α2プラスミンインヒビター抗原量, α2PIAG(α2 Plasmin Inhibitor antigen)


外注会社:LSIM(平成26年4月1日より社名変更、平成19年4月1日より社名変更MCM、平成18年4月1日よりMBCで契約)

臨床的意義
 
α2-プラスミンインヒビターはセリンプロテアーゼインヒビター群(seprin superfamily)に属する、アミノ酸残基数452、分子量約7万の血漿蛋白で、プラスミンに対する特異的な阻害因子として線溶の調節に重要な役割を演じている。血漿中の濃度は正常で6〜7mg/dl(1μM)で、プラスミノゲンの約半分である。α2-プラスミンインヒビターは主に肝臓で産生される。血小板のα顆粒中にも含まれ、血小板が活性化すると放出される。血漿中のα2-プラスミンインヒビターの約30%は不活性で、この不活性部分は、α2-プラスミンインヒビター分子のプラスミン結合部位を含むC末端部が一部欠損しており、プラスミンと結合し得ないためプラスミン阻害活性が失われたものである。α2-プラスミンインヒビターが産生され、血漿中に出現したときは完全な分子の活性型であるが、流血中に部分分解されて不活性型に変わるとされる。α2-プラスミンインヒビターの血漿中半減期は2.5日である。α2-プラスミンインヒビターは分子中に3つの機能部分、すなわちプラスミン結合部位(C末端部)、フィブリン結合部位(N末端部)、プラスミンの活性中心と結合しプラスミン阻害に直接関与する反応部位(Arg364-Met365)があり、α2-プラスミンインヒビターの作用特性を規定している。α2-プラスミンインヒビター阻害作用は、プラスミンと1:1の複合体を形成することによって達成される。まず、α2-プラスミンインヒビターのプラスミン結合部位がプラスミンα鎖のクリングル1〜3からなるリジン結合部位(LBS)と非共有結合で結合し、ついで反応部位であるArg-Met間がプラスミンによって切断され、断端となったArgがプラスミンの活性中心のSerと共有結合を形成して不可逆的にプラスミンの活性を消失させる。α2-プラスミンインヒビターにあるプラスミン結合部位がプラスミンに対する特異性を付与しているのである。血漿中のα2-マクログロブリンもプラスミンを阻害するが、α2-プラスミンインヒビターが即時的に阻害するのに対して阻害反応が遅く、プラスミンが血漿中に多量に出現した場合以外線溶系への関与は少ない。α1-アンチトリプシン、アンチトロンビンIII、C1-アクチベーターもプラスミンを阻害し得るが、これらも生体の線溶系に関与していない。α2-プラスミンインヒビターは、プラスミノゲンのフィブリンへの結合を阻害することが知られている。プラスミノゲンはそのLBSを介してフィブリンと結合するが、α2-プラスミンインヒビターもプラスミノゲンのLBSと結合するため、フィブリンと競合することによる。これは、α2-プラスミンインヒビターはプラスミノゲンの活性化産物プラスミンを阻害するのみでなく、フィブリン分解に先立つプラスミノゲンのフィブリンへの結合をも阻害しているのであり、線溶阻害に二重にかかわっていることを意味する。α2-プラスミンインヒビターはそのフィブリン結合部位によってフィブリンと結合し、ついで活性化XIII因子によってフィブリン中のα鎖との間に架橋結合が形成される。こうしてフィブリン塊に取り込まれたα2-プラスミンインヒビターは、血栓内での線溶に抵抗し、血栓の安定化に寄与している。α2-プラスミンインヒビター欠損症では血栓が形成されても容易に溶解して出血傾向を呈する。一方、遊離のα2-プラスミンインヒビターは、血漿中に出現した遊離プラスミンに対しては容易に阻害するが、血栓に取り込まれたプラスミノゲンが活性化されて生じたプラスミンに対しては、プラスミンのLBSがフィブリンとの結合に占拠されているため阻害作用を及ぼしにくい。以上のように、α2-プラスミンインヒビターは、プラスミンに結合し直接その活性を阻害するのみでなく、プラスミノゲンのフィブリンへの結合を阻害し、フィブリンに結合して血栓内でのプラスミンの作用を妨害して、血栓の安定化に寄与するとともに、遊離プラスミンを容易に不活性化することにより線溶の血栓選択性にもかかわっており、生体の血栓形成・溶解の調節に大きく関与しているものと見なされる。


測定機種: 全自動血液凝固線溶測定装置 STA(ロシュ・ダイアグノスティック株)(平成18年3月31日まで)

基準値:  75〜120%

異常値を示す疾患
延長疾患: 肝不全、アスパラギナーゼ投与、急性前骨髄性白血病、前立腺癌、DIC

検体採取・測定条件

3.2%のクエン酸ナトリウム1に血液9の割合で採血し,転倒混和を5〜6回繰り返した後,すみやかに提出する。
・溶血すると不正確になるため注意が必要である。
・検体採取時には,組織トロンボプラスチンの検体への混入を避ける為,ダブルシリンジ法を用いるとよい。

関連項目

アンチトロンビンIII
プロテインC
Dダイマー
トロンビン・アンチトロンビンIII複合体(TAT)

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