岡山大学 農学部

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天然物有機化学

天然物有機化学 (Applied Natural Product Chemistry)

有機合成化学を基礎とした生命科学研究

教員

Hiromasa KIYOTA 教授 :清田 洋正  Prof. Dr. KIYOTA Hiromasa
E-mail: kiyota@ (@以下はokayama-u.ac.jp を付けてください。)
専門分野: 有機合成化学・天然物有機化学
生命現象に関わる活性物質の合成とその医農薬への応用
Minoru IZUMI 教授:泉  実  Prof. Dr. IZUMI Minoru
E-mail: mizumi@ (@以下はokayama-u.ac.jp を付けてください。)
専門分野: 有機合成化学・糖鎖工学
生理活性物質の効率的合成とその医農薬への応用

主な研究テーマ

天然物有機化学

 運動や成長など身近な生命の働きは、常に目に見えない「低分子」物質(ホルモンやフェロモンなど)によってコントロールされています。人間社会も、作物の増産(ホルモン・肥料)、害虫の駆除(フェロモン・農薬)、病気の治癒(医薬・特保食品)など、生命現象を人の手でコントロールすることで、発展してきました。そして、その手本は常に自然界の生物から手に入れてきました。これが我々の研究する「天然物有機化学」です。例えば、漢方薬から見つけてきた有効成分を自らの手で「合成」し、構造を変えてゆくことで、より効能が強く毒性が弱い物質、即ち「薬」を作り出してゆきます。また、自然界から極めて微量しか得られない物質を大量に合成、試験を行うことで、未解明生命現象を明らかにします。下記のように多様な化合物の合成を達成あるいは挑戦を続けています。また、香気物質の探索や創製、難分解性土壌汚染物質の分解等有機化合物の関わる研究を幅広く行っています。詳しくは下記リンクの研究室HPをご覧下さい。

1.強力な生物活性・特異な構造を有する天然有機化合物の全合成研究

(1)エナシロキシン類は、Frateuria sp.W-315株の生産する抗生物質であり、特異なポリエン-ポリオール構造と、選択的な抗菌活性(タンパク質合成阻害)から注目されています。私達は新規なジアニオン型Cuカップリング反応を開発し、全合成を目指しています。

(2)マオエクリスタルVは、中国産ハーブから単離され、強力な抗ガン作用と複雑な転位骨格を有しています。私達は、高立体選択的なDiels-Alder反応を鍵段階に用いて、合成研究を展開しています。

天然有機化合物

天然有機化合物

2.抗ウィルス(インフルエンザ・コロナ)薬の開発

 リレンザやタミフルなどこれまでの薬(シアリダーゼ阻害剤)には、副作用や抵抗性株の出現などの問題がありました。二フルオロシアル酸は、天然基質により近く、またシアリダーゼと共有結合を形成するという新しい機構で働くことから、次世代のインフルエンザ薬として期待されています(Nat. Commun., 4, 1491 (2013))。

次世代のインフルエンザ薬

次世代のインフルエンザ薬

天然物有機化学(反応)
1.カルシウム情報伝達系解明のための分子プローブの合成

 カルシウムは骨格の構成要素としてだけでなく、ホルモン分泌や神経伝達物質の放出など様々な生理機能の調整において重要な役割を担っている。体内でカルシウムイオンの放出を誘導するセカンドメッセンジャーとしてイノシトール三リン酸 (IP3) が知られていますが、NAADP(Nicotinic acid adenine dinucleotide phosphate)がIP3と同じくセカンドメッセンジャーとして働くことが近年分かりました。しかし、そのメカニズムや機能などについて、まだ解明されていない点が多いです。

 まず、NAADP の三次元構造と類似した立体構造を持つ化合物群を設計し、市販の化合物群をスクリーニングすることで NAADP のアンタゴニストである Ned-19 を発見しました。しかし、用いた Ned-19 はジアステレオマー混合物であったので、立体異性体を作りわけ、それらの活性と作用機構の詳細を明らかにしました。(Naylor, E., et al., Identification of a Chemical Probe for NAADP by Virtual Screening. Nature Chemical Biology, 4, 220-226 (2009))

Ned-19

NAADP受容体アンタゴニスト
Ned-19

2.糖質誘導体の効率的合成とその医薬への応用

糖鎖は生体内で様々な認識を担う分子として注目を集めている。しかしその詳細な機能は構造の複雑さ、および多様性のために未だ不明な点が多い。そこで、化学的方法だけでなく、酵素の利用も含め、糖や糖を含む化合物のライブラリー構築を行い、高機能を有する生体適合材料の探索を行っています。その一例として、自然界には量的には非常に少ないが希少糖と呼ばれる糖が幾つか存在します。しかし、これらの生理活性については十分解明されていない。我々は、この希少糖の新規誘導体の合成を行っています(Identification and Characterization of a Novel Galactofuranose-Specific β-D-Galactofuranosidase from Streptomyces Species, E. Matsunaga et al., PLoS One, DOI:10.1371/journal.pone.0137230 (2015))。

固相合成法

固相合成法

研究業績リスト

・Synthesis of (12R,13S)-Pyriculariol and (12R,13S)-Dihydropyriculariol Revealed that the Rice Blast Fungus, Pyricularia oryzae, Produces these Phytotoxins as Racemates. Y. Nagashima, A. Sasaki, R. Hiraoka, Y. Onoda, K. Tanaka, Z.-Y. Wang, A. Kuwana, Y. Suzuki, M. Izumi, S. Kuwahara, M. Nukina, H. Kiyota, Biosci. Biotechnol. Biochem. 85(1), in press (2021).
・Synthesis of the Oxazolidinone Fragment of Thelepamide. N. Ashida, K. Ida, Y. Koide, C.J. Vavricka, M. Izumi, H. Kiyota, Nat. Prod. Res. , in press.
・Synthetic Studies of Biologically Active Natural Products Contributing to Pesticide Development. H. Kiyota, J. Pestic. Sci., 45(3), 177-183 (2020).
・Microbial α-L-Rhamnosidases of Glycosyl Hydrolase Families GH78 and GH106 Have Broad Substrate Specificities toward α-L-Rhamnosyl- and α-L-Mannosyl-Linkages. F.A.P. Tautau, M. Izumi, E. Matsunaga, Y. Higuchi, K. Takegawa, J. Appl. Glycosci., 67(3), 87-93 (2020).

・Biosynthesis of β-(1→5)-galactofuranosyl chains of fungal-type and o-mannose-type galactomannans within the invasive pathogen aspergillus fumigatus. Y. Chihara, Y. Tanaka, M. Izumi, D. Hagiwara, A. Watanabe, K. Takegawa, K. Kamei, N. Shibata, K. Ohta, T. Oka, mSphere, 5(1), e00770 (2020).
・アノマー位置換による不可逆的シアリダーゼ阻害剤の開発, C. J. Vavricka, T. Matsumoto, H. Kiyota, Trends Glycosci. Glycotech., 32(184), J1-J5 (2020).
・Chemo-enzymatic synthesis of p-nitrophenyl β-D-galactofuranosyl disaccharides from Aspergillus sp. fungal-type galactomannan. R. Ota, Y. Okamoto, C.J. Vavricka, T. Oka, E. Matsunaga, K. Takegawa, H. Kiyota, M. Izumi, Carbohydr. Res., 473, 99-103 (2019).
・サリチルアルデヒド型イネいもち病菌毒素の合成化学的研究. 有機合成化学協会誌, 77(2), 173-180 (2019).

卒業生・修了生進路

・ 大学院進学(岡山大学大学院・京都大学大学院)
・ 官公庁等(化学物質評価研究機構、岡山県)
・ 農医薬品・化粧品メーカー(石原産業、宇部興産、竹本油脂、アース製薬、上村工業、コーセー、タイキなど)、食品メーカー(味の素など)、化学系メーカー(日本合成化学、アデカ、東亞合成,永沢化成工業所, 日東化成、日本山村硝子、ユニチャームなど)、その他(石垣など)

外部リンク

収穫祭ポスター