プラスミノーゲン, PG (plasminogen)

臨床的意義
 
線溶機構は、プラスミノゲン(PG)がプラスミン(PM)となり、フィブリンを溶解することである。PGは肝で産生されて血中に存在し、フィブリン形成時にはこれに取り込まれる。この際、α2-プラスミンインヒビター(α2-PI)により、このフィブリン取り込みは阻害されるが、他方ではα2-PIは第XIII因子を介してフィブリンと架橋結合する。一方、生理的に血管内皮細胞、前立腺や子宮などに存在する組織プラスミノゲン・アクチベータ(t-PA)は、種々の刺激によって放出されると、同様に放出されるプラスミノゲン・アクチベータ・インヒビター(PAI)-1によって、即時的に複合体(t-PA-PAI-1 complex)が形成されて阻害されるが、残部はフィブリン体と結合して強力なPG活性化作用を発揮して、PMを形成してフィブリン分解産物(FDP)をもたらす。一方、PMはα2-PIと複合体(PIC)を形成して失活する。PMの血中半減期は短いため測定は不可能であり、線溶亢進のマーカーは、PGおよびα2-PI減少、およびPICやt-PA-PAI-1複合体の増加として把握し、病態分析を行う。ところで、PAが十分存在してもPGが肝障害で産生低下したり分子異常でPMへの活性化がなされない場合には、線溶亢進がみられず、血栓症に陥る。PGは、肝に産生される分子量88kDaの1本鎖蛋白で、N端にGluをもち、血中に約200mg/l存在し、半減期は2.2日である。PMで限定分解を受けると分子量83kDaでN端にLysをもち、半減期は0.8日となる。これらのPGは5個のクリングル構造をもってフィブリンと結合し、α2-PI、トロンボスポンジン(TSP)やヒスチジン-リッチ-グリコプロテインと親和性を有する。t-PAで活性化されて生じるPMは、上記のそれぞれのPGからGlu-PMおよびLys-PMとなり、さらにLys結合部位やクリングル構造を一部失ったPM(分子量38kDa)も出現する。これらはすべてフィブリン分解能を有する。一方、上記のごとく、PAI-1、α2-PI、α2-マクログロブリン(α2MG)などの阻害要因との関連で、最終的な線溶活性が決定される。線溶酵素のPMの前駆物質のPG測定は臨床上、血栓止血の面から重要であり、一方、肝で産生されることから、その減少は重症肝炎、肝硬変など肝機能低下に起因する場合があり、またDICや各種血栓症などで病態の検査に用いられる。他方、癌腫の転移にはPMが関与するので、この場合の阻害因子(PAI-2)との関連も大切である。先天性PG欠乏症や異常症は血栓症をもたらすことが多く、それらの測定は重要である。

測定機種:
 CS-5100(シスメックス株式会社)(平成26年3月24日より)

ACL TOP(三菱化学ヤトロン社)
(平成18年1月10日より平成26年3月23日まで)
STA(ロシュ・ダイアグノスティック株)(平成18年1月9日まで)
 
基準値: 80〜130%(平成26年3月24日より)(添付書引用)
73〜127%(平成18年1月10日より平成26年3月23日まで) 
75〜120%(平成18年1月9日まで)

相関

y=1.353x-17.193 r=0.983  n=48 
x:旧試薬 y:新試薬(平成18年1月9日) 

 

異常値を示す疾患
高値: 妊娠末期、薬剤投与(蛋白同化ホルモンdanazol、抗糖尿病薬phenformin)

低値: 
先天性欠乏症、先天性異常症、新生児期、肝疾患(肝硬変、肝癌)、DIC、血栓症、線溶剤大量投与時、急性心筋梗塞、大手術の早期、出血時の早期

検体採取・測定条件

3.2%のクエン酸ナトリウム1に血液9の割合で採血し,転倒混和を5〜6回繰り返した後,すみやかに提出する。
・溶血すると不正確になるため注意が必要である。
・検体採取時には,組織トロンボプラスチンの検体への混入を避ける為,ダブルシリンジ法を用いるとよい。

関連項目

プロテインC
プロテインS
フィブリノーゲン量
第VII因子
ヘパプラスチンテスト(HPT)
プロトロンビン時間(PT)
FDP
Dダイマー
トロンビン・アンチトロンビンIII複合体(TAT)
PF1+2
FPA
t−PA−PAI−1複合体
α2−プラスミンインヒビター・プラスミン複合体
α2−PI
PAI−1

先頭に戻る    前ページに戻る