小児心身医療科

診療科長より

子どもは心身の発達途上にあり,心理社会的ストレスの影響を受けやすく,様々な身体症状が出現します。さらに,身体的な病気に伴う苦痛や日常生活上の支障のために,不安や落ち込みなどの精神的な症状や不登校など行動の問題が出現することもあります。当科では,「心身医学」に基づき,お子さんを身体的,心理的,社会的な面から総合的に理解し,ご家族や学校など周囲の方々と協力しながら診療するように努めています。
※「子どものこころ診療部」から名称変更となりました。

  

小児心身医療科長
岡田 あゆみ

対象疾患について

「心身症」は,精神疾患ではなく身体疾患のなかで心理社会的なストレスの影響が大きな状態(日本心身医学会の定義)のことです。また,お子さんは成長途上のため,困っていることを上手く言葉にできず,身体症状(「からだことば」として,気持ちが悪い,食べられない,頭が痛い,お腹が痛いなどが出現)として現れることもあります。このようなお子さんやご家族の相談窓口となり,当科での治療を行うだけでなく,他の診療科や医療機関,教育機関と連携して対応します。主な対象疾患や状態は以下のとおりです。「検査をしても異常がないが調子が悪い」「(登校時など)特定の状況で体調が悪くなる」などの場合に受診をご検討ください。

  • 起立性調節障害,過敏性腸症候群,慢性頭痛,摂食障害など
  • 慢性疾患のお子さんの二次障害(登校できない,人に会うことを避ける)など
  • 慢性疾患で当院を受診中のお子さんに関する対応の相談

診療内容と特色について

小児科医と心理士が協働して診療しています。外来は完全予約制で,一組に30~60分かけて診療します。慢性疾患のお子さんやご家族の相談にも対応しており,長期入院中の子どもとご家族のサポートを他科と連携して行います。心身両面からのアプローチを基本としており,お子さんへは生活指導,リラクゼーション,カウンセリング,認知行動療法,遊戯療法,描画療法,箱庭療法などを行っています。また,ご家族を治療協力者として位置づけ,家族面接,ペアレントトレーニングなどを並行します。
低年齢のお子さんや,言葉での表現が苦手なお子さんへは,箱庭療法などの非言語的心理療法も併用します。起立性調節障害の診療には,特に力を入れています。Finometer MIDI(連続血圧・血行動態測定ベーシックシステム)やNIRS(近赤外線分光法)などを用いて,血圧や脳血流を非観血的に連続して測定します。痛みを伴わない検査方法により,状態を定期的に評価することで,より詳しい診断や適切な治療につながります。
 

診療科より患者の皆さまへ

心身症の診療においては,「成長という追い風」が吹いて問題が解決することもしばしばです。お子さんの力が発揮されるように,ご家族と協力して取り組みたいと思います。
当科への受診は,初診時中学生までの方が対象です。かかりつけ医とご相談の上,地域医療連携室を通してご予約ください。初診・再診共に完全予約制で時間をかけるため,初診までに時間を要する場合があること,急な受診が難しい場合があることをご理解ください。また,ご相談内容によっては他の診療科への受診をお勧めする場合があります。教育機関との連携は,お子さんやご家族の同意があれば可能なのでお申し出ください。