国立大学法人 岡山大学

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岡山大学開発の内視鏡用機器、大腸癌治療で有用性確認

2013年09月20日

 岡山大学病院光学医療診療部の河原祥朗講師、徳島大学消化器内科の六車直樹講師らの共同研究グループは、大腸癌の内視鏡治療用に河原講師らが開発した「ムコゼクトーム2SB」という機器(デバイス)の有用性を検討し、従来のデバイスに比べ処置時間の短縮、偶発症(合併症)の軽減につながるという結果が得られました。
 本研究成果は、2013年9月9日、欧州消化器内視鏡学会誌『Endoscopy』の電子版に先行掲載され、11月号の本誌に掲載される予定となりました。
 この新しいデバイスを用いることで、大腸癌の新しい内視鏡治療(ESD)がより安全かつ迅速に施行することが可能であることが明らかとなり、今後この治療法のさらなる普及、発展が期待できます。
<業 績>
 岡山大学病院光学医療診療部の河原祥朗講師、徳島大学消化器内科の六車直樹講師らの共同研究グループは、大腸癌の内視鏡治療(内視鏡的粘膜下層剥離術:ESD)に用いる岡山大学が開発した機器(デバイス)「ムコゼクトーム2SB」の有用性を明らかにしました。
 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は、胃癌に対する新しい内視鏡治療法として約10年前に日本で開発され広く普及してきています。この方法が大腸癌の内視鏡治療としても応用されてきていましたが、手技が難しいこと、合併症の頻度が高いことが問題でした。
 岡山大学病院は、2009年6月 30 日に厚生労働省より、この治療法を高度先進医療として承認された全国で最初の認定施設となり、より安全な手技の確立に努めてきました。その結果2012年4月よりこの治療法は保険収載となり、徐々に全国に普及しつつあります。
 河原講師らの研究グループは以前、安全かつ短時間に胃のESDを施行するためのデバイスとしてムコゼクトームを開発し臨床応用してきました。その特徴は、安全に癌の粘膜下層の組織を剥離するために絶縁領域を増やし、流れると合併症をおこす胃の外側向きの電流をカットし内側向きにのみ流れるような設計になっている点です[参考プレスリリース]。
 この技術をさらに発展・応用させ、大腸癌のESD用に新たに開発したムコゼクトーム2SBを今回、徳島大学を中心として従来のデバイスと比較検討したところ、従来のデバイスに比べ処置時間は半分以下となり、偶発症(合併症)につながる危険因子を減らすことが可能であることがわかりました。


     ムコゼクトーム2SB          大腸ESDに使用時の画像

<見込まれる成果>
 早期大腸癌や腺腫に対する従来の内視鏡的粘膜切除術(Endoscopic mucosal resection; EMR)は、スネアーを使用して切除するため、腫瘍径の大きな病変、EMR 時の粘膜下局注による病変の挙上が不良な場合、内視鏡治療後の遺残・再発病変に対する一括切除は困難でした。分割切除となれば、治癒の判定(完全切除)の不確実性や病変の遺残や再発の懸念があり内視鏡的に根治が得られる早期の病変と診断しても、外科的切除が選択される場合がありました。大腸ESDは、従来の内視鏡切除法では切除しきれなかった大きな病変や切除困難な病変に対して一括切除が期待されるため、根治性が高く、その後の詳細な病理組織診断によって明確で適切な治療方針を患者に提示できる優れた手技であり、外科手術と比較して、患者さんの肉体的・精神的負担の軽減と在院日数の大幅な短縮、医療費の軽減につながります。
 今回、岡山大学病院で開発されたムコゼクトーム2SBを用いることで、従来の方法よりも短時間で安全に大腸ESDが可能となることが明らかになりました。このことから、今後大腸癌の内視鏡治療の発展、大腸癌患者さん達への侵襲の少ない治療に大きく貢献することが期待できます。

発表論文はこちらからご確認いただけます

発表論文:
Okamoto K, Kitamura S, Muguruma N, Takaoka T, Fujino Y, Kawahara Y, Okahisa T, Takayama T.
Mucosectom2-short blade for safe and efficient endoscopic submucosal dissection of colorectal tumors. Endoscopy. 2013 Sep 9. [Epub ahead of print]

報道発表資料はこちらをご覧ください

<お問い合わせ>
(所属)岡山大学病院光学医療診療部 講師
(氏名)河原祥朗
(電話番号)086-235-7219
(FAX番号)086-235-7670

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