アミラーゼアイソザイム, amylase isoenzymes 
尿中P-AMY(平成20年11月27日より外注MCM)



臨床的意義
 
血中および尿中アミラーゼの測定は、膵酵素逸脱現象の増減から各種の膵疾患、唾液腺疾患のみならず腹部疾患、マクロアミラーゼ血症などの診断上重要な指標となる。アミラーゼには分子量約5万4,000〜6万の膵由来のP型と分子量5万6,000〜6万5,000の唾液腺由来のS型のアイソザイムが存在する。アイソザイム分析が意義を有するのは膵由来酵素(P型)の上昇と、持続的な原因不明の高アミラーゼ血症の検索である。急性膵炎では発症後24時間以内に血中に急速にP型アミラーゼが増加し、時間の経過とともに尿中に移行し数日で基準値に戻る場合が多い。尿中アミラーゼは、血清アミラーゼ値と並行することが多いが血清よりも高値が長く続くため、急性膵炎が疑われ血清アミラーゼの上昇が明らかでない症例や、血清アミラーゼが正常化した後の経過観察に有効である。したがってアイソザイム測定は、血清および尿中の両者で行うとより正確に病期や病態を判定できる。また、アミラーゼ・クリアランスとクレアチニン・クリアランスとの比(ACCR)は健常人では2.3±0.5%であるのに対し、急性膵炎時では14.5±6.5%と高値を示す。一方、膵疾患以外での原因不明の高アミラーゼ血症には、術後S型上昇例、腫瘍産生アミラーゼ、マクロアミラーゼなどがあるが各バンドの出現位置に特長があるため、これらの解析には電気泳動が必要である。マクロアミラーゼは、アミラーゼが免疫グロブリン(主にIgG, IgA)と結合し高分子化したものである。腎臓での排泄が低下するため、尿中アミラーゼは正常でも血中アミラーゼは高値を示す。また、尿中への排泄の低下に従いACCRが1%以下と著しい低値を示す。

ACCR(%)=100×(尿中Amy×血中Cre)÷(血中Amy×尿中Cre)

P型高値疾患: 急性膵炎、慢性膵炎再燃時、胆道系の炎症性疾患

P型低値疾患: 膵癌(末期)、膵切除(膵頭部十二指腸切除、膵全摘)など

測定機器: 日本電子BM2250(血清)(平成18年7月18日より)
         日本電子BM1650(尿)(平成18年7月18日より平成20年11月26日まで)

          日立7170自動分析装置(血清)(平成18年7月14日まで)        
         日立7070自動分析装置(尿)

測定試薬: セロテック(平成18年7月18日より)
        
ロシュ(平成18年7月14日まで)

基準範囲: P-AMY           

基準範囲 期間 相関(X=旧試薬,Y=現試薬)
16〜49 U/L 平成10年2月〜 Y=0.423X+0.202   r=0.993
30〜118 U/L 平成6年9月〜平成10年1月 Y=1.055X+2.211

30〜118 U/L

平成6年8月まで

 

相関
血清
平成18年7月18日
X=旧機器、旧試薬
Y=新機器、新試薬
Y=0.99X-1.38 r=0.997  n=100

尿
平成18年7月18日
X=旧機器、旧試薬
Y=新機器、新試薬
Y=1.03X+0.46 r=0.998  n=200

小児の基準値
 新生児期から乳児期ではS型が優位で(対成人値比は約1.1)、その後漸減して6歳頃に成人値となる。P型は新生児から乳児期までは、対成人値比が約0.6で、その後漸増して6歳頃に成人値となる。S/P比は新生児期から乳児期では対成人値比約2.1であるが、その後漸減して成人値に達する。これらの変化は離乳食開始と膵機能の発達による。両型とも性差はない。

関連項目

  
トリプシン
リパーゼ
膵ホスホリパーゼA2(PLA2)
エラスターゼ1

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