乳酸脱水素酵素アイソザイム, lactate dehydrogenase isozyme

臨床的意義
 
乳酸脱水素酵素(LDH)は、NAD+ 、NADHを補酵素とし、乳酸+NAD+ ピルビン酸+NADH+H+の反応を触媒する酵素で体内組織中に広く分布し、解糖系の末端に位置して、嫌気条件下のエネルギー生産に重要な役割を果たしている。LDHはアミノ酸組成の異なるH型(心筋型)とM型(骨格筋型)の2つのサブユニットからなる4量体で、電気泳動法で易動度の早い分画からLD1(H4),LD2(H3M1),LD3(H2M2),LD4(H1M3),LD5(M4)に分画される。心、腎、赤血球などは主としてLD1,2を含み、肝、骨格筋はLD4,5を主成分とし、肺、副腎、甲状腺など中間の易動度の分画を多く含む。血清中の総LDH活性の上昇は、心、間、腎などの各種疾患、悪性腫瘍、白血病、悪性貧血などに見られ、これらの疾患の診断、経過観察に参考になるが、特異性の低いのが欠点である。このために、アイソエンザイムの分画測定が、血液、肝、筋、腫瘍性疾患、心筋梗塞などの診断上重要視されている。

異常値を示す疾患

アイソエンザイム異常

アイソエンザイムの由来

疾患

LDH1↑,LDH2 心筋・腎 心筋梗塞・腎梗塞
赤血球 血管内溶血・悪性腫瘍・溶血性貧血
筋ジストロフィー
LDH2↑ またはLDH2↑ ,LDH3 白血球細胞 白血病(LDH2>LDH3)
腫瘍 リンパ肉腫・癌
肺梗塞
LDH5↑ 急性肝炎・脂肪肝・原発性肝癌・うっ血肝
筋・皮膚 筋ジストロフィー・皮膚筋炎
腫瘍

測定機器・用具
1)電気泳動:電子冷却泳動装置 TC-3型 (萱垣医理科工業株式会社)
2)デンシトメトリー:ENSITRON MODEL PAN-FV (株式会社常光)
3)アガロース支持体:ユニバーサルゲル/8 (株式会社ヘレナ研究所)
4)染色液:LDHテスト-EPケミファ96回用(日本ケミファ株式会社)

測定方法
 
電気泳動で分離された血清中の乳酸脱水素酵素(LDH)アイソザイムは気質である乳酸をNAD+存在下、ピルビン酸に脱水素化する。この際、生成するNADHジアフォラーゼ存在下NTBを還元し、LDHアイソザイム活性に対応する紫色の不溶性ジボルマザンを生成する。

操作のステップ
1)血清の塗布
2)電気泳動(100V,50分)
3)LD活性染色
4)停止・固定(5%酢酸溶液)
5)水洗・乾燥
6)デンシトメトリー(570nm)

基準範囲

LD総活性 120〜240 U/L
LD1 16.5〜29.4 %
LD2 30.7〜41.4 %
LD3 20.1〜28.5 %
LD4 6.2〜13.2 %
LD5 4.8〜11.8 %

小児の基準値
 
LD1は新生児期には低く、平均値が成人の下限値くらいであるが、漸増して数ヶ月で対成人値比が約1.2になり以降は漸減して成人値になる。LD2は新生児期からだいたい成人値と同じ値である。LD3は新生児期からだいたい成人値と同じ値であるが、数ヶ月で対成人値比が約0.8になり以降は漸増して成人値になる。LD4は新生児期からだいたい成人値と同じ値である。LD5は新生児、乳児期に対成人値比約0.8であるが以降は漸増して学童期には成人値になる。いずれも全年齢を通じて性差はない。

採取容器:茶)生化学一般用分離剤入り試験管

検体採取・測定条件
・ 赤血球中には、血清に比し約200倍の活性があるから、少しの溶血でも高値となる。
・ 冷蔵庫に保存した血清LDHの活性が低下するのはLDH4・5分画の失活による。

関連項目


LD(LDH)
AST(GOT)
ALT(GPT)
ALP
LAP

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