Department of Neurology, Graduate School of Medicine, Dentistry and Pharmaceutical Sciences, Okayama University

プロジェクト

研究グループ

患者数が多く脳神経内科として社会的ニーズも高い分野について研究を進めています。現在の主な研究内容は大きく4本柱となっており、遺伝性疾患・脳卒中・認知症・神経変性疾患というテーマで行っています。

遺伝性神経筋疾患研究グループ

他の領域と比較して、脳神経内科分野では遺伝性疾患の占める位置が大きいです。そのような患者さん、ご家族のDNAについて、次世代シーケンサーなどを利用して全ゲノム配列解析、全エクソーム配列解析などを駆使し、その原因について解析を行います。また結果に応じて、遺伝カウンセリングを提供します。

診断がつかなかった患者さんについては、新たな遺伝子の同定と分子病態機序の解明を目指し研究を行います。特に遺伝性痙性対麻痺や、良性成人型家族性ミオクローヌスてんかん、神経核内封入体病、眼咽頭遠位型ミオパチーなど新たに同定されたリピート伸長病に着目して研究を進めています。

Fig. 1 連鎖解析とハプロタイプ解析から候補領域を絞り込み、近位筋優位遺伝性運動感覚ニューロパチーの原因遺伝子を同定した(Ishiura et al. Am J Hum Genet 2012)
Fig. 2 3つの遺伝子に存在するTTTCAリピート伸長変異が良性成人型家族性ミオクローヌスてんかんの原因であった(Ishiura et al. Nat Genet 2018)。リピートモチーフと表現型の間に強い関連があることを世界に先駆けて示した。
Fig. 3  NOTCH2NLC, LOC642361 (NUTM2B-AS1), LRP12に存在するCGGリピート伸長変異が、白質脳症(神経核内封入体病, NIID)、眼咽頭型ミオパチー(眼咽頭遠位型ミオパチー, OPDM)ならびに両者の特徴を共有する白質脳症を伴う眼咽頭型ミオパチー(OPML)の原因になることを示した(Ishiura et al. Nat Genet 2019)。

脳卒中研究グループ

脳卒中は死因および要介護の原因の上位であり、超高齢化社会を迎えた本邦では重要な社会問題の一つです。脳卒中の約 75%を占める脳梗塞は、血栓溶解療法や血栓回収療法といった再開通療法の発達により治療成績が向上したものの、患者の半数以上が適用外であり、多くは血流不全のまま脳が傷害されます。これに対し、当科では抗酸化・抗炎症作用を介した脳保護療法の開発、失われた神経細胞を再生し機能回復を目的とした細胞治療や神経再生療法に取り組んでいます。

Fig.4 酸化ストレス可視化マウスによる脳梗塞後のin vivo, ex vivoイメージング
脳梗塞後24時間をピークとして強い酸化ストレスがマウス脳内に発生していました。
Fig.5 脳梗塞後のマウス脳内グリア細胞にウイルスベクターに搭載した転写因子(Ascl1, Sox2, NeuroD1)を発現させることで直接、神経系細胞の誘導に成功しました。

認知症研究グループ

認知症患者数は2025年には700万人を超えることが予想されていますが、認知症の発症機序は未だ不明のままであり、根本的治療法はありません。しかし、近年、認知症の約60%を占めるアルツハイマー病において、早期段階から脳血流低下が確認され、病態の進行と相関していること、 生活習慣と密接に関連した血管障害リスク因子の管理が認知機能障害を有意に抑制することが報告されており、新しいアルツハイマー病治療の手がかりとして脳血流と認知機能低下をつなぐメカニズムの解明が期待されています。当科では、モデルマウスを用いて脳血管障害と認知機能の関係や細胞療法による治療法の開発について検討しています。また、患者さんの視線解析による認知機能低下のスクリーニング検査の開発や血清中のペプチド解析による早期診断法の開発にも取り組んでいます。

Fig.6 脳低灌流モデルマウスの作成
マウス総頸動脈にameriod constrictorsを装着し、約1ヶ月をかけ40%程度脳血流量を低下させた慢性脳低灌流モデルマウスを作成しました。
Fig.7 認知課題遂行中の視線解析
認知機能低下に伴い課題遂行中の視線の動きに変化が見られることがわかりました。

神経変性疾患研究グループ

筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄小脳変性症などの神経変性疾患の臨床画像解析を始め、臨床病態診断や遺伝子解析などを行っています。また、臨床より得られた遺伝子変異をもとにモデルマウスを作成し、これら神経変性疾患の病態解明を推進しつつ、遺伝子治療や再生医療の研究を進めています。特に筋萎縮性側索硬化症では、新しい細胞療法をモデルマウスに置いて確立し、ヒト臨床応用の段階に入っています。

Fig.8 トラクトグラフィーによる神経線維束の描出
DTI track moduleを用い、関心領域を赤核−上小脳脚(efferent1)、下オリーブ核-小脳皮質(afferent1)、橋核-中小脳脚(afferent2)に設定した小脳遠心路と求心路を描出しました。
Fig.9 ナノランタンを用いた Ex vivo イメージング
Muse細胞投与群でのみ脊髄でナノランタンシグナルが検出できました。
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 脳神経内科学講座
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