国立大学法人 岡山大学

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Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.111 発行

2023年03月03日

 本学は3月3日、岡山大学の強みのひとつである医療系分野の研究開発の成果について、革新的な技術に橋渡すことのできる基礎研究や臨床現場、医療イノベーションなどに結びつく成果などを英語で世界の一般のみなさんなどに届けるWebレター「Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)」のVol.111を発行しました。
 本号では、学術研究院ヘルスシステム統合科学学域(医)生体機能再生再建医学分野(岡山大学病院眼科)の松尾俊彦教授らの「白内障術後に予防的抗菌薬(抗生物質)の全身投与は必要か?」の研究成果を紹介しています。
 松尾教授と本学学術研究院医歯薬学域(医)総合内科の萩谷英大准教授、岡山県真庭市の落合病院薬局の井口真宏薬局長、森里典康薬剤師、同検査科の村﨏辰也技師長らは、2016年4月~2022年10月までに落合病院で行った2149症例の白内障手術を下記の①~⑤の5つの時期に分けて振り返りました。

①抗生物質の点滴を術中に行い、術後2日内服を行った時期
②抗生物質の内服を術前から術後2日まで行った時期
③別の抗生物質を術前から術後まで行った時期
④抗生物質の内服を術前1回だけ行った時期
⑤内服を中止した時期


 今回の調査研究において、上記5つの時期すべてで術後感染は認められませんでした。今回の調査から白内障手術では、感染予防のために抗生物質の全身投与を行う必要はないと言えます。
 白内障手術では、手術3日前から抗生物質の点眼を感染予防として行い、術後も2週間程度、点眼します。手術中は、眼の表面を消毒液イソジンの希釈液で頻回に洗い流しながら、手術を行っています。ヨード・アレルギーの方ではヨードを含むイソジンは使えないので、代わりにクロルヘキシジン希釈液で洗い流しています。このような眼局所の標準的な感染予防を行っている場合、術中、術後の抗生物質の全身投与は必要ないと言えます。
 感染予防としての抗生物質の全身投与で、蕁麻疹などアレルギー反応を起こす方もあり、また、下痢など胃腸症状を起こす場合もあります。白内障手術で感染予防に必要ないのであれば、抗生物質の全身投与はしない方が得ということになります。
 岡山大学は、2013年8月に文部科学省がわが国のさらなる大学研究力向上や国際的な研究競争力強化等のために全国の大学・研究機関から選定した、「研究大学強化促進事業」の選定大学(国内19大学)です。世界で研究の量、質ともに存在感を示すリサーチ・ユニバーシティ(研究大学):岡山大学を構築し、「岡山から世界に新たな価値を創造し続けるSDGs推進研究大学」となるため、強みある医療系分野やその関係する分野の国際的な情報発信を力強く推進しています。今後も本学から生み出される成果を産学官民共創のオープンイノベーションの加速や社会、医療現場やヘルスケアに活かせる革新的技術、健康維持増進により早く届けられるように研究開発を推進していきます。
 なおOU-MRUは、文部科学省「研究大学強化促進事業」の一環として実施されています。

 Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.111:Antibiotics use in cataract surgery.


○Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)
 2012年より岡山大学では、研究成果や知的財産、技術移転活動などを英語で情報発信するWebマガジン「Okayama University e-Bulletin」を年3~4回発行して来ました。またAAAS(American Association for the Advancement of Science)が提供する、世界最大規模のオンラインニュースサービス「EurekAlert!」を利用し、世界の大学・研究機関の研究者やマスコミ関係者などにニュースやトピックスを交えて配信し、岡山大学の海外への情報発信の強化と国際的知名度の向上などを推進しています。
 OU-MRUは、e-Bulletinの姉妹誌として、岡山大学の強みある医療系分野とその融合分野などの更なる増強と本学研究者が同分野で発表したイノベーティブな研究成果を世界にタイムリーに発信するために発行しています。


<OU-MRU Back Issues:Vol.104~Vol.110>
Vol.104:The determinants of persistent and severe COVID-19 revealed (異分野基礎科学研究所 墨智成准教授)
Vol.105:The dynamics of skin regeneration revealed (本学異分野融合先端研究コア 佐藤伸准教授)
Vol.106:The skin electrically modelled (学術研究院保健学域 中村隆夫教授)
Vol.107:COVID-19 mRNA vaccines and fever: A possible new link (学術研究院医歯薬学域(医)頼藤貴志教授)
Vol.108:Track changes: A new test to study cancer progression (学術研究院ヘルスシステム統合科学学域(工)二見淳一郎教授)
Vol.109:Track changes: Eye scratching mechanisms in rats (学術研究院自然科学学域(牛窓臨海) 坂本浩隆准教授)
Vol.110:Respiratory infections and asthma: The COVID-19 connection  (学術研究院医歯薬学域(医)松本尚美助教)


<参考>
「Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)」バックナンバー
岡山大学国際Webマガジン「Okayama University e-Bulletin」


【本件問い合わせ先】
総務・企画部広報課
TEL:086-251-7293
E-mail:www-adm◎adm.okayama-u.ac.jp
※@を◎に置き換えています。

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