輝く法学部生・飛び立つ卒業生(旧・学部長の部屋)
目次
第1回 佐藤吾郎先生(岡山大学大学院法務研究科長)~中四国で初、唯一の「法曹コース」について聞く~
第2回 岡部紅里さん(法学部4年生)、園田慎さん(法学部3年生)聞き手:濵田陽子准教授(法友会顧問)
第3回 小塚真啓准教授 ~ご近刊『高校生のための税金入門』についてお伺いしました~
第4回 槇遥希さん(法学部4年生)
第5回 吉田光宏さん(岡山県産業労働部次長)河原礼奈さん(岡山県総合政策局公聴広報課)
第6回 松本颯太さん(法学部4年生)
第7回 上田彩夏さん(法学部4年生)
第8回 土岐将仁准教授
第9回 佐藤吾郎先生(岡山大学大学院法務研究科長)
第10回 東原佑翔さん、宮本大雅さん、渡邊裕樹さん (岡山大学法務研究科 院生)
第11回 尾原玲花さん(法学部4年生)
第12回 河津拓未さん(岡山大学生協ブックストア)、中島一彰さん(岡山大学生協食堂)
第13回 園田慎さん(法学部4年生)、清原和昭さん(法学部3年生)、濵田陽子先生(法友会顧問)~法学部公認サークル「法友会」の内閣総理大臣表彰を祝して~
第14回 朴志善WTT助教
第15回 広川千晴さん、川口美悠さん ~法学部卒業生の司法試験合格を祝して~
第16回 北川咲玲さん(法学部4年生)~子ども虐待防止のオレンジリボン運動について~
第17回 山地真美さん(情景描写ピアニスト)
第18回 内海早稀さん(法学部4年生)
第19回 森田陽果莉さん(法学部4年生)、宮本あゆはさん(法学部4年生)
第20回 黒﨑(旧姓居安)裕美さん(岡山大学職員)
第21回 神保 吉寿さん(株式会社チェンジ代表取締役兼執行役員会長)
第22回 井上倖希さん(法学部4年生)
第23回 高山蓮汰さん(法学部1年生)
第24回 渡邊紗千さん(法学部3年生)
第25回 國貞智子さんと豊川諒さん(司法書士)
第26回 加藤渉さんと菊地葵衣さん
第27回 岡田英樹さん(外務省在スーダン日本国大使館三等書記官)
第28回 藤井紗希さん(法学部4年生)
第29回 岡田美奈子さん(RSK山陽放送)
第30回 坂東優毅さん(法学部2年生)
スピンオフ企画「街で出会える卒業生」連載第1回 酒井政徳さん(カフェZ)
スピンオフ企画「街で出会える卒業生」連載第2回 原田君帆さん(ターブルハラダ)
スピンオフ企画「街で出会える卒業生」連載第3回 杉本克敬さん(ぱんだこーひー)
第31回 澁谷香澄さん(法学部3年生)、和田涼花さん(法学部3年生)
第32回 李英専任講師
第33回 増原七海さん、高橋唯さん、藤原新汰さん、越智悠葵さん ~法学部卒業生の司法試験合格を祝して~
第34回「特集 音楽の世界で活躍する卒業生」連載第1回ゲスト:室田夏海さん
第35回「特集 音楽の世界で活躍する卒業生」連載第2回ゲスト:占部貴大さん
第36回 福本唯央那さん(法学部3年生)
第37回 川野晋平さん(国際通貨基金(IMF))
第37回 川野晋平さん(国際通貨基金(IMF))
黒神:今日のお客様は、法学部卒業生で、現在、ワシントンD.C.にある国際通貨基金(IMF)(Global Partnerships Division, Institute for Capacity Development(ICD))にお勤めの川野晋平さん(岡山朝日高校卒)です。川野さんは、法学部を卒業後、財務省に入省されました。その後、財務省在職中に、イギリスのクランフィールド大学に留学の機会を得て経営学修士号を取得されました。現在はIMFに職員として派遣されておられます。このたびは役所の留学制度や国際機関での職場の様子をはじめこれまで歩んで来られた道そのものがとても興味のあることばかりです。私が把握している限り、現在国際機関で勤務しているのは川野さんだけだと思いますので、とてもワクワクしております。本日は、よろしくお願いいたします。
川野:「よろしくお願いします。」
黒神:「川野さんは、大学時代、国際関係法のゼミに所属しておられましたね。ASEAN憲章と共同体のあり方についてゼミ論文を書いておられたように記憶しています。」
川野:「はい、当時は漠然と海外に興味があり、国際法模擬裁判大会にゼミ生で出場したり、オーストラリアのアデレード大学の語学研修に参加しました。」
黒神:「もともと財務省を志望しておられたんですか。」
川野:「いえ、民間企業も受けましたし、中央省庁をいくつか回った中で、財政政策のみならず、国際関係を所管する部局があること、お話を聞いた職員の方に魅力を感じて、財務省に決めました。」
黒神:「財務省では主にどんな仕事をされてたんでしょうか。」
川野:「1年もしくは2年間隔で異動があり、外務省の予算査定、外国為替等のマーケットのモニタリング、また北海道財務局に出向し、信用金庫等の金融監督や地域経済の統計調査業務に従事しました。」
黒神「在職中に留学されましたが、もともと留学制度には興味があったんですか。」
川野:「はい、入省当時から、将来、国際機関での勤務を視野に入れ、修士号取得は必須と考えていたため、留学制度を活用したいと希望を出しており、運よく、その機会をもらいました。」
黒神:「1年間のコースと伺いましたが、ハードだったんではないでしょうか。」
川野:「大学時代より頑張りました(笑)。毎日の授業やグループワークに加え、学外でのケースコンペティション等へも参加し、限られた休日にはイギリス内外に旅行に出かけるなど、忙しい日々でした。言葉の壁は当然ながら、多様なバックグラウンドを持ったクラスメイトと共に、レポートやプレゼン資料を作成する際には、意見がぶつかることも多かったです。」
黒神:「留学中に得られたことはどんなことでしょうか。」
川野:「統計学、会計学、組織運営論など幅広い分野での基礎知識を得られたことはもちろん、コミュニケーション能力を養うことができたこと、また、濃密な時間を、30名程度の同世代の仲間と過ごしたことが一番の財産かと思います。今でも彼らとは、定期的に近況報告をしております。」
黒神:「とても有意義な期間だったんですね。それからちょうどコロナ禍の3年ほど日本におられましたが、その後、現在のIMFに派遣され、現在に至るわけですね。その経緯についてお聞かせいただけますか。」
川野:「留学後は、国際関係を所管する部局で、公的対外債務の履行が困難となったザンビア、チャド、エチオピアといった国々に対する債務再編に携わったり、また、IMFの政策に対する日本としての立場を検討・立案する部署に在籍し、現在の業務と親和性のある経歴を経たことが、こうして派遣されるに至った背景かと思います。」
黒神:「IMFではどのような業務に携わっておられるんですか。」
川野:「IMFと聞いて、世界各国のマクロ経済分析や対外的な支払い困難に陥った国への融資をイメージする方が多いかと思います。もう1つ、主要な業務として、途上国政府当局へ財政・金融、最近では気候変動、デジタル、ジェンダーといった分野において、能力開発(キャパビル)を目的とした技術支援や研修を行っており、私の部署は、そうした『能力開発商品の営業』を先進国等へ行い、賛同するパートナー国に資金貢献をしてもらうよう、アウトリーチ活動を担っております。」
黒神:「国際機関という職場と日本の職場との共通点や相違点について教えてもらえますか。」
川野:「共通点は、IMFも官僚機構であり、仕事の進め方は財務省と通じるところがあります。相違点としては、IMFでは、各人の担当業務がより細分化されている分、1人ひとりの裁量は広いように感じます。なお、日本は、IMFに対する出資比率では、米国に次ぐ第2位ですが、日本人職員の比率は少なく、私が所属しているICDでは、約200人程度の職員に対して私を含め2名だけです。日本政府としてIMFに限らず、国際機関の多くで、日本人職員の登用に力を入れていますし、皆さん、是非、将来の選択肢の1つとして考えてみてはいかがでしょうか。」
黒神:「現在の職場で心掛けていることなどありますか。」
川野:「コーヒーチャットですね。積極的に上司・同僚をコーヒーに誘って、情報交換のためのコミュニケーションを取るようにしています。国際機関では特に、人脈(ネットワーク)作りが大切です。後は、会議等で発言する際に、自分の考え方を回りくどい言い回しはせず、論理的に分かりやすく説明する必要があります。いずれも、毎日、内省の繰り返しです(笑)。」
黒神:「勤務の条件などは日本と違いますか。」
川野:「業務開始・終了時間の概念がなく、子供の保育園への送り迎えをした上で出勤したり、テレワークも含め、働き方は非常に柔軟です。皆、有給休暇はしっかりと消化していますし、私自身、昨年、有給休暇に加え、1ヵ月間の育児休暇を取得しました。」
黒神:「日本の職場も更なる努力が必要ですね(笑)。」
黒神:「今後の抱負などお聞かせいただけますか。」
川野:「各国から優秀な人材が集まる職場で、改めて私が『売り込める』専門性の必要性を実感しています。実は、仕事の合間を縫ってメリーランド大学に通って、応用経済学修士号を取得予定です。足元は、経済学的な思考を更に磨いていくことで、将来の仕事にこれまで得た知識と経験を最大限に生かしていければと思っています。」
黒神:「まだまだ学ぶことを続けられているとは、素晴らしいですね!今後のますますのご活躍を期待しています。これからも応援しております!本日は、お忙しいところ、母校のために時間を作ってくださり、本当にありがとうございました!」
川野:「ありがとうございました!」
(この対談は、2024年2月6日に行ったものです。)
2024年3月5日
第36回 福本唯央那さん(法学部3年生)
黒神:「今日のお客様は、法学部3年生の福本唯央那さん(鳥取県立米子東高校卒)です。福本さんは、去る8月15日~17日に開催された「令和5年度安来節全国優勝大会」の一般・准師範・絃の部で見事優勝の栄誉に輝きました。三味線で日本一になるに至った経緯や、我々が普段知り得ない安来節の魅力などについてお伺いしたいと思いますので、本日はよろしくお願いいたします。」
福本:「よろしくお願いします。」
黒神:「まずは、日本一、おめでとうございます!これまでの人生で、三味線日本一の方にお会いしたことはないので、今日はとてもテンションが上がっています(笑)。」
福本:「ありがとうございます。」
黒神:「早速ですが、三味線を始めたきっかけについてお伺いできますか。」
福本:「小5のときに地域の文化祭があって、今の私の先生の演奏を聞いて感銘を受けました。その後、中1になって正式に入門を決意しました。」
黒神:「小学生の心を動かす演奏とは!それほどまでに先生の演奏は素晴らしかったんですね。そこから三味線と歩む生活はどんな風だったんですか。」
福本:「三味線にはほぼ毎日触っていました。平日は、学校に行って部活の後、塾や習い事に行き、その後三味線という毎日でした。週末は、慰問演奏や敬老会での演奏など実地訓練を重ねました。」
黒神:「ところで、福本さんを虜にした安来節について少しお伺いできますでしょうか。」
福本:「安来節は安来港を通して全国の追分や民謡、船歌など様々な音楽が混ざり合って発展した民謡です。安来節として変化したのは江戸末期と言われていますが、その成り立ちを考えると300年以上の歴史があります。元唄に他の民謡や浪曲を取り入れたり、歌詞をその場に合わせて即興的に唄うことも出来ます。陽気な中に物悲しさもあるリズムも勿論、奏者によって演奏に個性が垣間見えるのも魅力の1つです。」
黒神:「300年以上の歴史ある民謡を今の時代に伝えておられるとのこと、本当に素晴らしいですね。」
黒神:「大学入学に際しては、迷いなく邦楽部に決めておられたんですか。」
福本:「はい。合格が決まってすぐに決心しました。」
黒神:「先日、定期演奏会を聞きに行かせてもらいましたが、皆さん素晴らしい演奏でした。もちろん福本さんの演奏にも感動しましたよ。」
福本:「ありがとうございます。」
黒神:「しかし、福本さんは下宿生ですから、なかなか普段から先生の指導は受けられませんよね。そのあたりのご苦労はありましたか。」
福本:「授業期間は録音や動画を活用して個人練習をしています。しかし1人での練習には限界がありますので、長期休みには地元で集中的に先生方に御指導いただいたり、積極的に演芸に参加したりなど、出来ることを探りながら腕を磨いています。」
黒神:「そんなご苦労も乗り越えて、福本さんは准師範に昇格されたんですよね。素晴らしいですね。」
黒神:「このたびの安来節の大会について簡単に教えてもらえますか。」
福本:「安来節全国優勝大会は、毎年8月15日~17日に安来市で開かれるもので、2級から師範までの予選会を通過した会員達が階級別に分かれて審査されます。今回出場した大会は、コロナ禍のため2020年から中止されていましたが、今年は4年ぶりに開催されました。」
黒神:「このたびの優勝に至るまで、いろんな苦難があったかと思います。スランプみたいなものもあったのではないでしょうか。それをどう乗り越えられたんですか。」
福本:「他人の演奏を見て学び直したり、細かな点を1つずつ潰しながら納得いくまで反復練習したりと、自信が持てるような自分の演奏を目指して、模索しながら練習していました。1人で練習していると悪い癖がついてしまっていることもあるので、時には基本に立ち返ってみるなど、様々な角度から自分の演奏を見直していきました。」
黒神:「安来節をここまで続けて来られた理由や、やっていてよかったことなどについてお聞かせいただけますか。」
福本:「まずは単純に安来節が好き、という気持ちが強いからです。唄、三味線、鼓、どじょう掬い踊りに銭太鼓。それぞれに面白さがあり、学べば学ぶほど複雑で一筋縄ではいかないその魅力に憑りつかれます。演奏の舞台では人々の笑顔が見れたり、時に声をかけてくださることもあって、大変励みになっています。また、先生方や教室のメンバー、支えてくださっている人達の存在も、ここまで続けてこられた理由の1つだと思います。」
黒神:「福本さんは、茶道もされますし、元々歴史も好きなんでしたね。」
福本:「はい、ですから法学部では法曹プログラムでも学習していますが、実は文学部の歴史や考古学の授業がとても好きで、楽しく履修させていただいているんですよ。」
黒神:「たしかに、他学部の授業を一定程度受講できる制度を最大限に生かしておられますね。今後はどんな進路に進まれるんですか。」
福本:「実は、歴史も好きなんですが、グローバルな視野も持っていてゼミも国際法を選びました。授業の合間に日本語カフェのスタッフとして、留学生との交流のサポートをしています。ですので、将来は、外交官になりたいと思っています。」
黒神:「おお、それは素晴らしい。日本の伝統文化をよく知る人間が日本の外交に携わるということは、日本の外交にとってもきっと有益なこととなるでしょう。ぜひ頑張ってください。本日はありがとうございました!」
福本:「ありがとうございました!」
2024年2月6日
第35回 「特集 音楽の世界で活躍する卒業生」連載第2回ゲスト:占部貴大さん
黒神:「連載第2回目のお客様は、ジャズ・ピアニストとして活動している占部貴大さん(私立盈進高校卒)です。占部さんは、公務員として働きながら、ジャズ・ピアニストとしての才能を生かし主に中国エリアを中心に活動されています。ジャズとの出会いや、大学時代から就職して今日に至るまで、演奏活動を続けてこられたことのご苦労、今後の抱負などについてお伺いできるのを楽しみにしておりますので、よろしくお願いします。
占部:「よろしくお願いします。」
黒神:「占部さんは、学生時代から地元のジャズ・バーで演奏されたり、後楽園の幻想庭園をはじめ各種屋外でのイベント等でも活躍されていて、私も何度か演奏を聞かせてもらいました。その後も有名な奏者と共演されたように伺っていますが。」
占部:「はい、ジャズ・シンガーの中本マリさんのツアーで共演させていただいたり、NHK交響楽団の首席コントラバス奏者の吉田秀さんとセッションをさせていただいたりしました。」
黒神:「それはすごい。占部さんの演奏が専門家の方々にも認められてきたんですね。これまでもいろんなところで占部さんの名前を見たように思うのですが、どのくらいの頻度で演奏されてきたんですか。」
占部:「最近は忙しくて活動を制限しているんですが、一番多い時期(独身時代)で年間300本のステージをこなしていました。1日3本こなしたこともあるんですよ。」
黒神:「おお、それはすごい!」
黒神:「あれだけピアノが上手に弾けるのは羨ましいのですが、いつからピアノを始められたんですか。」
占部:「4歳のときからクラシックをやっていました。ピアノとエレクトーンを習い、ピアノは高校3年生まで習っていました。」
黒神:「クラシックをずっとされていたのに、いつからジャズに目覚められたんですか。」
占部:「ジャズはまったく知らなかったのですが、大学に入学してから同期の友人に誘われてジャズ研究会に行ったのが始まりです。そこからは、すっかりジャズに魅せられました。先輩のライブ演奏を見に行ったり、仲間の演奏に付き合ったりするうちに、次第に一緒に演奏させてもらったりするようになりました。まさに演奏しながら学び、腕を磨いていく感じでしたね。下宿でも寝る間を惜しんで音をたてないようにキーボードに触れてましたし、授業の合間もジャズのことしか考えていませんでした。その頃は、勉強3割、ジャズ7割、みたいな生活でした(笑)。」
黒神:「勉強が3割でもあって安心しました(笑)。クラシックからジャズへの転換に戸惑いはなかったですか。」
占部:「それはとくに感じませんでした。自分の演奏の強みは、音楽の基礎をしっかりクラシックで固めたことだと思いますし、それが今も生きていると思います。ジャズにスムーズに入りやすかったですし、むしろ音楽の幅が広がったという感覚を持っています。」
黒神:「進路については、どのように選ばれたんですか。」
占部:「ゼミは刑事訴訟法が面白くて原田先生にお世話になりました。進路を選ぶ際に、最初は司法書士を目指そうと思い、予備校にも通いました。ただその後、たまたま出演したライブで地元にジャズのビッグバンドがあると伺いお誘いいただいたので、結局その職場で働くことを選びました。もともと地元に戻りたいという気持ちがあったので、この選択は間違っていなかったと思います。」
黒神:「占部君とはかつてニューヨークでご一緒したことがとても印象的です。ふらっと一緒に立ち寄ったジャズ・バーで、いきなり自分からエントリーされたときはびっくりしました。その後名前が呼び出され、躊躇せずにピアノに向かって初対面の演奏家たちとおもむろにセッションを始め、満場の観客から拍手喝采を浴びた光景はいまだに忘れられません。本場でも通用することを確信しました。これまでもピアニストとして誘いもあったんではないでしょうか。」
占部:「あれは本当にいい思い出ですね。たしかに誘いがなかったわけではありませんが、自分としては、自分の実力も業界の厳しさもわかっているつもりですので、自分のできる範囲で音楽をめいっぱい楽しめたらいいと思っています。」
黒神:「パパとして、ピアニストとして、公務員としての3足のわらじを履いた生活ですが、今後の抱負をお聞かせください。」
占部:「まずは、当然ですが何よりも大切な家族を幸せにしたいです。そして、地元では仕事の上でも文化芸術に携わっていきたいと思っています。特に音楽を通じてその輪を広げていきたいですね。地元に眠っているアーティストの活躍の機会も増やしていきたいなと思っています。地元や、大学時代からお世話になっている岡山に恩返しをしたいと常に考えています。」
黒神:「素晴らしいですね。これからもますますのご活躍を祈っています。この対談を見てくださっている方々も、占部さんの名前を見ることがありましたら、ぜひ一度彼の演奏を聞いてみてください。きっとその演奏に魅了されると思います。本日は、どうも有難うございました!」
占部:「有難うございました!」
(この対談は、2023年10月31日に行ったものです。)
2024年1月10日
第34回 「特集 音楽の世界で活躍する卒業生」連載第1回ゲスト:室田夏海さん
今回は、前回のスピンオフ企画「街で出会える卒業生」が好評だったので、連載特集をまた企画することにしました。以前お招きした山地真美さんとの対談後、山地さん以外にも音楽の世界で活躍する素晴らしい卒業生がいることに気づきました。そこで、「音楽の世界で活躍する卒業生」と題して2回に分けて連載をいたします。いずれもたいへん興味深いお話を伺うことができましたので、どうぞお楽しみください。
黒神:「連載第1回目のお客様は、シンガーソングライターとして活動している室田夏海さん(島根県立松江東高校卒)です。室田さんは、法学部に在学中から、各地でライブイベントや、路上ライブで地道に活動をしてこられました。大学4年生の2019年に、群馬県で毎年開催されるアコースティック・アーティストの祭典「New Acoustic Camp」の出場権をかけたオーディションでは、100組以上がエントリーする中でなんとグランプリを獲得されました。卒業後、本格的な音楽活動を開始されました。今日は、母校の40周年を記念するイベントで招待演奏されるとのことで、その途中に岡山にお立ち寄り頂きました。これまでのご苦労やご活躍のご様子などをお伺いできるのを楽しみにしておりますので、よろしくお願いいたします。」
室田:「よろしくお願いします。」
黒神:「これまで2枚のミニアルバムを出されていますが、昨年、『東京』という曲がUSENのSNSの週刊ランキングで、SEKAI NO OWARI や、Official髭男dism、Adoとかと肩を並べて12位にランクインしていたのを見て驚きました。卒業後、東京に出られてからの活躍をとても嬉しく思います。」
室田:「有難うございます。」
黒神:「ところで、ギターを始められたのはいつ頃からなんですか。」
室田:「15歳のときに、当時、女性のシンガーソングライターが多く活躍するようになってきていて、たまたまそれに感化された父親がギターを買ってあげようかと言い出したんです。じゃあ、買ってもらえるんだったら買ってもらおうかと(笑)。弾いているうちに楽しいなと思い始めて、気がついたらバンドをやっている友人とライブハウスに行ったり、自らライブに出演したりするようになっていました。」
黒神:「そうだったんですか。ギターとの出会いは不思議な縁だったんですね。その後、大学に入ってから、学業との両立など苦労されたのではありませんか。」
室田:「大学では特に仲の良い友人らと4人組になってました。中には公務員を目指す勉強熱心な友人もいたので、試験前にはみんなで協力し合って勉強してました。」
黒神:「たしかに、室田さんは課題をこなすのも早かったですね。ゼミの毎週のペーパーや、学年最後のゼミ論文の提出も必ず一番乗りでした。」
室田:「クオリティはともかく、勉強以外にもやることが多かったので、大学の課題はすぐにこなすようにしてましたね。単位もギリギリのラインを狙って合格してました(笑)。」
黒神:「たしかライブハウスや、路上ライブなども活発にされていたようですが。」
室田:「はい、4年生の時には、月に13カ所でライブをやったこともありました。」
黒神:「大学時代の話といえば、悲しい出来事もあったんですよね。」
室田:「はい。4月に大学に入学し、5月に病気で入院していた母を亡くしました。その悲しみの中で、6月に『ただいま』という曲を作りました。
黒神:「私もライブで初めてこの曲を聞いたときに、まだそういうご事情をまったく知らなかったのですが、とてもせつない気持ちに包まれたことを思い出します。」
室田:「当時父も単身赴任で不在だったので実家には誰もいないはずなんですが、実家に戻ったらきっと母がこういうふうに迎えてくれただろうな、という想いを綴りました。」
黒神:「室田さんの曲は、この『ただいま』もそうですが、冒頭で話題になった『東京』や、『HOME』、『I bileve』など、どことなく郷愁を誘う歌があって、昔のフォークソングの世界にも通じるものを感じます。」
黒神:「個人的には、『ザ・ビーチ・ボーイズ』という曲が気に入ってます。片思いのやるせない気持ちを明るく前向きに歌っておられて、しかも我々世代のザ・ビーチ・ボーイズを絡めてくださっているので、とても心をくすぐられます(笑)。」
室田:「有難うございます。『ザ・ビーチ・ボーイズ』は島根にいた高校時代の頃の作品なんですよ。たしかにこの曲を歌うと島根にいた頃のことを思い出しますね。」
黒神:「室田さんは、生まれ育った故郷をとても大切に思われているのがよくわかります。これからの目標をお聞かせいただけますか。」
室田:「これまでたくさんの方々に応援していただき、支えてきてもらいました。ですので、これまで支えてきてくださった方々に少しでも恩返ししたいと思っています。今、自分にできることは、歌を歌うことだと思うので、与えられた場で全力で歌っていきたいと思っています。」
黒神:「たしかに、若いときに無我夢中でやってみることもとても大切なことと思います。きっと今後の人生につながっていくと思いますので、ぜひ頑張ってください。応援しております。」
室田:「有難うございます。」
黒神:「この対談を見てくださっている方々にも、室田さんの曲をぜひ一度お聞きいただきたいと思います。愛らしく素敵なお人柄と相俟って、私がそうだったようにいつのまにか彼女のファンになっていることと思います。本日は、お忙しい中、お立ち寄りいただきましてどうも有難うございました!」
室田:「有難うございました!」
(この対談は、2023年10月20日に行ったものです。)
2023年12月15日
第33回 増原七海さん、高橋唯さん、藤原新汰さん、越智悠葵さん ~法学部卒業生の司法試験合格を祝して~
黒神:「今日のお客様は、このたびめでたく司法試験に合格された、増原七海さん(岡山操山高校卒)(未修者コース・在学中受験)、高橋唯さん(愛媛県立新居浜西高校卒)(既修者コース修了)、藤原新汰さん(倉敷天城高校卒)(予備試験合格・在学中受験)、越智悠葵さん(大阪教育大学附属池田高校卒)(法曹プログラム修了・既修者コース在学中受験)です。皆さんは全員岡山大学法学部出身で、うちの法務研究科(ロースクール)に進学され、見事栄冠を勝ち取られました。
ところで、今年の岡大ロースクールの合格実績としましては、12名が合格しました。(合格率で全国11位)
そのうち、なんと11名も(!)岡大法学部出身者でした。しかも、在学中受験合格者が7名と合格者の半数以上も占めています。このことは、学部とロースクールとの教育の連携がじつにうまくいっていることのあかしなのではないかと思います。本日は、皆さんの司法試験合格までの道のりについてお伺いできればと思っていますので、よろしくお願いします。」
一同:「よろしくお願いします。」
黒神:「まずは、皆さん司法試験合格、おめでとうございます!今年はなんと合格者12名中11名がうちの法学部出身ということで、私も嬉しく誇りに思っています。」
一同:「ありがとうございます!」
黒神:「皆さんは、いつごろから法曹を目指そうと思われたんですか。」
増原: 「私は小学生の頃、職業調べの時間に、資格を持って働けるうえに女性の割合も比較的多く一生を通じて続けられる仕事ということで、裁判官の仕事に興味を持ったことがきっかけでした。その後も、様々な人の人生に深く関われる仕事だということを実感し、より法曹を志す気持ちが強くなっていきました。」
高橋:「私は、進路に迷っていた高校3年生の頃に、初めて刑事裁判の傍聴をしたのをきっかけに法曹を目指し始めました。被告人に更生を促し、ひいては社会全体の利益を追求するために奮闘される法曹の方々の姿に感銘を受け、法学部進学を決意しました。」
藤原:「私の場合は、学部2年の冬頃です。当時、他学部の友人から、法的な問題の絡む悩み事について相談を受けました。その質問に対して自分なりに考えアドバイスを友人に伝えたところ、とても感謝されやりがいを感じました。その経験から、自分の知識や技量で仕事ができる法曹にあこがれを持ち、法曹を志望するようになりました。」
越智:「私の場合、じつは大学に入学するまでは、全く目指していませんでした。今振り返れば、1年生のとき国際法入門の講義で渉外弁護士の石田雅彦先生(DLA Piper)の講演を拝聴し、漠然と意識し始めたのかもしれません。法曹プログラムが始まるタイミングだったことも大きいと思います。」
黒神:「皆さんは、どのような学部時代を過ごされたんですか。」
増原:「私は副専攻としてグローバル人材育成特別コースに所属し、学部2年生の9月から9か月間、イギリスのエディンバラ大学に留学しました。他国の制度を学ぶことで法制度が相対的なものであることを改めて意識できましたし、問題を多角的に捉える視点が養えたと感じています。」
藤原:「学部1年から3年までJAZZ研究会に所属して演奏活動しつつ、プライベートでもバンドを組んで演奏してました(今もひっそり活動しています...)。担当はベースですが、個人的にはいいストレス発散になるので、とてもいい勉強の息抜きになりました。」
黒神:「お2人とも、学部時代に充実した生活を送られたんですね。」
黒神:「ゼミでの学びについてお聞かせいただけますか。」
高橋:「はい、私は、原田先生の刑事訴訟法ゼミに所属していました。ゼミでは、刑事訴訟に関連する社会問題を議論したり、先生や他のゼミ生から、自分の作成した答案に対する意見をいただいたりしました。ゼミでの学習を通じて、1人で勉強しているだけでは得られない、多くの気づきがありました。」
黒神:「越智さんは、法曹プログラムの第1期生で、このたび在学中に受験されたので、大学入学後5年以内に合格を達成されたことになります。我々も皆注目しておりましたので、いろいろとご苦労もあったかと思いますが、このプログラムでの学びの経験をお聞かせいただけますか。」
越智:「法曹プログラムでは学部の2年生から少しずつロースクールの講義を受け始める形だったので、ロースクール入学後の学習にシームレスに移行できたことは、とても大きなメリットだったと思います。カリキュラム上、本来ロースクールに進学して未修1年次に取るべき必修科目のすべてを、学部の2年生と3年生の2年間で分けて履修することができるという点も有難かったです。また、その単位が学部の卒業要件にも組み込まれますし。」
黒神:「なるほど。履修する科目数でいうとプログラム外の学生とあまり負担は変わりませんね。」
越智:「そうなんです。そういう意味では、課外活動にも取組めます。実際に、私も積極的にいろんな活動に取組みました。放送文化部では、『第37回NHK全国大学放送コンテスト』で賞を頂いたり、JA全農おかやまが主催する『フレッシュおかやま』と貴重な経験もしました。」
黒神:「なかなかアクティブな学部生活だったんですね。まさしく『放送』から『法曹』への転身だったんですね(笑)。プログラム第1期生としてのプレッシャーなどありませんでしたか。」
越智:「はい、司法試験合格まで行けなければこのプログラムが失敗に終わってしまうと、じつはかなりのプレッシャーだったんですよ。そのプレッシャーをばねに最後まで駆け抜けて、気が付けば合格していたという感じです。途中、先生方の『このプログラムは最短で合格までできるおトクなプログラムですよ』という甘い言葉に誘われて入ったことを何度か後悔しましたけど(笑)。」
黒神:「あはは、そうでしたか。たしかに、未だに学内で越智さんにお会いしたときに『今日は3時間しか寝てないんですよ~』とおっしゃっていた寝不足の顔が焼き付いています。」
黒神:「皆さんは、岡山大学のロースクールに進学されたわけですが、何故うちのロースクールを選ばれたんですか。」
増原:「少人数制のロースクールで、先生方に丁寧にご指導頂け、先輩方にも頼りやすい環境だと聞いていたためです。実際に面談や授業後の質問、試験の講評といった先生方に相談する機会や、課外ゼミといった先輩方に頼れる機会が多くあり、学びにつながりました。また学部も岡山大学だったので、学習環境を大きく変えずに済み、すぐに大学院の学習を始められるという事も決め手の一つでした。」
黒神:「たしかに、岡大生にとっては、学部の頃から岡大ロースクールの先生や先輩を知っているわけですから、メリットが大きい点も多々ありますね。皆さんがどのような学習をして合格を勝ち取られたのか教えてもらえますでしょうか。」
高橋:「私は、授業のない日も含め、ほとんど毎日大学の自習室で勉強していました。同じ時間帯に同じ場所で勉強することを習慣にすれば、十分な勉強時間を確保しつつ、規則正しく生活できます。ただ、自習室に来ること自体は、目的ではなく手段にすぎないことを意識し、時間を区切ってやることを決めるなど、漫然と自習室にいるだけにならないよう注意しました。」
黒神:「たしかにうちのロースクールの自習室や建物内のロビーなどは、学生同士が学べるとてもよい雰囲気があるといつも聞いています。」
藤原:「私は電車通学で、週3日くらいはバイトをしていました。さらに趣味の音楽活動もしていたので、1週間で使える時間が限られていました。ですので、土日など時間がある日は、答案を時間内に手書きで書く勉強に重きを置きました。『自分の頭で考えて』答案作成する機会を設けたことで、構成力・表現力が鍛えられ、知識のインプットにつながりました。」
黒神:「時間の使い方がとても上手かったんですね。私も見習いたいです。しかも時間をかけるところは時間をかけて、安易に暗記に頼らずしっかりと自分の頭で考えること、また、パソコンではなく手書きで一気に答案を書き切る練習などもされたんですね。」
黒神:「将来、皆さんはどんな法曹を目指しておられますか。」
増原:「私は、その方の人生の選択肢を増やすお手伝いができるような法曹になりたいと考えています。法曹である私がその方と関わる時間はわずかですが、人生の岐路となる場面で関わることが多い仕事です。その場の判断だけでなく、その方の人生がより良い方向に向かえるような関わり方を模索していきたいと思っています。」
高橋:「私は弁護士志望で、特に知的財産を扱う弁護士を目指しています。新しいアイデアや創作といった人間にしか生み出せないものの価値は、今後もますます高まっていくと思います。こうした価値を守ることを通じて、社会に貢献していければと考えています。」
越智:「『法曹として依頼者の利益を追求することは、相手方の利益を侵害することと表裏なのだから、そのことに自覚的に活動しなければならない』という、実務家の先生の言葉に感銘を受けました。私も、自覚的に、信念を持って活動する弁護士になりたいと思っています。」
藤原:「私の法曹を目指した原点は、人の役に立ちたいという点にあります。様々なことにも興味を持ち、バランス感覚・倫理観にあふれた、皆から必要とされる法律家になれるようになりたいです。」
黒神:「皆さんそれぞれ素晴らしいですね。皆さんの熱い思いがひしひしと伝わってきます。」
黒神:「では、最後にまず、法曹を目指す法学部生に対してメッセージをお願いします。」
高橋:「司法試験に合格するには、多くの時間と努力を要します。そんな中、最後まで諦めずに頑張れたのは、岡大法学部・岡大ローの先生方の手厚いご指導のおかげです。岡大には、司法試験合格に向けた確かなメソッドがありますので、皆さんもそれを信じて頑張ってください。」
越智:「岡山大学法学部の場合は、法曹を目指す学生は少数派だと思います。しかし、ロースクールの先生が担当されている講義もあり、相談に乗ってくださる学部の先生方もたくさんいらっしゃるので、サポートを受けやすい環境ですからぜひ活用してみてください。また、私が利用した法曹プログラムのカリキュラムは、効率よく学べるようにとてもよく設計されているので、法曹を目指す人にはお勧めです。」
黒神:「増原さんと藤原さんは、地元岡山のご出身なので、できれば地元高校生に向けたメッセージをお願いします。法学部で学ぶことのメリットや、さらには、岡山大学法学部で学ぶことのメリットなどお聞かせください。」
増原:「法学部では、法律条文や判例の解釈といったことは勿論、政治や国際社会といった様々な仕組みについても学ぶことができます。また、岡山大学の法学部には、法教育や犯罪被害者支援、社会復帰支援、留学といった様々なことにチャレンジできる環境が整っていますので、多種多様な学びを通じて自身の未来を描けると思います。」
藤原:「今年度の合格実績から分かる通り、岡大は、学部とローが連結し、他校に引けを取らないほど法曹養成に尽力しています。岡大ローでは、手厚い指導の下、司法試験を見据えた法学の勉強がじっくりとできます。法曹志望の方は(そうでなくとも)是非岡大に!」
黒神:「ははは、最後にわたしの言いたいことを言われてしまいましたね(笑)。本日は、有難うございました。これからみなさんの一層のご活躍を期待しています。それから、これからもぜひ岡山大学法学部のことをよろしくお願いします!」
一同:「有難うございました!」
2023年11月15日
第32回 李英専任講師
黒神:「今日のお客様は、法学部で法社会学を担当されている李英(リ・エイ)先生です。李先生は、中国政法大学大学院を修了後、来日され大阪大学で博士号を取得されました。2022年4月より本学法学部に着任されています。李先生は、新進気鋭の法社会学者として、学会等で大いにご活躍されています。特に素晴らしいことに、先生が発表されたご論文2編(「調停人の解決案提示」『阪大法学』68巻6号(2019年)および「調停の冒頭説明の会話分析:調停人の専門性と当事者の主体性」『阪大法学』69巻2号(2019年))は、このたび2023年度仲裁ADR法学会の奨励賞を受賞しました。
本日は、李先生のご研究内容を中心にお話をお伺いしたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
李:「よろしくお願いします。」
黒神:「まずは、このたびの学会賞の受賞、おめでとうございます!私もわがことのように嬉しいです。」
李:「ありがとうございます。」
黒神:「先生のご専門は法社会学ですが、法社会学という学問分野もじつに多様であるように思います。先生のご研究の対象や内容について、少しお話しいただけますでしょうか。」
李:「はい、修士課程の頃から裁判外紛争解決手続(ADR)に興味があり研究を進めてきました。なかでも私の主な研究対象は、対話型調停です。対話型調停は、日本ではあまり知られていないのですが、その最大の特徴は、第三者が評価したり解決案を出すのではなく、当事者たちの自主的対話を重んじることとされています。これまでの研究では2当事者間の対話に重点をおき、必ずしも調停者の役割を適切に位置付けているとはいえませんでしたので、私は、調停者を含む三者間の相互作用として調停を捉え、調停での相互行為を明らかにしました。」
黒神:「なるほど。紛争を三者間の相互行為と捉えるというのは、たしかに私の専門の国際法でも有意義な考え方のように思います。」
黒神:「先生のご論文を拝読したことがありますが、調停の当事者の話した言葉のうち、意味のある言葉以外に、『あのう…』とか『まあ…』などの間投詞のような言葉、さらには、イントネーションや息を吸い込んだ音まで会話の隅から隅まで分析の対象にされていることがとても印象的でした。先生がご研究で用いられている特徴的な手法は、『エスノメソドロジー』と呼ばれていますね。これはどういった手法なんですか。この手法でご苦労されている点はどういうところにありますでしょうか。」
李:「一言でまとめるのは難しいですが、買い物をしたり、バス停で列に並ぶなど、日常的な活動を成し遂げるために人々(「エスノ」)の用いる方法(「メソッド」)を分析することで、社会的秩序がいかに形成されるのかを解明する手法です。私の研究では特に人々の会話の方法を分析しています。たしかに、法学出身者としてこの社会学の理論や手法をゼロから学び、自分の研究のために応用することにこれまでたいへんな苦労がありました。しかし、その甲斐あって、この手法は法現場の解明のために有効であることがわかってきましたので、今では非常にやり甲斐を感じています。」
黒神:「そうですか。たしかに畑違いの学問やその手法を身に着けるところからですから、相当なご苦労があったものと思います。さらにいいますと、李先生にとって、外国語である日本語を分析のツールとして用いることの難しさは並々ならぬことだったこととお察しします。その点についてはいかがですか。」
李:「おっしゃる通り、私にとって日本語を用いることはとても難しかったです。ただ、逆に外国人であることのメリットもあるんですよ。日本人は、慣用的に気にも留めずに見過ごしてしまう言葉もよくあるのですが、私にとってはどの語もすべて同じですので、1つ1つ見過ごすことなく分析対象となります。外国人でよかったと思える瞬間ですね(笑)。」
黒神:「なるほど。それはたしかにおっしゃる通りですね。では、今回受賞されたご研究の内容も踏まえまして、今後の研究の展開について少しお話しいただけますか。」
李:「大きく2つの方向で考えております。1つは弁護士の少ない司法過疎地域での紛争処理の実態を調査することです。司法過疎地域は、相対的に土着の規範秩序が現れやすいので、そこで公式の国家法秩序と非公式の土着規範秩序がどのように影響し合っているかを研究します。もう1つは、紛争処理について比較法社会学的研究を行うことです。そのためには中国や韓国での調査を考えております。」
黒神:「話は変わって、教育面についてお伺いします。先生にとって、大学での本格的な授業は本学が始めてですよね。私も最初に赴任したときは、教壇に立つのも恥ずかしくて緊張してばかりでしたが、先生は、最初から戸惑いはありませんでしたでしょうか。
李:「戸惑いはいろいろありましたが、講義の受講生が思ったより多く、280人超になっていることです。これだけ大人数の前で話すことはこれまでにもほとんどなく、たしかに緊張の連続でした。これだけ多くの受講生に、なんとか授業内容をわかりやすく、楽しく伝えることに努めています。」
黒神:「岡大法学部生の印象や、授業を実施するに際して気を付けていらっしゃることなどお聞かせいただけますでしょうか。」
李:「岡大法学部生は日本司法の現実問題に強い関心を持っていることが印象的でした。受講生たちのリアクションペーパーからは、裁判所利用率の低さ、弁護士数の少なさなどの問題について真剣に悩み、どうにかして対策を考えようとする様子が窺われました。私の授業で特に気をつけているのは、法社会学と実定法との違いを強調することです。法学は、実定法と法社会学、法哲学、法制史などの基礎法を両輪とするので、学生の皆さんには、両者の違いや関係をきちんと押さえてもらいたいと思っています。
黒神:「たしかに、日本の社会では裁判所の利用率が実際には案外多くないということを学生にわかってもらうことは重要ですよね。実定法と違った視点で授業をすることはとても大事なことですね。」
黒神:「最後に、学生に対してメッセージをいただけますでしょうか。」
李:「法現場のことをもっと知ってほしいです。司法制度改革以来、法曹人口の増員など日本の司法の状況が大きく変わっています。しかし、日本の司法が果たして国民にとって利用しやすいものになっているかをぜひ自分の目で検証し、司法の課題を解決するためには実際にどのようなことが必要なのかを考えてほしいです。」
黒神:「ありがとうございます。本日は興味深いお話をお伺いできたいへん勉強になりました。これからのますますの研究のご発展を期待しております。本日はお忙しい中、学部長の部屋にお越し下さり、本当にありがとうございました!」
李:「ありがとうございました!」
2023年10月18日
第31回 澁谷香澄さん(法学部3年生)、和田涼花さん(法学部3年生)
黒神:「今日のお客様は、法学部3年生の澁谷香澄さん(滋賀県立守山高校卒)と和田涼花さん(兵庫県立姫路東高校卒)です。お2人は、岡山大学における途上国の子供支援である、TFT(TABLE FOR TWO)活動を現在中心となって推進しておられます。このTFT活動は、ここ数年、岡山大学でも大学生協食堂さんを起点として活発に行われてきていて、私も多くの学生からよくその活動のことを耳にします。本日は、身近にもできる途上国支援であるこのTFT活動について、詳しくお伺いできればと思っていますので、よろしくお願いします。
澁谷・和田:「よろしくお願いします。」
黒神:「まず、このTFT活動がどんな活動なのか、お話しいただけますか。」
澁谷:「はい、TFT(TABLE FOR TWO)とは、直訳すると『2人のための食卓』となりますが、これは、先進国の私たちと開発途上国の子どもたちが食事を分かち合うという意味になります。世界で起こっている途上国と先進国の食の不均衡を解消して、双方の人々の健康を同時に改善することを目的としています。2007年に東京に設立されたTABLE FOR TWO InternationalというNPO団体が運営していて、日本の大手企業をはじめさまざまな団体や個人がこの活動に関わっています。」
黒神:「なるほど。食を通じて途上国の子どもたちを支援するという取組みですね。この活動に皆さんのような大学生が関わる場合、どのように関わってこられたんですか。」
和田:「2019年に、学生からの強いアプローチを受けて、大学生協さんとの共同で学生食堂にTFTメニューが登場しました。SDGsを身近に体験!学生×生協のコラボでTFTメニューが誕生 TFT活動の基本コンセプトとして、こちら側ではカロリーを抑えた定食を提供することで健康を考え、それと同時にその1食につき20円の寄付金が、TFTを通じて途上国の子どもの学校給食になります。 20円というのはTFTが支援する東アフリカ地域で、給食1食分に相当するそうです。」
黒神:「つまり、こちらで1食とるごとに開発途上国に1食が贈られるという仕組みですね。なぜこの活動に興味を持たれたのですか。」
澁谷:「大学生になったらSDGsに関わる活動ができたらなと思い、情報収集をしていたところ、岡大TFTの活動を知ったのがきっかけです。元々食べることが大好きなので、世界中の人と食べる幸せを共有できるTFTの活動は私にぴったりだと思いました。食事をとるだけで活動に参加できるという活動の関わりやすさも魅力だと考えています。」
黒神:「この活動を続けて行くうえでどんなご苦労がありましたか。」
澁谷:「素材の仕入れや調理を実際に行うのは私たち学生ではなく生協の方なので、やりたい新商品を企画してもコスト面や作りやすさの面で実現が難しいこともありました。学生ができることの限界を感じる場面も多かったです。」
黒神:「この活動は、いまや大学生協だけではなく、地元の企業などにも広がりを見せていると伺いました。その点についても、お伺いできますか。」
和田:「2022年9月からは、TFT活動に関心を持っていただいた中国銀行様と協働でコラボメニュー企画を実施しています。健康増進メニューを協働で考案し、岡山大学の食堂と中国銀行本店の食堂にて期間限定で提供しました。前回は新学期に開催したので、繁忙期での提供体制を考慮するなど、新たな視点を学ぶことができました。」
澁谷:「また、2023年7月からは岡山市役所の食堂でもコラボメニューを販売させていただいています。食堂は職員の人以外も利用できるそうなので、たくさんの人に取組みを知っていただけるきっかけになるのではないかと考えています。」
黒神:「徐々に活動の幅を広げていかれていて素晴らしいですね。ところで、こういう活動は、どうしても遠くに住む子供たちの実際に喜ぶ顔を見ることはないのですが、それでも、この活動を通して何か見えてきたことはありますか。またやりがいはどんなときに実感できるのでしょうか。」
澁谷:「社会貢献というとエネルギーをもって取組まなければならないもののように感じますが、思ったよりも身近で誰でも取組めるものであると感じました。また、TFTメニューの販売数がのべ2万食を超えたと知ったときは大きなやりがいを感じました。」
黒神:「おお、2万食とはすごいですね!」
和田:「TFTには、参加者自身の健康にも寄与できるという特徴があります。そのため、子どもたちの姿は見えなくとも、食堂でTFTメニューを選ぶ学生を目にするなど身近にやりがいを感じています。このように、多方面へ貢献できる仕組みの効果を感じました。」
黒神:「なるほど。食堂を利用する人たちがTFTメニューを選んでくれて、栄養バランスのいい食事をしているのを目にするだけでもたしかに嬉しいですよね。」
黒神:「皆さんは現在3年生ですが、この大学時代の経験を生かして、将来の進路にどのようにつなげていきたいと考えていますか。」
澁谷:「進路についてまだ迷っているというのが正直なところですが、TFTの活動を通して興味のあることにアンテナを張ること、また、とりあえずチャレンジすることの大切さを実感したので、興味関心にどん欲でいることとチャレンジ精神を忘れないようにしたいと思っています。」
和田:「SDGs推進活動という、誰もが関心をもって実行できる仕組みづくりに関わったことで、他者の視点に立って考え、発信・行動していく機会を多く経験しました。この学びを活かして、今後も、様々な方と関わりながら、国内外の社会に豊かさを提供していきたいです。」
黒神:「最後にこの記事を読んでいる人に一言あればお願いします。」
澁谷:「岡山大学の皆さん!学食にあるTFTメニューはご存じでしょうか。ピーチユニオン3階で提供されているヘルシー日替わりがTFTメニューとなっています。小鉢2品付きでヘルシーなメニューを日替わりで提供しているので、ぜひ一度TFTメニューをお試しください!TFTメニューがみなさんの食事の選択肢の1つになれると嬉しいです。」
黒神:「今後のますますのご活躍を期待しています。今日は、ありがとうございました!」
澁谷・和田:「ありがとうございました!」
2023年9月20日
スピンオフ企画「街で出会える卒業生」連載第3回 杉本克敬さん(ぱんだこーひー)
黒神:「早いもので『街で出会える卒業生』連載第3回目、最後となる今回は、法学部卒業生の杉本克敬(すぎもと かつひろ)さん(岡山朝日高校卒)が経営する『ぱんだこーひー』に来ています。モデルハウス(OHKハウジング)が並ぶ入口にお店があり、店内に入るとコーヒー豆を焙煎する機械の横にピアノが置いてあるなどユニークなお店です。本日もいろいろとお話をお伺いできるのを楽しみにしておりますので、よろしくお願いいたします。」
杉本:「よろしくお願いします。」
黒神:「杉本さんは、いつごろ在学されたんですか。またどんな学生生活を送られたんでしょうか。」
杉本:「入学したのは、90年代終わり頃です。ゼミは憲法の中冨先生にお世話になっていました。もともと小さい頃からジュニアオーケストラに所属してホルンを吹いていたので、大学でも最初はオーケストラ部に入りました。その後は、教職を取るため多くの科目を履修しないといけなくなって学業に専念しました。同時に、司法試験合格を目指しました。」
黒神:「ちょうど私が大学に着任した頃に入学されたんですね。それにしても、勉強熱心な学生生活を送られたんですね。卒業後はどうされたんですか。」
杉本:「はい、周りの友人たちは皆進路を決めて卒業する中で、卒業後も大学院には行かず司法試験合格を目指そうと思いました。」
黒神:「おお、それは思い切った決断でしたね。」
杉本:「はい、結局3年頑張ってみたんですが、自分には向いていないと思って見切りをつけました(笑)。」
黒神:「そうでしたか。孤独に勉強するのはたいへんでしたね。今のようにロースクールがあったらまた状況も変わっていたかもしれません。ロースクールが設置されたのはそのほんの数年後だったので残念でしたね。ところでその後、どうされたんですか。」
杉本:「たまたま卒業後1年くらいカフェでアルバイトをしながら勉強していたんですが、そのときからカフェに魅力を感じるようになりました。」
黒神:「そうでしたか。カフェにどんな魅力を感じられたんでしょうか。」
杉本:「ちょうどカウンターにお客さんが立つ形のお店だったんですが、ビジネス街から出て来られたいわゆる大人の方々との貴重なコミュニケーションの場がそこにはありました。今まで勉強の世界しか知らなかった自分にとっては、ある種の社会勉強にもなりました。振り返ってみると、たったの1年間でしたが、多くのことを知り、考えることができた貴重な1年間だったと思います。その後は、何も法曹だけが人生ではないと、心にゆとりができるようになりました。」
黒神:「じつは私も大学は人より余分に通ってますが(笑)、若い時にあれこれ悩んだ1年は、今考えると決して無駄にはなっていないということはたいへんよくわかりますよ。その後、いよいよカフェの世界に?」
杉本:「はい、25歳のときにカフェをしようと決心しました。まずは技術を学ぼうと、昼はカフェとレストラン、夜はバーで働きました。またその後、民間で働いた経験も後々役に立つだろうと思い、地方経済誌の記者も数年やりました。そこでは、いろんな会社の社長にインタビューする機会が多くあり、見聞も人脈も広がりました。結局、30歳になる頃にカフェを開業しました。」
黒神:「それまで勉強しかなかった生活から、よく180度転換されましたね。それだけカフェに強い思いがあったんでしょうね。」
杉本:「はい、大学卒業後に働かせてもらったカフェでの経験が今の仕事の原点になりましたね。そのお店は結局畳まれたのですがその店への愛着が強くて、店名も同じ名前を使わせていただいて『EXCAFE』としました。一昨年、場所を移転せざるを得なくなり、現在の場所になったのですが、それを機に、子供さんにも馴染みやすい『ぱんだこーひー』と名前を改めました。これまで気が付けば15年以上カフェをやってきたことになりますね。」
黒神:「15年以上になりますか。これまで続けて来られた中で、カフェの性格も昔の喫茶店的なものからはだいぶ変わったんではないでしょうか。」
杉本:「はい、以前に比べて一層カフェは飲食をするだけの場所から文化を担う場所としての機能を持つことが求められているように感じます。また店舗では出会えない人と繋がるために、イベントへの出店やケータリングなどこちらからアクションを起こすようにしてきました。岡大のホームカミングデイにも毎年出店させてもらってたんですよ。コロナ明けの今年も久しぶりに出店予定です。」
杉本:「また偶然にも岡山放送(OHK)関連会社の方からお声掛けをいただいて、毎週テレビのコーナーで手軽にできるカフェご飯を紹介するコーナーにも出演していたんですよ。」
黒神:「毎週メニューを考えるのはたいへんだったでしょう。毎週ゼミの報告を当てられた学生みたいですね(笑)。きっと相当鍛えられたことでしょうね。」
杉本:「はい、随分とお店のレパートリーも増えました。そのご縁で、じつは今のOHKハウジング(住宅展示場)内にカフェを出店する機会を頂いたんですよ。これを機に、ピアノを譲っていただいて、かねてからやりたかった音楽イベントも店舗で開催できるようになりました。」
黒神:「今後のビジョンをお聞かせください。」
杉本:「子育ての経験から、小さいお子さんを気軽に見てもらえる場所の少ないことが気になっていました。じつは、最近保育士の資格を取って保育園でパートタイムで働いています。保育士試験では案外法律の知識が問われる場面が多々あり、ここへ来て法学部で学んでよかったと再認識しました(笑)。今後は、カフェと保育を融合し、お母さんやお父さん、養護に当たる人などが気軽にお子さんを預けられるようなスペースを提供できればと思っています。」
黒神:「素晴らしい発想ですね!常に時代の流れに合わせた営業スタイルに今後も目が離せませんね。夢の実現を期待しています!私もまたお店の方に行かせてもらいますね。」
杉本:「はい、ぜひよろしくお願いします!」
黒神:「読者の皆さんも、ぜひ「ぱんだこーひー」さんのランチやデザート、飲み物だけではなく、音楽イベントにも足をお運びください。また、今年10月21日(土)の大学構内でのホームカミングデイでの出店にもぜひお立ち寄りください! 」
ぱんだこーひー
https://www.instagram.com/panda4coffee/
岡山県岡山市中区浜597-7 OHKハウジング内
営業時間:10:00~17:00
定休日 水曜日
2023年8月4日
スピンオフ企画「街で出会える卒業生」連載第2回 原田君帆さん(ターブルハラダ)
黒神:「連載第2回目の今回は、法学部卒業生の原田君帆(はらだ きみほ)さんがご夫婦で経営されているフレンチビストロの『ターブルハラダ』さんに来ています。君帆さんのご主人でありシェフである尚さんも、岡大経済学部のご出身です。本日は、ご夫婦でお話をお伺いさせていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。」
原田夫妻:「よろしくお願いします。」
黒神:「君帆さんは、いつごろの卒業生でしたか。その頃の大学はどんな感じでしたか。」
原田(君):「卒業したのは、2000年代初頭、ちょうど大学が独法化した頃です。当時は民法が好きで、今村先生や木村先生のゼミに所属していました。当時津島のキャンパスでは、芝生の上でコンパをする、いわゆる芝コンもOKの時代でした。夜にDJブースを持ち込んで、踊ったり歌ったりという時代だったんですよ。」
黒神:「たしかにその頃、私もゼミの学生を集めて芝生にブルーシートを敷いてコンパした記憶がありますね。」
原田(尚):「大学祭のイベントではダンスパーティーも全盛で、音楽イベントを企画してはみんなで盛り上がっていました。」
黒神:「お2人が知り合われたのはいつ頃からなんですか。」
原田(君):「大学1年生のときからです。2人とも音楽イベントやクラブが好きで、そういう場に参加しているうちに知り合いました。」
黒神:「大学1年の時から知り合ってそのままゴールインとは素敵ですね。まさに岡大が取り持つご縁でしたね(笑)。」
黒神:「大学ご卒業後すぐにお店を持たれたんですか。」
原田(君):「いえいえ、私は卒業後しばらく学習塾で働いたりしておりました。」
原田(尚):「私の方は、食品小売の上場企業に入社し、約7年間勤務しました。そのときに、衛生管理者、調理師、販売士などの資格も取得したんですよ。お店を持ちたいと思っていろんな情報を集めていたときに、幸い今の物件に出会ったんです。」
黒神:「たしかに、ここは駅にも後楽園にも近くてとてもいい立地が見つかりましたね。」
黒神:「私もコロナ禍でしばらくご無沙汰していたのですが、じつはその間に、お店がなんと『ミシュランガイド岡山2021』のビブグルマン(コストパフォーマンスが高く、良質な料理を提供する飲食店・レストラン)に岡山県のフレンチレストランでは2店選ばれたうちの1つ(岡山市では唯一)に選ばれていたんですね。おめでとうございます!」
原田(君):「ありがとうございます。」
黒神:「オープンから10年、ここまで来るにはこれまでご苦労もあったことと思います。」
原田(君):「夫が突然体調を崩して入院したときはたいへんでした。私はそばで回復を祈るばかりで…。そのときも多くの方々に支えていただきました。」
黒神:「このお店のアルバイトの子たちは、いつ来てもみんないきいき働いてますよね。こちらが『これ美味しいですね』と言ったら、普通は『有難うございます』で話が終わるんですが、『そうでしょう!ほんとに美味しいんです。私もこのお料理大好きなんですよ!』と笑顔で話が続きます。お店のことが本当に好きで働きに来ているんだなあ、といつも感心してるんですよ。どうしたらアルバイトの子たちがこんなにいきいき働くようになるんですか。」
原田(君):「私は、料理をフロアで提供する立場として、お客様とのコミュニケーションを大切にしています。ですので、アルバイトの子たちにも、常にその気持ちを伝えるようにしています。」
原田(尚):「アルバイトの子たちに、通常はいわゆるまかない料理として食事を出すのですが、うちはお客様に出すのと同じものをいつも食べてもらっています。そうすることで、お客様と料理のことを共感できると思っています。」
黒神:「それはきっと料理に自信があるからこそできることですよね。素晴らしいですね。最後に、これからの抱負などお聞かせいただけますか。」
原田(尚):「お客様には、肩ひじ張らず料理や雰囲気を楽しんでいただくことをこれからも心がけていきたいですね。小さい店だからこそ1日1日誠実におもてなしをしていきたいと思っています。」
原田(君):「今私は育児の為、お店に毎日は立っておりませんが、その分お客様と接する時間の有り難さを一層感じています。仕事を通じてお客様に笑顔になっていただき、そこから私自身も元気をいただいております。」
黒神:「お2人のお客さんに対するおもてなしの気持ちがとても伝わってきますね。読者の皆さんにもぜひお店に足をお運びいただき、この心地よい空間で美味しいお料理とお酒を楽しんでいただきたいと思います。本日は、開店前のお忙しいところ押しかけてしまいすみませんでした。これからもまた来ますのでよろしくお願いいたします。」
原田夫妻:「よろしくお願いします。」
ターブルハラダ(Table Harada)
http://table-harada.com/
岡山県岡山市北区石関町5-3 窪田ビル 1F
営業時間
17:00~22:00
日曜営業
定休日 月曜日(その他不定休あり。)
2023年7月25日
スピンオフ企画「街で出会える卒業生」連載第1回 酒井政徳さん(カフェZ)
今回は、いつもと少し趣向を変えて「学部長の部屋」のスピンオフ企画として、「街で出会える卒業生」と題し、こちらから卒業生の下に出向き、お話を伺うということにしました。カフェやレストランを経営して、地元の憩いの場を提供して下さっている3名の卒業生をゲストとして迎えます。いつもとはまた異なる興味深い話の数々を伺うことができましたので、3回連載の企画をどうぞお楽しみください。
黒神:「連載第1回目は、法学部卒業生の酒井政徳さん(岡山朝日高校卒)がオーナーをされている『カフェZ』に来ております。じつはカフェZさんは、ご存じの方も多いと思いますが、岡大の中にある『Jテラスカフェ』も運営されていて、我々も常日頃からとてもお世話になっております。酒井さん、お忙しいところ押しかけてすみませんが、本日は、よろしくお願いいたします。」
酒井:「よろしくお願いします。」
黒神:「酒井さんはおいくつになられましたか。在学当時の様子などお聞かせいただけますか。」
酒井:「今年で66歳です。岡大法学部に入学当初、初っ端の授業『法学概論』は、結構ピリピリして厳しい授業だった思い出があります。本当について行けるんだろうかと、悩んだ時期もあったりしましたが、部活(美術部)の先輩達との交流のおかげで、楽しい学生時代を送ることができました。ゼミは政治学の半田先生にお世話になりました。」
黒神:「ご卒業されてからすぐにカフェをされたんですか。」
酒井:「いえ、広島市役所で5年ほど働き、その後家庭の事情で岡山に戻って会計事務所で15年以上働きました。」
黒神:「そうだったんですね。そこからまたなんでカフェに?」
酒井:「じつは、会計事務所で働きながら税理士の勉強をしていたんです。ただ、もともと学生の時から飲食系が好きで学園祭でも毎年出店したりしていたんですが、そちらにばかり気が向いて、結局税理士の勉強には身が入りませんでした(笑)。メニューを考えてみたり、料理学校に実際に通ったりもしていました。取引先も飲食系が多かったんですが、たまたま工場跡地の活用の話があり、ここでカフェをすることになったんです。」
黒神:「運命的にカフェに導かれたんですね!実際にカフェを始められてからご苦労はありましたか。」
酒井:「開店後、最初の3カ月は知り合いが訪ねてくれたりして賑わったんですが、その後、パタッと客足が途絶えました。あまりに人が来ないので、落ち込んでもう店をたたもうかと思ったくらいです。その時、岡大教育学部で美術をご専門にされている小川尊一先生が美術作品の展示会として店を活用してくださり、多くの人たちが足を運んでくださるようになったんですよ。」
黒神:「素晴らしい。そこから、現在のカフェZのコンセプトとなっているアートと融合したカフェ空間が出来上がったんですね。」
黒神:「話変わって、『Jテラスカフェ』出店のきっかけをお聞かせいただけますか。」
酒井:「たまたま山陽新聞で世界的に有名な芸術家ユニット『SANAA』さんの建物に出店するカフェの公募を見つけてすぐに岡大に連絡したんです。」
黒神:「厳しいコンペを勝ち抜かれたと伺ってますが。」
酒井:「はい。学長や理事の前でプレゼンをしたり、試食会をしたりと激戦でした。受かったときは天にも昇る気持ちで、もういつ辞めても良いと思いました(笑)。また、Jテラスカフェを寄付された当時の福武教育文化振興財団理事長の故福武純子様にも、有難いご縁をいただき感謝してもしきれません。」
黒神:「これまでさまざまな人たちとのつながりでここまで歩んで来られたことがとてもよくわかります。最後に、これからの若い人たちに何かメッセージをいただけますか。」
酒井:「はい、将来どんな職業に就こうとも、人とのつながりとコミュニケーションを大切にしてもらいたいですね。自分もこれまで幾度となくピンチもありましたが、常につながっている人たち、仲間たちに助けられてきました。」
黒神:「それは、酒井さんのお人柄にもよるところが大きいと思いますよ。これからの夢をお聞かせいただけますか。」
酒井:「私が人とのつながりやご縁に助けられてきたように、多くの人たちのつながりの基点としてこのカフェZが貢献できればと思っています。カフェZを訪ねてくれる人たちのために少しでも長く店を続けていきたいと思っています。」
黒神:「重みのあるお言葉を有難うございます。読者の皆さんも、ぜひ一度、カフェZを訪れてみてはいかがでしょうか。美味しい料理やデザート、飲み物はもちろん、定期的に入れ替わるアート作家さんたちの作品も展示されていて、とても癒される空間が待ち受けています。また、いまや大学への来客があった時には多くの方が利用する『岡大の迎賓館』、Jテラスカフェにもぜひ足をお運びください!」
カフェZ(カフェゼット)
岡山県岡山市南区浜野2-1-35
http://cafez.jp/
営業時間:10:00~18:00
定休日:月・火曜日
Jテラスカフェ
岡山県岡山市北区津島中1-1-1(岡山大学構内)
http://jtcafe.jp/
営業時間:9:00~17:00
定休日:日曜日・祝日
2023年7月12日
第30回 坂東優毅さん(法学部2年生)
黒神:「今日のお客様は、法学部2年生の坂東優毅さん(兵庫県立夢野台高校卒)です。坂東さんは、中学2年生の頃から島根県が好きになり、その後、2019年に史上最年少で島根のふるさと親善大使である「遣島使」に任命されました。その活動が注目されて、高校生のときになんとテレビ朝日の全国ネットの番組「激レアさんを連れてきた。」にも出演されました。兵庫県民がなぜ島根県の親善大使になったのか、また、その後なぜ岡山大学法学部に進学したのか、謎は深まるばかりです。今日は、その謎に迫ってみたいと思いますので、よろしくお願いします。
坂東:「よろしくお願いします。」
黒神:「早速ですが、なぜ島根県をそんなに愛しておられるんですか。」
坂東:「小学生のときに家族で島根を旅行したのがきっかけです。そのときに見知らぬ方に朝ごはんをごちそうしていただいたことなど、島根の地元の方と関わって、島根の土地柄や人々の温かみなどに触れたことが心に残りました。という感じではあるのですが、もちろん、他の県でも優しい方・素敵な方に出会ったことも幾度もありますし、なんで絶対に島根なのかと聞かれると正直わかりません。運命・ご縁としか言いようがないかもです。そこから、毎日、島根の全部の市町村について、隅から隅まで調べ尽くし、気がついたら島根県の人たちをしのぐほど島根について詳しくなり、島根愛が強まっていました。」
黒神:「たしかに、何かを好きになるということに理由は要りませんからね。おそらく、坂東さんには島根県がベストフィットしたんでしょう。」
坂東:「中学3年生のときに、先生から『せっかくだから島根のことについてみんなに披露してみたら』と水を向けられて、島根県庁の方に連絡をしてみたところ、えらく感心してくださり、有名なゆるキャラ「しまねっこ」まで連れてなんと私の中学まで来てくださったんですよ。」
黒神:「なんと!中学生の連絡で、あの有名な「しまねっこ」が中学校まで訪ねてくれたとは。きっと坂東さんの想像を超えた知識量と島根愛が半端でないことが県庁の方にも伝わったんでしょうね。さぞかし中学の仲間や先生方も喜んでくれたことでしょう。」
黒神:「その後、高校時代も何か島根に関わる活動や経験はありましたか。」
坂東:「はい、一番印象深いのは、やはり全国ネットのTV番組『激レアさんを連れてきた。』で紹介してもらったことです。その反響は大きくて、自分は知らなかったのですが高校の先生によると、Twitterのトレンドに『バンドウくん』が入ってたそうです。しばらくは高校でもいじられっぱなしでした(笑)。 それと、大学入学時の新歓で、『あれもしかしてテレビ出てた島根好きの子?』と声をかけられた時にはびっくりしました。」
坂東:「それ以外にも、松江市と出雲市をつなぐローカル鉄道、『一畑電車』があるんですが、その応援イベントを主催しました。SNSで全国の鉄道ファンの人たちに呼びかけて、一畑電車や沿線地域の魅力をできるだけ多くの人たちに知ってもらおうと思いました。この鉄道に多くのファンからの熱い声を届けることができ、反響もあったんですよ。
黒神:「高校生ながら、素晴らしいことをされたんですね。」
黒神:「話は変わって、大学は岡大法学部を選ばれたわけですが、それはまたどういう理由ですか。」
坂東:「将来、島根のために貢献したいという気持ちはずっと持ち続けているのですが、とくに、行政面で仕事に関わるということから公務員になることを思いつきました。公務員試験に強いということで、岡大の法学部を選んだんです。」
黒神:「おー、それは正しい選択です(笑)。うちの学生は、公務員試験にはめっぽう強いので。」
坂東:「ただ、入学してみて思ったのですが、公務員ではない形での貢献の仕方もあるんじゃないかな、とも思い始めています。まだ、詳しくは考えられてないのですが、例えば、実は知識はほとんどないのですが、地方でのDX化の推進で名だたる企業が地方で活躍されているのをよく聞くので、そういった業界にも関心を持ちました。他にも島根県の魅力ある会社の伸びしろを見つけたいなーとか考えたり…。さらには、1年生の時に教養科目で『アントレプレナーシップ』の講義を受けたことをきっかけに、今流行りの起業についても興味を持ちました。まだまだ漠然としたところが多いのですが、結果的に島根県のためになることをできればなと思っています。数十年・数百年にわたって、後世に島根県を残し続けていくために頑張って行きたいです。」
黒神:「大学生になって、親善大使としての活動の幅は広がりましたか。」
坂東:「はい、ユネスコ世界遺産で有名な石見銀山のある大田市から、「島根おおだアンバサダー」にも任命されました。大田市の知名度を上げるために、春休みには、大学生を対象に2週間現地で宿泊体験するプログラム「遊ぶ広報」などを実施しました。また、「Link.しまね」という就活支援事業にも関わっていて、島根出身の県外大学進学者とのネットワークを広げる活動を積極的に推進しています。あ、それから、大学祭にぜひ『しまねっこ』を招きたいと現在画策中です(笑)。」
黒神:「着々と島根県に貢献しておられるんですね。今日の話を伺って、坂東さんが動けば島根の知名度が上がるようなところまで来ているんだなと思いました。もう少しで『しまねっこ』と人気を2分するところまでいくんじゃないかな(笑)。これからの活動がますます広がっていきそうで楽しみです。また、定期的に学部長室に来て活動の展開を聞かせてください。」
坂東:「はい、もちろんです!そして黒神先生もぜひ島根県にいらしてください!」
黒神:「ぜひ、行きます!島根のことを聞いたら行きたくて仕方なくなってきました。本日は、ありがとうございました!」
坂東:「ありがとうございました!」
2023年5月7日
第29回 岡田美奈子さん(RSK山陽放送)
黒神:「今日のお客様は、法学部卒業生で、現在RSK山陽放送にお勤めの岡田美奈子さんです。岡田さんは、地元の放送局であるRSKのアナウンサーとしてTVでよくお見かけするので、親近感を覚えておられる方も多いのではないかと思います。法学部からアナウンサーという仕事に就く人はあまり多くはないので、今日は、その仕事に興味を持つに至ったきっかけや、お仕事上のご苦労ややりがいなどについてざっくばらんにお伺いできればと思います。本日は、よろしくお願いいたします。
岡田:「よろしくお願いします。」
黒神:「岡田さんは、アナウンサーというお仕事に就きたいと思ったのは、だいたいいつくらいからなんですか。何かきっかけなどあったんでしょうか。」
岡田:「アナウンサーを目指そうと思ったのは、高校生の時です。当時、放送部に所属していて、部活動の中でも体育祭の音響やアナウンスは大切な仕事の1つでした。私もアナウンスを担当したのですが、先生や周りの人に「今の上手かったよ!助かった!」褒められたことがうれしくて。『声で伝えることで役に立てるってこんなにも楽しいんだ』とその時に思ったんです。もともとテレビが大好きで幼いころから憧れはあったのですが、『アナウンサーになりたい!』という思いを強くしたのはこの出来事がきっかけでした。」
黒神:「岡田さんといえば、ついこの間まで『イブニングニュース』の顔でしたので、報道という印象が強いのですが、取材などされる中で、大学時代に学んだことが役立ったり、より関心が深まったことなどがありましたでしょうか。」
岡田:「キャスターに就任したばかりのころ、先輩に『報道記者はペンとノートが武器』と教えられました。なにも資料がないなかでも、ペンとノートさえあれば人から聞いた話からで情報を拾い上げ、ニュースとしてお伝えすることができるからです。私は大学の講義でもしっかりノートをとる派だったので、ちゃんと話を聞いてメモする習慣をつけていてよかったなと思いました(笑)!それから、法学部ということでいいますと、事件や事故などのニュースをお伝えするときに法律関係の専門的な用語が出てくることもあるのですが、それらを無意識のうちに抵抗なく理解できているように思います。」
黒神:「なるほど、学生時代なかなかの優等生だったんですね(笑)。大学時代の思い出は何かありますでしょうか。」
岡田:「やはり、倉敷小町での経験は大きかったですね。大学2年生の7月から1年間、普段の学生生活では出会えない、たくさんの社会人の方と一緒にお仕事をさせていただきました。その中で、社会人としての振る舞いやビジネスマナーなどを学べたことのほかに、『倉敷をもっと盛り上げたい!』と熱意をもって仕事に取り組んでいる人の姿を見て、『私もあんな熱い社会人になりたいな』と思ったのを覚えています。また、ダンス部と放送文化部にも所属していたので、1つの作品をみんなで作り上げることの楽しさも、部活動の中で学びました。」
黒神:「最近では、ニュースから、いきなり『Voice愛』のようなバラエティ番組で食レポなどされてたりして、視聴者の1人としてはとても驚いたのですが、ニュースやバラエティなどまったく異なる分野の仕事をするときにご苦労などはありませんか。」
岡田:「黒神先生と同じように、ニュースとのギャップに驚かれた方も多かったかもしれませんね(笑)。ただ、ニュースもバラエティも取り上げる角度や方法が違うだけで、『情報を伝える』という基本的な部分は同じです。ニュースでは、相手の思いをいかに引き出し、限られた時間の中で分かりやすく的確に伝えるかというところに重点を置いて取材し、一方、バラエティでは、どのように話を展開すれば楽しくその人柄や魅力を伝えることができるか、ということを常に考えて撮影に臨んでいます。もちろん『伝え方』に正解はないので、試行錯誤の日々ですね。」
黒神:「非常に奥深いお話ですね。今のお仕事を通じて、やりがいを感じるのはどのようなときでしょうか。」
岡田:「放送に対する反響があったときです。例えば、町でお会いしたご年配の女性に『この間おいしそうなもの食べてたね!』と話しかけてもらったり、ラジオ番組に『先日紹介していたイベントに行ってみました!』というメールが届いたり…。テレビ、ラジオは幅広い世代の人に親しみをもってもらえているメディアなのだなと、いつもやりがいを感じます。
黒神:「そういえば、岡田さんが美味しそうに食レポされているのを見て、私もご紹介されていたお店に行ったことありますよ(笑)。中でも特に印象に残ったエピソードなどありますか。」
岡田:「特に心に残っているのは、新型コロナで発表の機会を失った吹奏楽部の高校生たちに演奏の場をと奮闘する楽器店の男性を取材したときのエピソードです。その男性の思いが本当に温かくて、どうしても『伝えたい』と思い、イブニングニュースで特集として放送しました。クラウドファンディングでの演奏会の資金集めが難航していたのですが、なんと放送直後に目標額を達成したんです。人の気持ちのこもった言葉は届くのだと実感しましたし、アナウンサーとしてこれからもしっかり地域の情報をお伝えしていかなければと思った出来事でした。」
黒神:「アナウンサーという誰にでもできない仕事の中で、地域にとってとても大切な経験を着実に積まれていることを嬉しく思います。」
黒神:「岡田さんは、同じ道を目指す地元の高校生や大学生の後輩たちの憧れでもあると思います。最後に、その後輩たちに何かアドバイスなどありましたらぜひお願いします。」
岡田:「ぜひ自分のやりたいことを思い切りやってみてください!勉強でも、趣味でも、なんでも大丈夫です。興味のあることに挑戦することで、新たな発見や出会いがあるかもしれません。その経験が自信になり、きっと自分自身を輝かせてくれると思います。壁にぶつかることもあるかもしれませんが、自分を信じて頑張ってください!応援しています!」
黒神:「本日は、お忙しいところお時間を作ってくださり、本当にありがとうございました!」
岡田:「ありがとうございました!」
2023年4月27日
第28回 藤井紗希さん(法学部4年生)
黒神:「今日のお客様は、法学部4年生の藤井紗希さん(広島県立府中高校卒)です。藤井さんは、大学4年間を通じてウエイトトレーニング部に所属し、輝かしい記録を収められました。とくに、3年次からの成績は素晴らしいものがあり、その実績を評価されて、昨年度岡山大学から『学生文化奨励賞・学生スポーツ賞』を授与されました。また、先ごろ12月25日に行われた第49回全日本学生パワーリフティング選手権大会(いわゆる『インカレ』)では、なんと優勝を飾られました。私も、体を鍛えるのは好きな方ですので、練習のことなどいろいろとお伺いできるのを楽しみにしております。藤井さん、よろしくお願いいたします。」
藤井:「よろしくお願いします!」
(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「まずは、12月のインカレでの優勝、本当におめでとうございます!今回は、地元岡山での開催ということで、私もいつになく注目しておりました。」
藤井:「ありがとうございます!」
黒神:「なんか聞くところによると、直前に発熱をされたとのことで決して万全の体調ではなかったように伺いました。よく優勝されましたね。」
藤井:「はい、一時は出場も危ぶまれましたが、部員やコーチ、OBの方々の励ましで、無事当日を迎えることができました。なんとか自分なりの成果が出せ、また、団体戦でも2位入賞に貢献できてほっとしました。」
黒神:「まず、パワーリフティング競技について、簡単にご説明いただけますか。」
藤井:「はい。バーベルを肩に担いで屈伸する『スクワット』、ベンチ台の上に横になってバーベルを持ち上げる『ベンチプレス』、床に置いてあるバーベルを引き上げる『デッドリフト』の3種目を行って、合計して持ち上げた重量を競う競技です。」
黒神:「いわゆる筋トレの『ビッグ3』ですね!私もコロナ禍前は、スポーツジムで細々ですがやってましたので、競技の奥深さも少しはわかりますよ。」
黒神:「では、これまでの競技生活での成果をお伺いできますか。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
藤井: 「3年次の大会では、秋季関西学生大会とインカレで個人2位を獲得しました。4年次には春季・秋季関西学生大会、インカレの三大会で個人優勝を果たしました。秋季関西学生大会ではベンチプレスで62.5㎏を成功し、全日本学生記録を樹立しました。」
黒神:「素晴らしい成績ですね。高校の時から運動をされていたのですか。」
藤井:「いいえ、高校では美術部に所属していました。大学入学時にたまたまウエイトトレーニング部に勧誘されて見学に行ったのが入部のきっかけです。先輩方も優しくて、部の雰囲気が私にはとても合っているように感じました。」
黒神:「もともと美術部だったんですか。とくに重たいものを持つことなどない生活から一変しましたね(笑)。」
黒神:「これだけの成果を挙げるためには、普段から相当の努力をされていることと思いますが、普段のトレーニングについてお聞かせ願えますか。」
藤井:「週3~4回の頻度でトレーニングしています。合同練習自体は週2回ですので、残りは自主練に行くか、自宅で自重トレーニングを行うという配分です。1回の練習で3種目のうちどれをメインでするかを決め、マシンやダンベル等の補助種目も取り入れています。スクワットとベンチプレスは週に必ず1度は行うようメニューを組んでいました。」
黒神:「今回も大会直前の病気がありましたが、これまでの競技生活の中で、辛かった経験などありますか。」
藤井:「3年次の秋季関西学生大会で腰を痛めてしまい、それが翌月のインカレにも響いたことが辛かったです。腰に負担がかかる種目の練習ができませんし、自己ベストマイナス20㎏以下の重量ですら持ち上げるのがやっとでした。」
黒神:「それはたいへん辛い経験をされましたね。競技に戻れるかどうかさぞ不安だったことでしょう。」
藤井:「その他、階級制のスポーツですので減量をしなければならず、その苦労もありました。辛いときは、信頼できる周囲の人に相談して、様々な意見を取り入れていました。」
黒神:「辛かった時期も、周囲のアドバイスを受け入れながらうまく自分をコントロールされたんですね。素晴らしいです。」
黒神:「部活と勉学との両立はたいへんでしたでしょうか。とくに留意されたこととかありますか。」
藤井:「両立にとても困ったことはなかったですが、期末試験の準備と就活の間は部活の時間をとりにくく大変でした。両立させるために、部活の後に必ず図書館に行って勉強して帰るというマイルールを作ったり、オンライン授業になってもLINEで法学部の友人とレポートの内容について話して理解を深めたりしました。」
黒神:「大学時代の競技生活を通じて何か得られたことはありますか。」
藤井:「継続力や向上心です。筋肉は1日頑張ったからといってすぐにつくものではなく、以前より負荷を増やしたトレーニングや、日々の積み重ねが鍵です。自身の調子と向き合い、目標に向かって地道に取り組んだ結果、試合当日に本領発揮できたという過程は、今までにない成功体験でした。これをもとに、社会人になってからも自信をもって物事に取り組んでいきたいです。」
黒神:「よく『継続は力』といいますが、それを身をもって体験された藤井さんは、大学時代を通じて強くなられたことと確信します。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「藤井さんは、現在4年生ですが、今後はどのような道に進まれるんですか。」
藤井:「医療・年金等に関わる事務を行う、厚生分野の公務員として働きます。家族が医療関係に従事していて、社会保障法の講義で学んだ内容を家族に話すと会話が弾んだのが印象深かったので、志望しました。法学部で学んだことや部活での経験を活かすことができたら嬉しいです。」
黒神:「これからも競技は続けていかれるのでしょうか。」
藤井:「これからも競技を続けるつもりでいます。特に、前回のインカレで本調子が出なかったためジュニアカテゴリーの日本記録を更新できなかったことを悔やんでいます。2023年12月までは更新を狙える年齢制限を満たしているので、それまで開催される大会に出場して更新したいです。あとは、筋トレが健康に良いと感じたので続けたいです。健康のため、先生も状況が許せばまた筋トレ、復活させてくださいね。」
黒神:「ありがとうございます。はい、必ずまたスポーツジムに再入会します(笑)。」
黒神:「パワーリフティングの競技人口はまだ少ないと伺っています。よろしければ、最後に、後輩やこれから入学してくる高校生の皆さんに、競技の魅力など熱いメッセージをいただければと思います。」
藤井:「ウエイトトレーニング部は、パワーリフティングという競技で全国大会団体優勝を目指しています。といっても私のように大学から筋トレを始めた部員が多いです。知識や経験が豊富なコーチや先輩が在籍しているので、恵まれた環境で心身共に成長できます。4月の新歓で一度見学・体験に来ていただきたいです!」
黒神:「ご卒業後も、一層のご活躍を期待しています。本日は、ありがとうございました!」
藤井:「ありがとうございました!」
2023年1月27日
第27回 岡田英樹さん(外務省在スーダン日本国大使館三等書記官)
黒神:「今日のお客様は、法学部卒業生で、現在外務省の在スーダン日本国大使館にお勤めの岡田英樹さん(愛知県立長久手高校卒)です。岡田さんは、本学のグローバル人材育成特別コース(2013年開始)の第1期生でした。本学がスーパーグローバル大学(SGU)として、グローバル化推進の命運を賭けて設けた肝いりのコースを修了して、外務省でバリバリ活躍してくれているわけですから、岡田さんは本学のグローバル化のまさに申し子のような人材といえます。本日は、学生時代から外務省入省後今日に至るまでを振り返っていろいろとお伺いできればと思いますので、よろしくお願いいたします。」
岡田:「よろしくお願いします。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「岡田さんとは、大学1年生のときからの付き合いですが、そもそもなぜ1年生からグローバル人材育成特別コースに入ったんですか。」
岡田:「自分は小さい時から漠然とですが、将来は海外で働いてみたいという気持ちがずっとありました。その中で、自分が岡山大学に入学した年にグローバル人材育成特別コースが新しくできたと聞き、留学ができるという話を聞いてこれは是非!と思いコースへ参加しました。」
黒神:「実際、2年次から留学をされたわけですが、留学をして何か考え方など変わったことがあったんですか。」
岡田:「自分は、大学の交換留学制度を使ってイギリスのヨーク・セントジョン大学に3ヶ月の短期留学に行きました。ホームステイをして現地の学校へ行き、同じ大学に通う様々なバックグランドをもつ学生と深く交流をしていく中で、海外で働きたいという気持ちがより鮮明なものとなりました。」
黒神:「帰国後、刑事訴訟法のゼミに入られましたが、そこから外務省受験に切り替えられたのはどうしてですか。また、いきなり進路変更して外務省の試験によく対応できましたね。何か特別に準備をされたんでしょうか。」
岡田:「刑訴ゼミを受講していたのは法曹を希望していたからなのですが、同級生が就活する時期で、自分も一度色々な職業を知っていた方が良いのではと思うようになりました。そして、色々な業種の説明会に参加した中で、初めて現役の外交官の方にお会いしたんです。その方から外交の実際の業務がどういうものなのか初めて耳にし、法曹以外の仕事で初めて興味が沸いたんです。その後、何度か説明会に参加していく中で、自分も外交官として大使館で働きたいという気持ちが明確になり試験を受けることを決心しました。」
黒神:「もともと興味のなかった地方の学生を振り向かせるとは、外務省の広報活動も捨てたもんじゃないですね(笑)。でも、試験日までほとんど日数もなかったと思いますが、よく間に合いましたね。」
岡田:「憲法と国際法は大学での学習を真面目にやっていたのである程度自信がありました。経済学は過去問頼みでしたが当日ヤマも当たって(笑)、何とか合格することができました。」
黒神:「外務省ではアラビア語を研修語とされたそうですが、何か強い思い入れがあったんですか。」
岡田:「正直に申し上げると強い思い入れ等はまったくありませんでした(笑)。入省後に希望する言語を最大5つまで記入できるんですが、外交官として色々な場所で勤務してみたいと思っていたので、使用されている国が多い順に希望言語を埋めていきました。たまたま第5希望で書いたアラビア語が研修語になったんです。最初に言語を言い渡された時はさすがに面食らいましたが、今ではこれもアッラーの思し召しがあったからだと思っています(笑)。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「本省での研修や在外での研修期間をどう過ごされましたか。」
岡田:「本省では約1年半ほど勤務していたのですが、特に記憶に残っているのは、NYで行われた国連総会に出張したことです。国連総会のマージンで開催される中東地域の首脳級・閣僚級の会合が非常に多かったため、それらの会合に向けた準備のため他の先輩方とともに1週間程出張しました。出張中は毎日色々な業務に追われて終始大変でしたが、同時に各国首脳や大臣との会談を通して実際の外交が動いている瞬間を目撃して、外交の面白さを強く認識できました。」
黒神:「たしかに、若いうちに国連の議場を経験するのはとてもいいことですね。在外研修はいかがでしたか。」
岡田:「本省での研修後、エジプトに約3年ほど語学研修のため赴任し、文字通り1からアラビア語の勉強を始めました。しかし、それ以上に実際にエジプトで生活することで、文字情報だけでは分からないエジプトという国の文化や風習、社会的な価値観等を肌感覚で知ることができたとことはとても大きな財産になっています。また、1カ月弱の研修という形でイスラエルにも滞在し、大学院のサマーコースにも参加したのですが、イスラム系のテロリズムの問題等に関してイスラエル側の視点を勉強できた点で非常に有意義なものでした。」
黒神:「その後、現在のスーダンでの勤務となったわけですね。1年くらい働かれていると思うのですが、何かご苦労はありましたか。」
岡田:「まず一番大きかったのは、昨年10月に軍事政権奪取が発生したことですね。これはスーダン国軍のトップが当時の首相を自宅軟禁した他、その他文民の閣僚複数名を拘束、国家非常事態宣言を発令したという事案なのですが、当初は国内でも特に国民からの反発が極めて大きく、スーダンの治安情勢がどうなるのか極めて不透明な状態に陥りました。」
黒神:「いわゆるクーデターを経験されたんですね。それはたいへんだったことでしょう。」
岡田:「はい、国内各地でデモが起こるし、通信網が遮断されて外部との連絡が取れず公開情報すら入手することが極めて困難になったため、業務上も私生活上も極めて厳しい生活を強いられました。」
黒神:「この次もし別の地域での勤務となるとすると、どういったところを希望されますか。」
岡田:「スーダンでの配属は2年間の予定ですので、恐らく来年には別の国に異動することになると思いますが、やはりアラビア語が使える中東地域で勤務していきたいと考えています。なぜそんな場所でと思われることが多いですが、やはりエジプトやスーダンでの勤務経験を通じて、この地域のことをもっと深く知っていきたいという気持ちがとても強いからでしょうね。」
黒神:「そうですか。アラビストとしての道を歩き出されたことをとても頼もしく思います。最後に、岡田さんのように、大学時代に留学をして、将来世界で活躍したいと思っている学生がたくさんいると思うのですが、後輩たちにぜひメッセージを頂ければと思います。」
岡田:「1つ確かに言えることがあるとすれば、自分の興味や関心があることを積極的にやっていくことが重要なのかなと思います。自分はもともと学校の成績が特段良かった訳でもなければ、ことさらに英語が出来たわけでもありません。海外に初めて行ったのも大学に入ってからで、それまでは外国人なんて学校のALTの先生しか見たことがありませんでした(笑)。それでも自分の興味のあることをやってきた結果、今は外交官として仕事ができるようになりました。ですので、皆様も興味のあることを積極的にやっていけば自ずと道はひらけていくのではないかと思います!」
黒神:「すばらしいメッセージをありがとうございます。本日は、限られた帰国休暇中の貴重な時間を割いてくださり、本当にありがとうございました!」
岡田:「ありがとうございました! 」
2022年12月8日
第26回 加藤渉さんと菊地葵衣さん
~法学部卒業生の司法試験合格を祝して~
黒神:「今日のお客様は、このたびめでたく司法試験に合格された、加藤渉さん(広島県立井口高校卒)と菊地葵衣さん(兵庫県立長田高校卒)です。お2人は、岡山大学法学部出身で、うちの法務研究科(ロースクール)に進学され、このたびの栄冠を勝ち取られました。
ところで、昨年に続き、今年の岡大ロースクールの合格実績も立派なもので、予備試験資格での受験者を含む11名の合格者のうち7名が岡大法学部出身者でした。本日は、学部生の頃から司法試験合格までの道のりについて少しお伺いできればと思っていますので、よろしくお願いします。」
加藤・菊地:「よろしくお願いします。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「まずは、司法試験合格、おめでとうございます!今年も、安定して合格者の6割以上がうちの法学部出身ということで、私も本当に嬉しく思っています。」
加藤・菊地:「ありがとうございます!」
黒神:「早速ですが、お2人はいつごろから法曹を目指そうと思われたんですか。」
加藤:「私は小学生の頃からTVなどの影響もあって弁護士という職業に憧れを抱いていました。中学、高校と進学するにつれてその憧れはいつしか明確な目標に変わっていきました。法学部入学後は、労働法の授業を受けたことや身内・知人の劣悪な労働実態を見聞きしたことなどから、労働者側の弁護士という法曹像を描くようになりました。」
菊地:「最初のきっかけは、白バイに乗りたいと幼少期に漠然とした憧れを抱いたことで す。正義のヒーローに憧れを抱いていたんだと思います。そこからドラマの影響で検察官や弁護士といった職業を知り、中学生の頃にインターンシップで法律事務所にいったことをきっかけに、本格的に法曹を目指そうと思いました。」
黒神:「多くの学生さんたちがTVの影響をどこかで受けてるみたいですね(笑)。みなさんゼミはどこに所属しておられたんですか。ゼミでは、どんな学びをされたんですか。」
加藤:「3年生では岩藤先生の民法ゼミ、4年生では土岐先生の労働法ゼミに参加していました。どちらのゼミも学生主体の進行方式が採られていたため事前準備が大変でしたが、あるトピックについて過去の判例・裁判例や学術論文等を参照しつつ限界事例や妥当な落とし所を自ら模索するという愚直な姿勢が身につきました。この姿勢は後の司法試験の勉強においても大いに役に立ちました。」
菊地:「原田先生の刑事訴訟法ゼミに参加していました。法律答案の書き方の基礎を学ぶこともできましたし、議論を通じて法的問題点をあらゆる角度から解明していく思考方法についても学ぶことができました。それまで自分が受けてきた講義型とは異なっていたため、議論をする楽しさを知りました。」
黒神:「有意義なゼミでの学びをされたんですね。ところで、皆さんは他県のご出身ですが、なぜうちのロースクールへ進学しようと思われたんですか。何かメリットのようなものを感じられたのでしょうか。」
菊地:「岡大ローは少人数制のため、手厚い指導を受けられます。私は自分から質問など積極的に動けるタイプではなかったので、大規模ローで自主性に委ねられるより、指導が手厚い方が向いていると思いました。また、学部も岡大であったため、知っている先生や先輩がいることも魅力でした。」
黒神:「なるほど、事情よくわかります。実際にうちのロースクールに進学してみて、よかったと思われましたか。」
加藤:「ここ数年の合格実績が指し示す通り、岡大ローは我々学生が司法試験合格という目標に到達できるように明確な道筋、いわば『合格へのレール』を敷いてくれています。良質な授業、手厚い学習フォロー体制が整備されていることはもちろん、自分専用の自習スペースを提供していただけるので存分に受験勉強に打ち込むことができました。」
黒神:「『合格へのレール』ですか。いい言葉ですね(笑)。たしかに、とくにうちのローの既修者コースは最近ほぼ100%の合格率を誇っていると聞きますからね。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「ロースクールでの毎日についてお伺いします。だいたいどんな生活を送られてい ましたか。また、家と大学の往復の生活は、苦痛ではなかったでしょうか。」
菊地:「朝9時には大学に行くことを目標にして、夜も9時ごろまでは大学にいました。気が抜けてしまいそうになったときでも、自習室に行くとライバルの姿が嫌でも目に入るので、良い刺激になっていました。勉強に疲れたときは、リフレッシュルームで無駄話をして息抜きをしたり、たまにローの仲間と外食をしたりして、程よくストレスを解消していたと思います。」
黒神:「司法試験への対策として、とくに効果的な学習方法などありましたでしょうか。 また、学習方法で工夫されたことなどありましたか。」
加藤:「司法試験はあくまでも受験勉強ですから、まずは過去問を基軸に学習を進め、出題趣旨や採点実感などを読み込み、自分が数年後に闘うことになる敵を知ることが効果的です。また、弁護士は文章が商売道具であり、司法試験は実務家登用試験です。そこで自己の文章力に磨きをかけるべく、他人に答案を読んでもらう機会をできるだけ多く確保するよう努めていました。自身の考えを適切な語彙を用いて文章化し、その真意を読み手に伝えるということは意外と難しいことですから、ひたすら鍛錬あるのみです。」
黒神:「すごい!学習の工夫もさることながら、強い意思、気概をもって取り組まれていたことがとてもよくわかります。」
黒神:「将来、みなさんはどんな法曹を目指しておられるのですか。」
加藤:「私は街の弁護士として、泣き寝入りせざるを得ないと悩み苦しんでおられる方々に救いの手を差し伸べられるよう尽力したいです。特に、労働は人々の生活の大部分を占めるものですが、労働法は一番遵守されていない法律とも呼ばれ、世の中には未だブラック企業が跋扈しています。私は特に労働問題に力を入れ、1人でも多くの悩み苦しむ労働者を救いたいと考えています。」
菊地:「バランスの取れる結論を導き出せる法曹になりたいです。私は、目の前にある紛争を解決することだけが法曹の役目とは思いません。紛争当事者の人生をより良いものにすることが、法曹の使命だと思っています。そのため、紛争当事者の未来を見据え、その人の今後の人生を考えた結論を導くことができる法曹になりたいです。」
黒神:「みなさんしっかりと進むべき道を考えていらっしゃるんですね。素晴らしいことです。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「最後にまず、法曹を目指す法学部生に対してメッセージをお願いします。」
加藤:「司法試験の勉強は長く険しいものですが、自身の心に1つ、将来どのような法曹になりたいか、明確な志・信念を持っておくとモチベーション維持に役立ちます。また、もし私が1から司法試験を目指せと言われれば、再び岡大ロー進学という選択肢を選ぶと言い切れます。岡大ローにはそう言わしめる程のものがあります。法学部の法曹プログラム制度は岡大ローの司法試験合格へのレールに繋がる道だと思うので、みなさんこのまま安心して突き進んでいってください。」
黒神:「いやはや、そこまで岡大ローを推してくださるとは。くれぐれもウェブの読者の方々にお断りしておきますが、決して岡大ローを勧めるように私がお願いしたわけではありませんので(笑)。」
黒神:「次に高校生に向けたメッセージをお願いします。法学部で学ぶことのメリットや、さらには、岡山大学法学部で学ぶことのメリットなどお聞かせください。」
菊地:「法学部で学ぶことで、社会の仕組み・ルールを知り、社会の中で生きる力をつけることができると思います。そして、岡山大学法学部では、社会の仕組みを知った上で、公務員や一般企業の就職、法曹など、どれを目指すことも可能となるカリキュラムが整えられていると思います。また、岡山という土地はすごく住みやすい場所だと思うので、そういった環境の点でも岡山大学は素晴らしいと思います。」
黒神:「はい、その通りです。私からは付け加えることはございません(笑)。本日は、本当に貴重なお話を伺えてたいへん有意義でした。ありがとうございました。これからみなさんのさらなる飛躍を期待しています。それから、これからもぜひ岡山大学法学部のことをよろしくお願いします!」
加藤・菊地:「ありがとうございました!」
2022年11月8日
第25回 國貞智子さん、豊川諒さん
黒神:「今日のお客様は、司法書士の國貞智子さん(岡山芳泉高校卒)と豊川諒さん(愛媛県立松山東高校卒)です。お2人は、若手司法書士から構成される岡山県青年司法書士協議会に所属しておられ、國貞さんは現在その会長を務めておられます。今日は、知られているようでじつはあまりよく知られていない司法書士のお仕事についてお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。」
國貞・豊川:「よろしくお願いします。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「うちの学部は、昔からずっと司法書士の先生方に『不動産登記法』の授業を担当していただいてきています。お世話になり、本当に感謝しています。」
豊川:「いえいえ、今年度私も教えに行きますので、よろしくお願いします。」
黒神:「ところで、みなさんご所属の協議会には、『青年』という言葉がついていますが、だいたい平均の年齢はおいくつくらいになるんですか。」
國貞:「平均年齢はだいたい40歳くらいですね。『青年』とついていますが個人的にはあまり年齢は関係ないと思っていて、『司法書士の仲間で色んなことをしたい』という気持ちがあれば誰でも『青年』で良いんじゃないかと思います(笑)。一応、今の正会員の条件としては、「45歳または会員になってから5年の遅い方」ということにはなっています。」
黒神:「やはり、皆さんいろんなバックグラウンドをお持ちなので、年齢についても多少のばらつきがあるんでしょうね。皆さんが司法書士を目指された動機などについてお伺いできますか。」
國貞:「はい、私は、祖父の代から司法書士で、父と叔父も司法書士でしたので、いずれは自分も司法書士になるのかな?と漠然と考えていました。そんな矢先、大学2年の講義の中で、司法書士になった方がお話をされる時間がありました。それをきっかけに、友人と一緒に予備校に行って申し込み、勉強を始めて、大学4年のときに合格しました。司法書士を目指したのは、家のこともありましたが、公務員や民間企業は自分には務まらないだろうという気持ちもありました。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
豊川:「私の場合は、まず法学部に入ったからには何か法律に関する資格を取ろうと思って、行政書士を取得しました。そこからさらにステップアップを、と考えた結果ですね。ただ恥ずかしながら、一度では合格できなかったんです。その後岡大の社会文化科学研究科で政治学を専攻した後、民間企業に就職して……それからやっぱり忘れられなくて帰ってきた感じでしょうか。」
黒神:「國貞さんは、大学卒業後直接司法書士に、また、豊川さんは、社会経験を経て司法書士になられたんですね。」
黒神:「私も自分の家を建てたときに、司法書士の先生に登記でお世話になったのですが、一般に司法書士の仕事とはどんなものでしょうか。
國貞:「司法書士は、登記、成年後見等の財産管理、裁判業務、遺言書の作成サポートなど多岐にわたります。一般的に司法書士がメインで行っている業務は、黒神先生も依頼された『登記』です。土地や建物を売買する、相続する、担保に入れるとき等にその登記申請手続きをします。また、会社や法人の登記もありまして、会社を設立するときや、役員を変更するとき、機関設計を変更するとき等にその登記申請手続きをします。ただ手続きをするだけでなく、どのような方法をとるのが適切なのか、お話をうかがいながら考えていきます。」
黒神:「ひとことに『登記』といっても、いろんな種類があるんですね。それ以外の仕事も教えてもらえますか。」
國貞:「はい。成年後見は、認知症等で判断が難しい方の財産管理をする仕事で、専門職後見人では司法書士が最も多いです。また、裁判業務というのは、一定の額までの裁判であれば司法書士が代理人となりますし、裁判所に提出する書類を作成する方法で手続支援をします。さらに、紛争性がある場合は弁護士、税務が関わるときは税理士、行政に対する手続きは行政書士、境界問題等については土地家屋調査士というように、ご相談内容に応じて専門家と連携したり、つなげたりということもしています。司法書士の仕事は、『中立な立場で全体を見通して支援する』性質があると思います。」
黒神:「司法書士の仕事というのは、じつに多岐にわたるんですね。なにせ法曹と違ってマスコミなどでも取り上げられることが少ないので、学生たちにもなかなか浸透しにくいですね。ドラマにでも取り上げてもらえたらまた違うんでしょうけど(笑)。」
黒神:「司法書士になってそれまでの自分とどう変わりましたか。また、仕事上、やりがいを感じることはどんなときでしょうか。」
豊川:「サラリーマン時代との違いで言うなら、時間の自由がきくようになりました。お客様の都合はありますけど、どのタイミングでどの仕事をする、というのが自分の判断で決められるので。やりがいがあるのは、そうですね、月並みですけどやっぱりお客様からのありがとう、でしょうか。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「有難うございます。では、これからどのような司法書士を目指そうと思われますか。今後の抱負や目標などについてお聞かせください。」
國貞:「悩んだときに『とりあえず相談してみよう』と思ってもらえるような身近な存在になりたいです。困っているけど他人には言いたくない、言いづらいと思っている方は沢山いると思いますで、そのような方に信頼され、頼ってもらえる司法書士になり、『相談して良かった』と思ってもらうことが目標です。」
豊川:「私は理想の司法書士像というのがまだ見つかっていないので、まずはそこを探そうと思います。さしあたっては、お客様からありがとう、お世話になりました、という言葉が頂ける司法書士ですね。業務で直面する課題はお客様の困りごとであることが多いので、それを解決できる力量を確保しないといけないと思っています。」
黒神:「では、最後に後輩の学生たちに何かメッセージがありましたら、ぜひよろしくお願いします。」
國貞:「私は仕事をするまで司法書士がどんなことをするのかよく分かっていなかったのですが、司法書士仲間と関わり、仕事をする中で、業務の幅広さや支援の可能性に気づいて、今は司法書士は魅力的な仕事だと思っています。学生の皆さんが自分にあった仕事を見つけられることを祈っています。そして司法書士も頭の片隅においてもらえると嬉しいです。」
豊川:「司法書士は自分でいろいろなことを決めて、自分らしくいられる職業の一つだと思っています。基本的に、仲間同士共通点は試験に合格したことだけ、というくらい色々な人がいて、いろいろなことに取り組んでいます。詳細はここで話すと長くなってしまうので、興味のある方は不動産登記法aの講義でお待ちしています(笑)。」
黒神:「法曹関係の方々とは案外お話しする機会があるのですが、司法書士の方々とお話しする機会はあまりないので、今日は本当に貴重なお話を伺えてたいへん有意義でした。とくに、司法書士の仕事が『中立な立場で全体を見通して支援する』仕事だという点はとても印象に残りました。見ようによれば、全体を見渡して、法の分野で人と人をパスでつないだりアシストしたりする、いわば司令塔のようなイメージかなとも思いました。お2人のこれからのご活躍を期待しています。また、これからもぜひ岡山大学法学部のためにもご協力ください!」
國貞・豊川:「ありがとうございました!」
2022年9月27日
第24回 渡邊紗千さん(法学部3年生)
黒神:「今日のお客様は、法学部3年生の渡邊紗千さん(岡山県立倉敷南高校卒)です。渡邊さんは、昨年7月から1年間、倉敷観光コンベンションビューローが主催する「第39代倉敷小町」として地域に貢献されました。今日は、これまでの活動の内容やその成果などについてお伺いできればと思っています。よろしくお願いします。
(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「はじめまして。いつもTVや新聞で拝見しているので、私にとっては、じつは初めてではないのですが(笑)、お会いできて嬉しいです。この1年間、お疲れさまでした。」
渡邊:「ありがとうございます!今日はよろしくお願いします。」
黒神:「倉敷小町は、岡山の人たちには普段から馴染みがあるように思いますが、倉敷市の魅力をPRするために選ばれたメンバーという理解でよろしいでしょうか。」
渡邊:「はい、そうですね。」
黒神:「渡邊さんは、もともと倉敷のご出身だと伺っていますが、そこまで倉敷愛にあふれてたんですね(笑)。小さい頃からこれに応募しようと思ってたんですか。」
渡邊:「いえ、正直にいいますと、母が何の気なしに勧めてくれたので、軽い気持ちで応募してみたんです(笑)。それに、入学当初からコロナ禍の大学生活で何もできない日々が続いていたので、大学生活のひとつのチャレンジとして、いい機会だと思い応募しました。」
黒神:「そうだったんですか。50人以上の応募の中から厳選された3人のうちの1人ということで、審査は激戦だったことと思います。よく頑張られましたね。」
渡邊:「幸運なことに選んでいただけました。本当にいいご縁がありましたね。」
黒神:「具体的には、どのような活動をされたんですか。」
渡邊:「RSK山陽放送の情報番組でのスタジオやロケでの出演、倉敷警察署での特殊詐欺被害防止啓発キャンペーン、JR倉敷駅構内での特産品の販促など。これ以外にもいろいろとさせていただきました。最近では、岡山県の夏の観光をPRする『岡山デスティネーションキャンペーン』で大阪駅まで出張して、倉敷を代表するマスキングテープと一緒に、倉敷市をPRに行ったんですよ。」
黒神:「じつに多様な活動をされたんですね。とくに印象に残っている活動はありますか。」
渡邊:「たまたま岡山大学の中国人留学生向けの日本語研修プログラム(オンライン)で、倉敷の美観地区をVR映像を交えながら紹介させていただくことがありました。自分が通う大学の留学生の方のための仕事でしたので、大学にも地域にもお役に立てたことがとても嬉しかったです。」
黒神:「ほかにも思い出になっていることはありますか。」
渡邊:「はい、TVのスタジオには生放送での出演という、生まれて初めてのことでしたので、今までにない緊張感を味わいました。また、特殊詐欺被害防止のためのビラ配りは半日かけてのお仕事でしたが、警察署から一日署長の委嘱を受けての仕事で身が引き締まる気持ちだったので、立ちっぱなしでの仕事もまったく苦にはなりませんでした。いずれも、本当に貴重な経験をさせていただきました。」
渡邊:「それ以外にもじつは、コロナ禍で活動に制約もあり時間的な余裕もありましたので、私たちの代で初の試みとして、自分たちの手で動画も作らせていただいたんですよ。」
(動画はこちらから)
黒神:「え、そうだったんですか。SNSでのきれいな写真や映像、てっきりプロが作っておられるんだと思ってましたが、自作のも入ってたんですね。それは素晴らしいですね!」
黒神:「総じて倉敷小町としての1年間の活動を通じて、どのようなことが得られましたか。」
渡邊:「ひとつは、社会人に必要な礼儀や振る舞い、ビジネスマナーが身に付きました。倉敷小町としてお仕事するときは、一社会人として見られます。多くの社会人の方々と関わったことで自然とそういった振る舞いが身に付きました。また、住んでいるだけでは、なかなか気づけない、観光地としての倉敷に魅力を知ることができ、今まで以上に倉敷のことを好きになりました。」
黒神:「渡邊さんも3年生で、そろそろ今後の進路について考える時期にあると思いますが、お考えがありましたらお聞かせいただけますか。」
渡邊:「はい、やはり倉敷小町としての活動を通じて、伝えることの大切さを学びましたので、将来はマスコミ関係の仕事に就くことができればと思っています。」
黒神:「今回のご経験が進路を考える意味でも、いい経験になったんですね。ぜひその夢に向かって頑張って下さい。これからのご活躍を大いに期待しています。今日は、ありがとうございました!」
渡邊:「ありがとうございました!」
2022年8月25日
第23回高山蓮汰さん(法学部1年生)
黒神:「今日のお客様は、法学部1年生の高山蓮汰さん(広島県AICJ高校卒)です。高山君さんは、今年度から法学部で初めて迎えることになった国際バカロレア(IB)入試の合格者です。IBについては、あまり聞き慣れない方もいらっしゃるかと思いますので、ごく簡単に触れておきます。
IBとは、IB機構(本部ジュネーブ)が提供する国際的な教育プログラムのことです。このプログラムで学んだ生徒には、国際的に通用する大学入学資格(IB資格)が与えられます。現在、世界160以上の国や地域において、約5,500校がこのプログラムを推進する学校として認定されています。日本でも150以上の学校が認定されています。(IBについてはこちらから)岡山大学では、2012年に、日本の国立大学では初めてこのプログラムを経た生徒を受け入れるいわゆるIB入試を導入しました。(岡山大学と国際バカロレアについてはこちらから)
前置きはこの辺にして、本日は、高山さんにIB校での学びや岡山大学法学部に入学したことの動機、今後の抱負などについてお伺いしたいと思います。よろしくおねがいします。」
高山:「よろしくおねがいします。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「まずは、法学部で初のIB生を迎えることができて嬉しいです。入学してくれてありがとうございます。」
高山:「いえいえ、こちらこそ受け入れてくださり、本当にありがとうございます。」
黒神:「私は、今から10年ほど前に、岡山大学のグローバル化を目指す仕事の手伝いをしたことがありまして、その頃ちょうど岡大がIB入試を初めて取り入れた国立大学ということでとてもインパクトがあり、それを内外にアピールしたものです。当時、IB入試の導入は画期的な試みでかつ全国的にも注目されたんですよ。」
高山:「そうだったんですか。それは存じ上げませんでした。」
黒神:「種々の努力が実って、2014年度以来、岡大が文科省から『スーパーグローバル大学(SGU)』として認定されることになったんですが、IB入試の導入が、1つの起爆剤となったことは間違いありません。あれから10年、本当に懐かしいです。」
黒神:「わが法学部にも、IB生を迎え入れてグローバルに羽ばたいてもらいたいという希望を持って今日まで来ました。そういう意味では、高山さんは希望の星ですよ(笑)。」
高山:「それは責任重大ですね(笑)。」
黒神:「高山さんは、どのような経緯でIB校に入ったんですか。」
高山:「もともと幼少期に4年ほど毎日英語漬けのインターナショナル幼稚園に通いました。小学校は日本の大学附属の小学校に通いましたが、その後、中高一貫校に入学し、高校からIBプログラムのコースを選びました。幼少期に培った英語力が役に立って無事IBのコースに入学できました。」
黒神:「幼稚園で4年間英語漬けの毎日ですか。それはきっとネイティブ並みの発音と聞き取りが自然と身についたことでしょう。大学院のときに初めて留学生活を1年だけ体験した私としては、とても羨ましいですね。IBのコースをあえて選んだのは何故ですか。」
高山:「座学で一方的に受け身の授業を受けるよりも、アクティブ・ラーニングができることに魅力を感じたからです。実際にも、IBのコースを選んでよかったと思っています。」
黒神:「そうですか。IBのディプロマ・プログラムを修めるのは、たいへんなんですか。」
高山:「私の場合、日本語、英語、経済学、物理、数学、化学の6科目を学習しました。プログラム1年目はまんべんなく全教科に苦しみましたが(笑)、特に理系科目の物理と化学の成績がまったく伸びませんでした。英語で履修していたため、自宅での学習も億劫になってしまい、十分に勉強をしない日々が続いてしまいました。
その後、IB最終試験と大学受験が近づくにつれて徐々に焦りを持ち始めました。気持ちを奮い立たせ、自身の勉強法を見直そうと決心しました。具体的には、自分のレベルに合った教材を探し、積極的に先生を訪ね、問題演習量を増やすなど、従来の雑な勉強法を1から10まで改めて効率化しました。その結果、最終的には45点満点中の40点を取得でき、1年目の成績と比べると約2倍まで成績を伸ばすことができました。
黒神:「そうなんですか。きっとわれわれには計り知れない困難と、それを克服する並々ならぬ努力があったんでしょうね。岡大法学部を選んだ動機は何ですか。」
高山:「もともと自宅が広島なので中国地方の大学と思っていました。僕は人々の行動規範を構成する『法』に興味を持っていたので、法学部に進学することを決めました。岡大法学部は、法曹養成や公務員試験などに定評があったので出願させていただきました。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「うちと縁があって本当によかったです。大学生活でやりたいことは何ですか。」
高山:「まずは留学をしてみたいです。入学と同時に、『グローバル人材育成特別コース』にも入りました。」
黒神:「ははは、そうですか。じつは、そのコースも岡大のグローバル化のために、できるだけ多くの学生に留学経験をしてもらおうと思って、10年前にわれわれが構想したものなんですよ。ぜひ留学を経験してください。」
黒神:「将来の進路など何か考えてますか。」
高山:「何分まだ入学して間もないので、明確なビジョンはありませんが、せっかく法律を学ぶので、法律の知識を生かしてグローバルに活躍したいです。これからも、いろいろとアドバイスをいただけましたら幸いです。」
黒神:「はい、もちろん。法学部の先生方は、みなさん気さくですので、私だけでなくいろんな先生にお話を聞かれるといいと思います。いつでも紹介しますよ。」
高山:「はい、よろしくお願いします。」
黒神:「今日は、大事な期末試験中にもかかわらず、お越しいただきありがとうございました。これからのご活躍を大いに期待しています。今日は、ありがとうございました!」
高山:「ありがとうございました!」
2022年8月1日
第22回 井上倖希さん(法学部4年生)
黒神:「今日のお客様は、法学部4年生の井上倖希さん(兵庫県立姫路東高校卒)です。井上さんは、先般学部を代表して本学の「金光賞」を受賞されました(金光賞は、法文学部第4期生、故・金光富男様のご厚志による寄附に基づく賞で、グローバルに活躍しかつ学業成績が優秀な学生に贈られる栄誉ある賞です。(今年度の金光賞の授賞式の様子。)
今日は、これまでの学生生活についていろいろとお伺いできればと思っています。よろしくお願いします。
(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「井上さん、まずは、金光賞受賞、おめでとうございます!」
井上:「ありがとうございます!」
黒神:「金光賞は、まず、グローバルに活躍した学生が対象となっております。井上さんの活躍ぶりは、すでに 本学のHPでも紹介されてますね。コロナ禍の中で十分に留学ができませんでしたが、井上さんはどのような形で海外と関わったり、留学生との交流をされましたか。」
井上:「1年次には実際にシンガポールへ渡航して語学研修に参加しました。2年次以降はコロナの影響もあって日本での活動に限定されるようになりました。そんな中でも2年次にマラヤ大学のオンラインプログラムに参加したり、3年次にはASEAN諸国の学生を対象にした留学セミナーのMCやプレゼンターに挑戦したりしていました。今でもプログラムで仲良くなった外国の友人と定期的に連絡を取り合っています。」
黒神:「コロナ禍で何かと制約の多い中で、よく頑張られましたね。素晴らしいですね。」
黒神:「その中でも、とくにやりがいのあった活動はありますか。」
井上:「はい、とくにやりがいを感じたのは、留学イベントのMCです。使い慣れない英語表現が多く、またとっさの対応の難しさなど自分の未熟さを痛感しました。他方で、セミナー参加者とのコミュニケーションを通して世界とつながっていることを実感したときの喜びは表現しがたいものでした。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「英語でとっさの対応はたいへんだったでしょう。それは、貴重な経験をされましたね。井上さんは、学業成績も素晴らしいのですが、グローバル人材育成特別コースや、法曹プログラムなど多様なコースに入って学習されていますね。よくこれだけいろんな科目を取りながら、トップレベルの成績を残されましたね。普段の学習方法などで気を付けていることなどありますか。」
井上:「授業のほかにも部活にアルバイトにと頑張りたいことがあったので、勉強に当てる時間が十分に取れていなかったな、と思います。私が大切にしていたのはスキマ時間の活用と友達との勉強会でした。ちょっと空いた時間に授業のレジュメに目を通して予復習していました。また特にテスト前には友達と一緒に復習をしたり問題を出し合ったりしてわからないところを解決するようにしていました。」
黒神:「限られた時間を効率よく工夫して学習されたんですね。ところで、井上さんは、部活もされているんですよね。」
井上:「はい、アーチェリー部に所属しています。」
黒神:「アーチェリーでも、輝かしい成果をあげられているそうですが、これまでの実績などについて教えてもらえますか。」
(アーチェリー部での活動の様子)
井上:「輝かしいなんておこがましいですが…(笑)。1年次で県新人戦と中四国新人戦で個人優勝することができました。コロナの影響で団体戦に出場する機会がなかなかなかったのですが、引退後の3年次の中国5大学競技大会で女子団体1位になれたのは本当に嬉しかったです!」
黒神:「文武両道、本当に素晴らしいですね。4年間の部活動においても、コロナ禍の影響があったと思いますが、辛い時期などありましたでしょうか。」
井上:「はい、アーチェリーは好きで楽しく矢を打っているのですが、不思議なことに大会前に急に当たらなくなる、いわゆるスランプに陥ることが多かったんです。思った以上に点数が出ないことに焦りと不安を感じてそんなときはしんどかったです。」
黒神:「そうでしたか。そのスランプをどのように乗り越えられましたか。」
井上:「アーチェリーは身体の使い方が少し変わるだけで結果にも大きく影響するスポーツだと思っています。スランプのときには時間を見つけては自主練を繰り返して、何がいつもと違うのかを考えながら矢を打ったり、先輩や同回生の仲間に射形を見てもらってアドバイスをもらったりしていました。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「現在、4年生ということですが、今後の進路についてお聞かせ願えますか。」
井上:「祖父が税理士業をしていたこともあって税理士を目指しています。今は税理士試験に向けて勉強をしているところです。これからは税法について理論からしっかり学んで理解を深めるために大学院に進学して税法を研究したいと思っています。」
黒神:「将来について明確なビジョンをお持ちなんですね。ぜひその夢に向かってチャレンジして下さい。これからのご活躍を期待しています。今日は、ありがとうございました!」
井上:「ありがとうございました!」
2022年6月16日
第21回 神保 吉寿さん(株式会社チェンジ代表取締役兼執行役員会長)
黒神:「今日のお客様は、株式会社チェンジ代表取締役兼執行役員会長の神保吉寿さん(新潟県立新潟高校卒)です。神保さんは、なんと昨年12月に発表された長者番付の53位に輝きました。神保さんがうちの法学部のご出身だと聞き付け、早速に同窓会名簿から神保さんを探し当てました(笑)。今日は、初めて学部長室に導入したモニターを使ってリモート形式で対談をさせて頂きたいと思います。私より5つもお若い神保さんがどのように実業界で成功を収められたのか、とても興味のあるところです。本日は、よろしくお願いいたします。
神保:「よろしくお願いします。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「早速ですが、このたびの長者番付における快挙、おめでとうございます。周囲の反響も大きかったのではなかったでしょうか。」
神保:「有難うございます。私も人に教えてもらって知ったのですが、まったく想定していなかったので驚きました。とはいえあれは、たまたま当社の株価が高騰していた時の瞬間最大風速みたいなものですから、額面通りに受け取ってもらっても困るんですよ(笑)。」
黒神:「そうでしたか。しかし、私どもとしましては、わが岡大法学部卒業生の神保さんが長者番付上位に入っておられるということで、とても鼻が高いです。」
黒神:「大学を選ばれたときに、なぜ岡大法学部にされたのか、ちょっとお伺いできますでしょうか。」
神保:「親父が転勤族で、高校までは各地を転々としていたのですが、もともと生まれが岡山ですし、祖父母の家も倉敷の下津井にありましたので、そのあたりのご縁があったことが大きいですね。」
黒神:「大学入学後、ゼミはどちらにされたんでしたっけ。」
神保:「浅田正彦先生の国際法を履修したかったんですが、当時浅田先生は、海外にいらっしゃってご不在だったので、たまたまテストの成績が良かった生熊長幸先生の民法にしました。今考えるといい加減ですね。」
黒神:「いえいえ、そんなことありませんよ。でも当時、国際法のゼミに入られていたら、また人生も違ったかもしれませんね(笑)。」
黒神:「4年生のときの進路選択や、当時の就活の様子などについてお伺いできますでしょうか。」
神保:「民法ゼミに入れていただいたものの、個人的には、国際政治への関心が捨てきれなかったので、バイトでためたお金で上京して、東京で開催されていた『国際学生シンポジウム』などに岡山から単身乗り込むとか、ちょっと変わったことをしてました。そこで知り合った東京の大学でISECの活動をしていた先輩に著名な経営コンサルタントの大前研一氏さんの『平成維新』を紹介してもらったんですよ。その頃から、コンサル業界に興味を持つようになり、たまたま就活の時期に送られてきた『日経ビッグビジネス誌』に『アクセンチュア(当時アンダーセンコンサルティング)』の求人が載っていて応募してどうにかこうにか入社できたことがキャリアのスタートということになります。」
黒神:「その頃から広い視野をお持ちになり、積極的に動かれていたんですね。これまでのキャリアについてお伺いできますか。」
(写真はスクリーンショットを使用しています。)
神保:「コンサル会社での日々は、かなりハードでしたね。本当に鍛えてもらったと思います。首になるのが嫌でどんな仕事にも必死に食らいついていっていたというのが正直なところです。今だと『ブラックだ』ということになるのかもしれませんが、20代に仕事の基礎を叩き込んでもらったことは感謝しかありません。その後、縁あって、アクセンチュアの先輩が創業されたベンチャー企業にお誘いいただいて数年過ごした後に、まずは、フリーのコンサルタントとして起業しました。」
黒神:「当時の卒業生の進路として、コンサル業界というのはとても珍しかったことと思います。そういう意味で、神保さんは先駆者ですね。ところで、株式会社チェンジが何をしている会社なのかとても興味が湧きます。今のお仕事を簡単にご紹介頂けますでしょうか。」
神保:「創業は2003年で、アクセンチュアの後輩たちと作った会社です。当時から『人口減少、少子高齢化』という日本のトレンドはわかりきっていましたし、特に日本のホワイトカラーの生産性が低いという点について、日本人として悔しく思っておりました。こういった社会課題を少しでも解決したいと思って、『優秀な人材の育成』と『優れたITツールの導入』を2つの軸として事業を行っています。」
黒神:「ところで、『チェンジ』という社名が目を引きますが、どういう経緯で名づけられたのでしょうか。」
神保:「当社のサービスを受けたクライアントが本当によりよい方向にチェンジするというところにコミットしたいという思いからつけた名前ですね。それによってビジネスの世界を変え、その先に日本を変えることにつながればと思って名付けました。」
黒神:「すごく大きな夢が込められた名前なんですね。起業されてよかったことは何ですか。今の仕事のどんな点にやりがいがあるかとか、今後やりたいことなどお聞かせ頂けますでしょうか。」
神保:「仲間やクライアントに恵まれて、マザーズ上場から東証一部(現東証プライム)にまで会社を持って行けたことは非常にラッキーだったと思います。仲間と一緒に組織を拡大し、お客様にご評価いただいて、より弊社のサービスを受けていただけるという好循環を生むことで、創業時に考えていた『日本をチェンジする』というところに少しでも近づけたらと思って経営をしています。個人的には少し社会貢献活動にも力を注ぎたいとも思っています。」
黒神:「これほど大きな成功を収められたのはやはり神保さんたちの並々ならないご努力の賜物だと思います。最後に、これから社会に出ていく後輩学生たちにひとことメッセージを頂けますでしょうか。」
神保:「やらなければならない目の前のことに集中して、階段を一段上ることができれば、視座が拡がり、違う世界が見えてきます。それを繰り返していると、思ってもみなかった大きな景色が見えてくるという経験をしました。僕の場合は振り返ってみたらこんな人生になっていたというのが正直なところで、最初からプランができていたわけでは全くありません。もし、『やりたいことがわからなくて』、先に進めないのなら、とりあえず目の前のことに集中してみると活路が拓けるかもしれないと思います。あと、絶対本は沢山読んだほうがいいです。語彙力や間接体験のストックが多くて損することはありません。」
黒神:「すばらしいメッセージをありがとうございます!神保さんからの言葉はとても説得力があるので、きっと学生たちの心に響くことでしょう。学生たちには、神保さんのように意識を高く持って社会に羽ばたいていってもらいたいと願っています。本日は、お忙しいところ、母校のために時間を作ってくださり、本当にありがとうございました!」
神保:「ありがとうございました!」
2022年3月15日
第20回 黒﨑(旧姓居安)裕美さん(岡山大学職員)
黒神:「今日のお客様は、岡山大学職員の黒﨑(旧姓居安)裕美さん(金光学園高校卒)です。学部長 2 期目の最初のお客様として、じつはかねてから黒﨑さんにお願いしようと思っていました。黒﨑さんとの対談を通じて、大学教員としての初心に戻りたいと思ったからです。
黒﨑さんは、生まれながら聴覚に障害を持っています。両耳はほとんど聞こえず、普段は相手の口の動きを読んで理解されます。黒﨑さんとの出会いは、今から 20 年ほど前に入学されたときに、私が指導教員となったことに遡ります。大学の 4 年間、黒﨑さんはたいへんな努力をされて無事法学部を優秀な成績で卒業し、母校でこうして働かれるまでになりました。本日は、あの頃を思い出しながら、黒﨑さんの社会人としてのご活躍や近況などを伺いたいと思います。よろしくお願いします。」
黒﨑:「よろしくお願いします。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「お久しぶりですね。お元気ですか。」
黒﨑:「はい、じつは最近出産しまして、子育てに忙しくしております。」
黒神:「おお、それはそれは、おめでとうございます!!」
黒﨑:「ありがとうございます!」
黒神:「大学時代を振り返ると、入学当初から、当時大学になんの支援室もなく絶望されたんではないですか。」
黒﨑:「当時の岡山大学に支援がないことについては、自分なりに覚悟して入学したのですが、実際に授業が始まってみると高校まで通用していたやり方が大学では全く通用せず、GW明けには絶望のあまり無気力になっていました。母に黒神先生に相談してみようと励まされ、ご相談に伺いました」。
黒神:「私も、お恥ずかしいことに、この子がそんなところまで思い詰めていると初めて知り、また、そのときに『ノートテイク』という言葉も初めて知りました。今でも本当に申し訳ないことをしたと思っています。」
黒﨑:「いえいえ、その時、聴覚障害を持つ私の話を正面から聞いてくださる先生が岡山大学におられたと安心したこと、また『ノートテイク』という当時としては新しい言葉についてもその場ですぐに反応してくださったことで、もう少し頑張れるかもしれない、と思ったことを今でも鮮明に覚えています。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「それ以来ノートテイクに関する本を片っ端から読み漁り、地元のボランティア団体である『岡山要約筆記クラブ』さんにも来て講習をしてもらったり、近隣の大学で先進的な取り組みをしているところに教えてもらったり、独学で勉強しまくりました。」
黒﨑:「当時は、携帯もパソコンも普及しはじめた頃で、先生との連絡も携帯のテキストメッセージで対応してもらえたことで連絡がとりやすく、心強かったです。ノートテイクも手書きとパソコンと両方でやってもらいました。」
黒神:「パソコンもとても高価でしたが、大学に懇願して何とか 2 台買ってもらいました。
予算的なことを言えば、ノートテイカーへの謝金も何とか出してもらうようにお願いしましたね。ボランティアとは報酬がないものと思っていたのですが、謝金が必要という考えは、まさしく黒﨑さんから教えられた重要なことの 1 つでした。」
黒﨑:「はい、最初の頃、ノートテイカーに謝金がなかったのですが、そうすると、遅刻してくる人が居たり休んだりする人がいたんです。そうなると本当に困ることになり責任を持って仕事をしてもらいたかったので、他大学の事例も調べて謝金を出してもらいたいと先生にお願いしました。」
黒神:「当時は、障害を持つ学生の支援ということについて、周囲にまったく理解がありませんでした。そういう学生は特別に扱えばいい、授業中もノートを取れないんだったら、終わってからノートをコピーすればいい、試験も特別にレポートにすればいい、とか言われたこともありました。そうではなく、障害を持つ学生も、他の学生と一緒に授業に参加し、放課後は部活やバイトにいそしみたいんだということを理解してもらうのにとても時間がかかりましたね。」
黒﨑:「当時は、先生がシンポジウムを開いてくださったり、講演会に出られたり、新聞やTV などマスコミのインタビューに取り上げてもらったり大忙しでしたね(笑)。」
当時ノートテイカーが取ってくれたノートを懐かしく眺める黒神学部長と黒崎さん。
当時の支援活動を取り上げた新聞記事等。
黒神:「はい。当時私もまだ駆け出しだったときに、学部長やら本部やらを動かして、他大学の専門の先生も呼んで、100 名以上集めて開催した シンポジウム と、 黒﨑さんのコメント は、未だに本学広報誌「いちょう並木」で見れるようになっていて、ときどきこれを眺めてはあの頃を思い出すんですよ(笑)。」
黒﨑:「あの頃、『大学に支援室を!』と訴えてから、ようやく 7 年後にうちの大学にも障害学生を支援する支援室が設けられましたね。いまや常時ノートテイカーも養成されていて、素晴らしいですね。」
黒神:「当時は、私 1 人でノートテイカーを募集して、学生 1 人ずつ面談したり指導したりして。常時 50 名程度は管理していましたので、隔世の感がありますね。」
黒神:「シンポジウムの記事にも書いていますが、黒﨑さんから学んだ最大の教訓として、黒﨑さんの前で授業をするときに、『口を大きく開けて、大きな声でわかりやすくゆっくり話す』ことが求められました。これは、何も難聴の学生だけに対することではなく、すべての学生に対して求められることで、ここに教師としての原点を見出したんです。この経験は、教師としての私に今もずっと生きています。未熟な私にこのことを教えてくれた黒﨑さんには本当に感謝してもしきれません。」
黒神:「ところで、大学卒業後の話に変わりますが、岡大での勤務もいろいろとご苦労があったことと思います。これまでの勤務を振り返ってもらえますか。」
黒﨑:「はい。当初は電話対応ができない、周囲のやりとりが聞こえないなかでどうやって仕事を進めたらよいのか悩みましたが、あの時、黒神先生に相談したことで支援を得られたように、自分から発信することも大切だと思い、障害については自己紹介時に具体的に説明する、メール署名や名刺にも記載し、積極的に周知することで、理解が広まり勤務年数を重ねるごとに働きやすくなったように思います。」
黒神:「たしか文科省にも研修にも行かれましたね。」
黒﨑:「はい、国単位での業務を経験することで、岡山大学を客観的に見ることができ、私としては岡山大学がますます好きになりました(笑)。 また文科省職員、他大学からきている職員など色々な地域、バックグラウンドがある方と一緒に働いたこともいい経験でした。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「障害を持ちながらも前向きな黒﨑さんにはいつも勇気づけられます。20 年前の私がそうであったように、今日お会いしてまた活力をもらいました。これから家族が増えてますます幸せな毎日が待っていることと思います。これからの一層のご活躍を期待しています。 本日は、お付き合いくださり、本当にありがとうございました!」
黒﨑:「ありがとうございました!」
2022年4月19日
第19回 ゲスト
森田陽果莉さん(法学部4年生)、宮本あゆはさん(法学部4年生)
黒神:「今日のお客様は、法学部4年生の森田陽果莉さん(津山高校出身)と宮本あゆはさんです。お2人は、学生ボランティア団体に所属してずっと岡山県内で犯罪被害者支援の活動をして来られました。その活動の広報啓発のために、オリジナル曲も自主制作されました。(岡山県警察(公式)Youtube)このたびその功績が認められて、2月1日に岡山県警より、「被害者支援に関する県民の理解増進にむけた取組」として感謝状を授与されました。なお、宮本さんはすでに学部長賞を授与されていますところ、森田さんも、今年度下半期の学部長賞の候補者となっています。」
黒神:「森田さん、宮本さん、このたびは県警からの表彰、おめでとうございます!!」
森田・宮本:「ありがとうございます!」
黒神:「今日は、これまでの犯罪被害者支援活動や、このたびのオリジナル曲制作などを中心にお話をお伺いできればと思っていますので、よろしくお願いします。」
森田・宮本:「よろしくお願いします。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「まず、森田さんは、犯罪被害者支援のボランティア団体の要職に就いておられると伺いました。たしか以前、岡大の団体の代表を務めておられた上田さんのお話では、県内大学のボランティア団体と岡大の団体の2つがあるように記憶しております。(学部長の部屋第7回ゲスト上田彩夏さん)
森田さんの活動のご様子について、少しお聞かせ願えますか。」
(森田さん。撮影時のみマスクを外しています。)
森田:「はい。私は県内の14大学から構成される犯罪被害者支援大学生ボランティア連絡会『あした彩(いろ)』の副代表及び岡山大学犯罪被害者支援ボランティア団体smile(スミレ)の副代表を務めています。主な活動としては、犯罪被害者支援フォーラムや遺族講演会への参加、交流会や公民館での活動報告のほか、『あした彩』のテーマソングの作成、人形劇の制作などがあり、多岐にわたる分野での活動に数多く取り組んできました。」
黒神:「ありがとうございます。宮本さんは、以前学部長賞の対象となったSDGsアンバサダーとしての活動をする以外にも、法教育、英語による模擬裁判や模擬国連、ビジネス・コンテスト、ワールド・ユース・サミットなどじつに種々多様な活動に常にチャレンジしておられ、私の中では、『法学部1のチャレンジャー』であることは認識していましたが(笑)、今回の犯罪被害者支援にも加わっておられることに驚きました。どんな形で関わっておられるんですか。」
(宮本さん。撮影時のみマスクを外しています。)
宮本:「代表を務めている尾原さんから『人形劇やってみない?』という誘いを受けたことがきっかけで犯罪被害者支援に携わるようになりました。人形劇だけでなく、あした彩の活動紹介やご家族の講演への参加を通して、犯罪被害者支援の活動の重要性を感じ、より積極的に活動に取り組むようになりました。 」
黒神:「そうでしたか。最初は人形劇から入られたんですね。まずはできるところから活動を始めることが大事ですよね。ところで、今回、オリジナル曲2曲を作られました。私もYoutubeで見させて頂きましたが、どちらも心が落ち着くいい旋律に仕上がりましたね。どういった経緯で音楽を制作することなったのでしょうか。」
森田:「私達の活動を全国に広めていく取組みの一環として、『あした彩』の象徴となる曲があればいいのでは…という意見を県警の方からいただき、音楽経験のある学生などを募ってプロジェクトチームを発足させました。『あした彩』活動紹介DVDのBGMとして使用すること等も視野に入れつつ、学生が1からテーマソングを制作するに至りました。」
黒神:「皆さんの手作りの楽曲ということですが、プロ顔負けの出来栄えに驚きました。作詞や作曲をするときにとくに心がけたことなどありますか。」
森田:「被害に遭われた方の気持ちに寄り添えるような音楽を作れるよう心掛けました。冒頭部分は、立ち止まっている時にどこからともなく『フワッ』と吹いた風がそっと背中を押してくれるようなイメージ、また中間部は教会の鐘をイメージして作曲しました。」
宮本:「私は明るく、みんなが歌えるような歌にしたいと考えて曲を作成しました。犯罪被害者支援というと暗いイメージを持たれがちだと思っています。被害に遭われた方があしたへの希望を持つことができるような曲になってほしいという思いが込もっています。」
黒神:「練習風景も映っていましたが、このコロナ禍の中での練習はたいへんだったでしょう。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
宮本:「曲を披露した被害者支援フォーラムでは岡山県警音楽隊の方々とともに演奏を行いました。コロナ禍での制限もあり、なかなか合同練習の時間をとることができなかったため、個人練習が中心でした。そのような中での練習は大変でしたが、音楽隊の方や県警の方にサポートしていただいたおかげで、無事本番を終えることができました。」
黒神:「これだけの思いを込めて作られた歌なので、皆さんの気持ちはきっとこのメロディーに乗って多くの方々の心に届くものと思います。本当に良いことをされたと思います。」
黒神:「お2人は、現在4年生ということで、将来どんな道に進まれるのですか。」
森田:「私は県庁に就職する予定です。次は県職員という立場で、県警などの関連機関と協力して、学生の犯罪被害者支援活動を支えたいと考えています。直接的な支援ではなくても、『自分にできる支援とは何か』を常に考えながら、何らかのかたちで被害者支援に携わり続けたいと思っています。」
宮本:「私は岡山大学教育学研究科に進学し、法教育について研究を行う予定です。法学と教育学は一見全くつながりが見えない分野ではありますが、社会の基盤をつくるという部分において共通していると考えています。法学部で学んだことを活かして、教育学に挑戦・貢献したいです。またあした彩の活動を通して犯罪被害者支援を続けていきます。」
黒神:「これからも、お2人の一層のご活躍を期待しています。今日は、ありがとうございました!」
森田・宮本:「ありがとうございました!」
2022年2月22日
第18回 ゲスト
内海早稀さん(法学部4年生)
黒神:「今日のお客様は、法学部4年生の内海早稀さんです。内海さんは、大学4年間を通じて陸上部に所属し、主に1万メートル走で輝かしい記録を収められました。これまでの頑張りを称えて、今年度下半期の学部長賞の候補となっています。今日は、初めて学生さんのスポーツの活動について伺えるということで、私もわくわくしております。内海さん、よろしくお願いいたします。」
内海:「よろしくお願いします!」
(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「まずは、つい先日12月に開催された岡山で恒例の有名なレース「山陽女子ロードレース」10キロの部(人見絹江杯)での完走、お疲れさまでした!私もだいたい毎年沿道で応援しているのですが、今年は身近な学生さんが参加しているということで応援にも一層力が入りましたよ。」
内海:「ありがとうございました。先生の応援もしっかりと届き、とても力になりました。部のメンバーとも一緒に走れて本当にいい経験が出来ました。」
黒神「さて、これまで陸上部で輝かしい成果を収めてこられたと伺っていますが、具体的に伺えますか。」
内海:「はい、私が1年生のとき、中四国学生陸上競技選手権大会の女子10000m競走で第2位、2年生のときの同じ大会で第3位、3年生のときの同じ大会で第2位でした。また、4年生のときの岡山学生陸上競技選手権大会の女子5000m競走では第1位でした。参加人数がとても少ない競技なので他種目に比べると結果が出やすいのですが、4年間長い距離を走り続けることはとても大変でした。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「ほんとにすごいですね!私にとっては、1万メートルなんて気の遠くなるような距離ですよ。よく継続的にそれだけの結果を出せましたね。もともと早い時期から陸上はされていたんでしょうか。」
内海:「いいえ、陸上は大学から始めました。高校では美術部に所属していましたが、持久走の授業が楽しかったことがきっかけで陸上部への入部を考え始めました。美術部に所属しつつも、もともと運動は好きだったので道端を走ったり、片道13~14キロの通学路を自転車で通ったりしていました。文化部から陸上を始める人は少ないのでよく驚かれます。」
黒神:「もともと美術部だったんですか。それはまたすごい転身ですね。ところで、これだけの成果を挙げるためには、普段から相当の努力をされていることと思いますが、普段のトレーニングや試合前の調整などどうされているんですか。」
内海:「初めは練習についていくことに必死でしたが、次第に同期と自主練習もするようになりました。試合の調整などは部のメンバーに教えてもらったり、まねをしたりしました。調整に限らず陸上に関して私は初心者で何もわからなかったので、周りの存在に本当に助けられました。」
黒神:「専門のコーチなどがいない中で、仲間の協力と独学でここまで努力されたことが正直すごいと思います。」
黒神:「学生生活4年間で常に好調だったわけではありませんよね。スランプや辛かった時期などありますか。」
内海:「大事な試合の前に怪我で練習が出来なかったり、練習を真面目に続けていても思うように試合で走れず、辛く思う時期はありました。」
黒神:「その辛かった時期はどうやって乗り越えられたんですか。」
内海:「練習が出来なかったり調子が悪い時期も、部のメンバーと歩いたり一緒に走ることはとても楽しく、それがあったので練習を続けていこうと思えました。その結果、投げ出すことなく今まで続けることが出来たと思います。」
黒神:「仲間との絆がきっと強かったんですね。部活と勉学との両立はたいへんでしたでしょうか。何か気を付けたこととかありますか。」
内海:「大学の陸上部では高校の時のように試験前に部活が休みになるということがなかったので、学期末は部活と試験勉強で忙しく大変でした。なので、なるべく早い時期からレポートや試験勉強に取り掛かるよう心がけました。」
黒神:「さすが、素晴らしい心がけですね。では、大学時代の陸上競技を通じて得られたものがありますか。」
内海:「これからも続けていきたいと思える競技を見つけられたことです。今まで、水泳、バレエ、卓球、美術などと迷走しながら色々と経験してきましたがあまりピンとこず、陸上を経験して初めてもっと続けたいと思いました。また、周りの助けがあってここまで続けて来られたことから、周りの人間の大事さを感じられたこともあります。」
黒神:「そうですか。大学での4年間、じつに実りのある学生生活を送られたんですね。私としても、有意義な学生生活をうちの学部で過ごしてもらえて本当に嬉しい限りです。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「内海さんは、現在4年生ということですが、今後はどのような道に進まれるんですか。」
内海:「港湾関係の公務員として働く予定です。法学部で培った法律の知識を生かしたいと考え公務員を選びました。また、日本と世界を繋ぐという重要な役割を持つ港を発展させたいという思いから港湾関係を選びました。」
黒神:「さきほどのお話からしますと、これからも陸上は続けていかれるのでしょうね。」
内海:「はい、続けていきたいと思っています。直近では地元の姫路城マラソンの出場を予定しています。また、ロードレースの中にはスイーツマラソンやリレーマラソンなど変わった種目もあるので、卒業後もチャレンジしていきたいと思います。」
黒神:「そうですか。将来はぜひ『おかやまマラソン』にも参加してくださいね笑。ご卒業後も、一層のご活躍を期待しています。今日は、ありがとうございました!」
内海:「ありがとうございました!」
2022年1月17日
第17回 ゲスト
山地真美さん(情景描写ピアニスト)
黒神:「今日のお客様は、国内外で「情景描写ピアニスト」としてご活躍の山地真美さんです。山地さんは、これまで「おかやまアワード(特別音楽賞)」や、「福武教育文化賞」などを受賞してこられました。特に最近では、岡山国際音楽祭2020での企画プロデュースや県内の子ども達とのふるさとソング共同創作をはじめ多くの活動が認められ、この10月に、岡山県から岡山芸術文化賞(準グランプリ)を受賞されました。TVや新聞、YouTubeなどで山地さんのことをご存じの方は多くいらっしゃると思いますが、山地さんがじつは岡山大学法学部のご出身(岡山朝日高卒)ということを知っている人はあまりいないのではないでしょうか。
本日は、わが法学部の卒業生の多才ぶりを象徴する山地さんにお越しいただきました。これまで歩まれてきた道やご活躍のご様子などをお伺いできるのを楽しみにしておりますので、よろしくお願いいたします。」
山地:「よろしくお願いします。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「何はさておき、10月の岡山芸術文化賞受賞、おめでとうございます!」
山地:「ありがとうございます。」
黒神:「まず、職業として音楽の道に進もうと思われたのはいつごろのことですか。何かきっかけがあったのでしょうか。」
山地:「岡山大学3年生の頃に就職活動を行っていたのですが、なかなか自分が夢中になれる仕事が見つからなかったんです。やっぱり音楽に挑戦したいと思えたのは、これ以上に夢中になれるものが他にないと思い知ったからだと思います。」
黒神:「大学をご卒業後、上京して見知らぬ土地でのご苦労はたいへんだったと思います。その頃のご苦労をお聞かせいただけますか。また、そのようなご苦労の中でも頑張ることができたのはどうしてですか。」
山地:「上京した当初は、都内で一番安い女子寮に住んでいました。冷暖房なし、ピアノなし、2段ベッドの4人部屋です。大変厳しい毎日でしたが、すべてを投げ出してまで挑戦していたので、自分にはもう音楽の道しかないという確信を持って無我夢中で音楽に没頭していたように思います。」
黒神:「今でこそ笑顔で答えておられますが、並々ならぬご苦労があったことでしょうね。そのとき確信した信念が今日の山地さんをずっと支えているんですね。」
黒神:「『情景描写ピアニスト』という肩書は初めて目にするのですが、これは山地さんのオリジナルですか。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
山地:「そうなんです。最初は『作曲家ピアニスト』の肩書で活動していましたが、いわゆる普通のピアニストと違うことを印象付けたかったので自分で肩書をつくりました。ピアノが上手いピアニストは沢山いる上に、私はスタートも遅かった分、他の人にはできない活動をしようと思っていたんです。音楽に関係ない岡山大学に通っていたことは一見遠回りに思えますが、その中で学んだ教養や経験は全て曲作りやイベントの企画アイデア等に生かされていて、大きな意味があったと実感しています。
黒神:「たしかに山地さんのこれまでのご活躍を拝見しますと、もはやピアニストの枠を超えて、多種多彩な活動をされているように思います。どのような点にやりがいを感じておられますか。」
(岡山を代表する「徳永こいのぼり」を身にまとい演奏する山地さん)
山地:「岡山をメインとする日本の情景の美しさを『音楽』という世界共通言語で発信し伝えることができたときに毎回大きなやりがいを感じています。私の創り出した音楽が100年後の日本にも残っていて、今の私達が感じている想いやメッセージを伝えてくれていたらいいなと思いながら日々活動しています。」
黒神:「素晴らしいですね。山地さんのご活躍の幅はまだまだ広がっているのですが、これからどのような活動に手を広げようと考えておられますか。」
山地:「日本全国の誰もが参加できる地域の魅力体感型音楽祭、『全日本オンライン音楽祭』を企画実施する計画を立てています。その他、将来的には海外の学校に自作の日本のピアノ音楽を教えに行ったり、世界中のオーケストラと共演していきたいです。」
黒神:「たしかに、これまでもイタリアのシチリア島や、南米コスタリカで活動をされたりしていたのに、このコロナ禍で国際的な活動も制約されているので、これからは世界へも羽ばたいて行ってもらいたいですね。今後のますますのご活躍を応援しております!」
黒神:「本日は、本当に有難うございました!」
山地:「有難うございました!」
(撮影時のみマスクを外しています。山地さんのCDと共に)
2021年12月22日
第16回 ゲスト
北川咲玲さん(法学部4年生)
~子ども虐待防止のオレンジリボン運動について~
黒神:「今日のお客様は、法学部4年生の北川咲玲さんです。北川さんは、先日、法学部生として教育や社会貢献で優秀な功績を収めた学生に贈られる岡山大学法学部長賞を受賞されました。子ども虐待防止に関する活動において、頑張ってこられたことが認められ受賞されました。北川さん、おめでとうございます!
北川:「ありがとうございます!」
黒神「今日は、そのご活動を中心にお話をお伺いできればと思っていますので、よろしくお願いします。」
北川:「よろしくお願いします。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「まず、北川さんは、子ども虐待防止支援オレンジリボン運動において、岡山大学生の代表を務めておられると伺いましたが、その団体や活動内容について、お聞かせ願えますか。」
北川:「オレンジリボン運動とは、子ども虐待防止の意思を示し、さらに多くの人々の関心と賛同を広げていく活動です。そのために、私たちはオレンジリボン運動について知ってもらったり、子どもたちのためにできることとして学習支援を行ったりしています。」
黒神:「ありがとうございます。なぜこの活動に興味を持たれたのですか。」
北川:「もともと教育に興味があり、いつか教育活動ができればと考えていました。そんなとき、丸亀ハーフマラソン大会にてオレンジリボンを着けて走っている方をお見かけし、オレンジリボン運動について知りました。そうしているうちに、虐待防止に取り組んでいる友達に出会ったりSDGsアンバサダーの方たちと話したりしているうちに、自分も何か活動しようと思い、この活動に興味を持ちました。」
黒神:「そうだったんですか。日々の生活の中で常に高い意識を持っているからこそこの活動に目が留まったんですね。素晴らしいことです。北川さん自身がこの活動の中で具体的に実施してこられたことを少し挙げていただけますか。」
北川:「はい。オレンジリボン運動について広く知ってもらうために、虐待防止を呼び掛けるポスターを作成し、店舗へ設置してもらっています。他には、公式LINEで学習相談を行っています。今は受験シーズンということもあり、本来の相談に関連して、受験生の方たちから受験の悩みや勉強方法についての相談も多いですね。他にも、岡山大学の魅力についての相談もありました。また、これからはZoomを使った高校生との交流会も計画しています。」
黒神:「コロナ禍の中でも活発に活動されているんですね。では、これまでこの活動を行ってきた中で、印象に残ったことや、やりがいを感じたことなどはありますか。」
北川:「店舗にはポスターとともに持ち帰ることができるパンフレットも設置させていただいたのですが、数日後にはパンフレットが残り少なくなっており、実際に手に取っていただいたことが分かり嬉しかったです。また、学習相談ではお礼のメッセージをいただいたときはすごくやりがいを感じます。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「では、逆に、この活動を行う中で、難しいことはどんなことでしょうか。またそれを克服するために何か工夫をされていますか。」
北川:「虐待を防止するといっても、私たち学生が実際に虐待現場に行って直接防止することはできません。ですが、虐待防止についてみんなに知ってもらったり、子どもたちの居場所を作ったりと、間接的に防止することはできます。そのため、子どもたちのために自分たちにできることをする、というスタンスで活動しています。」
黒神:「なるほど。できることからするという意識がとても大切ですよね。北川さんは、この活動以外にも、いろんなことを精力的にやっておられると伺いました。この子ども虐待防止活動以外にも、いくつか力を入れていることを挙げていただけますか。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
北川:「SDGsアンバサダーの運営や、CLSプログラム(米国務省が実施する国際教育・交流プログラム)のランゲージパートナーとしてアメリカの学生に対して日本語支援をしています。また、今年からは岡大メディアOTDの運営も行っています。OTDには、岡山大学オレンジリボン運動のメンバーが書いた受験生向けの記事も掲載されています。岡大の各学部の特徴や勉強方法について書いているので、受験生にはぜひチェックしていただきたいです。」
黒神:「どの活動も素晴らしいですね。北川さんは、現在4年生ということで、将来どんな道に進まれるのですか。」
北川:「岡山大学社会文化科学研究科へ進学予定です。3年次から刑事訴訟法ゼミに所属しており、少年法について研究していました。そこで、進学後は少年法を中心に、18、19歳への法適用について研究しようと考えています。また、在学中には高校公民の教員免許と、社会保険労務士の資格を取得できればと思っています。」
黒神:「大学院進学後も、ますますのご活躍を期待しています。今日は、ありがとうございました!」
北川:「ありがとうございました!」
2021年11月26日
第15回 ゲスト
広川千晴さん、川口美悠さん
~法学部卒業生の司法試験合格を祝して~
黒神:「今日のお客様は、このたびめでたく司法試験に合格された、広川千晴さんと川口美悠さんです。お2人は、岡山大学法学部出身で、うちの法務研究科(ロースクール)に進学され、このたびの栄冠を勝ち取られました。
ところで、今年の岡大ロースクールの合格実績は、全国にも誇れるものでした。
合格率は、48.5%ということですが、この数字は、愛知大、京大、一橋大、慶応大、東北大、早稲田大に次いでなんと7位(ちなみに、8位東大、9位名大、10位神戸大、11位阪大)と、大躍進を遂げました。
その立役者が本日のお2人で、普段の学習から合格者をけん引する存在だったと伺っています。なお、広川さんは、福山誠之館高校出身で、川口さんは岡山理科大学付属高校のご出身ということで、いずれも地元出身の方々です。本日は、学部の頃から司法試験合格までの道のりについて少しお伺いできればと思っています。よろしくお願いします。」
広川・川口:「よろしくお願いします。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「まずは、司法試験合格、おめでとうございます!今年は、昨年の9名から16名の合格者(うち岡大法学部出身者が6名)が出たということで、私も本当に嬉しく思っています。」
広川・川口:「ありがとうございます!」
黒神:「早速ですが、いつごろから何をきっかけに法曹を目指そうと思われたんですか。」
広川:「法律の勉強がしたいと思ったのは小学校高学年くらいの時にドラマHEROを見たのがきっかけです。でも自分が司法試験なんか受かるはずがないと思っていたので、就職するか進学するかは迷っていました。その後進学を決意したのは、ロースクールの先生が担当されている授業を学部生の時に受講したり、ゼミの先輩が予備校を利用しているのを見て、自分も頑張ってみる価値はあるんじゃないかと思ったからです。」
川口:「家族のすすめもあり、中学生の頃から漠然と法曹を目指すようになりました。目標が明確になったきっかけは、学部時代、ゼミ活動の一環として犯罪被害者支援、加害者支援、双方のボランティアに参加したことです。これらの活動を通じ、犯罪被害者と加害者双方にアプローチできる検察官に魅力を感じるようになりました。」
黒神:「学部の途中からだんだんと法曹の道を考えるようになったんですね。」
黒神:「みなさんゼミはどこに所属しておられたんですか。そこではどんな刺激を受けましたか。」
広川:「3年生の時は濵田先生の民訴ゼミ、4年生の時は岩藤先生の民法ゼミに所属していました。民訴ゼミでは民訴に対する苦手意識をなくすことができました。民法ゼミはローの先生のゼミに所属できるチャンスだと思って入りました。担当者が判例報告を行っていたのですが、そこで判例を深く読み込む練習ができたのはその後の勉強にも非常に役立ちました。」
川口:「3、4年次どちらも原田先生の刑事訴訟法のゼミに所属していました。アットホームな雰囲気のゼミで、ゼミ生同士の仲も良く、ゼミの先輩にはロースクール入学後も大変お世話になりました。学部生の頃から法曹を志す先輩と一緒に勉強できたことは、とても刺激になったと思います。4年生の時には岩藤先生のゼミにも聴講生として参加していました。」
黒神:「うちの学部の場合、やはりどうしても司法試験を目指す人が少ないので、なかなかモチベーションを維持するのが難しいと思うのですが、ゼミ以外にも司法試験を目指す学生たちの横のつながりなどありましたでしょうか。」
広川:「顔の広い友人から司法試験を目指している人の話を聞いて知り合いになることが多かったと思います。私と川口さんも共通の知人が引き合わせてくれました。4年生の時には司法試験を目指している人たちで自主ゼミを組んでローの入試過去問を解いたりしていました。」
川口:「ロースクールの先生が担当される授業は司法試験を目指す学生が多く受講していたので、これらの授業での交流もありました。中には2人1組になって答案構成をする授業もあり、『ペアの子の足を引っ張らないようにしよう』というのをモチベーションに勉強した時期もありました(笑)」
黒神:「何故うちのロースクールへの進学を決めたんですか。何かメリットのようなものを感じられましたか。」
右:川口さん 左:広川さん (撮影時のみマスクを外しています。)
広川:「岡山大学の法学部にいたので、他のロースクールに行って環境を変えるよりも慣れ親しんだ岡山大学のローの方が落ち着いて勉強できると思ったからです。それに、ゼミで知り合った先輩も岡大ローに進学している人が多く、知り合いが多いという安心感もありました。」
川口:「私は周りより司法試験に向けた勉強を始めるのが遅かったんです。なので、ローではみっちり指導を受けたいと思っていました。岡大ローは先生との距離が近く、手厚い指導を受けられるということを聞いていたので、大きく成長できるチャンスだ!と思い岡大ローへの進学を決めました。」
黒神:「お2人は、ロースクールの学生さんたちの模範になるほどめちゃくちゃ勉強されていたと伺っています。司法試験合格に向けて、日々どんな生活を送られていたのですか。」
広川:「そんなことは無いと思いますが(笑)。私は朝は9時までに自習室に着くように家を出て、夜は結構遅くまで勉強していました。でも大学生協のミールカードを使ってたのでご飯はちゃんと食べてましたし、睡眠時間も削らないようにしていたので比較的健康的な生活だったと思います。」
川口:「恐縮です、、、(笑)。私はだいたい、朝の7時半ごろから夜の9時まで自習室で勉強をしていました。自習室に行かない日は年に数日しかないというほど毎日登校していました。勉強は大変でしたが、自習室に行けば仲のいい先輩、同期に会えたので毎日楽しかったです。本当に、環境に恵まれたと思います。」
黒神:「やはり、お2人とも、噂に違わず模範学生でしたね(笑)。さすがです。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「将来、みなさんはどんな法曹を目指しておられるのですか。」
広川:「困っている人の助けになれるような法曹になりたいと思っています。法律や理論的な面でのサポートだけでなく、依頼者の方の心に寄り添って最善の策を提案できるように様々な経験や知識を身に着けていきたいですね。 」
川口:「私は検察官を志望しています。被害者支援のボランティアを通じ、被害者の方々が声を上げられたことをきっかけに被害者保護制度の拡充が実現したことを知りました。制度の担い手として、被害者の方々に寄り添い、市民と司法との架け橋のような検察官になれたらと思っています。」
黒神:「皆さん、素晴らしい夢をお持ちですね。ぜひ夢に向かって頑張ってくださいね。」
黒神:「では、最後に高校生に向けたメッセージとしてお伺いします。法学部で学ぶことのメリットや、さらには、岡山大学法学部で学ぶことのメリットなどお聞かせください。」
広川:「法学部での勉強は単に法律を知るということだけでなく、論理的思考力を鍛えることにつながると思います。そのため、直接法律を扱う仕事につかなくても法学部で鍛えた思考力が武器になると思います。また岡大は学部とローのつながりが強いので、法曹を目指そうとしている人には充実した環境が整っていると思います。」
川口:「法学部は進路の選択肢の幅が広いという点がメリットだと思います。岡山大学法学部には、進路について親身になって考えてくださる先生もいらっしゃいます。入学時点では将来の目標が定まっていなくとも、岡大法学部で自分に合った目標を見つけることができるのではないでしょうか。実際、私はゼミの原田先生に背中を押していただき司法試験受験を決心しました。」
黒神:「私の言いたいことをすべて言ってくださり、ありがとうございます(笑)。」
黒神:「司法試験に合格した学生さんと話す機会など普段はないので、今日は、本当に楽しかったです。ありがとうございました。これからみなさんのさらなる飛躍を期待しています。また、これからもぜひ岡山大学法学部のためにご協力いただければ嬉しいです。」
広川・川口:「ありがとうございました!」
2021年10月14日
第14回 ゲスト
朴志善WTT助教
黒神:「今日のお客様は、法学部で政治学(政治過程論)を担当されている朴志善(バク・ジソン)先生です。朴先生は、ソウル大学で修士号を取得後、東京大学で博士号を取得され、2019年4月より本学法学部に着任されました。朴先生は、岡山大学のいわゆる『ウーマンテニュア制度』の下で採用されました。この制度は、大学が政府の助成を受けて推進している制度で、研究環境におけるダイバーシティ(多様性)を拡充する目的で、質の高い女性教員の雇用促進・育成を目的とした制度です。
朴先生は、目下新進気鋭の政治学者として、学会等で広くご活躍されています。そのご活躍の一環として、先生のご研究は、先ごろ地元岡山の『公益財団法人ウエスコ学術振興財団』が主催する令和3年度学術研究費助成事業に見事に採択されました。また、教育面でも、オンライン授業やオンデマンド教材を上手に操って授業をされ、学生からの評判もすこぶる高いと伺っております。
本日は、朴先生のご研究内容や、教育現場での取り組みなどについて、多くのお話をお伺いしたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。」
朴:「よろしくお願いします。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「まずは、このたびウエスコ財団の研究助成採択、おめでとうございます!私もとても嬉しいです。」
朴:「ありがとうございます。」
黒神:「先生のご専門は政治過程論ですが、今回助成を受けるご研究の内容について少しかみ砕いてお話しいただけますでしょうか。」
朴:「はい。今回採択されたテーマは、『日本における大統領制化のダイナミクス―安倍政権下の自民党政策会議の分析』です。第2次から第4次安倍政権について、自民党に対する安倍首相の政策的優位が指摘される中、党内のボトム・アップ的な政策決定は変わっていないとの指摘もあります。そこで、自民党の政策会議を分析して、政策決定過程における官邸主導および党主導がいかなる条件の下で変わるかを明らかにしようと考えています。」
黒神:「ありがとうございます。なかなかアップ・トゥ・デイトなテーマで、興味深いですね。」
黒神:「今回助成を受けた研究も含めて、全体として、これまでご研究されてきたことや、今後展開していきたいテーマなどについても少しお伺いできますでしょうか。」
朴:「そうですね。私の根本的な興味は、代議制民主主義国家における与党の役割にあります。博士論文では、与党が政府との関係の中で、いかに政策決定過程に参加するのかについて、日韓の『制度』を比較しました。今回の助成を受けた研究も、政府との関係の中で与党の行動に関するものと位置付けられます。今後は、政府だけではなく、支持団体との関係も分析枠組みに取り入れて、与党の政策行動を分析しようと思っております。」
黒神:「とても意欲的ですね。これからのご研究の発展がますます楽しみです。」
黒神:「話ががらりと変わりまして、先生は、教育についてもとてもご熱心だと伺っております。岡山大学の学生にはどのような印象をお持ちですか。
朴:「ひとことで言って、『まじめで優秀』だと思います。授業の中で求められる課題を素早く把握して、それに答えてくれます。また、自分の意見を述べるときには、慎重で思慮深い学生が多いように感じます。授業後のリアクションペーパーなどで、積極的に自分の考えを伝えてくる学生が多く、ここまで考えていたのかとこちらが驚くこともよくあるんですよ。」
黒神:「授業を実施するうえで気を付けている点や、工夫されている点などありますでしょうか。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
朴:「政治学の理論や知識、現実の政治上の課題に関わる議論をいかにうまく伝えるかということについて、日頃気を付けている点はいろいろありますが、コロナ禍の現在は、何よりも授業中のコミュニケーションのとり方を重視しています。講師と受講生とのコミュニケーションも大事ですが、オンライン授業の中で、学生同士のコミュニケーションが難しくなっています。そこで、アンケートやリアクションペーパーなどを活用して、述べられた争点について、私の解説だけではなく、それに関する他の学生さんの多様な意見を紹介するなど、工夫をしております。」
黒神:「なるほど。オンライン授業でもうまく学生の意見を引き出して、フィードバックされているんですね。素晴らしいです。」
黒神:「それから、朴先生は在東京の韓国大使館でもご勤務されていたこともあって、以前、韓国大使館の方にも本学にお越し頂いて講演会を開催して頂きました。その節は、ありがとうございました。今後、学部としても国際交流にも力を入れていきたいので、朴先生にはぜひお力をお貸し頂きたいと思っています。」
朴:「学生さんには、外国での生活をなるべく経験してほしいと思っています。とりわけ、私の出身国であり、日本の近隣国である韓国にも、ぜひ、お越しいただきたいです。日韓は、東アジアの民主国家として価値を共有しながら、少子高齢化など、社会的な課題も多く共有します。日韓の学生の皆さんがお互いの国を経験し、両国の社会における問題と解決策について議論できる場を作ることに、私ができることがあれば、微力ながらお役に立ちたいと思っております。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「ありがとうございます。もっとお話を聞きたかったのですが、そろそろ時間となってしまいました。これからのますますの研究のご発展を期待しております。本日はお忙しい中、学部長の部屋にお越し下さり、本当にありがとうございました!」
朴:「ありがとうございました!」
2021年9月7日
第13回 ゲスト
園田慎さん(法学部4年生)、清原和昭さん(法学部3年生)、濵田陽子先生(法友会顧問)
~法学部公認サークル「法友会」の内閣総理大臣表彰を祝して~
黒神:「今日のお客様は、岡山大学法学部の公認サークルである『法友会』の前代表、法学部4年生の園田慎さんと、現代表、法学部3年生の清原和昭さんです。法友会は、昨年に続き2度目の登場となります。また、前回同様、法友会顧問の濵田陽子先生にもお越しいただきました。法友会は、これまで地道に地域の中高生に法教育を実施して参りましたが、このたびその功績が認められ、なんと消費者庁から『消費者支援功労者表彰』の中の内閣総理大臣表彰に選ばれました。
令和3年度 消費者支援功労者表彰 被表彰者等一覧
去る6月30日に、首相官邸で表彰式がありました。
本日は、法友会が実践する法教育についてお伺いしたいと思います。皆さん、よろしくお願いします。」
一同:「よろしくお願いします。」
黒神:「まず何はさておき、このたびは、内閣総理大臣表彰の受賞、本当におめでとうございます!!今回の受賞は、学部のみならず、大学全体にとってじつに名誉なことです。今までの皆さんの地道な活動がこうして実を結んで私も本当に嬉しく思っています。」
一同:「ありがとうございます!」
(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「まず、お伺いしたかったのは、今回、どうして消費者庁から表彰されることになったのですか。」
園田:「法友会は2017年度に本格的に法教育活動を始めたのですが、そのときから授業内容や中学校や高校との調整について岡山県消費生活センターさんにご指導、ご協力をいただいていました。また2018年には岡山県消費者啓発セミナーボランティア講師に登録して、地域社会への貢献の一環としても法教育、消費者教育活動を行ってきました。今回は、法友会が中学校や高校に出向き、社会科の授業の一環として消費者教育を継続的に行ってきたという点を高く評価していただき、表彰をいただくことになりました。」
黒神:「そうですか。これまで消費者センターの方々にお世話になりながら、地道にこの活動を続けてこられたんですね。たしかに、中学校や高校の授業の一環として、大学生が法教育を行っているということは、全国的にも珍しいということを私も聞いています。」
黒神:「これ以外に、地元の弁護士会とも連携して、『ジュニア・ロースクール岡山』のような活動もされています。これについても、簡単にお聞かせください。
清原:「『ジュニア・ロースクール岡山』へも2017年度からチューターとして参加させていただき、2018年度からはチューターだけでなく授業も1コマ担当させていただいています。授業は、契約やSNSへの書き込みなど身近な事案をテーマに、講義とグループ・ディスカッションを組み合わせた形式で行います。2022年4月1日に成人年齢が18歳に引き下げられるので、今年度は、未成年者契約と成年者契約の違いに焦点を当てた教材で授業を行う予定です。」
右:園田君 左:清原君 (撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「素晴らしい。毎年教材も進化していっているんですね。ところで、法教育を地元の中高生に対して行うことの難しさはありますか。」
園田:「日頃授業で使っている用語が通じず、日常的に使っている言葉に翻訳して説明しないといけないところです。油断して法律用語を使うと、中学生・高校生が置いてけぼりになってしまうので、細心の注意を払っています。また、具体例が長い場合があるので、設問に移る前に各グループで事例の簡単な確認をして参加者の理解の手助けをしています。」
黒神:「逆に、法教育活動を行っている中でやりがいはどのように感じられますか。」
清原:「法律を普段から学ぶ私たちとは異なる視点からの、中高校生ならではの様々な考えを得られたときに特にやりがいを感じます。法教育では、法律的に正しい答えのみを中高生に求める訳ではありません。結論よりも、答えを出すための議論や考える過程を重視します。そのために私たちは、説明の仕方や問いの立て方を工夫して、中高校生が活発に議論し、より深く考えられるような授業づくりを心がけています。」
黒神:「顧問の濵田先生から見て、法友会の学生たちはどんなふうに映っていますか。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
濵田:「法友会の学生の素晴らしい点の一つは、他者の役に立とうとする気持ちをもっている点です。教材研究や授業前後の打合せでは、いつも先輩が後輩の活動や学びをサポートしています。後輩は先輩が残してくれた教材やマニュアルを発展させて、より分かりやすく質の高い授業の実現に向け努力しています。彼らのたゆまぬ向上心と人に貢献する姿勢が今回の受賞に結びついたのだと思います。」
黒神:「なるほど。人のために汗をかく者が少ない中で、法友会の学生たちの心構えは本当に素晴らしいですね。ただ、彼らももちろん素晴らしいのですが、それを横で支えてこられた顧問の濵田先生のご指導あってのことと思いますよ。いつも本当にありがとうございます。」
黒神:「前代表の園田さんに質問です。法友会には現在何名くらいのメンバーが所属していますか。法友会は、今回取り上げている法教育以外にも、金沢大学法学部との交流会や、法学部の下級生に向けた履修説明会や勉強会など多くの活動をしていると聞いています。法友会は、これまで長年、法学部の学びを支えてきたわけですが、サークルが存続してきた理由のようなものはありますか。代表として、組織を運営していくうえで気を付けてきたことなどがありましたら、お聞かせください。
(撮影時のみマスクを外しています。)
園田:「現在、法友会には68名の学生が入会しています。法友会がここまで続いてこれたのは、硬過ぎない雰囲気があったからだと思います。法友会という名前から真面目なサークルという印象を持つ人が多いのですが、実際は学部生同士の繋がりを作るプラットフォームのような役割の方が強く、その繋がりをもとに各活動が成り立っています。そのため、代表としては会員同士の繋がりをどうしたら強くできるかということを念頭において運営をしていました。」
黒神:「ありがとうございます。今度は、現代表の清原さんに質問です。今後、法友会をどのように運営し、盛り上げていこうと思っていますか。」
清原:「間もなく成人年齢が18歳になります。法教育の受講生はこれから成人になる中高生です。法友会では、さらに法教育の質を高め、受講生の心に残る授業を展開していければと考えています。また、法友会の活動目標のひとつは、会員の勉学の向上心を高めることです。法教育に限らず、会員にとって意義のある活動をこれからも企画していく所存です。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「今回の対談を通じて、法友会というサークルは、法学部学生の勉学のためのみならず、地域のために尽力してきたということが本当によくわかりました。前回も申しましたが、学生時代のこの経験は、将来、いかなる進路に進まれてもきっと役に立つと思います。これからも法学部はもちろん地域のためにも、いっぱい汗をかいてください(笑)。本日は、本当にありがとうございました!」
一同:「ありがとうございました!」
2021年7月12日
第12回 ゲスト
河津拓未さん(岡山大学生協ブックストア)、中島一彰さん(岡山大学生協食堂)
黒神:「今日のお客様は、岡山大学生協の河津拓未さんと、中島一彰さんです。学生の皆さんにとっては、毎日お会いする『生協のお兄さん』たちとしてよく知られているのではないでしょうか。逆に、お2人が岡大法学部出身だったんだということで驚いている方も多いのではないかと思います。お2人は、学生の入学から卒業までをずっと見届けてきていらっしゃるので、私とはまた違った目線で岡山大学や学生を見てきておられると思います。その意味で、本日の対談を楽しみにしております。よろしくお願いいたします。」
河津・中島「よろしくお願いします。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「まず、河津さんにお伺いします。河津さんは、ご卒業後、生協で何年くらい勤務されていますか。以前は、書籍部で教科書の発注などお世話になりましたが、それも含めてどんな業務に携わってこられましたか。」
河津:「わたしは2009年から岡山大学生協で勤務しているので、もう12年目になりますね。生協に入ったときに知ったんですが、生協は入社ではなく入協っていうんですよ。そんな言葉があったんだ、と思いましたね。入協後は書籍部で教科書や読書マラソンなどの担当をしていました。その後、ブックストアの店長になり、現在はショップ全体のマネジメントや、新入生向けの教材・パソコンなどの担当をしています。」
黒神:「生協で働くようになったきっかけについてお聞かせください。」
河津:「法学部卒業後は、広島の一般企業で働いていたのですが、結婚を考えていたこともあり岡山に移住しようかと思っていました。そんな折に、大学時代に所属していたアメフト部の恩師から、『大学生協が求人出しているぞ』とご紹介いただいて面接を受けましたね。キャリア開発センターの先生方にもお世話になりました。」
河津さん (撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「河津さんは、アメフト部でしたか。うちのキャリア開発センターは、卒業後の学生の転職などの面倒も見て下さるので、本当に有難いですよね。」
黒神:「仕事をしていてやりがいを感じるのはどんなときでしょうか。」
河津:「学生のときは生協をほとんど利用していなかったんですが、入ってみると仕事の幅が広くて面白いですね。食堂は代表的なものですが、不動産や書籍、講座運営、広告など、学生生活に関わることで、やりたいと思ったことは何でもできるので楽しいです。やりがいは、学生と一緒に企画を立てて実行することでしょうか。最初はふんわりした意見の学生さんが多いんですが、実際に企画を実行に移すときは必ず壁があります。この壁を一緒に乗り越えることが楽しいですね。その学生が、次の後輩に引き継いでいく姿をみると、すごく成長しているのがよく分かります。私も置いていかれないように必死です。」
黒神:「ありがとうございます。では、中島さんにお伺いします。中島さんは、体が大きいので、1年生のときから私の大講義室での授業でも、一番後ろの席で目立っておられたのを未だに覚えております(笑)。今は食堂にいらっしゃいますが、それは希望して行かれたんですか。今、働かれて何年くらい経ちましたっけ。」
中島:「今でも変わらずどこにいても目立つようです(笑)。ぼくはそもそも生協に入ったきっかけが、当時の食堂部長の方からのお誘いでした。学生の時は生協でパソコン講座、新入生サポートセンターのアルバイトをさせていただいており、サポートセンターではメインがお部屋探しのお手伝いでしたので、希望は不動産関連でした。ただ部長に誘っていただいたこともあり、食堂部の配属になりました。今年で6年目になります。」
中島さん(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「学生がマナーが悪かったりすると思うんですが、なんかご苦労とかありますでしょうか。この際、この場で吐き出してみてください(笑)。」
中島「ほんとにしいて言えばですが、閉店間際に駆け込みで来られて、メニューが少なすぎる、と言われたことでしょうか。もちろん切らさないよう準備はしているつもりですが、食材ロスとの兼ね合いもあり、どうしても売り切りにしてしまうこともあるので、心苦しいな、というところです。学生が忙しいのはもちろん承知しています。最後にお願いにはなりますが、ほとんど1日中開いている店舗ですので、余裕をもって利用していただけたらなと思います。」
黒神:「そうですよね。駆け込みは困りますし、そんなにバタバタして食べてもらっても消化にもよくないですよね(笑)。」
黒神:「逆に、何か日々の業務で楽しいことや充実していることなどありますか。」
中島:「やっぱり食堂に来て楽しそうにメニューを選び、食べてくれている姿を見ることでしょうか。今は少し現場に入ることが業務的に減り、そういった機会は少なくなりましたが、やはりそれに尽きると思います。またパートさん、アルバイトさんと店の運営を組み立て、皆さんの食を支えていくことにやりがいを感じています。」
黒神:「非常に漠然とした質問ですが、今の学生さんたちを見て、お2人が学生だったときと比べて何か変わった点などありますでしょうか。また、大学全体の雰囲気の変化とかでもお気づきの点などありましたら、お聞かせください。」
河津:「私が学生のときは部活が生活の100%だったので、いまの学生さんはいろいろなことをマルチにこなしている印象がありますね。やらないといけないことが多くて、忙しいとも言えるかもしれません。そして計画的で、頭が良くて、おしゃれです!計画的な分、すこし見切りが早いというか、無理しないところもあるような気がしますね。もちろんいろいろな学生さんがいるので一概には言えませんが。」
中島:「勉強に取り組む姿勢だったり、生活に対する考えだったりがとてもしっかりしているな、という印象を受けます。また世の中の情勢ということもあるかもしれませんが、非常によくいろんな情報を利用しているなと思います。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「ありがとうございます。今振り返ってみて、もし、お2人が現在学生だったとしたら、何かやっておきたいことってありますか。」
河津:「やっぱり勉強ですね。もっと勉強しておけばよかったと思います。私の中でアメフト部での経験は代えがたい大切な要素ですので、部活ばかりしていたことに対する後悔はないです。ただ、社会人になってみると大学時代にあまり勉強をしなかったという事をもったいなかったと思いますね。当時受講していた小畑先生の日本政治史、大森先生の法哲学、小田川先生の政治思想史、黒神先生の国際法の講義など、純粋に面白かったので、概論的な講義だけでなくもっと深く勉強すればよかったと思いますね。今も本や動画で独学することは出来ますが、教えてもらうことは出来ないので、もったいなかったなと。」
黒神:「あはは、私の科目も入れてもらって恐縮です(笑)。」
中島:「大学1年から社会人の方に関われるような団体に所属したり、活動したりしたかったなと思います。僕はずっとバスケをしており、卒業の年ごろから社会人バスケに参加するようになりました。その同時期ぐらいに瀬戸内市邑久町での地域ボランティアにも参加しました。そういった場で大人の方と話すにつれて物事の視野が広がったように感じます。」
黒神:「素晴らしいですね。他にもありますか。」
中島:「はい、その他に勉学面で言えば、何か1つでも法律に関する資格の勉強をしておけばよかったなと思います。社会に出ると思った以上に時間がないこと、また勉強するとなると独学が主になるので、つまずいた時に質問できずなかなか前に進めないということなどに気づかされました。就職活動をしていく中で、社会に出ていく中で、資格があることで活動の幅がさらに広がったのではないかなと思っています。」
黒神:「ありがとうございます。最後に、後輩である法学部生たちに対してひとことずつメッセージをいただけますでしょうか。」
河津:「これからのAI社会には、理系的な考え方はもちろん大切だと思いますが、正義や公平を基本にする法学的な考え方についても、もっともっと大切になると思います。大学生協は学生のみなさんが、自分たちの大学生活を良くするために、みんなで一緒に考えて、運営する組織です。勉強や部活に集中するためにも、上手に「利用」してもらえればと思います。何かやりたいことがあれば教えて下さい!ぜひ一緒にやりましょう。」
中島:「このコロナ禍によって、自分たちがいたころよりもさらに自分で勉強していかなければならないようになっていると思います。オンラインになってつい『1人で解決しないといけない』と思いがちという話も聞きました。1人で勉強して解決しないことがあれば、無理に独学で行おうとせず、誰かに助けを求めてもいいと思います。勉強のこと以外でも岡大の先生方は相談したら親身に応じてくれます。僕自身本当にいろんな先生方に気にかけていただきました。なのでまずは相談する勇気を持ってください。また大人になってからでは、『自分がしたい』勉強はなかなかできないことが多いです。いまのうちに、したいと思った時にその勉強を始めてみてはいかがでしょうか。」
黒神:「本日は、お忙しいところ、わざわざ学部長の部屋にお越し下さり、ありがとうございました!これからも、われわれの大学生活をいろんな面でサポートしてください!」
河津・中島:「ありがとうございました!」
2021年6月7日
第11回 ゲスト 尾原玲花さん(法学部4年生)
黒神:「今日のお客様は、法学部4年生の尾原玲花さんです。尾原さんは、さきごろ学部を代表して本学の「金光賞」を受賞されました(金光賞は、法文学部第4期生、故・金光富男様のご厚志による寄附に基づく賞で、グローバルに活躍しかつ学業成績が優秀な学生に贈られる栄誉ある賞です)。尾原さんは学業成績もきわめて優秀ですので、今日は、これまでの学生生活についていろいろとお伺いできればと思っています。よろしくお願いします。
黒神:「尾原さん、まずは、金光賞受賞、おめでとうございます!」
尾原:「ありがとうございます!」
黒神:「金光賞は、まず、グローバルに活躍した学生が対象となっております。尾原さんはどちらに留学されたんでしたっけ。」
尾原:「はい、2019年8月から12月まで、カナダのケベック州にあるビショップス大学に留学しました。」
黒神:「ケベックですか。ヨーロッパの雰囲気もあるいい町に留学されましたね。あちらでの生活や、思い出などについてお聞かせいただけますか。
尾原:「はい。学習面では、演劇学部生として演劇に打ち込んだのですが、私は、それまで、本格的に演劇をした経験が無かったんです。触れたことのないもので溢れた世界で、心躍る日々を送りました。講義としては、ひたすら即興で演じるアクティブなものも、舞台芸術について学ぶものもあったのですが、中でも、数か月かけて1つの舞台を完成させた講義が印象的です。」
黒神:「へー、しかし、外国というだけでもたいへんなのに、さらにたいへんな世界にチャレンジされたんですね。」
尾原:「はい、その講義は、本来、大学の3回生、つまり、演劇に3年以上打ち込んできた学生しか履修することのできない講義で、演劇経験のない、そして、英語を母語としない私には難しいだろうと先生にもいわれました。」
黒神:「それはそうでしょう。きっと並々ならない努力をされたのでは?」
尾原:「はい、毎晩行われる稽古の中で、英語力や演技力で明らかに周りに劣っていると感じながらも、本で調べて考えを深めたり、動画を観て分析したりしました。仲間の学生や監督にアドバイスや激励を受けながら、なんとか最後まで駆け抜けました。この経験を通して、私の精神力はこの上なく鍛えられましたね(笑)。また、公演後、観客の皆さんの投票の結果、「最も印象的だったキャラクター賞」に選んで頂いたのが嬉しかったです。」
黒神:「それはすごい!!金光賞よりもある意味レアな賞を受賞されましたね(笑)。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「ご帰国後も、大学の国際交流に一役買っておられると伺いました。どのような活動をしてこられたんですか。」
尾原:「そうですね。帰国後は、個人的に、後輩から留学の相談を受けたり、留学のプレゼンテーションをしたり、以前にも増して高校生の言語学習を手伝ったりしてきました。また、昨年の秋に、米国務省『重要言語奨学金(CLS)プログラム』にランゲージ・パートナー(LP)として参加しました。本来は実際に大学に来られたアメリカの学生たちと交流するものなのですが、コロナ禍の影響で昨年はオンラインの実施となったんです。初めは非常に残念だと思ったのですが、ルームツアーや店紹介、おにぎり作りなど、様々工夫を凝らしながら活動を進めていき、主に日本文化理解を通してパートナーと仲良くなっていく過程で、オンラインでの国際交流が可能であることを実感しました。」
黒神:「金光賞のもう1つの基準となっている成績優秀であることに関しては、尾原さんは学年でもずば抜けて優秀な学業成績を収めていらっしゃいますが、普段の受講や予習復習の仕方など何か気を付けていることはありますか。」
尾原:「私は、殆ど毎日アルバイトをしていたので、講義外で確保できる時間が限られていました。しかし、アルバイトを楽しんでいたこともあり、アルバイトの時間を減らさないまま勉強も頑張ろうと決めていたのです。その結果、予習復習にかけられる時間は少なく、私にとって、講義中が最も重要な勉強時間となりました。各講義の終了時点で、その講義内に理解すべきとされていながら自分が理解できていない内容が無いように、と自分に勝負を挑んでいたんです(笑) 。初回講義から試験を意識し、直前の2週間から各講義の試験前日までは、時間を見つけては総復習を繰り返す日々です。」
黒神:「それは教師の立場から見ても、模範中の模範学生ですね。」
尾原:「…とはいいましたが、講義の数も多かった上に、私にも精神的な波があるので、これが貫ける講義ばかりではありませんでした。また、努力の甲斐なく、思ったような評価を受けられないことも少なくありませんでした。よくも、我(が)、というか、一種のプライドを折らずに持ち続けられるなと自分でも不思議です。『何の為に』と問われることも多いのですが、とにかく自己満足でも、我流で学習の質にこだわり続けていることが良いかなと思います。ただ、唯一の後悔は、その刹那的に学んだ全てを、今現在長期的な記憶にはできていないということです。今とは異なる進路を希望していたということもありますが、もっと頑張れたなあと思えてしまう点で過去の自分を少々残念に思います。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「ここまでストイックに勉強して立派な成績を収めたのに、まだ反省されますか…(笑)。ところで、尾原さんは、大学外でも、社会貢献活動をされているとのことですが、そのことについても、少しお聞かせください。」
尾原:「以前、学部長の部屋に登場された上田彩夏さんから引き継ぎ、現在、岡大犯罪被害者支援ボランティアsmileの代表を務めています。この時世で、活動がかなり制限されているのですが、進行中の活動はいくつかあります。具体的には、あした彩への所属を同じくする他大学の希望者と共に作成していく人形劇、smile独自には、『あなたへ』という被害者支援パンフレット英語版のデザイン、漫画版パンフレットの模索など様々です。講演会、シンポジウム、勉強会など、普段定期的に催されるイベントの開催の如何は不確かなので、目的を見つめ直しつつ、この時世でも私たちにできる活動を試行錯誤している最中です。」
黒神:「犯罪被害者支援の活動は、着実に法学部の学生さんたちが引き継いでいってくれているんですね。たしか、尾原さんは大学からSDGsアンバサダーの称号を与えられていたと思うのですが。」
尾原:「はい、SDGsアンバサダーの内部団体『めろでぃー』としては、性の多様性が認められる社会という目的を形にするにはどうすべきか議論を重ねています。最近では興味深いアンケート結果が得られたので、これからその分析に取りかかろうかという段階です。SDGsに関しては、これまたこの時世で、やりたいけれどもできない活動がたくさんあるので、案だけでも未来の同志に残せたら、と私は考えています。個人的には、将来的にレインボーパレードを実現したいです。」
黒神:「数々の素晴らしい活動をされているんですね。驚きしかありません。最後に、尾原さんは、ちょうど4年生になられたということで、将来どんな道に進まれるのですか。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
尾原:「法曹の道に進みたいと思っています。以前は、自分にはこれといってやりたいことが無いと思っていたんです。しかし、自粛期間中の自己対話を経て、進路希望が大きく変わりました。…というよりも、夢を思い出して、すとんと腑に落ちたという感じですかね。ふと、私はどうして法学部にいるのだろうと思ったんです。様々尋ねてみると、私が小学生の頃に弁護士になりたいと言っていたことを母が教えてくれました。私はそれを忘れていて、その時、将来の自分の姿を常々意識してはいなかったんだなと思いました。」
黒神:「法曹への憧れがずっと眠ってたんですね。」
尾原:「はい、きっと法曹への憧れが自分に内在することが当たり前になり過ぎて、ずっと在ったのに、ずっと夢見ていたのに、気が付かなかったんです。それを自覚してからは、目指すしかないと焦燥感に駆られてすらいます。また、無意識的に惹かれてきた法学の一方で、私は意識的に国際交流や言語学習をしてきました。グローバル化の進む中で、多くにおいて異なる国々が共生するには多角的な理解が必要であるということに魅力を感じており、主に比較法的に研究したいと思っています。興味関心に加え、これからの猛勉強を以て、世界を股にかける国際弁護士になりたいです。」
黒神:「素晴らしい夢ですね!!ぜひその夢に向かってチャレンジし続けて下さい!これからも、いっそうのご活躍を期待しています。今日は、ありがとうございました!」
尾原:「ありがとうございました!」
2021年4月21日
2021年度入学の新入生のみなさんへ
皆さん、このたびは、ご入学おめでとうございます!
昨年度は、コロナ一色の1年でした。皆さんは、制約の多い中で、受験の準備を周到にされ、無事、岡山大学法学部にご入学されました。皆さんの頑張りに敬意を表します。そして、岡山大学法学部を選んでくださり、有難うございます。入学のお祝いの言葉を述べると同時に、皆さんがわが法学部に寄せておられる期待に応えなければと、責任の重さもひしひしと感じております。
大学での4年間は、いわば皆さんの「幅(はば)」を広げるための4年間だと思っています。ひとことに「幅」といいますが、いろんな「幅」があります。まず、「知識・情報の幅」があります。大学で学ぶ法学・政治学の専門知識、低学年のときに学ぶ教養の知識や語学の知識をしっかり学んでその幅を広げてください。
次に、「経験の幅」もあります。皆さんは、自分の興味や関心から、部活やサークル活動、社会に出て行うボランティア活動、あるいはアルバイトなどさまざまな活動を行うようになると思います。こうした「経験の幅」を広げることで、皆さんは社会性を身に着け、今後の人生への自信へとつなげていくことができると思います。
最後に、「人的ネットワークの幅」が挙げられます。大学で友達と学び、先輩と付き合い、先生から指導を受けることは、常に人と人とのつながりに基づいています。大学時代に築き上げた人的なネットワークは、かけがえのないものです。かくいう私も、大学時代に築いた人との関係は、未だに切れることなくつながっております。このネットワークにこれまで幾度となく助けられ、また、癒されてきました。大学4年間で、できるだけ多くの人たちと出会い、この幅を広げていってもらいたいと思っています。
このように、これからの4年間で、皆さんの今持っているさまざまな「幅」が広がっていく過程を、我々教員一同は一緒に楽しみたいですし、また、それを手助けしようと意気込んでいます。
このたびは、ご入学、本当におめでとうございました!
2021年4月2日
法学部長 黒神 直純
「学部長の部屋」開設1年によせて
早いもので、「徹子の部屋」を真似して、この「学部長の部屋」を開設してから1年が経ちました。法学部の関係者の方々、地域の方々、私のことをよく知る方々などじつに多くの方に支えて頂き、今日までこのコーナーを続けることができました。この場をお借りして、お礼を申し上げます。本当に有難うございました!
学業や課外活動に頑張る法学部生、社会で頑張る卒業生、学部の教育・研究を支える先生方など多くの方と対談してきました。皆さんに共通していえるのは、私との対談を常にご快諾くださったことです。ご出演頂いた皆さんすべて、法学部を思い、盛り上げようと思ってくださる「岡大法学部愛(岡法愛)」に満ち溢れていたように思います。その意味で、この「学部長の部屋」を開設して本当によかったな、としみじみ思っています。
2021年度もいよいよ始まりました。今年度も、昨年度以上に、「岡法愛」に満ち溢れた方々にお声掛けして、その愛を引き出す対談を重ねていきたいと思っておりますので、これからもよろしくお願いいたします!
2021年4月1日
法学部長 黒神 直純
第10回ゲスト
東原佑翔さん、宮本大雅さん、渡邊裕樹さん (岡山大学法務研究科 院生)
黒神:「今日のお客様は、このたびめでたく司法試験に合格した、東原佑翔さん、宮本大雅さん、渡邊裕樹さんです。この3名のみなさんは、岡山大学法学部出身で、現在うちの法務研究科に所属しておられます。東原さんは、岡山城東高校出身で、渡邊さんは岡山朝日高校出身と、地元から法曹の道を目指されました。また、宮本さんは明石のご出身ですが、岡大法学部から関西圏のロースクールには行かず(笑)、うちのロースクールを選んで進学されました。今日は、みなさんそれぞれ大学時代から司法試験を目指すに至った経緯や、岡山大学の学部とロースクールでの学習環境などについて、ご経験を踏まえてお伺いできればと思っています。みなさん、よろしくお願いします。」
一同:「よろしくお願いします。」
黒神:「みなさん、まずは、司法試験合格、おめでとうございます!ちなみに、今年も、9名の合格者のうち岡大法学部出身者が6名も占めていたということで、私も本当に鼻が高いです。」
一同:「ありがとうございます!」
左から東原さん、宮本さん、黒神法学部長、渡邊さん (撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「早速ですが、何をきっかけに法曹を目指そうと思われたんですか。」
東原:「社会生活を送る上で法律は切っても切れない関係にあると思います。何をするに当たっても、法律が関係してくると思います。そういった意味で、法律を専門にした職業は重要だと考えていました。そこで、それを専門にした職業である法曹業界を目指すに至りました。」
宮本:「高校生の頃から、人助けになる仕事をしたいと考えていました。自分ができることで人助けをする職業と考えると、法律を使った職業が向いているのではないかと思い、漠然と法曹を目指しました。その後、学部2年生や3年生の時にゼミに入り、司法試験の受験を真剣に考えるようになりました。」
渡邊:「法学部に入ったときには公務員か法曹のどちらかをイメージしていました。最初は漠然と公務員になろうしていましたが、その後、自分には合わないのではないかと思って法曹を志すことを決断しました。自己の責任と裁量でのびのびと仕事をする法曹の姿に魅了されたところが大きいように感じています。」
黒神:「そうですか。入学当初は、まだ明確に法曹の道を考えておられたわけではないんですね。」
黒神:「学部の高学年になったときには、徐々に学習も本格化してきたと思いますが、みなさんゼミはどこに所属しておられたんですか。そこではどんなことが役に立ちましたか。」
東原:「3年生の時は、塩谷先生の刑法のゼミに参加させて頂いておりました。4年生になり、原田先生の刑事訴訟法のゼミと、濱田先生の民訴ゼミに参加させて頂いておりました。片方のゼミは聴講させて頂いておりました。また、2年生の頃から、課外ゼミとして米山先生の商法ゼミにも参加させてもらうようになりました。」
東原君(撮影時のみマスクを外しています。)
宮本:「3年生の時は、原田先生の刑訴ゼミに参加していました。4年生の時は、同じく原田先生の刑訴ゼミと濵田先生の民訴ゼミに参加していました。僕も東原さんと同じく、課外で2年生の頃から米山先生の商法ゼミに参加していました。米山先生のゼミでは、司法試験直前期のロースクール生と一緒にゼミ報告をさせて頂いていました。先輩と一緒に勉強することで目標を身近に感じ、司法試験の受験への意識が強くなりました。」
渡邊:「憲法が苦手だったので、3年生の時も4年生の時も憲法を研究されている山田先生にお世話になりました。ゼミでは、判例の射程というテーマで、類似の判例の共通点と相違点とを明らかにしていました。司法試験も判例の事案を少し変えて出題してくるので、どのように判例を応用させればよいかが大変参考になりました。」
黒神:「学部生でありながら、ロースクールの先生のゼミに参加させてもらえて、先輩と一緒に勉強できるというのは、アットホームなうちの学部とロースクールならではのメリットですね。」
黒神:「ロースクール進学を考えたとき、皆さんはうちのロースクール以外にも選択肢はあったと思うのですが、何故うちのロースクールへの進学を決めたのですか。とくに、他の人と違って、宮本さんは関西の出身なのに、よくうちのロースクールに進学されましたね。」
宮本:「他の大規模なロースクールに行くと、先生が学生の顔と名前を憶えてくれないと聞き、そのような環境で、先生の力を借りずに合格するのは自分では無理だと思いました。また、学部生の時に岡大ロースクールの資料室でアルバイトをしていたので、学生の方が、資料室で気軽に先生に質問しているのを見て、学習環境が整っていると思いました。そこで、僕は、1人だけで勉強して司法試験に合格する自信がなかったので、指導が手厚い岡大ロースクールに進学しました。」
宮本さん(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「そうでしたか。そういってもらえると本当にありがたいですね。宮本さんのような学生さんがもっとたくさんいると嬉しいのですが笑。」
黒神:「うちのロースクールで学習することのメリットはどんなところにありますか。」
渡邊:「奨学金や学費の免除など金銭面での補助が手厚いです。また、ほかの有名なロースクールと比べても1学年の学生数が少ないことから学生同士がすぐに仲良くなりやすいです。そのため、自主ゼミなどが積極的に開催される傾向があり、1人ではあまり勉強が進まないという方も勉強のペースをつかみやすいのが特徴です。」
東原:「少人数のため、学生同士の縦・横のつながりが強く、わからない点があれば同期や先輩に気軽に質問でき、自分たちで自主ゼミを組んで共に勉強できる点は非常に良かったです。また、授業についても、少人数で教授から回答を求められるため、必ず1回の授業に1度は自ら発言する機会があり、授業に能動的に参加できる構造となっており、緊張感をもって授業が受けられ、より学習した内容が自分の頭で考えるので定着しやすかったと思います。さらに、先生方も優しく、親身になって色々な質問に答えてくださったり、アポをとらずに質問に行かせていただいたとしても、丁寧にご指導してくださったり、課外ゼミに協力してくださっていました。」
黒神:「今年は、とくにコロナ禍の中で、制約も多かったことと思います。みなさんの間で、モチベーションを保つためにどのような工夫をされましたか。」
東原:「同期の友人とteamsで繋いで、自分の勉強している姿を映し、オンラインで自習室のような環境を作り上げて共に勉強していました。」
渡邊:「作成した答案をグーグルドライブで共有し、互いに添削や議論をしていました。定期的に答案を書く習慣を途切れさせないことが重要だと思っていたからです。」
渡邊さん(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「みなさんは、すでに後輩の学部生に対しても学習のサポートをしてくださっていると聞きました。具体的にどんな形でのサポートをされてるんですか。」
宮本:「今は、合格者ゼミとして、新2・3・4年生向けに答案の書き方を教えるゼミをしています。僕自身、最初は授業を聞いても何をどう書いたらいいかわからず、勉強が進みませんでした。そのため、答案の書き方やお作法を学んで頂き、学部生の勉強のモチベーションアップを図りたいと思っています。このゼミは、法曹志望以外の方もたくさんご参加いただいており、司法試験合格に必要な事項はもちろん、公務員試験や大学の定期試験でも役立つような内容を心がけています。」
黒神:「司法試験に合格した先輩が、直接手厚く指導してくれるような環境があるということが素晴らしいですね。後輩も心強いことでしょう。」
黒神:「将来、みなさんはどんな法曹を目指しておられるのですか。」
渡邊:「程度の差はあれど、弁護士事務所に来る依頼者は何かトラブルが生じた人だと思います。何とかしてほしいという依頼者の気持ちに寄り添うとともに、依頼者の希望を実現できる能力を身につけた弁護士になることが当面の目標です。」
東原:「幅広い案件を扱えることを前提にして、ある特定の分野ではだれにも負けない専門性を身に着けた弁護士になりたいと考えております。その過程で、困っている方たちの、法的・精神的な力になれればと考えています。」
宮本:「法曹を目指した動機が人助けにあるので、様々の分野での経験を積み、多くの方の助けとなれるような法曹になりたいと考えています。」
黒神:「皆さん、素晴らしい夢をお持ちですね。ぜひ今後も夢に向かって頑張ってくださいね。」
黒神法学部長(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「では、最後に高校生に向けたメッセージとしてお伺いします。司法試験の勉強や法学部で学ぶことのメリットはどんなところにありますか。」
宮本:「法学部の講義や、司法試験の勉強は、他学部と異なり大学受験までの知識が必要ではなく、大学受験の勉強と切り離されているという点がメリットだと思います。僕は、兵庫県立明石清水高校を卒業しました。母校は進学校ではなく、大学入学時の学力は岡大生の中でも下の方だったと思います。そんな僕でも、コツコツ勉強すれば、司法試験にも合格できましたので、大学受験までの学力に自信がない人でも、法学部や司法試験を目指すことができると思います。」
黒神:「大学入学と同時にいったんリセットして、そこから勉強を始めればきっと道は開けるということですね。力強いメッセージをありがとうございます。」
黒神:「普段はロースクールの学生さんたちとお話しする機会がないので、今日は、本当に貴重なお話を伺えてたいへん有意義でした。ありがとうございました。これからみなさんの大いなる飛躍を期待しています。また、これからもぜひ岡山大学法学部のためにもご協力ください!」
一同:「ありがとうございました!」
2021年2月18日
第9回 ゲスト
佐藤吾郎先生(岡山大学大学院法務研究科長)
黒神:「今日のお客様は、岡山大学法務研究科長の佐藤吾郎先生です。佐藤先生は2度目のご登場になります。じつは、第1回目の記念すべきお客様が佐藤先生でして、この4月から法学部に新しく設けられた中四国地区で初めての『法曹コース』(カリキュラム上の名称は「法曹プログラム」)についてお伺いしました。4学期もほぼ終わり、これから次年度生の募集に入ります(締切は2月10日まで)。今回は、申請を希望している学生に向けて、ぜひこのプログラムの魅力について語っていただければと思います。それでは、佐藤先生、よろしくお願いします。」
佐藤:「よろしくお願いします。」
黒神:「法曹コースを開始して、ほぼ全学期が終了しようとしております。実施してみて、1年目の学生について、現状などお話しいただけますでしょうか。」
佐藤:「1年目は、40名の応募があり、32名がプログラムに参加しています。非常に熱心に勉強を続けていて、私どもとしても、大変嬉しい限りです。本学法科大学院の特徴は、法学部2回生が、法科大学院法学未修者コースの学生と一緒に、法科大学院の授業を前倒しで受講します。法科大学院の授業を、初めて接する法分野について、サポートなしで受けると、授業についていけなくなるおそれがあります。カリキュラムの編成としては、一度法学部で授業を受けた法分野、例えば、1年3学期に受講した憲法(統治)について、2年1、2学期に、同じ分野の法科大学院の授業を受けることになります。法科大学院の授業は、レポート提出、中間テストがありますので、作成の参考になるように、先生方から、優秀な内容のレポートを複数学生に提示しています。」
黒神:「学生目線で綿密に練られたカリキュラムですね。」
黒神:「ところで、今年は、コロナ禍の中での実施だったので、いろいろとご苦労が多かったものと思います。どんなご苦労がありましたでしょうか。また、それをカバーするためにどんな工夫をされましたでしょうか。」
佐藤:「今年度は、コロナ禍のため、オンライン方式で授業が行われました。2回生は、法科大学院生と同様に、レポートを提出し、中間テストを受けることになります。体系的に整備された法科大学院の授業を、スムーズに受けてもらうために、提出されたレポートの中で優秀なものを掲示したり、過去問を提供したりしています。授業は、録画され、いつでも聴くことができますので、理解の助けになったようです。」
黒神:「このコロナ禍の中でご苦労があったにもかかわらず、ロースクールの先生方は熱心に指導してくださったんですね。」
黒神:「それから、うちのプログラムのウリの1つとして、学修アドバイザー(本学法学部出身若手弁護士)の制度があったと伺っていますが、この制度はうまく機能しているのでしょうか。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
佐藤:「コロナ禍にあって、学生さんは、オンライン講義のため、孤立しがちです。私たち教員も、学生の様子がわかりにくい面があります。そこで、それぞれの学修アドバイザーの方には、担当している5名の学生さんと、少なくとも、月1回は、オンラインで面談を実施していただき、授業への要望などを聞いてもらっています。その要望は、授業の担当教員に伝えられます。さきほど、紹介させていただいた試験の過去問の提供は、オンライン面談を通じて、学生から寄せられた要望から実現したものです。」
黒神:「先輩である学生アドバイザーの若手弁護士の方々も、学生にしっかり寄り添ってくれている様子がよくわかります。」
佐藤:「そうなんですよ。先月27日に行われた新2回生向けの法曹プログラム説明会で、実際に法曹プログラムの学生さんに、学修アドバイザーにどのような指導を受けているかを話していただきました。勉強方法、進路、アルバイト、サークルなど、多岐にわたって、相談をしているようです。実際のメリットとしては、法曹を目指して、勉強をするとしても、2年生の時期に何をすべきか、実際の司法試験の問題をどうすればみることができるか、わかりやすい教科書、問題集は何かなど、先輩若手弁護士から聞くことができます。自分であれこれ悩んでしまう時間と労力を節約することができ、空回りすることなく、落ち着いて勉強を続けることができます。いわば、『法学の勉強の水先案内人として、非常にありがたい、頼りになる』とのコメントがなされました。今のところ、非常にうまく機能していると考えています。」
黒神:「素晴らしい制度ですね!私も学生の時に、『法学の勉強の水先案内人』が居てくれたらもっときちんと勉強できたのに…。今の学生が羨ましいです(笑)。」
黒神:「学習環境についても、工夫があるように伺っておりますが。」
佐藤:「はい、学習環境についての最近の取組について紹介します。既に、法曹コースの学生向けに、法曹を目指すという同じ志を持つ仲間とともに、勉強することができるように、という趣旨で、自習室を設置しています。学修アドバイザー制度の運用を通じて、経験豊富な先輩が身近にいるメリットが非常に大きいということがわかりましたので、身近な先輩に常にアドバイスをもらえるように、自習室を、2月中旬に、さらに一室増設することにしました。新たに設置した自習室の中には、学修アドバイザーや法科大学院生を指導する若手弁護士が利用するスペースを設けておりますので、常に、先輩と交流することができるようになります。」
黒神:「すばらしいですね!こういった先輩が常に横についてくれているということは、学生にとっても心強い限りです。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
黒神:「ところで、話は少し変わりますが、今年の司法試験の合格状況はどんな感じだったでしょうか。」
佐藤:「岡山大学は、9名合格しました。内訳は、修了生が8名、在学生が1名です。9名のうち、岡大法学部出身者は6名です。1回目で合格した既修コース修了者3名、2回目で合格した既修コース修了者2名、既修1年コース在学中に予備試験に合格し、既修2年の今年度に合格した者1名です。合格者に占める岡大法学部出身者は、一昨年度は、11名中9名、昨年度は、7名中4名、今年度は、9名中6名ですので、毎年、50%以上を占めています。岡大法学部を卒業し、岡大法科大学院を経て、司法試験に合格するルートが確立しつつあると考えています。岡山大学の場合、法学部在学中に、法科大学院教員が担当するリーガルライティング演習(法的文章の書き方を学ぶ授業)を受講することができますので、スムーズに法科大学院の授業についていくことができます。このような法学部と法科大学院との間の教育連携が、このような結果に結びついたと考えています。」
黒神:「法曹コースが軌道に乗れば、将来的にもこの状況がさらによくなることは間違いありませんね。これからも、学部とロースクールとがしっかり連携していっそうの成果を上げていきたいですね。」
佐藤:「はい、その通りです。こちらこそよろしくお願いします。」
黒神:「在校生のみなさんには、ぜひ中四国で唯一のうちの法曹コースから司法試験合格を目指してもらいたいと思っておりますので、応募の方、何卒よろしくお願いします!」
黒神:「佐藤先生、本日はお忙しい中、ありがとうございました。」
佐藤:「ありがとうございました。」
2021年2月2日
第8回 ゲスト
土岐将仁准教授
黒神:「今日のお客様は、法学部で労働法を担当されている土岐将仁先生です。土岐先生は、東京大学のロースクールを優秀な成績で修了され、司法試験も合格された後、3年前に本学部にご着任された新進気鋭の研究者です。昨年『法人格を越えた労働法規制の可能性と限界――個別的労働関係法を対象とした日独米比較法研究』(有斐閣、2020年)という単著をご出版されました。このご本が、11月に「労働関係図書優秀賞」を受賞されたのに続き、12月には、「商事法務研究会賞」を受賞されました。教育面でも、10月にオンラインでの授業実施について、本学から「評判の高い」授業
として、土岐先生の授業が取り上げられました。(「GoodPracticeから学ぶオンライン授業」)
本日は、今や乗りに乗っている土岐先生のご研究内容や、教育面での工夫やご苦労などについてお伺いしたいと思っています。よろしくお願いいたします。」
土岐:「よろしくお願いします。」
黒神:「まずは、ご出版された近刊書でのダブル受賞、本当におめでとうございます。私も同僚として鼻が高いです。」
土岐:「ありがとうございます。」
黒神:「雑駁な質問で本当に恐縮ですが、このたびのご近刊書は、どのような内容ですか。門外漢の私にもわかるように多少かみ砕いてお話しいただけますでしょうか。」
土岐:「はい。伝統的な労働法が様々な義務を課するのは、労働者がむすんだ労働契約の相手方である会社(これを使用者といいます)のみです。しかし、グローバル競争の激化などによって、現実には、多くの会社は、複雑な企業のネットワークに組み込まれ、親会社や発注者など別の会社から経済的な影響を受けています。こうした状況は、使用者だけを規制対象とし続けても労働者の保護を全うできない状況を生じさせるため、近刊書では、どのような場合に使用者以外の者が労働法上の義務を負いうるかを検討しました。」
黒神:「ありがとうございます。国際法の分野でも、先進国の多国籍企業と関係の深い途上国の企業が引き起こした人権に関する問題が論じられていたりしますが、それと連なる問題といえそうですね。」
黒神:「今回のご研究成果を踏まえて、今後は、どのような形でご研究を展開されるご予定でしょうか。」
土岐:「そうですね……先ほどの近刊書では、労働法のもう1つの重要な柱である労働組合が登場する場面についての検討を行っていないので、こちらに取り組むことが1つの目標です。それと、近刊書で扱ったのは労働法学で「使用者」性といわれるテーマに連なる問題だったのですが、これとは離れた別のテーマに取り組んでみたいと考えています。」
黒神:「とても意欲的ですね。これからのご研究の発展がますます楽しみです。」
黒神「話が変わりまして、冒頭でも述べましたが、土岐先生は、教育面でも評判が高く、このたびオンライン授業の実施についても取材を受けられていましたね。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
土岐:「全学アンケートで評判が良かったというのは講義科目だったのですが、4月からのオンライン授業の準備は何のノウハウもない中で徒手空拳で根性で乗り切ったというのが実情だったので、嬉しい反応だったのですが、予想外でした(笑)。」
黒神:「授業をオンラインで実施するうえで、難しい点はどんな点でしょうか。」
土岐:「なんと言っても今まで使っていなかったツールを使うのに難儀しましたが、これは同僚の先生方にかなり助けられ、実験やら情報交換をしながら準備しました。リアルタイムで双方向に行う授業は、対面に近い形で行えるのですが、時々音声が途切れたり、操作に微妙に時間がとられてしまったりするのが難点かもしれません。大人数の講義をオンデマンドで行うと、履修者の皆さんの反応が分からないので、臨機応変に説明を補充するといった対応がしにくいのが難点だと思います。あとは成績評価ですね。これもできるだけ公平に評価できる方法を考えながら実施しています。」
黒神:「そうした難点もあるかと思いますが、オンラインで授業をするうえで、ご自身で気を付けておられることや工夫されていることなどもありましたらご教示頂けますか。」
(撮影時のみマスクを外しています。)
土岐:「はい。学生が孤立しがちという話を聞いていたため、少人数のリアルタイム方式の授業では更にグループに分割して学生同士で議論をし、コミュニケーションをとれる時間をとるようにしていました。大人数の講義科目は、独習できる環境を用意することに注力しました。実は、学部生の時に、自己の責めに帰すべき事由により講義に出ずに、体系書を読んで独学で多くの単位を取らないといけない状況になったことがあります。このときの経験から、躓きそうなところを配付資料(や視聴任意のビデオ教材)で手当てし、また、自分で理解度をチェックできるようにしたりしました。目立つ工夫をしたというよりは、独習できるように淡々と手当てしたという感覚を持っており、こうした点の評判が良かったようです」
黒神:「学部生のときにいろんな経験をしておくものですね(笑)。学生が自学しやすいように、学生にやさしい授業を展開されているんですね。」
黒神:「もっとお話を聞きたかったのですが、そろそろ時間となってしまいました。これからのますますのご活躍を期待しております。土岐先生、本日はお忙しい中、学部長の部屋にお越し下さり、本当にありがとうございました!」
土岐:「ありがとうございました!」
2021年1月7日
第7回 ゲスト
上田彩夏さん(法学部4年生)
黒神:「今日のお客様は、法学部4年生の上田彩夏さんです。上田さんは、先日、法学部生として教育や社会貢献で優秀な功績を収めた学生に贈られる岡山大学法学部長賞を受賞されました。犯罪被害者支援活動において、これまで地道に頑張ってこられた活動が認められ受賞されました。上田さん、おめでとうございます!」
上田:「ありがとうございます!」
黒神:「今日は、そのご活動を中心にお話をお伺いできればと思っていますので、よろしくお願いします。」
上田:「よろしくお願いします。」
黒神:「まず、上田さんは、犯罪被害者支援のボランティア団体の代表を務めておられると伺いましたが、その団体についてお聞かせ願えますか。」
上田:「はい、私は現在、犯罪被害者支援大学生ボランティア連絡会の『あした彩』の代表をしています。『あした彩』は県内15の大学のボランティアで構成されており、各大学が連絡を取り合い、協力してボランティアを行っています。岡山大学も『smile(スミレ)』という団体名で活動しており法学部、教育学部などの学生が30名ほど在籍しています。」
黒神:「すごい。県内15大学から成る団体の代表ですか。その活動内容について簡単にお聞かせ願えますか。」
上田:「はい。活動は大きく分けて間接支援と直接支援に分けられます。間接支援は主に講演会やシンポジウムなどを開催して被害者支援を広めることです。直接支援は被害者遺族の方が事件のせいでできなくなっていることのお手伝いなどです。『あした彩』は赤磐市で起きた交通事故の遺族の方の畑のお手伝いや、小学生の学習支援を行ったことがあります。直接支援をする機会はとても少ないので、ほとんどが間接支援ですが、これからは私たちにできる直接支援を増やしていきたいと思います。」
黒神:「ありがとうございます。なぜこの犯罪被害者支援の活動に興味を持たれたのですか。」
上田:「この活動を知ったのは、知り合いの先生に教えてもらったからです。私は昔から警察官になりたいと思っており、そのためには被害者支援は知っておくべきことだと思いました。それまで、警察官として加害者の更生などに関わりたいと思い加害者支援については調べていましたが、被害者、特に被害者遺族のへの支援という視点が欠けていました。被害者、加害者両方の視点をもつことが大事だと思ったので、被害者支援ボランティアでは被害者遺族の人の話を聞いたり、所属する刑事訴訟法のゼミでは加害者の更生施設を訪れたりしました。」
黒神:「ありがとうございます。また、これまでいくつか大きな企画を立案し実施してこられたようにも伺っています。とくに、これまで手掛けてこられた中で、代表的なものを挙げていただけますか。」
上田:「昨年岡山大学で開催した被害者支援シンポジウムが一番大きな企画だったと思います。岡山大学のシンポジウムは6回目で、第4回、5回と関わってきましたが、私がリーダーとして中心的に企画、実施したのは第6回が初めてでした。長崎の佐世保女児殺害事件で妹さんを殺された御手洗さんをお招きし、パネルディスカッションやグループワークを行いました。『Smile』のみんなで協力してパネルディスカッションの内容、グループワークの進め方、必要なものの手配、講師の方への謝金、当日の流れなど全て学生が決めました。参加者は100名を超え、先生や警察の方の助けはありましたが、ほとんど学生だけで成功させたことに達成感を感じました。」
黒神:「素晴らしいですね。そこではきっと大きな達成感を得られたことと思います。これまでそれらの活動を行ってきた中で、印象に残ったことや、やりがいを感じたことなどはありますか。」
上田:「やはりいちばんやりがいを感じるのは、ご遺族の方に『岡山の学生は積極的に被害者支援をしていて本当に心強い』とか、『ここまで大学生が被害者支援をしているところはない』などと言ってもらえた時です。まだまだこれからも頑張ろうと思えます。また、シンポジウムなどの後にアンケートの感想を読んでいると、『被害者支援について初めて知った』という方も数名いらっしゃいます。被害者支援をまだまだ知らない人が多いので、こういった方々にそれが広まるのはとても嬉しいですし、ボランティアをやっている意義を感じます。」
黒神:「では、逆に、この活動を行う中で、難しいことはどんなことでしょうか。またそれを克服するためにどのような工夫をされていますか。」
上田:「イベントを開催するときに大変なことはたくさんありますが、常に難しいと思っているのは、全15大学、300名を超える学生に情報を共有し、積極的にイベント等に参加してもらうことです。学生がとても多いので、被害者支援に対する意欲がそれぞれで違うのはある程度は仕方ないですが、その意欲を保つのもリーダーの役割であると思います。特に今はコロナ禍でご遺族の方や他大学の学生との交流ができず、事務的な連絡や活動発表などばかりになってしまっています。そんな中でも意欲を保つためにオンラインでリーダー会議を行ったり、ご遺族の方にメッセージを送ったり、勉強会を行ったりしてモチベーションを維持するよう工夫しました。」 」
黒神:「私など法学部の教員30名弱をまとめるだけでもたいへんなのに、それだけの規模のメンバーをまとめておられることに感服します。」
黒神:「ところで、上田さんは現在4年生ということで、将来どんな道に進まれるのですか。」
上田:「はい、小さいころから憧れていた警察官の道に進みます。今まで勉強したことやボランティアで経験したことを生かして被害者支援や加害少年の更生などに関わりたいと思っています。」
黒神:「これからも、ますますのご活躍を期待しています。今日は、ありがとうございました!」
上田:「ありがとうございました!」
2020年12月2日
第6回 ゲスト
松本颯太さん(法学部4年生)
黒神:「今日のお客様は、法学部4年生の松本颯太さんです。松本さんは、さきごろ学部を代表して本学の『金光賞』を受賞しました(金光賞は、法文学部第2期生、故・金光富男様のご厚志による寄附に基づく賞で、グローバルに活躍しかつ学業成績が優秀な学生に贈られる栄誉ある賞です)。
(金光賞授賞式の様子)
じつは松本さんとは、2年生のゼミから現在のゼミまでの長い付き合いですので、今日は私は、ゲストとの対談というより、家族との日常会話みたいな感覚でおります。気楽にいろんな話ができればと思っていますので、よろしくお願いします。
松本:「よろしくお願いします。」
黒神:「まず、グローバルに活躍されたということで、留学の話をお伺いできますか。どこに留学されたんでしたっけ。」
松本:「イギリスのエディンバラ大学です。2年生の秋から3年の夏前頃までの約9か月間留学しました。岡山大学でもゼミに所属している国際法をはじめ、国際関係や政治、開発学を勉強しました。」
黒神:「エディンバラでどんな刺激を受けましたか。」
松本:「勉強面でも非常に刺激的だったのはもちろんですが、最も印象的だったのは『多様性』ということかと思います。そもそもイギリスはイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4つからなる連合王国で、僕の行ったエディンバラはスコットランドの首都です。4つそれぞれで文化も大きく異なり、イメージするイギリス英語とは程遠いすっごくクセの強いスコットランド英語が話されています。いまだにあのアクセントは理解できる気がしません…。」
黒神:「松本さんの滞在していたのは、ちょうどEUからの離脱が問題になっていた頃かと思いますが、その点についてはどうでしたか。」
松本:「はい、僕の留学の時期はちょうどイギリスのBrexitのまさに真っ只中でした。この点について、授業でも学んだり、色々な人と話したりしました。スコットランドの大半はBrexitに反対で、イギリスから独立してEUに残ることを主張しています。僕がいた時も非常に大規模な反対デモが行進を行なっていました。このような環境で、1つの国の中における多様性、『国』として、例えば『イギリス』として括ってしまうことの危険性を学びました。」
黒神:「松本さんは、帰国後、世界ユースサミットに日本の代表団として岡大から2名のうちの1名として選抜されましたね。世界ユースサミットの経験について少しお話しいただけますか。」
(松本さんが参加した世界ユースサミット「次世代リーダー・グローバルサミットOne Young World 2019」)
松本:「世界ユースサミットはOne Young Worldと呼ばれ、2009年の世界経済フォーラム『ダボス会議』において宣言されて2010年よりはじまったサミットです。年に1度、世界190カ国以上から18~30歳の若い世代が集まり、世界最大級のサミットとして、地球規模の課題に対してSDGsを軸として、産官学が一体となって問題解決を目指すプログラムです。
若者と同時に、世界的著名人、例えば政治家や活動家、企業CEOなども参加しスピーチなどを行います。」
黒神:「たしか大会は、ロンドンでしたよね。」
松本:「はい。僕はロンドンでの第10回大会に参加しました。大きく2つの印象的な学びがありました。1つ目は、SDGsは『言葉』ではなく『マインド』であることですね。SDGsは社会課題のすべてを包括しているわけではないし、なによりあくまでも2030年までの目標です。SDGsの枠組みによって様々なステークホルダーがSDGsのもとに集まりともに活動できるという良さがある一方、その言葉だけ理解しても、それこそ持続的ではないと思います。他者、環境、社会を思いやる気持ち、変化を受け入れ、新しいことに挑戦するマインドこそが身につけるべきものと感じました。
黒神:「それは、SDGsを掲げている本学の全員に聞いてもらいたい点ですね。私も含め(笑)。」
松本:「2つ目は、No One Left Behindの新たな意味を見出したことです。これは一般的には途上国におけるあらゆる状況にいる人々も取り残さず救うという意味ですが、参加者とそれぞれの自国の問題について議論するうちに、先進国、特に日本においては、『社会課題に関心を持たずとも幸せに生きていける人々を取り残さず巻き込んでともにアクションする』ことをも意味するのではないかと気づきました。これは今後も情熱を持って探求していきたいテーマです。」
黒神:「ところで、松本さんは1年生のときから途上国の支援を積極的にやっていたように聞いていますが、具体的にどんな活動をされてたんですか。」
松本:「大学1年の時に先輩と一緒に学生団体をつくって、ネパールの小学校に図書館を建てるなどの活動をしていました。街頭募金をしたり、イベントに出展したりと地道に資金を集め、色々と苦労はありながらもなんとかプロジェクトを達成することができました。」
黒神:「後輩からよく松本さんの名前を聞くのですが、留学の相談などにも乗ってあげているんですか。後輩にアドバイスをするとき、どんな点についてとくに強調してアドバイスしていますか。」
松本:「留学相談をしてくれたり、最近は就活などの相談もしてくれます。後輩に限らず人と関わる時も、自分自身考える時も大切にしていることなのですが、『広く深く』を意識しています。俯瞰的思考と分析思考とも言えるかもしれません。色々な選択肢や、幅広い考え方を提示する一方で、その人の考えや悩みの背景には何があるのかを深掘りするようにしています。あとは、『計画的偶発性』ですね。全く偶然で繋がっていないように見えることも、様々な行動を取り計画的に動いていればその産物となるみたいな考えなんですけど、けっこう好きな言葉で、これを引用して相談に乗ったりしてます。」
黒神:「へー、大学4年間で立派に成長しましたね(笑)。感心します。現在4年生ということで、将来どんな道に進まれるんですか。」
松本:「来年春からは、社会人として国際協力に携わります。学生団体での経験も浅いものなので、ほとんど未知の世界で不安もありますが、とてもわくわくしています。岡山大学で学んだこと、経験したことを糧に、一歩一歩精進していこうと思っています。」
黒神:「これからも、ますますのご活躍を期待しています。今日は、ありがとうございました!」
松本:「ありがとうございました!」
2020年11月2日
第5回 ゲスト
吉田光宏さん(岡山県産業労働部次長)
河原礼奈さん(岡山県総合政策局公聴広報課)
黒神:「今日のお客様は、岡山県庁にお勤めの吉田光宏さんと、河原礼奈さんです。お2人は、岡山県庁の職員として、地元に貢献されている卒業生の代表としてお越しいただきました。わが法学部の卒業生としては、自身の地元で公務員として活躍している方々の比率は、他の職種と比べて非常に高いと思いますので、ある意味、卒業生の1つの代表例として、どのようなキャリア形成をしてこられたか、とても興味のあるところです。本日は、よろしくお願いいたします。
吉田・河原:「よろしくお願いします。」
黒神:「まず、シニア代表(笑)の吉田さんにお伺いします。まず、ご卒業後何年くらい勤務されていますか。また、どのような部署を経験してこられましたか。」
吉田:「シニアなので、勤務年数はとっさにお答えできない長さになりました(笑)。卒業後に就職して約35年になりますが、総務部、県民生活部、保健福祉部、産業労働部など、幅広い分野の部署に勤務させていただき、いろんな経験をすることができました。県民生活部国際課に勤務していたときには、黒神学部長をはじめ、法学部の先生方と一緒に多文化共生政策を研究させていただき、その成果を県の国際化施策に反映できたことは、楽しく貴重な経験でした。そのときはたいへんお世話になり、ありがとうございました。卒業後初めて法学部と関わりを持つ機会でもあったので、うれしかったですね。」
黒神:「そうでしたね。あのときは多文化共生について右も左もわからないまま、大学と県や市が一体となっていろんなことを話し合って実行しましたね。私もとても楽しかったです。」
黒神:「それ以外にも、これまでのお仕事の中で、やりがいを感じられたようなことはありますでしょうか。」
吉田:「そうですね。特に印象に残っているのは、大手企業の誘致と南オーストラリア州との友好提携25周年記念事業の企画に携わったときのことです。誘致については、企業の希望を丹念に聞く一方、その希望を踏まえて多くの関係者と打ち合わせを重ね、綿密に調整を進めていきました。その結果、誘致が実現したときには達成感を味わいました。南オーストラリア州は岡山県の友好交流地域ですが、友好提携25周年を記念して、知事を代表とする訪問団を派遣することとなり、準備のために南オーストラリア州を訪問し、州政府幹部との協議などを行いました。協議には責任者として臨んだため、自らその場で判断し決定を求められる緊張感がありました。また、文化や考えの違いによる意思疎通の難しさを感じました。お互いの理解が深まり、双方のメリットにつながる企画となったときには充実感を覚えました。
ちなみに、州都はアデレード市で、おだやかな雰囲気で住んでみたい街でした。岡山大学も交流しているアデレード大学も訪れました。キャンパスは美しく、大学生に戻れるなら留学したいですね(笑)。岡山大学には交換留学などの制度があるので、ぜひ学生の皆さんにも活かしていただきたいです。」
黒神:「ありがとうございます。では、河原さんも、県庁で働こうと思った動機や勤務のご経験などについて簡単にお聞かせいただけますか。」
河原:「私は、兼業農家だった実家が、人手不足・祖父母の高齢化で農業をやめてしまったことがきっかけでした。毎年家族でする田植えを楽しみにしていたので、悲しかったことを覚えています。そして、同じような状況が県内で広く発生し、問題となっていることを知りました。そうした、いわゆる中山間地域を元気にしたいと思い、県職員を志望しました。総務部や県議会事務局などでの勤務を経て、現在は公聴広報課でSNSを活用した情報発信などを担当しています。」
黒神:「まだ勤務経験も少ないことと思いますが、せっかくの機会ですので、大先輩の吉田さんに仕事のことやこれからのキャリア・プランなどについて、聞いてみたいことってありますか。」
河原:「幅広い部署を経験されていますが、いろいろな思いや価値観を持つ方々と関わる中で、気を付けていることを教えてください。また、仕事に限らず人生におけるモットーなどがあればお聞きしたいです。」
黒神:「吉田さん、いかがですか。」
吉田:「そうですね。相手の思いや考えを聞くときは先入観などを持たないようにすることや、自分が相手の立場だったらどのように行動するかなどを考えることに気をつけています。人生のモットーは意識したことはないのですが、人生100年時代と言われていますので持たないといけませんね(笑)。モットーとはまでは言えませんが、『あきらめずにベストを尽くす』『先を見通してさまざまな視点から考える』『感謝の気持ちを忘れない』などを心がけています。
今の立場になって、民間企業に派遣されたときの上司の「謙虚になれるのが本当のリーダーである」ということばの重要性を実感しています。河原さんは、明確なキャリアプランとチャレンジ精神を持っておられるので、さらにすばらしい県職員になると思います!」
黒神「河原さん、これからどんなキャリアを歩みたいですか。抱負などお聞かせください。」
河原:「県職員を志望した理由が「地域を元気にしたい」というものだったので、地域振興の業務に携わりたいです。一方で、県職員は多種多様な業務を経験できることも魅力の一つですので、いろいろな仕事にチャレンジしたいという気持もあります。一つ一つの出会いや経験などを糧に、成長していきたいと思っています。」
黒神:「最後に、お2人から自治体での勤務を目指す現役の学生に向けて、アドバイスなどお願いできますか。」
吉田:「デジタル化、グローバル化など行政を取り巻く環境は大きく変化しており、住民の方が抱える問題も複雑になっています。柔軟な発想力と粘り強い行動力を持つ方に、自治体は働きがいのある職場です。自治体を就職先として志す学生の皆さんは、留学など自分と考えや価値観の違う方と接する機会を持つよう心がけるとともに、イベントやプロジェクトの企画運営など多くの方を巻き込んで一つのことを創り上げる体験をたくさんしておかれるとよいと思います。自治体は、幅広い分野の業務が経験できて、地域の発展への貢献と自らの成長が実現できる魅力ある職場です。できればその中でも岡山県庁をぜひ選んでいただきたいですね。」
河原:「自治体の中にも多様な仕事があり、時代や世の中の移り変わりによっても、その時々に求められる能力やスキルは変わってきます。日頃からアンテナを高くはって情報を集め、自分なりに考えていくことが大切だと思います。」
黒神:「本日は、お忙しいところ、わざわざ学部長の部屋にお越し下さり、ありがとうございました!これからも、後輩の活躍をぜひ楽しみにしていてください!」
吉田・河原:「ありがとうございました!」
2020年9月25日
第4回 ゲスト
槇遥希さん(法学部4年生)
黒神:「今日のお客様は、法学部4年生の槇遥希君です。槇君は、同じく法学部4年生の宮本泰輔君と、このコロナ禍が深刻化してきた6月に、近隣の飲食店からお弁当を調達し、それを学生に配布する活動、題して「コロナがなんじゃ!WIN&WIN学生プロジェクト 岡大生の食支援×地域飲食店の活性化」という活動を行いました。その功績をたたえられて、2人は、このたび7月に本学学長から学長表彰を受けました。
(学長表彰の記事はこちら)
本日は、宮本さんとはあいにく都合がつきませんでしたが、槇さんにこの活動を中心にいろいろとお伺いしたいと思いますので、よろしくお願いします。
槇:「よろしくお願いします。」
黒神:「まず、今回のプロジェクトを企画するに至った経緯についてお伺いできますか。」
槇:「コロナ禍においてたくさんの人々によって不自由になってきました。私自身もアルバイトができる時間が減ったため、私と同じ境遇の大学生は多いと考えました。そこで人が生きていく上で重要な要素である、『衣食住』のなかで私たちにできることは何かを考えた時、食の面で支援ができるのではと考え、それと同時に岡大の周辺の飲食店も一緒に支援する仕組みを考えた結果、今回の企画を思いつき、実行しました。」
黒神:「よくそれだけのことを短期間で考え、実行に移しましたね。じつは私も、法学部生の企画ということで、気になって初日こっそりのぞきに行ったのですが(笑)、大盛況でしたね。全体を通じて実際にどんな感じでしたか。」
槇:「当日は、本当にたくさんの学生たちがお弁当を取りに来てくださり大盛況でした。この活動は平日の5日間を2週続けて行ったのですが、9店舗もの飲食店が協力してくださり、毎日唐揚げ弁当や、餃子弁当など様々なお弁当を300~500人の学生に配布することが出来ました。このように大きな規模の活動になってしまったので、運営側も人手が足らず困っていたのですが、ラクロス部の学生やSNSでの呼びかけに応えてくれた学生など多くの学生が手伝ってくれ、何とかやり遂げることが出来ました。」
黒神:「それはすごい!多くの学生を巻き込んだビッグプロジェクトになったんですね。」
黒神:「プロジェクトを実施するにあたって、どんな苦労がありましたか。」
槇:「最初は、協力してくださる飲食店を探すことに苦労しました。実際に準備ができる日数が限られており、1日で10軒ほどの飲食店を回って企画の説明と協力のお願いをしないといけなかったので、時間的な制約があり苦労しました。しかし、ほとんどの飲食店の方が協力をしてくださり、この企画ができたと考えています。次に協力者についてです。この企画を始めた当初は私含めて3人だったため、テントの準備やお弁当の運搬などとても十分にできる人数ではありませんでした。しかし、何回か重ねているうちに協力してくれる学生が増えたため、私たちも余裕を持ってプロジェクトに臨むことができました。」
黒神:「それだけの協力者を得られたのは、ひとえに、槇さんや宮本さんの熱意が伝わったからでしょうね。」
黒神「実際にこのプロジェクトをやってみて、どんな点が良かったと思いますか。」
槇:「やはり学生たちからの感謝の声が一番うれしかったですね。配布している際にも、『久々においしいごはんが食べられます!』とか、『応援しています!』といったうれしい言葉をたくさんいただきました。このように言っていただけるとこの企画をやってよかったと思いますね。」
黒神:「まだ、卒業まで時間が残されていますが、今後、また何かほかのプロジェクトなども企画されているんですか。」
槇:「2つ考えています。1つが高校生へのアプローチです。コロナによってオープンキャンパスができず、岡山大学を校外に広報する大きなきっかけがなくなりました。そのため、学生目線から岡山県で岡山大学を進路として考えている高校生に岡山大学をアピールできる機会を作れたらと考えています。2つ目が1年生へのアプローチです。現在対面授業がほとんど行われていない中で同級生との交流がなくなっています。大学生活も半年を過ぎた中で、大学生らしい生活ができていません。そこで同級生との交流をもち、大学生活を少しでも楽しんでもらいため、1年生同士かつ、他学部間の交流ができる仕組みを作っていけたらと考えています。」
黒神:「いずれも素晴らしい計画ですね。じつは、わが法学部の先生方も、同じことを考えたんですよ。他の学部にさきがけて、5月に新入生全員を対象としたオンライン歓迎会をやりました。
(オンライン歓迎会の様子)
また、高校生向けには、ちょうど現在、8月から9月にかけて、法学部独自のWebオープンキャンパスをやっています。(Webオープンキャンパス会場はこちら)
やはり、こんなときだからこそ、動かないといけないですよね。」
黒神:「この経験を将来どのような形で生かしていきたいと思いますか。」
槇:「将来も自分が持った問題意識をすぐに実行できるような職場に就き、少しでも多くの人の力になればと考えています。この企画もはじめは小さな活動だったのですが、最終的には多くの人を巻き込み大きな活動にすることが出来ました。今後も多くの人と協働しながら何かを成し遂げていけるような活動をしていきたいと思います。」
黒神:「今後も、ますますのご活躍を期待しています。また、卒業までに学部長の部屋に来て話を聞かせてもらう機会がありそうですね(笑)。今日は、ありがとうございました!」
槇「ありがとうございました!」
2020年8月27日
第3回ゲスト
小塚真啓准教授
~ご近刊『高校生のための税金入門』についてお伺いしました~
黒神:「今日のお客様は、法学部で税法を担当されている小塚真啓准教授です。小塚先生は、3年前に「岡山大学若手トップリサーチャー研究奨励賞」を、うちの学部では初めて受賞された新進気鋭の研究者です。このたび、三省堂から『高校生のための税金入門』という本を出版されましたので、この本について今日はいろいろとお伺いしたいと思います。小塚先生、よろしくお願いします。
小塚:「よろしくお願いします。」
黒神:「まず、『高校生のための税金入門』を刊行しようと思われた動機についてお聞かせいただけますか。」
小塚:「直接には、同じシリーズで選挙入門、憲法入門を刊行されている名古屋大学の斎藤一久先生のお誘いがきっかけです。内在的な動機といいますか、お誘いを受けてみようと思った理由としては、租税教育に新しい風を吹き込んでみたいと思ったことがあります。」
黒神:「ありがとうございます。この本の特徴(ウリ)はどんな点にあるのでしょうか。また、どのように利用させて頂くのがよいのでしょうか。」
小塚:「一緒に研究会もやっている若手の税法研究者が集まって執筆した本でして、『高校生のため』の本と胸をはっていえるよう、わかりやすく、しかし、より深く学ぼうと思うきっかけにもなる内容とすることを目指して、率直な意見交換を経て完成しました。また、付録としてディベート用の課題や解説もつけていますので、税金や税法について知識を得るためだけでなく、議論のやり方を学んだり教えたりする教材としても使ってもらえると嬉しいですね。」
黒神:「私も、ご献本いただき、拝読させていただきましたが、源泉徴収や消費税、ふるさと納税まで、身近なトピックがじつにわかりやすく書かれていますね。今回のご出版により、どんな効果を期待されますか。」
小塚:「税金や税法についてきちんとした議論がなされることの重要性・必要性は、最近、租税を原資とする政府の活動が拡大する傾向があることもあり、高まる一方であろうと考えています。そのためには、税金や税法を学んだり教えたりする租税教育が重要で、この本を教材とした公開講座を企画していて、高校生がディベート形式で税法・税金について理解を深めるということを目的にしています。多くの高校生が参加できるようにオンラインでの実施を予定しています。それ以外にも様々な社会的実践を進めていきたいと考えています。」
黒神:「小塚先生は、この夏、大学が企画するオープンキャンパスの動画でも、高校生向けに模擬授業をされるように伺いました。積極的に高校生の目線からも教育や社会貢献をされているんですね。」
黒神:「実際に小塚先生のゼミでは、高校生に対して税金についてどのように教えるべきか、グループワークをしていると伺いました。この点についても、少し伺えますでしょうか。」
小塚:「第1学期の間は3、4人から成るグループを3つ作り、主に毎週のオンラインでのゼミの時間を使い、それぞれで高校生向けの租税教育の教材を作ってもらいました。最近ようやく形になってきましたので、若手税法研究者などを外部講師としてお招きして模擬講義を行い、年度内にはゼミ生達が高校生向けに教育をする実践の機会も作りたいと考えています。」
黒神:「ご自身のご研究をみごとに教育の現場に生かされていて、一教員としてもとても勉強になりました。これからのますますのご活躍を期待しております。小塚先生、本日はお忙しい中、学部長の部屋にお越し下さり、本当にありがとうございました!」
小塚:「ありがとうございました!」
2020年7月7日
第2回ゲスト
岡部紅里さん(法学部4年生)、園田慎さん(法学部3年生)
(聞き手:濵田陽子准教授(法友会顧問))
~学生にやさしい勉強サークル「法友会」について語ってもらいました~
黒神:「本日のゲストは、岡山大学法学部の公認サークルである「法友会」の現代表、法学部4年生の岡部紅里さんと、次期代表、法学部3年生の園田慎さんです。それから顧問の濵田陽子先生にも聞き手として加わっていただきます。本日の対談は、新型コロナウィルスの影響であいにく対面できませんので、オンラインで実施いたします。みなさん、よろしくお願いします。」
一同:「よろしくお願いします。」
黒神:「まず、みなさんの所属する『法友会』とはどのようなサークルですか?」
園田:「法友会は、学生、とくに下級生たちの法学学習やそれに伴う学内外での活動を広く支援し、学生同士、向学心を高めることを目的としています。もちろん、こうした活動を通じて、サークルでの仲間同士の親睦を深め、他大学等の団体との交流も積極的に行っています。」
黒神 :「下級生たちからよく『法友会の先輩方に勉強を教えてもらったりして本当にお世話になってます』という声を聞くのですが、具体的には、どんな活動をされているのですか。」
岡部:「主に金沢大学法友会との交流会や、中高生を対象とした法教育を中心に活動しています。金沢交流会では、年に2回金沢大学法友会の学生とディベートやプレゼンをしており、毎回、とてもいい刺激をもらっています。
また、法教育では、地元の中高校生に法的な考え方を学んでもらうために、身近な法律問題を題材として、グループワークを中心とした学習機会を提供しています。
その他にも、検察庁や法務局等の施設見学や、希望に応じて勉強会を開催したり、先輩方から進路についてお話を伺う座談会等も企画しています。」
金沢大学との交流会
黒神 :「なるほど。学生の学びをいろんな角度からサポートしてくれているんですね。まさに、『学生にやさしい勉強サークル』ですね。」
濵田 :「とくに上級生になって後輩をリードするに当たって、うまくいったこと、やりがいを感じたことなどがあれば教えてください。」
園田 :「2・3年生になり、参加する立場から運営する立場になったことにやりがいを感じました。特に後輩とのコミュニケーションを通じて、彼らがどんなところでつまづいているのか、また、どういった活動を楽しんでいるのかということが分かりました。自分の行動が後輩のため、法友会のためになっていることが分かるのがうれしいです。」
濵田 :「岡部さんは、いかがですか。」
岡部 :「自分が一生懸命準備したことに対して後輩が活動を楽しんでくれたことです。『どうやったら皆が活動を楽しんでくれるだろうか。そのために、どう工夫すればいいか。』金沢交流会や法教育の本番で滞りなく事を進めるために裏でじっくり時間をかけて準備をしてきました。そのため、本番後に後輩から笑顔で『楽しかったです』と言ってもらえたことが私の中で何よりも嬉しく、やりがいを感じた瞬間でした。といいつつ、基本的にどんな状況でも楽しんで活動に参加してくれる後輩ばかりなので、後輩様様です(笑)。」
中高校生を対象とした法教育
黒神 :「将来はどんな進路に進まれるのですか。」
岡部 :「私は、法曹をめざしています。現在、民事訴訟法と刑事訴訟法のゼミで勉強しています。」
園田 :「ぼくは未定です。憲法のゼミに所属していますが、これから公務員か民間就職をするのか考えます。」
黒神 :「本日お話しできてとても感銘を受けたのは、お2人とも、人のために進んで汗をかいて動かれていることです。『法友会』というサークルはまさにそれを体現している団体なんですね。学生時代のこの経験は、将来、いかなる進路に進まれてもきっと役に立つことでしょう。これからも他の学生のために、いっぱい汗をかいてください(笑)。また、皆さんのような立派な後輩を育てて行ってくださいね。」
「本日は、新型コロナウィルスの影響で登校できない中、オンラインでお集まりいただきまして本当に有難うございました!」
一同 :「ありがとうございました!」
2020年6月8日
第1回 ゲスト
佐藤吾郎先生(岡山大学大学院法務研究科長)
~中四国で初、唯一の「法曹コース」について聞く~
黒神:「本日は、岡山大学の法科大学院(ロースクール)である、大学院法務研究科長の佐藤吾郎先生をお迎えして、この4月から法学部に新しく設けられた中四国地区で初めての『法曹コース』について、詳しくお伺いしたいと思います。このコースは、本来、法学部のコースですが、ロースクールの先生方が主導して学部の法曹養成のための教育に携わってくださるコースですので、佐藤先生をお招きした次第です。それでは、佐藤先生、よろしくお願いします。」
佐藤:「よろしくお願いします。」
黒神:「まず、このたび設けられた『法曹コース』の設置の経緯や概要について、簡単にお話しいただけますか。」
佐藤:「はい、法曹コースとは、全国的に、大学の法学部・法科大学院を計5年で修了できるように法学部に令和2年度から新設されたコースです。コース生は法科大学院の基本科目も前倒しで学び、3年で大学を卒業し、法科大学院の「法学既修者コース」(2年)に入学します。大学入学から法曹資格を得るまでの最短期間を現行の8年弱から6年に縮めることによって、時間や学費の負担を減らし、法曹への道を目指しやすくするという取組みです。高校でのコースに例えていうならば、2年生から始まる(法曹)特進コースのようなものです。」
黒神:「従来は、一般には7年必要でしたから、学部3年、大学院2年、計5年学修すれば、司法試験が受けられるというのは画期的ですね。いわゆる「3+2(3プラス2)」といわれるゆえんですね。では、うちのコースの特色(ウリ)はどんな点でしょうか。」
佐藤:「はい。まず、一定の要件の下で、法科大学院入試の筆記試験が免除されることです。次に、法科大学院未修者コースの学生と一緒に、法科大学院の授業を前倒しで受講できることです。さらには、学生5人に対し1人割り当てられる学修アドバイザー(本学法学部出身若手弁護士)に、アドバイスを受けつつ、法科大学院の自習室や資料室も利用可能である点ですね。同じ志を持つ仲間とともに、無理なく、恵まれた環境で学ぶことができることが、全体的な特徴です。中四国地域で法曹コースが設置されているのは、岡山大学法学部だけです。」
黒神:「中四国地域でうちのコースが唯一というのが素晴らしいですね。筆記試験免除も学生にとってありがたいですし、現役のOB・OG弁護士のみなさんがアドバイザーというのもとても心強いですね。」
黒神:「在校生の中でも、このコースには魅力を感じる学生が多くおりまして、初年度も、かなりの人数が志願しましたね。」
佐藤:「はい、おっしゃる通り、予想を上回る志願者があり、逆に選抜をしたくらいでした。今年度は、新型コロナウイルスの影響で、授業がオンライン講義となっていますが、学生は、すでに行われた講義が録画されているため、わからない点については、繰り返し学ぶことができることもあり、レポート等の課題も問題なく提出するなど、順調に勉強に励んでいるところです。」
黒神:「法学部生を早いうちから手厚く教育していただけて、学部としては実にありがたく思っています。うちのロースクールの実績を見ても、きめ細かい教育を施して司法試験合格まで導いてくださるので、今回の『法曹コース』設置は、学部としても画期的なコースととらえています。今後とも学部とロースクールとがしっかり連携して成果を上げていきたいですね。」
佐藤:「はい、その通りです。こちらこそよろしくお願いします。」
黒神:「また、最後にこの場を借りて、高校生や在校生のみなさんには、ぜひ岡大法学部の法曹コースからロースクールへの一環教育を受けて司法試験合格を目指してもらいたいので、何卒よろしくお願いします!!」
黒神「佐藤先生、本日はお忙しい中、ありがとうございました。」
佐藤「ありがとうございました。」
2020年5月13日
新入生のみなさんへ
岡山大学法学部へのご入学、おめでとうございます!
何よりもまずみなさんにお詫びしたいのは、今年度、新型コロナウィルスの影響のため、入学式が実施できなかったことです。本当に申し訳ございません。また、授業の開始も例年よりも遅れてしまいました。われわれ法学部の教員も、みな一日も早く授業をしたいと願っておりましたので、このたびの延期は残念でなりません。重ねてお詫び申し上げます。
さて、このたびは、岡山大学法学部を選んで下さり、有難うございます。わが法学部は、1949年の大学開学以来、有為な人材を世に輩出してきました。中四国地区における法学・政治学教育の中心地として、自他ともに認める確固たる地位を築いてまいりました。今度は、みなさんにこの法学部の歴史の主人公となっていただきたいと期待しております。その意味で、このたび前途有望なみなさんをわが法学部にお迎えできることを、教員一同喜んでおります。
ところで、私から3つのお願いがあります。
まず、みなさんは大学生になっておそらく多くのことに戸惑うことでしょう。これまでの学び方とはまったく異なり、これからは、自分から何事にも能動的に行動していかなければ、知識や理解を得ることは難しいでしょう。失敗を恐れて何もしなければ時間は無為に経過していきます。何よりも自分に舞い込んだチャンスを逃してしまうことになるでしょう。4年間という期間は、長いようであっという間です。常に周りの動きに敏感に情報を収集し、その中から自分のやりたいこと、やるべきことを見出してほしいと思います。
次に、「一年生になったら」という歌があります(私と同じ名前の故山本直純さんの作曲)。ご存じの方も多いと思いますが、その中で「ともだち100人できるかな♪」と歌われています。新入生のみなさんには、この4年間で、さっきの歌の100人といわず、それ以上できるだけ多くの人に出会ってもらいたいと思っています。同世代の人のみならず、年下、年上、また、異性、外国人……、種々の人々に出会って多くの刺激をもらい、多くを吸収してもらいたいと思います。
そして最後に、岡山大学法学部を好きになってもらいたいと思います。履修した授業の内容やそれを教える先生、自分の身近にいる仲間が何を考えどう行動しているか、興味を持ってみて下さい。あるいは、ゼミでの活動、インターンシップや留学、部活などの課外活動が面白そうと思うかもしれません。まずは何事においても興味を持って大学生活を楽しんでください。そして卒業する頃には岡山大学法学部を好きになっていてもらいたい、またそれを卒業後も多くの人に伝えてもらいたいと思っています。
以上のお願いを私からのメッセージとして新入生のみなさんに捧げたいと思います。4年後のみなさんの自信に満ち溢れた笑顔に出会うことを今から楽しみにしております!
2020年4月
岡山大学法学部長 黒神 直純
「学部長の部屋」開設のごあいさつ
このたび岡山大学法学部の学部長に就任しました、黒神直純と申します。専門は国際法です。早いもので岡山大学に赴任してから23年が経ちました。これまで多くの学生と共に学び、共に語り合い、共に遊んできました。そんな中で、わが法学部には、優秀かつ多才な人材がじつに豊富にいて、また、その多くの学生が社会に巣立って行ってくれたことを実感し誇りに思ってきました。
わが法学部の財産は人、その中心は紛れもなく学生です。学部の生き生きとした姿は、学生の生き生きとした活動に支えられるものだと思います。わが法学部の学生は、これまでに、大学での勉学はもちろんのこと、海外留学などグローバルに活躍したり、社会に出てボランティア活動に専心したり、部活やサークルで全国レベル(ときに世界レベル!)の活躍をしたりと、じつに活発に活動し立派な成果を上げてきました。また、卒業後も、官界、財界、法曹界などで大いに活躍しております。
また、学部の教育・研究を担う教員も、日本の学界において、これまで優秀な実績を収めてきた研究者や、新進気鋭の将来有望な研究者たちです。わが法学部では、教員間でも、研究においては、分野を越えて常に刺激を与え合える自由な雰囲気があり、他に誇れる多くの研究業績を残してきました。
岡山大学法学部は、まさに「学生が輝く学部、人が羽ばたく学部」です。
このような優秀かつ多才な人たちに焦点を当てて、法学部の生き生きとした姿をできるだけ多くの人たちに知ってもらいたいと思い、このたび「学部長の部屋」を作りました。これからは、この「学部長の部屋」から岡山大学法学部のさまざまな表情を伝えていきたいと思いますので、何卒よろしくお願い申し上げます。
2020年4月1日
岡山大学法学部長 黒神 直純
新執行部スターティン!
2020年4月1日、新学期がスタートしました!わが法学部執行部もメンバーを一新し、新しい気持ちで船出しました。副学部長の赤木真美先生(商法)、築島尚先生(行政学)と3人で協力して頑張っていく所存ですので、これからも何卒よろしくお願い申し上げます!