国立大学法人 岡山大学

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Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.76 発行

2020年02月17日

 本学は2月12日、岡山大学の強みのひとつである医療系分野の研究開発の成果について、革新的な技術に橋渡すことのできる基礎研究や臨床現場、医療イノベーションなどに結びつく成果などを英語で世界に情報発信するWebレター「Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)」のVol.76を発行しました。
 2012年より岡山大学では、研究成果や知的財産、技術移転活動などを英語で情報発信するWebマガジン「Okayama University e-Bulletin」を年3~4回発行。世界の大学・研究機関の研究者やマスコミ関係者などにニュースやトピックスを交えて配信し、岡山大学の海外への情報発信の強化と国際的知名度の向上などを推進しています。
 OU-MRUは、e-Bulletinの姉妹誌として、岡山大学の強みある医療系分野とその融合分野などの更なる増強と本学研究者が同分野で発表したイノベーティブな研究成果を世界にタイムリーに発信するために発行しています。
 本号では、大学院医歯薬学総合研究科(医学系)システム生理学分野の片野坂友紀講師らの筋ジストロフィーに合併する心筋症発症のしくみを解明した研究成果について紹介しています。
 片野坂講師と本学客員研究員の氏原嘉洋博士(当時・川崎医科大学講師;現・名古屋工業大学准教授)は、神戸大学大学院医学研究科の金川基講師および川崎医科大学の研究グループと共同して、筋ジストロフィーに合併する心筋症発症のしくみを解明し、心機能を改善する新しい治療薬候補を開発しました。
 筋ジストロフィー症は、全身の筋力低下、吸器障害、心筋障害などさまざまな機能障害や合併症を伴う重篤な疾患です。なかでも、心筋症は重篤な疾患であり、心移植以外に有効な治療法がないために、主要な死因となることが知られています。今回の研究では、「福山型筋ジストロフィー症」に合併する心筋症の発症のしくみを明らかにする研究を行いました。
 研究では、福山型筋ジストロフィー症の原因遺伝子であるフクチン遺伝子を欠損させたマウスを作出しました。これは、福山型筋ジストロフィー患者の心病態を再現する世界で初めての疾患モデルです。また、このモデルマウスの心臓は、高血圧などの血行力学負荷に対して適応的な応答ができず、たちまち心不全を引き起こしてしまうことが明らかとなりました。さらに、このマウスの心筋細胞の形態および機能解析によって、収縮軸に沿った微小管の重合が収縮の抵抗になっていることが明らかとなりました。過重合した微小管をコルヒチンという薬剤で壊すと、心筋細胞の収縮力低下が改善されただけでなく、心筋症を呈していたマウスの心形態と心機能が改善され、マウスの寿命を延ばすことができました。
 今回の研究成果は、原因不明だった福山型筋ジストロフィーに合併する心筋症の発症機序が明らかになり、新たな治療法が見出されました。これは筋ジストロフィー症に苦しむ数多くの人を救う新たな治療方法を提案するだけではなく、広く心不全や骨格筋病態を対象とした治療研究に対しても、重要な起点となることが期待されます。
 岡山大学は、2013年8月に文部科学省がわが国のさらなる大学研究力向上や国際的な研究競争力強化等のために全国の大学・研究機関から選定した、「研究大学強化促進事業」の選定大学(国内19大学)です。世界で研究の量、質ともに存在感を示す「リサーチ・ユニバーシティ(研究大学):岡山大学」の構築のため、強みある分野の国際的な情報発信を力強く推進しています。今後も強みある医療系や異分野融合から生み出される成果を産学官民共創のオープンイノベーションの加速や社会、医療現場が求める革新的技術、健康維持増進により早く届けられるように研究開発を推進していきます。
 なおOU-MRUは、文部科学省「研究大学強化促進事業」の一環として実施されています。

Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.76:The molecular pathogenesis of muscular dystrophy-associated cardiomyopathy


<Back Issues:Vol.68~Vol.75>
Vol.68:Improving the diagnosis of pancreatic cancer (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)岡田裕之教授、松本和幸助教)
Vol.69:Early Gastric Cancer Endoscopic Diagnosis System Using Artificial Intelligence (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)河原祥朗教授)
Vol.70:Prosthetics for Retinal Stimulation (大学院ヘルスシステム統合科学研究科 松尾俊彦准教授&大学院自然科学研究科(工学系)内田哲也准教授)
Vol.71:The nervous system can contribute to breast cancer progression (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)神谷厚範教授)
Vol.72:Synthetic compound provides fast screening for potential drugs (大学院医歯薬学総合研究科(薬学系)加来田博貴准教授)
Vol.73:Primary intraocular lymphoma does not always spread to the central nervous system (大学院ヘルスシステム統合科学研究科 松尾俊彦教授)
Vol.74:Rising from the ashes-dead brain cells can be regenerated after traumatic injury (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)阿部康二教授、山下徹講師)
Vol.75:More than just daily supplements-herbal medicines can treat stomach disorders (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)高原政宏医員)


<参考>
「Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)」バックナンバー
岡山大学国際Webマガジン「Okayama University e-Bulletin」


【本件問い合わせ先】
総務部 広報課
TEL:086-251-7293
E-mail:www-adm@adm.okayama-u.ac.jp

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