革新への決意を述べました。また、那須学長は本取り組みについて、「岡山大学が地域と共に新たな価値を創造し、社会変革を起こすことを使命とする一事例である」と紹介。今後も本学が地域企業の問題解決と新たなイノベーション創出に積極的に取り組む姿勢を強調しました。
本学は長期ビジョン2050において「地域と地球の未来を共創し、世界の革新に寄与する研究大学」を掲げています。今後も地域・中核特色ある研究大学:岡山大学として、多様な研究力を生かした地域課題の解決と、ウェルビーイング社会の実現に貢献していきます。どうぞご期待ください。
<参考>
・株式会社廣榮堂と岡山大学の総合的取組み~地域企業と地域中核・特色ある研究大学との伝統の継承と新たな価値づくり共創~(2025年11月定例記者発表:学長発表)
【本件問い合わせ先】
岡山大学研究‧イノベーション共創機構 上級URA 佐藤浩哉
E-mail:sato.hiroya◎okayama-u.ac.jp
※@を◎に置き換えています。
研究・イノベーション共創機構HP
岡山大学と株式会社廣榮堂が「きびだんご」の伝統継承と新たな価値創造へ総合的連携を開始~農学・経済学の知見を結集し、地域農業の課題解決とイノベーションに挑む~
2025年12月04日