クレアチニン, Cr(Creatinine),CRTN


臨床的意義
 クレアチニンは、クレアチンの脱水物で、生体内では筋、神経内で、クレアチンリン酸から直接に、またクレアチンの脱水によって生成され、血中に出現し、腎糸球体から濾過された後、ほとんど再吸収されずに尿中に排泄される。その尿中排泄量は、主として筋肉のクレアチン総量(筋の総量)に比例し、成人では体重kg当たりほぼ一定で、食事性因子や尿量などにほとんど影響されない。また、血清クレアチニン濃度はGFRと密接な関係があり、腎能障害の指標としてBUNより正確であり、人工透析療法などの普及につれて、その適応及び経過判定にBUNと血清クレアチニンとの同時測定が行われ、BUN/Cr比が、病態の把握に利用されている。

異常値を示す疾患
高値: 腎不全、急性糸球体腎炎

低値: 重症筋ジストロフィー症、尿崩症

測定機器: 日本電子BM8040(血清)(平成26年3月24日より)
        
日本電子BM6050(尿)

        
日本電子BM2250(血清)(平成18年7月18日より平成26年3月20日まで)
        
日本電子BM1650(尿)

        
日立7350自動分析装置(血清)(平成18年7月14日まで)        
        
日立7070自動分析装置(尿)

測定試薬: ミズホメディー(酵素法)(平成18年7月18日より)
              
CRE−Lカイノス社(酵素法)(平成18年7月14日まで)

測定方法
クレアチニン定量
(1)Jaffe反応:クレアチニンは、アルカリ性溶液中でピクリン酸と反応して橙赤色のcreatinine picrate (クレアチニンとピクリン酸の互変体)となる性質を利用している。ただし、クレアチニン同様にピルビン酸、ブドウ糖、蛋白、ビリルビン、アスコルビン酸なども反応するため、真のクレアチニンよりも高値を示す。

(2)酵素法(クレアチナーゼ‐ザルオキシダーゼ‐POD法):クレアチニンはクレアチナーゼ(CRN)の作用でクレアチンとなり、さらにクレアチナーゼによってザルコシンを生じ、ついでザルコシンオキシダ‐ゼによって過酸化水素が生成される。次にペルオキシダーゼの共存で各種色原体より生成するキノン色素を定量する。第2試薬にはクレアチニン由来の過酸化水素の分解を防ぐためカタラーゼの阻害剤であるアジ化ナトリウムが含まれている。以下に、色原体に、3‐ヒドロキシ‐2,4,6‐トリヨード安息香酸(HTIB)と4‐アミノアンチピリンを用いる方法(カイノス社)について記す。

A. 前処理反応:   

              CR
クレアチン+H2O     ----->        ザルコシン+尿素………(1)
             SOX
ザルコシン+O2+ H2O  ----->     グリシン+HCHO+H2O2………(2)       
            カタラーゼ
       2 H2O    ----->       O2+2H2O  
           
B. 本反応: 
              CRN
クレアチニン+ H2O   ------->    クレアチン 

 ついで上記A(1)と(2)反応
              POD
  H2O2+HTIB+4‐AAP ------->    キノン色素(λmax 515nm)

計算
クレアチニン量(mg/dl)=検体の吸光度/標準液の吸光度×標準液の表示値(mg/dl)

基準範囲(酵素法)   血清: 男性   0.65〜1.07 mg/dL 女性   0.46〜0.79 mg/dL(平成27年7月1日より共用基準範囲へ変更) 
        血清: 男:0.60〜1.10 mg/dL、女:0.45〜0.80 mg/dL(岡山県医師会制定)(平成16年4月より 平成27年6月30日まで)                   0.44〜1.04 mg/dL (相関:Y=1.000X-0.023  従来法:X)
                          
0.59〜1.24 mg/dL(平成6年8月まで)

                尿: 1.0〜1.5 g/day
                  
相関
血清
平成18年7月18日
X=旧機器、旧試薬
Y=新機器、新試薬
Y=1.01X+0.01 r=0.9998  n=200

尿
平成18年7月18日
X=旧機器、旧試薬
Y=新機器、新試薬
Y=1.11X+1.79 r=0.999  n=200

小児の基準値
 
生後直後から2日位は成人より少し高い値(0.6〜2.1mg/dL)をとり、5、6日で0.2〜0.7mg/dLに減少した後、成人になるまで徐々に増加する。

BUN/Cr比
クレアチニンは腎外性因子の影響を受けにくく、BUN/Cr比が病態を判断する材料になる場合がある。

BUN/Cr>10:@過剰タンパク摂取、A腸肝出血、B熱傷、高熱、大量ステロイド投与、消耗性疾患などの体タンパク異化亢進時、尿素再吸収増大、C尿路不完全閉塞、D尿管直腸吻合、E脱水症、重症心不全、大量出血で急に腎血流が低下した時など

BUN/Cr<10:@低タンパク食療法、A透析療法施行時など

生理的変動
・ 成人では女子より男子の方が高い。
・ 日内変動は夕方が高値を示す。
・ 年齢、性別、体重が排泄量に影響する。


eGFR(糸球体濾過量):適用;18歳以上(平成19年12月17日より計算値表示)
単位:mL/min/1.73u

平成21年1月5日より(2008年5月30日 第51回日本腎臓病学会学術総会発表よる処置)
男性
194×Age-0.287×Cr-1.094
女性:194×Age-0.287×Cr-1.094×0.739


平成21年1月4日まで
男性:175×Age-0.203×Cr-1.154×0.741
女性:175×Age-0.203×Cr-1.154×0.741×0.742



CKDのステージ分類

ステージ 説明 GFR
mL/min/1.73m2

関連事項

1 腎障害は存在するが、GFRは正常または増加している 90以上 アルブミン尿、蛋白尿、血尿
2 腎障害が存在し、GFRが軽度低下している。 60〜89 アルブミン尿、蛋白尿、血尿
3 中等度のGFR低下 30〜59 慢性腎機能不全
初期腎機能不全
4 高度のGFR低下 15〜29 慢性腎機能不全
進行期腎機能不全
末期腎不全前期
5 腎不全 15未満 腎不全、尿毒症、末期腎不全

CKD診療ガイド(日本腎臓学会編)より抜粋


採取容器:茶)生化学一般用分離剤入り試験管

関連項目

クレアチン
尿素窒素(UN)
ナトリウム(Na)
カリウム(K)
クロール(Cl)  

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