小児外科

診療科長より

成人領域で内科と外科があるように,小児領域でも内科と外科があります。小児外科はこどもの外科的診療を行う専門分野です。小児は,ただ体が小さいだけでなく,すべての臓器が未熟なため手術を行うには成人とは全く異なった専門的な知識,技術が必要です。私どもは,こどもさんを安心して任せられる外科医として,新生児(出生前診断の場合は胎児)から思春期までの方を治療していますが,小児外科特有の病気を持った患者さんは成人になっても診療を続けています。

野田卓男

小児外科長野田 卓男

対象疾患について

体表:鼠径ヘルニア,臍ヘルニア(でべそ),正中頚嚢胞,漏斗胸 など
新生児:横隔膜ヘルニア,臍帯ヘルニア,腹壁破裂,食道閉鎖症,腸閉鎖症,腸回転異常症,胎便性腹膜炎 など
消化器:直腸肛門奇形(鎖肛),ヒルシュスプルング病,肥厚性幽門狭窄症,胃・食道逆流症,メッケル憩室,胆道閉鎖症,先天性胆道拡張症,腸重積症,急性虫垂炎 など
呼吸器:先天性肺嚢胞症(CCAM,肺分画症 など),気管・気管支狭窄,気管軟化症 など
泌尿生殖器:停留精巣,水腎・水尿管症,膀胱尿管逆流症,尿道下裂 など
固形腫瘍:神経芽腫,肝芽腫,腎芽腫(Wilms腫瘍),横紋筋肉腫,(悪性)奇形腫 など悪性・良性固形腫瘍の手術

診療内容と特色について

・低侵襲,機能温存,手術創を目立たなくするために,内視鏡下手術やマイクロサージェリーを取り入れています。
・鼠径ヘルニア,臍ヘルニア,停留精巣などは短期入院で治療します。
・先天性胆道拡張症は,戸谷分類の創設者である戸谷拓二先生の頃から世界をリードする業績を上げています。肝外胆道全切除+肝門部肝管空腸吻合という術式を考案し,術後合併症や術後の胆道がん発生を極力低く抑えることを実践しています。
・新生児疾患は緊急性が高くNICUで管理します。出生前診断された場合,産科,新生児科とのカンファレンスで治療方針を決めます。
・小児悪性固形腫瘍は,小児科,放射線科と共同で病期に応じた集学的治療を行います。
・重症心身障がい児(者)の患者さんにQOLの向上のため,胃瘻造設,胃・食道逆流防止術,喉頭気管分離術などを行っています。
・小児泌尿器疾患の膀胱尿管逆流症は,程度により保存的治療,内視鏡下手術,従来の手術を選択します。尿道下裂は一期的手術が原則ですが,高度な場合は手術を2回に分けることもあります。

診療科より患者の皆さまへ

成長過程にあるこどもは,成人とは異なった生理的な変化があります。このことを十分に理解して治療を行わなければなりません。小児といえども,生後間もない赤ちゃんと小・中学生では体格も体の仕組みも大きく異なります。小児外科医はこどもの生理的特徴を十分理解して治療を行うよう,日々研鑽を積んでいます。また,こどもの外科的な病気にもいろいろあり,すぐに手術が必要な場合もあれば,ある一定期間は経過を診てよい場合もあります。私どもはご家族に(年齢により本人も含めて)手術の必要性および術後の影響について詳しく説明して,保護者の同意のもとに治療を行いますので,こどもさんの病気のことは何なりとお気軽にご相談ください。