国立大学法人 岡山大学

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Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.81 発行

2020年10月07日

 本学は10月7日、岡山大学の強みのひとつである医療系分野の研究開発の成果について、革新的な技術に橋渡すことのできる基礎研究や臨床現場、医療イノベーションなどに結びつく成果などを英語で世界に情報発信するWebレター「Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)」のVol.81を発行しました。
 2012年より岡山大学では、研究成果や知的財産、技術移転活動などを英語で情報発信するWebマガジン「Okayama University e-Bulletin」を年3~4回発行して来ました。またAAAS(American Association for the Advancement of Science)が提供する、世界最大規模のオンラインニュースサービス「EurekAlert!」を利用し、世界の大学・研究機関の研究者やマスコミ関係者などにニュースやトピックスを交えて配信し、岡山大学の海外への情報発信の強化と国際的知名度の向上などを推進しています。
 OU-MRUは、e-Bulletinの姉妹誌として、岡山大学の強みある医療系分野とその融合分野などの更なる増強と本学研究者が同分野で発表したイノベーティブな研究成果を世界にタイムリーに発信するために発行しています。
 本号では、大学院ヘルスシステム統合科学研究科ナノバイオシステム分子設計学研究室の妹尾昌治教授と杜娟(Juan Du)博士(研究当時:大学院自然科学研究科博士後期課程)らのiPS細胞を用いた化学物質の発がん性判定方法の開発について紹介しています。
 妹尾教授と杜博士の研究グループは、iPS細胞を利用して、がん幹細胞の自然発生を観察する形で化学物質の危険性を評価するという、世界初の試みに成功しました。炎症に関連する物質を複数分泌しているがん細胞株の培養上清に着目し、これががんの微小環境を再現していると考え、その存在下に種々の化学物質を添加してマウスのiPS細胞を培養し、iPS細胞ががん幹細胞へ誘導される時間を調べました。その結果、化学物質を添加しない条件では通常2~4週間でがん幹細胞へ変化しますが、約100種類の化学物質を調べたところ、1週間でがん幹細胞へ変化させるものを3種類見つけることができました。
 今回の研究成果は、がん幹細胞の発生を促す化学物質を1週間で見出すことを可能にしたことです。この方法で陽性を示す物質はさらに詳細な評価が必要ですが、1次評価としてできるだけ多くの化学物質を短時間で評価するという点で優れた評価方法と言えます。がんは私たちの生命を脅かす存在です。私たちの環境を取り巻く化学物質の安全性評価はこれからも重要な意味を持つでしょう。本方法の今後の応用が期待されます。
 岡山大学は、2013年8月に文部科学省がわが国のさらなる大学研究力向上や国際的な研究競争力強化等のために全国の大学・研究機関から選定した、「研究大学強化促進事業」の選定大学(国内19大学)です。世界で研究の量、質ともに存在感を示すリサーチ・ユニバーシティ(研究大学):岡山大学を構築し、「岡山から世界に新たな価値を創造し続けるSDGs推進研究大学」となるため、強みある医療系分野などの国際的な情報発信を力強く推進しています。今後も本学から生み出される成果を産学官民共創のオープンイノベーションの加速や社会、医療現場が求める革新的技術、健康維持増進により早く届けられるように研究開発を推進していきます。
 なおOU-MRUは、文部科学省「研究大学強化促進事業」の一環として実施されています。

Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.81:Innovative method for determining carcinogenicity of chemicals using iPS cells.


<Back Issues:Vol.73~Vol.80>
Vol.73:Primary intraocular lymphoma does not always spread to the central nervous system (大学院ヘルスシステム統合科学研究科 松尾俊彦教授)
Vol.74:Rising from the ashes-dead brain cells can be regenerated after traumatic injury (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)阿部康二教授、山下徹講師)
Vol.75:More than just daily supplements-herbal medicines can treat stomach disorders (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)高原政宏医員)
Vol.76:The molecular pathogenesis of muscular dystrophy-associated cardiomyopathy (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)片野坂友紀講師)
Vol.77:Green leafy vegetables contain a compound which can fight cancer cells (大学院環境生命科学研究科(農学系)中村宜督教授)
Vol.78:Disrupting blood supply to tumors as a new strategy to treat oral cancer  (大学院医歯薬学総合研究科(歯学系)河合穂高助教)
Vol.79:Novel blood-based markers to detect Alzheimer's disease  (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)阿部康二教授)
Vol.80:A novel 3D cell culture model sheds light on the mechanisms driving fibrosis in pancreatic cancer  (大学院ヘルスシステム統合科学研究科 狩野光伸教授&大学院医歯薬学総合研究科(薬学系)田中啓祥助教)


<参考>
「Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)」バックナンバー
岡山大学国際Webマガジン「Okayama University e-Bulletin」


【本件問い合わせ先】
総務部 広報課
TEL:086-251-7293
E-mail:www-adm(a) adm.okayama-u.ac.jp
※@を◎に置き換えています。

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