Dダイマー, D dimer

臨床的意義
 
止血反応は,1)血管の損傷部位への血小板血栓の形成、2)血液凝固系の作動を介したフィブリン塊の生成による血小板血栓の強化、3)XIII因子(フィブリン安定化因子)の作用でのフィブリン分子間架橋形成による止血栓の安定化、からなる。一方、生体内には形成されたフィブリン塊を溶解し止血栓を除去するための線維素溶解(線溶)機構も用意されている。線溶現象は、プラスミノゲンアクチベータがプラスミノゲンを活性化しプラスミンを生成させることで開始される。プラスミノゲンアクチベータは血管壁(内因性)や組織(外因性)由来のもののほかに、尿中に出現するウロキナーゼ、β溶連菌から産生されるストレプトキナーゼなどが知られている。なお、XIIa因子にもプラスミノゲンの活性化作用がある。プラスミノゲンは肝細胞にて合成される分子量約90,000の糖蛋白で、これらのプラスミノゲンアクチベータによりプラスミンに活性化される。セリンプロテアーゼであるプラスミンはフィブリノゲンおよびフィブリンを分解し、フィブリン・フィブリノゲン分解産物(FDP)を形成する。フィブリノゲンがプラスミンによって分解されると、最初にまずX分画が生成され、さらに分解が進むと、1分子のX分画からY分画とD分画が1分子ずつ形成される。Y分画はさらにプラスミンの作用を受けD分画とE分画に分解される。すなわち、フィブリノゲン1分子から2分子のD分画と1分子のE分画が生成される。一方、XIII因子によって架橋されたフィブリン(安定化フィブリン)がプラスミンによって分解されると、Xオリゴマーが形成される。Xオリゴマーはさらにプラスミンの作用を受け、Dダイマー/E分画複合体、Dダイマー、E分画に分解され、最終的には等モルのDダイマーとE分画が生成される。したがって、Dダイマーの産生増加は安定化フィブリンのプラスミンによる分解亢進、すなわち二次線溶亢進を意味し、血中Dダイマーを測定することにより二次線溶亢進と一次線溶亢進との鑑別が可能となり、臨床的に有用性が高い。なお、E分画に対するモノクローナル抗体を利用したE分画測定法が開発されているが、E分画はフィブリンおよびフィブリノゲンの分解産物であり、本質的にはFDPの測定と変わらない。Dダイマーは、二次線溶亢進のマーカーであり、凝固・線溶亢進状態の病態を詳細に把握するために検査する。すなわち、一次線溶亢進の病態と二次線溶亢進の病態との鑑別に利用される。二次線溶亢進をきたすDICや各種の血栓性疾患の診断、病態把握、治療効果判定の指標として有用である。

異常値を示す疾患
高値: 
DIC、心筋梗塞、肺梗塞、静脈血栓症、血栓性血小板性紫斑病(TTP)、HUS

測定原理:
ラテックス凝集法

測定機種: CS-5100(シスメックス株式会社)(平成26年3月24日より)

ACL TOP(三菱化学ヤトロン社)(平成18年1月10日より平成26年3月23日まで)
LPIA2000(ルーチン), STAコンパクト(夜間・休日緊急検査)(平成18年1月9日まで)

基準値: 1.0μg/ml 未満
      
1.5μg/ml 未満(平成18年1月9日まで)

相関
y=0.995x0.523  r=0.974  n=95 
x:旧試薬 y:新試薬(平成18年1月9日)



容器:
黒)3.2%のクエン酸ナトリウム入り試験管にクエン酸ナトリウム1血液9の割合で採血し,転倒混和を5〜6回繰り返した後,すみやかに提出する。

関連項目

プロトロンビン時間(PT)
活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)
フィブリノーゲン量
Plt
血小板第4因子(PF4)
β-トロンボグロブリン
トロンビン・アンチトロンビンIII複合体(TAT)
F1+2
FDP
フィブリンモノマー複合体
α2−プラスミンインヒビター・プラスミン複合体

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