国立大学法人 岡山大学

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Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.88 発行

2021年02月22日

 本学は2月22日、岡山大学の強みのひとつである医療系分野の研究開発の成果について、革新的な技術に橋渡すことのできる基礎研究や臨床現場、医療イノベーションなどに結びつく成果などを英語で世界に情報発信するWebレター「Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)」のVol.88を発行しました。
2012年より岡山大学では、研究成果や知的財産、技術移転活動などを英語で情報発信するWebマガジン「Okayama University e-Bulletin」を年3~4回発行して来ました。またAAAS(American Association for the Advancement of Science)が提供する、世界最大規模のオンラインニュースサービス「EurekAlert!」を利用し、世界の大学・研究機関の研究者やマスコミ関係者などにニュースやトピックスを交えて配信し、岡山大学の海外への情報発信の強化と国際的知名度の向上などを推進しています。
 OU-MRUは、e-Bulletinの姉妹誌として、岡山大学の強みある医療系分野とその融合分野などの更なる増強と本学研究者が同分野で発表したイノベーティブな研究成果を世界にタイムリーに発信するために発行しています。
本号では、岡山大学中性子医療研究センター(NTRC)の道上宏之准教授らの“ホウ素”と“ペプチド”でがんをやっつける!がん治療法・BNCTに利用可能なホウ素薬剤の高性能な新薬を開発する研究成果について紹介しています。
 がん治療法のBNCT(ホウ素中性子捕捉療法)は、がん患者へホウ素薬剤を点滴し、目標とするがん部位に到達したタイミングで中性子を照射し、ホウ素と中性子の核反応によりがん細胞を殺傷する、新しいタイプのがん治療法です。2020年6月より日本国内で、再発の頭頚部がんに対し保険診療が開始されました。BNCTの成否を分けるのは、「ホウ素薬剤をいかにして、効率的に、確実にがん細胞へ取り込ませるか」という点です。
 今回、道上准教授らは、ペプチドにより構成されるナノ粒子とホウ素薬剤(BSH)を混合するだけで容易に作成可能な世界初のホウ素薬剤を開発しました。この薬剤は、従来のホウ素薬剤(BSH)では難しかった、がん組織への高い集積性と、がん細胞内部まで到達するという、新しい機能を有しています。さらに従来薬剤(BSH)と比較して数十倍高いホウ素濃度の細胞内取り込みになることも確認しました。今回利用したペプチドナノ粒子は、ライフサイエンス分野で実用化開発を行っている株式会社スリー・ディー・マトリックスより無償提供いただいており、今後の共同研究開発を目標に活動しています。
 今回の発明は、今後のBNCTがん治療に使用可能な新しいホウ素薬剤の候補薬剤へ寄与できることが期待されます。
 岡山大学は、2013年8月に文部科学省がわが国のさらなる大学研究力向上や国際的な研究競争力強化等のために全国の大学・研究機関から選定した、「研究大学強化促進事業」の選定大学(国内19大学)です。世界で研究の量、質ともに存在感を示すリサーチ・ユニバーシティ(研究大学):岡山大学を構築し、「岡山から世界に新たな価値を創造し続けるSDGs推進研究大学」となるため、強みある医療系分野などの国際的な情報発信を力強く推進しています。今後も本学から生み出される成果を産学官民共創のオープンイノベーションの加速や社会、医療現場が求める革新的技術、健康維持増進により早く届けられるように研究開発を推進していきます。
 なおOU-MRUは、文部科学省「研究大学強化促進事業」の一環として実施されています。

Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.88:Nanotechnology for making cancer drugs more accessible to the brain


<Back Issues:Vol.80~Vol.87>
Vol.80:A novel 3D cell culture model sheds light on the mechanisms driving fibrosis in pancreatic cancer (大学院ヘルスシステム統合科学研究科 狩野光伸教授&大学院医歯薬学総合研究科(薬学系)田中啓祥助教)
Vol.81:Innovative method for determining carcinogenicity of chemicals using iPS cells (大学院ヘルスシステム統合科学研究科 妹尾昌治教授&杜娟博士)
Vol.82:Making memories — the workings of a neuron revealed (異分野基礎科学研究所 墨智成准教授)
Vol.83:Skipping a beat — a novel method to study heart attacks (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)高橋賢研究准教授)
Vol.84:Friend to Foe — When Harmless Bacteria Turn Toxic (大学院医歯薬学総合研究科(薬学系)垣内力教授)
Vol.85:Promising imaging method for the early detection of dental caries (大学院医歯薬学総合研究科(歯学系)島田康史准教授)
Vol.86:Plates and belts — a toolkit to prevent accidental falls during invasive vascular procedures (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)大原利章助教)
Vol.87:Therapeutic potential of stem cells for treating neurodegenerative disease (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)阿部康二教授&山下徹准教授)


<参考>
「Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)」バックナンバー
岡山大学国際Webマガジン「Okayama University e-Bulletin」


【本件問い合わせ先】
総務部 広報課
TEL:086-251-7293
E-mail:www-adm@adm.okayama-u.ac.jp

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