救命救急科

診療科長より

近年,医療が高度化・専門化するにつれ,各専門科の領域間の空洞化が進んでいます。一方で,救急搬送数は人口の減少に反して増加し続けています。領域をまたぐ,そして地域に根ざした総合的な問題解決能力をもつわれわれ救急医の需要は,ますます高まる一方です。私は,3つのS=Speed(スピード感), Sympathy(患者や家族に対する慈しみの気持ち), Science(科学的な考え)が救急医療に携わる医療者には不可欠と考えています。救急外来は社会の縮図であり,医療の最先端から,どこも受け入れ先がない社会的弱者まで,多彩な患者さんが運び込まれてきます。私たち岡山大学病院救命救急科は,様々な社会のニーズに応え,地域に貢献できるよう,今後もますます,皆様のご期待に添えられる診療科であるよう,まい進してまいります。

中尾篤典

救命救急科長
(高度救命救急センター長)
中尾 篤典

対象疾患について

敗血症や心筋梗塞,脳卒中といった内因性疾患や,交通外傷や転落といった外因性疾患など,気道・呼吸・循環・中枢神経に緊急性を要しかつ重症である方を対象に,診療にあたります。また,切断肢・広範囲熱傷・中毒・多発外傷など,より高度・特殊な医療を必要とする方や,特に重篤な小児の急性脳症や体外式膜型人工肺(ECMO)を必要とする方の入院が多く,国内でもトップクラスの治療成績があります。救命救急科では,救急科単独で診療することも多いのですが,高い診療能力をもった院内の専門診療科と協力連携して診療にあたります。2021年からは,重症患者ばかりでなく,大学病院周囲の地域での軽症患者や,専門診療科かかりつけ患者の怪我といった患者さんも受け入れ,地域やかかりつけ患者にやさしい医療を提供しています。

診療内容と特色について

救急外来では,基本的には救急車で搬送されてきた患者さんに対し,限られた時間内で診断と応急処置,救命救急治療を行います。救命救急センターには,12床の集中治療室(うち2床は感染症対応可能)を有し,一般病棟にも常に数人の患者さんを受け入れています。EICUでは,最重症救急患者さんに対して高度で集約的な救命集中治療を行います。また,院内の各科専門外来・入院患者さんの急変時にも速やかに駆けつけて救命処置を行っています。
救命救急科の医師は,救急指導医・救急専門医をはじめとして,外科や麻酔科,小児科など複数の専門医資格を有しており,15名以上の専従医師が交替制で24時間365日,他の院内各診療科と密に連携を取りながら高い医療レベルを維持しています。また,災害拠点病院として,国内の災害現場にDMATを派遣し,地域の学校などでの心肺蘇生講習,地域住民への救急対応や人生会議の座談会なども行い,医療の最先端から最後尾まで,消防と協力して地域に根差した救急診療にあたっています。また新型コロナウイルスの宿泊療養施設の管理や,療養患者のオンライン診療にも各診療科の協力のもと,貢献しています。

診療科より患者の皆さまへ

われわれは,目の前で急病や怪我などで苦しむさまざまな救急患者さんの生命維持および救命を専門とし「いつでも,だれでも,どこでも,なんでも」診る診療科です。岡山大学病院では高度救命救急センターの管理責任科として,患者さんの命を守っています。急を要する重篤な状態でなければ,私たちに直接触れる機会はありません。しかし私たち岡山大学病院救命救急科は,岡山市・県の救急体制整備や病院前救護の教育事業,救命救急士に対する指示等,皆様の安全・安心確保に間接的ながらサポートさせていただいております。
身近なところから,そして『最後の砦』として,私たちは皆様のために尽力してまいります。