OHNCC 岡山大学病院頭頸部がんセンター

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頭頸部がんの治療

頭頸部癌は病気のできる部位が発声、咀嚼(食べ物をかむこと)、嚥下(水や食べ物を飲み込むこと)、呼吸などの重要な機能を担当する臓器であることに加え、病気や治療により美容的な問題が生じることがあります。放射線治療は臓器機能を温存し、形態を維持することが可能で、患者さんへの肉体的・精神的な負担が少ない治療です。

放射線治療には、外部から照射をする外部放射線治療、密封された放射性同位元素である小線源を腔内あるいは組織内に挿入して治療する密封小線源治療、放射線同位元素を内服したり注射したりして治療する非密封線小源治療があります。

外部放射線治療

外部放射線治療は、外部からX線や電子線を照射してがんを治療します。早期から進行したがんまで幅広く行います。

仰向けに寝ていただき、多くの場合にマスクを装着して行います。1回当たりの治療時間は10分以下で、土曜日・日曜日・祝日以外は毎日行い、治療期間は6〜7週間のことがほとんどです。

外部放射線治療に内服や静脈・動脈(腫瘍を栄養する動脈から直接抗がん剤を注入する治療)からの化学療法を併用したより強力な治療を行うことがあります。

実際の経過ですが、図1は早期喉頭がんで、外部放射線治療により病変は消失し、声帯の機能は維持されています(左:治療前 右:治療後)。図2は上顎がんで外部放射線治療、動脈からの抗がん剤により病変は消失しています(左上:治療前 右上:線量分布図 左下:治療後)。

手術後に再発を予防する目的で行うこともあります。脳や骨など転移のある進行がんに対しても、種々の症状を和らげるためにも外部放射線治療は有効です。

図1:治療前 図1:治療後
図2:治療前 図2:線量分布図 図2:治療後

密封小線源治療

密封小線源治療は、外部放射線治療と比べより限局した治療であるため、副作用の出現範囲も狭いのが特長です。口腔がんでは原発巣がT1〜T2と小さくリンパ節転移のない早期のがんに対して行われます。一時的や永久に小線源を留置しますので、必要な期間は隔離された状態での治療を行います。

@治療方法と線源の種類

組織内照射(Cs-137、Au-198)

腫瘍に線源を直接挿入する方法で、舌がん、口腔底がん、頬粘膜がんに対して行います。

モールド法(Au-198)

表在性腫瘍の表面に線源を密着させるアプリケーターを使用する方法で、歯肉がんや硬口蓋がんに対して行います。口腔底がんでは組織内照射と併用して行う場合が多いです。

腔内照射(Ir-192)

管腔臓器に発生する腫瘍に対して用いられ、当院ではモールド法を併用して口唇がんや頬粘膜がんに対して行います。

ACs-137針による組織内照射

舌がんに対して行います。腫瘍に直接Cs-137針を刺入し、約1週間後(この間、放射線科病棟に隔離入院)に抜去します。(図3、左:舌がん治療前、右:Cs-137針の位置確認のX線写真)

図3:舌がん治療前 図3:Cs-137針の位置確認のX線写真

BAu-198グレインによる組織内照射とモールド法

口腔底、頬粘膜、硬口蓋、歯肉がんや腫瘍経の小さな舌がんに対して用います。線源が小さく、侵襲も少ないため経口摂食が可能です。Au-198は半減期の短い永久刺入線源であるため、刺入後に線源の摘出は必要ありません。隔離入院が必要で放射線が減衰して基準を満たせば(約1週間程度)退室が可能です。

歯肉がんや、歯肉に近接している口腔底がん、硬口蓋がんなどではモールド法を併用します。モールド法は、レジンで作製したアプリケーター(図4左)に線源を封入し、隔離期間中アプリケーターをずっと装着し(図4右)、退室時に取り外します。

図4:アプリケーター 図4:アプリケーター装着

CIr-RALSによる腔内照射(モールド法)

Ir-RALSによる治療の特長は線源を遠隔操作して照射を行うことで術者の被曝を防げること、患者さんが隔離病棟に入る必要がないことです。カスタマイズドモールド法と呼ばれる腔内照射で、組織内照射と比べて低侵襲です。口唇がんや頬粘膜前方部のがんに対して本法を用いて治療を行っています。高齢者や、手術後の一部断端近接・陽性例などに対しても用いることがあります。アプリケーター内にカテーテルを埋入し、照射時にアプリケーターをがんのあるところに装着して治療を行います。

密封小線源治療の中には多くの治療方法がありますが、病変の大きさや併存疾患など患者さんに適した方法を検討して治療しています。

非密封線小源治療

甲状腺がんに対して、I-131カプセルを内服して治療します。ヨード内用療法ともいいます。甲状腺がん術後に対して予防的に内服して更に結果を良くしたり、肺や骨に転移した場合に進行抑制を図ることができます。治療効果あると判断されましたら半年から1年の間に繰り返して治療します。内服後、必要な期間は放射線科の隔離病棟でお一人での生活が必要です。乳頭がん、濾胞(ろほう)がんが対象となります。

骨転移による痛みに対して、薬での鎮痛が不十分だったり外部放射線治療が難しい場合に、Sr-89を注射して痛みを減らすことができます。この治療は外来にて行なっています。

放射線治療には、放射線治療専門医が診療にあたっております。動脈からの抗がん剤投与には、放射線診断専門医でインターベンショナルラジオロジー担当の医師が行うこともあります。外来診察や治療計画、密封小線源治療の刺入など多くの放射線治療で歯科放射線医師と協力して治療をおこなっています。その他にも歯科医師はマウスピースを作成して副作用を減らしたり、治療前に口腔内の処置を行い放射線治療によるトラブルを減らしたり、治療後の様々な症状に対して専門的に治療を行なっています。外部放射線治療では、放射線専門技師・医学物理士・品質管理士による安全で正確な治療に取り組んでおります。放射線治療を行う際には中央放射線部や放射線科病棟の放射線に精通した看護師が看護にあたっています。副作用やがんによる疼痛の管理には薬剤師の協力を得ることもあります。頭頸部癌に対して放射線治療を行う場合には、耳鼻咽喉・頭頸部外科・歯科・形成外科・放射線科・放射線技師・看護師・薬剤師が緊密な連携を行い、多診療科・多職種で協力して疾患や全身状態に適切な集学的診療を実施しています。

放射線科では、これらの他にも最新の診断機器による画像診断や肺・肝臓に転移したがんに対してのラジオ波焼灼療法や、定位放射線治療を行なっています。こちらについては放射線医学のホームページhttp://www.ok-radiology.jp/も是非ご覧になって下さい。

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