FDP, fibrinogen degradation products

臨床的意義
 
生体にとって重要な防御反応の一つである止血反応は,血管の損傷部位への血小板血栓の形成(一次止血)と、それに引き続く血液凝固系の作動を介したフィブリン塊の生成による血小板血栓の強化(二次止血)とからなる。さらにXIII因子(フィブリン安定化因子)により血小板血栓を包み込んだフィブリンの分子間に架橋が形成され止血栓が安定化し,止血が完了する。再び血液の流動性を維持するためには,形成されたフィブリンを溶解し止血栓を除去する機序の作動が必要である。この機序が線維素溶解(線溶)現象である。線溶現象は,プラスミノゲンアクチベータがプラスミノゲンを活性化しプラスミンを生成させることで開始される。プラスミノゲンアクチベータは、血管壁(内因性)や組織(外因性)由来のもののほかに,尿中に出現するウロキナーゼ,β溶連菌から産生されるストレプトキナーゼなどが知られている。なお、XIIa因子にもプラスミノゲンの活性化作用がある。プラスミノゲンは肝細胞にて合成される分子量約90,000の糖蛋白で,プラスミノゲンアクチベータによりプラスミンに活性化される。セリンプロテアーゼであるプラスミンはフィブリンを分解し,フィブリン分解産物(fibrin degradation product ; FDP)を形成する。なお,プラスミンはフィブリノゲンにも作用し,fibrinogen degradation product(FgDP)を形成する。通常のFDPの測定系ではフィブリノゲンの分解産物も含まれるため,両者を合わせfibrin and fibrinogen degradation products(FDP)と総称し,線溶亢進のマーカーの一つとして測定される。なお,最近、フィブリノゲンの分解産物に対する抗体を用いたFgDP測定法も開発されている。FDPの測定は、生体内における血液凝固系や線溶系の亢進状態を把握するために施行される。特に播種性血管内凝固症候群(DIC)や各種血栓性疾患の診断,病態把握、治療効果判定の指標として有用である。さらに、ウロキナーゼ,ストレプトキナーゼ,組織プラスミノゲンアクチベータ(t-PA)などによる線溶療法の効果判定や経過観察のモニターとして測定する。

異常値を示す疾患
高値疾患: DIC、心筋梗塞、肺梗塞、静脈血栓症、血栓性血小板性紫斑病(TTP)、HUS

測定原理: ラテックス凝集法

測定機種: CS-5100(シスメックス株式会社)(平成26年3月24日より)

ACL TOP(三菱化学ヤトロン社)
(平成18年1月10日より平成26年3月23日まで)

LPIA2000(平成18年1月9日まで)

基準値: 5.0 μg/ml 未満
       
6μg/ml 未満(平成18年1月9日まで)

相関:y=1.097x+1.660  r=0.928  n=62 x:旧試薬 y:新試薬(平成18年1月9日)  

採取容器:3.2%のクエン酸ナトリウム入り試験管にクエン酸ナトリウム1血液9の割合で採血し,転倒混和を5〜6回繰り返した後,すみやかに提出する。

関連項目

プロトロンビン時間(PT)
Plt
フィブリノーゲン量
プラスミノゲンアクチベータ
PAI
α2PI
トロンビン・アンチトロンビンIII複合体(TAT)
フィブリンモノマー複合体(定量)
F1+2
Dダイマー

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