本学は、小汐由介准教授(学術研究院環境生命自然科学学域)、植竹智准教授(学術研究院先鋭研究領域(異分野基礎科学研究所)、内山淳平准教授(学術研究院医歯薬学域)、狩野旬准教授(学術研究院環境生命自然科学学域)に「研究教授」の称号を付与し、清家圭介助教(学術研究院医療開発領域(岡山大学病院))に研究准教授の称号を付与しました。10月20日に称号付与式を開催し、那須保友学長より認定証が手渡された後、各研究内容について紹介を行いました。
小汐研究教授は、スーパーカミオカンデを代表とする水チェレンコフ検出器(水を使って電荷を帯びた粒子を検出する装置で、宇宙から飛んでくるニュートリノの検出などに使用される)を使用して、超新星背景ニュートリノ(宇宙誕生から現在までの間に起こってきた超新星爆発で放出されて宇宙に漂っているニュートリノ)を、世界で初めて観測することを目指しています。これにより、宇宙の歴史や恒星進化の謎を解き明かす手がかりになることが期待されています。本研究は、文部科学省科学研究費助成事業基盤研究(S)に採択されています。
植竹研究教授は、最先端の「レーザー分光技術(レーザーを使って物質の性質を詳しく調べる技術)」を使って、非常に精密な測定を行い、新しい物理現象の探索を目指しています。具体的には、「ミューオニウム」という特別な原子を使います。ミューオニウムは、普段私たちがイメージする原子とは少し違っていて、「レプトン(素粒子の種類の一つ)」のみで構成されている人工原子です。このミューオニウムのエネルギーの状態(エネルギー準位)を正確に測定し、今の「標準理論」が予測するエネルギー準位の理論値と比較することで、「標準理論」の精密検証と、「標準理論」を超えた新物理探索を目指しています。本研究は、文部科学省科学研究費助成事業基盤研究(S)に採択されています。
内山研究教授は、薬剤耐性菌対策として期待される「抗菌酵素」を活用した新たな動物用抗菌剤の研究開発をしています。薬剤耐性菌とは、抗生物質などの薬が効きにくい、あるいは全く効かない細菌のことで、世界的に大きな問題になっていることから対策が求められています。内山研究教授は、これまで独自に集めた抗菌酵素のデータベースと、コンピューターを使った分子設計技術を使って、高性能な抗菌酵素の創出を目指します。これにより、薬剤耐性菌という世界的課題の解決と、日本のアグリテック分野における国際競争力の強化に貢献することが期待されています。
狩野研究教授は、強誘電体(電場をかけなくても物質内部の電荷が偏り、分極している物質)においてバンド構造(物質中の電子が取りうるエネルギーの状態を表す構造)が傾いていること発見しました。この発見を基に、導電性(電気を通しやすい性質)を持ち、かつ電気的な性質が方向によって異なる極性物質においても、同様の電気分極が存在するのかどうかを明らかにすることを研究しています。このメカニズムが明らかになることで、次世代のメモリや高効率な太陽電池などの開発に役立つと期待されています。
清家研究准教授は、タンパク質の「スクシニル化」に着目して、T細胞の機能調節とそれによる抗腫瘍効果の制御メカニズムについて、研究をしています。タンパク質の「スクシニル化」は、タンパク質に「スクシニル基」という化学物質が付加される現象で、これによりタンパク質の働きを変化させることが知られています。清家研究准教授は、スクシニル化がミトコンドリアの機能を制御し、その結果としてT細胞の働きに影響を与えているのではないかと考え、そのメカニズムを解明することを目指しています。T細胞は、がん細胞やウイルス感染細胞を攻撃する重要な役割を担っており、本研究によって、T細胞の機能を制御する新たなメカニズムが明らかになれば、より効果的ながん治療法の開発につながることが期待されます。
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【本件問い合わせ先】
岡山大学リサーチ・アドミニストレーター(URA)室
TEL:086-251-8405
小汐由介准教授、植竹智准教授、内山淳平准教授、狩野旬准教授に岡山大学「研究教授」、清家圭介助教に「研究准教授」の称号を付与
2025年12月25日